スクラップ・アンド・ビルド

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スクラップ・アンド・ビルド』は、羽田圭介による小説[1]

初出は「文學界」2015年3月号。2015年8月に文藝春秋より出版された121ページにおよぶ作品で[2]、2015年には又吉直樹の『火花』とともに第153回芥川龍之介賞を受賞している[3][4]

作者の羽田圭介は、同作において、若者やお年寄りなどの価値観の異なる人間が一つ屋根の下にいた場合に起こる縦の異なる価値観の対立とそのおかしさを描いたとしている[5]

タイトルの由来[編集]

作者の羽田圭介によると、本作のタイトルである「スクラップ・アンド・ビルド」は、「ビルド」という言葉を最初に思いついたのちに、そこから派生して最終的に「スクラップ・アンド・ビルド」という名前に落ち着いたとしている。また、名前を付ける上では介護を扱った、一般に病気文学のジャンルに当たる作品であったことから、漢字2文字の湿っぽい名前ではなく少しバカっぽい感じの名前にするために、長いカタカナのタイトルを付けたとしている[6]

また、その作品名は、身体を鍛えて筋繊維を破壊すると却って元より太くなって再生することと、戦後の高度成長期の日本が様々なものを押し壊し、再構築して活力を得てきた姿を重ね合わせてつけられたとされている[7]

あらすじ[編集]

主人公の健斗(28歳)は、新卒で入社した会社を退職し、資格試験の勉強をしながら就職活動をする傍ら、母親とともに同居している87歳で要介護でありながらまだまだ健康体の祖父の介護をしており、「早う死にたか」と毎日呟く祖父に対して母親とともに祖父に対してストレスを感じていた。そこで、健斗は敢えて過剰に世話を焼いたり、日々筋力を鍛えたりすることで祖父を弱らせようと考える。そうして彼女とも交際しながら、介護と就職活動の日々を送る無職の青年の目から「死への希望」と「生への執着」を同時に持つ祖父の姿を描いている[8][9]

テレビドラマ[編集]

2016年12月17日に同作を原作とした73分の単発の土曜ドラマがNHKで放送された。ドラマ版では、監督を香坂隆史が務め、主演:柄本佑の下で、山下リオ浅香航大秋元才加浅茅陽子山谷初男がキャストを務めた[10][11]

オーディオブック[編集]

FeBe版[編集]

FeBe(現・audiobook.jp)にて2015年11月11日に配信開始された[12]

Audible版[編集]

Audibleにて2016年7月20日に配信開始された[13]浦井健治の一人語りによる朗読[13]

脚注[編集]

  1. ^ 第153回芥川賞・直木賞:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル. 2020年11月13日閲覧。
  2. ^ スクラップ・アンド・ビルド - 国立国会図書館リサーチ”. 2020年11月13日閲覧。
  3. ^ 又吉直樹×羽田圭介、芥川賞受賞から5年のこれまでとこれから”. TBSラジオ FM90.5 + AM954~何かが始まる音がする~. 2020年11月13日閲覧。
  4. ^ 羽田圭介|特別インタビュー|自費出版の幻冬舎ルネッサンス新社”. www.gentosha-book.com. 2020年11月13日閲覧。
  5. ^ 「本の話」編集部. “芥川賞作家・羽田圭介さんが語る、ありのままの日常(後編) 『スクラップ・アンド・ビルド』 (羽田圭介 著) | 「本の話」編集部 | インタビューほか”. 文藝春秋BOOKS. 2020年11月13日閲覧。
  6. ^ 「本の話」編集部. “芥川賞作家・羽田圭介さんが語る、ありのままの日常(前編) 『スクラップ・アンド・ビルド』 (羽田圭介 著) | 「本の話」編集部 | インタビューほか”. 文藝春秋BOOKS. 2020年11月13日閲覧。
  7. ^ 祝芥川賞受賞!『スクラップアンドビルド』は、閉塞感の中に可笑しみ漂う、新しい家族小説だ() @gendai_biz”. 現代ビジネス. 2020年11月13日閲覧。
  8. ^ 『スクラップ・アンド・ビルド』羽田圭介 | 単行本”. 文藝春秋BOOKS. 2020年11月13日閲覧。
  9. ^ 羽田圭介『スクラップ・アンド・ビルド』における 尊厳死の表象に関する一考察”. 野崎泰伸. 2020年11月13日閲覧。
  10. ^ 日本放送協会. “土曜ドラマ「スクラップ・アンド・ビルド」|NHKドラマ”. NHKドラマ. 2020年11月13日閲覧。
  11. ^ 日本放送協会. “柄本佑さん主演「スクラップ・アンド・ビルド」制作開始!”. ドラマトピックス. 2020年11月13日閲覧。
  12. ^ スクラップ・アンド・ビルド”. audiobook.jp. 2022年5月13日閲覧。
  13. ^ a b 浦井健治が芥川賞受賞作を声で表現「リスナーと1対1の臨場感を」”. ステージナタリー (2016年7月20日). 2022年5月20日閲覧。

外部リンク[編集]