メディア・コングロマリット

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メディア・コングロマリット(英語:media conglomerate)は、映画放送新聞出版インターネットなど多様なマスメディアを傘下に収める巨大な複合企業寡占企業のことである。

概要[編集]

コングロマリットは通常、業務内容において直接の関係がない分野を多数傘下に収める企業グループとする企業形態である。マスメディア関連のコングロマリットの分野がそれぞれ無関係かどうかは議論が分かれるところである。

現在、様々なコンテンツ(ニュース、映画、映像、音楽など)をいくつかのメディアで共有する動きが盛んであり、それに合わせて メディア関連企業が買収などを通じより巨大な複合企業体を形成する傾向が強くなってきた。しかしそのため、最近ではコングロマリットと言われることより、メディアグループと言う名称が使われることも多くなっている。

代表的なメディアコングロマリット[編集]

代表的なメディア・コングロマリットは7社ある。

以上がビッグ・ファイブ

これにヴィヴェンディベルテルスマンの2社を加えて、またヴィヴェンディではなく2006年に分離したバイアコムとCBSコーポレーションを個別グループとしてカウントし[1]セブンシスターズと呼ぶ。ウォルト・ディズニーの450億ドル(2013年)を筆頭に、連結売上高が100億ドル単位の巨大企業である。

この他、ジョン・マローン率いる「リバティ帝国」(マローンが筆頭株主で会長を務めるリバティメディアリバティ・グローバルディレクTVなど)、ソニーのエンターテイメント部門(ソニー・コンピュータエンタテインメントソニー・ピクチャーズソニー・ミュージックなど)、マイクロソフトビデオゲーム、インターネット事業など)なども巨大メディア・コングロマリットとして取り扱われることがある。

世界のメディアコングロマリット
名称 メディア・ムガル 売上高
(2008年)
映画・音楽・ゲーム 放送 新聞・出版 インターネット テーマパーク、スポーツ等
タイムワーナー ジェフリー・ビュークス 470億ドル ワーナー・ブラザーズ TBSCNNTNTHBOCW タイムピープルフォーチュン ターナー・スポーツ&エンターテイメント・デジタル・ネットワーク
ウォルト・ディズニー・カンパニー 378億ドル ウォルト・ディズニー・ピクチャーズディズニー・インタラクティブ・スタジオ ABCESPNディズニーチャンネル ハイペリオンブックスマーベル・コミック ESPN360.comhulu ウォルト・ディズニー・パークス・アンド・リゾーツロサンゼルス・エンゼルス・オブ・アナハイム
ニューズ・コープ ルパート・マードック 330億ドル(合算値) ニューズ・コープ・オーストラリア ニューズ・インターナショナル (ザ・サンタイムズ)、ニューヨーク・ポストダウ・ジョーンズウォールストリート・ジャーナル
21世紀フォックス 20世紀フォックス FOXMyNetworkFNCFOXスポーツネットBSkyBSky ItaliaSTAR hulu ナショナル・ラグビー・リーグ、20世紀フォックスワールド
コムキャスト 460億ドル(合算値) コムキャスト フィラデルフィア・セブンティシクサーズフィラデルフィア・フライヤーズユニバーサル・スタジオ・ジャパン
NBCユニバーサル ユニバーサル・ピクチャーズ NBCTelemundoUSAネットワークCNBCMSNBCGolf ChannelE! hulu ユニバーサル・パークス&リゾーツ
ヴィヴェンディ 254億ユーロ ユニバーサル ミュージック Canal+
バイアコム サムナー・レッドストーン 146億ドル パラマウント映画 MTVニコロデオンBET Xfire ニッケルオデオン・スイーツ・リゾート・オーランド
CBSコーポレーション 140億ドル CBSCWShowtime サイモン&シュスター CNETLast.fm
ベルテルスマン 161億ユーロ RTLグループ ランダムハウス
ソニー 2兆3102億円(ゲーム・映画・その他部門の合計) ソニー・コンピュータエンタテインメントソニー・ピクチャーズソニー・ミュージック AXNアニマックス ソニー・マガジンズ So-net
リバティメディア ジョン・マローン 101億ドル QVCStarz IACExpedia アトランタ・ブレーブス
リバティ・グローバル 106億ドル UPC BroadbandUnitymediaChellomedia
ディレクTVグループ 197億ドル ディレクTVSky Brazil
(参考)
フジサンケイグループ
日枝久 ポニーキャニオン フジテレビジョンBSフジニッポン放送文化放送大阪放送(ラジオ大阪) 産経新聞扶桑社 フジテレビオンデマンド お台場東京ヤクルトスワローズ[2]
(参考)
読売新聞グループ
渡邉恒雄 日テレアックスオンスタジオジブリバップ 日本テレビ放送網讀賣テレビ放送BS日本アール・エフ・ラジオ日本 讀賣新聞スポーツ報知中央公論新社中央公論 よみうりランド読売ジャイアンツ
(参考)
毎日新聞グループ
ラジオ福島[3] 毎日新聞スポーツニッポン下野新聞福島民報マイナビ
(参考)
日本経済新聞
テレビ東京テレビ大阪BSジャパン日経CNBCラジオNIKKEI 日本経済新聞フィナンシャル・タイムズ日経BP テレビ東京ビジネスオンデマンド
(参考)
朝日新聞社
テレビ朝日朝日放送ビーエス朝日 朝日新聞日刊スポーツ朝日新聞出版 朝日ネット
(参考)
日本放送協会
籾井勝人 NHKエンタープライズ NHK総合テレビジョンNHK教育テレビジョン(NHK Eテレ)NHKラジオ第1放送NHKラジオ第2放送NHK-FMNHK BS1NHK BSプレミアムテレビジャパンNHKワールド・ラジオ日本 NHK出版 NHKオンデマンド みんなの広場ふれあいホール
(参考)
NTTグループ
NTTソルマーレ NOTTV[4] NTT出版 NTTコミュニケーションズOCNぷららインフォスフィア
(参考)
ソフトバンクグループ
孫正義 ガンホー・オンライン・エンターテイメント SBクリエイティブ Yahoo! JAPAN 福岡ソフトバンクホークスホークスタウン
(参考)
カドカワ
角川映画メディアファクトリー角川ゲームスフロム・ソフトウェアMAGES.スパイク・チュンソフト KADOKAWA ニコニコ動画 各種イベント運営事業(ニコニコ超会議Animelo Summer Live

日本では、フジ・メディア・ホールディングスがメディア・コングロマリットを目指している[5]。これはフジサンケイグループの一部で構成され、連結売上高は約6300億円(2012年度、衣料雑貨等の通信販売や不動産事業の売上高約1700億円を含む)である。

その他の日本のマスメディアもクロスオーナーシップによって、グループ化している(傘下に映像制作企業を持つ読売新聞グループなど)。またコンテンツの製作と発信が垂直統合されており、強力な支配体制である。過剰な垂直統合がコンテンツ産業の成長を妨げているとも言われる。この他、KADOKAWAドワンゴが経営統合して発足したカドカワも放送メディアを所有していないものの、サブカルチャー・エンターテイメント分野に特化したメディア・コングロマリットと見なされる事もある[6][7]

利点[編集]

メディア・コングロマリットは高い生産力・影響力・技術力・競争力を持つ。北米のコンテンツ産業の強さの源である。企画・人財・資金のグローバル調達で、超大作(メガコンテンツ)を作り、クロスメディアの手法で傘下のメディアを通じて世界中に販売するワンコンテンツ・マルチユースを企画・運営する事が出来る。ワンコンテンツ・マルチユースは売上げを2~3倍に伸ばすことが出来、利益率が高い。例えばDVDの利益率は6割である。

代表的な成功例としては、1997年の映画『タイタニック』が挙げられる。20世紀フォックス(ニューズ・コーポレーション)とパラマウント映画(バイアコム)が共同で2億ドルという巨費を投じて製作。傘下のメディアで宣伝攻勢をかけ、映画の興行収入は20億ドルに達した。更にDVDやサウンドトラック、書籍、食品・化粧品などの関連グッズを販売し、合計で43億ドルを売り上げた。

欠点[編集]

メディア・コングロマリットはメディアの寡占化と集中により、言論の自由・多様性を損なう。一例として、ニューズ・コーポレーションが、対テロ戦争を煽った事が知られている[8]

公共性より利益追求が重視され、激しいリストラが行われる。その結果、出版や報道の質が低下する。 合併がマネーゲームと化し、逆シナジー効果がある。傘下に収められた出版社はリストラされ、無理な商法に走った挙句、利益率が低いとして会社分割で放り出されることもある[要出典]

歴史[編集]

1980年代、衛星放送CATVが実用化され、ニューメディアとして注目された。アメリカのレーガン政権やイギリスのサッチャー政権規制緩和と市場開放を行って、メディアを再編した。

イギリスでは1984年ブリティッシュ・テレコムが民営化された。またロバート・マクスウェルルパート・マードックといった、新しい新聞王が登場し死闘を繰り広げた[8]。勝ち残ったルパート・マードックはアメリカにも進出し、多国籍なメディア帝国を作り上げた。

アメリカでもFCCが規制緩和を行い、産業の活性化を図った。アメリカでは第二次世界大戦後、メディアは寡占化し、三大ネットAT&TIBMなどが市場を支配していた。FCCは1984年、CATV局の設置を自由化し、三大ネットの支配力を低下させた。またAT&Tを分割し、通信業界を競争させた。衛星放送やCATV、光回線の整備により、多チャンネル化が進んだ。更にFCCは1987年放送の公平原則(フェアネス・ドクトリン)を撤廃した。偏った政治意見の表明なども可能になり放送内容がチャンネルごとに多様化した。1993年には、クリントン政権情報スーパーハイウェイ構想を発表した。インターネット時代に対応した情報インフラの整備が進んだ。

以上のような環境を活用し、激しい競争が行われた。勝ち残った企業は、多くの企業を傘下に収めた。メガ・メディア[9]、ギガ・メディア、メディア・コングロマリットと呼ばれ、寡占化が進んだ。メディア・コングロマリットはグローバリゼーションを進め、インターネットにも果敢に進出した。

1980年代、日本でも通信の自由化や衛星放送、CATVの導入が行われた。しかしメディアの再編は行われなかった。

多チャンネル化は政治力によって阻止され、限定的にしか行われなかった。CATV局の開設や架線は制限された。衛星放送による電波帯域の拡大は既存のメディアがアナログハイビジョンによって吸収し、新規参入を防いだ。ルパート・マードックはJスカイBを通じて、日本進出を果たそうとしたが阻止された。

通信の自由化も不十分だった。1985年中曽根政権において日本電信電話公社の民営化が行われた。しかし、NTTが圧倒的に強い状況が続いた。その結果、インターネット時代に入ってもISDNが推奨され、ブロードバンドインターネット接続はなかなか普及しなかった。2000年代前半、インターネット業界から通信と放送の融合を求められたが、政治力によって阻止した。

護送船団方式は万全と思われたが、低い生産性と国際競争力の欠如が深刻化した。日本のコンテンツ産業の市場規模は2005年で世界第2位(14兆円)[10]だが、GDP比でアメリカの半分以下(2.2%)。世界市場が成長(5.8%)しているのに、日本だけ頭打ち(0.7%)。欧米の(というより主にアメリカの)メディア・コングロマリットに対して規模・質ともに太刀打ちできず、輸出比率はアメリカの10分の1(1.9%)。コンテンツ輸入国にすぎなかった。アニメーター番組制作会社の犠牲によって成り立つ、旧態依然とした産業構造では、21世紀に通用するコンテンツ産業の育成は不可能だった。

2006年小泉政権において通信・放送の在り方に関する懇談会が開かれた。メディア・コングロマリットの形成やマスメディア集中排除原則の緩和が検討された。2007年には、放送持株会社が認められた。2008年にフジ・メディア・ホールディングスが、2009年には東京放送ホールディングスが成立した。これに先立つ2002年には前哨として読売新聞グループ本社が発足している。

しかし地上デジタルテレビ放送への移行負担に配慮して、本格的な規制緩和によるメディア再編は先送りされた。現在、情報通信法案やNTTの再編などを通じて通信と放送のハードとソフトの分離が進んでいる。電気通信事業者など異業種から放送業界への新規参入も推進されている。

規制[編集]

同一地域でのクロスオーナーシップやコンテンツの製作と発信の垂直統合を禁止・制限して、メディアコングロマリットの弊害を抑えようという動きがある[要出典]

脚注[編集]

  1. ^ メディアの革命(6) メディアの寡占・集中化は「民主主義」の危機か?
  2. ^ 「サンケイアトムズ」だった期間があり、主催試合はニッポン放送が中継する
  3. ^ かつては東京放送(現・東京放送ホールディングス)と毎日放送の筆頭株主だったが、毎日新聞社(現・毎日新聞グループホールディングス)は経営体質改善のため、両社の株式の大部分を売却し、両社の大株主上位10位に名を列ねていない(2013年3月31日現在)。そのため両社とRKB毎日放送は毎日新聞グループホールディングスと立場は対等である「友好会社」であり、グループ会社ではない。
  4. ^ 2016年6月30日にサービス終了予定。[1]
  5. ^ 会社情報―コーポレート・ガバナンス フジ・メディア・ホールディングス
  6. ^ 角川&ワーナーの日米メディアコングロマリット提携で加速するコンテンツ市場のワールドワイド化――安田善巳 角川ゲームス社長に聞く,ダイヤモンド社,2011年8月8日
  7. ^ KADOKAWA、ドワンゴ経営統合へ。最強のサブカル・メディア・コングロマリットが誕生,Yahoo!ニュース,2014年5月14日
  8. ^ a b 山本浩『仁義なき英国タブロイド伝説』
  9. ^ 鈴木雄雅 (1999年). “ルパート・マードックのメディア戦略”. 2010年1月23日閲覧。
  10. ^ コンテンツグローバル戦略研究会 (2008年). “コンテンツグローバル戦略報告書 最終とりまとめ”. 経済産業省 商務情報政策局. 2010年1月22日閲覧。

参考文献[編集]