コード・カッティング

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コード・カッティングCord Cutting)とは、ケーブルテレビの契約を止めてインターネット経由の動画視聴を選択するという消費者の動向を示す言葉である[1][2]。2010年以降、主に北米でのTV業界や広告、家電、IT業界などを中心としたマーケティング分野などで用いられるようになった。"Cord Cutting"の"Cord"とはケーブルTVの信号線であるケーブルを指す。

背景[編集]

北米地域でのケーブルテレビ(CATV) は、安価な基本料で見られる少数のチャンネルを除けば有料チャンネルが主体であり、また、各番組の放送時間も固定されているため、録画機能付きチューナーを購入して正しく設定しなければ不在時の番組が見られないのに対して、Youtubeに代表されるようなインターネット上での動画[3]の多くが無料で提供され、視聴もいつでも行えるなど視聴者にとって利点が多かった。

郵送レンタルDVD事業から出発したNetflixは、2010年11月にDVDを貸し出さない「ネット視聴専用プラン」を発表、ビデオ・オン・デマンド方式によるストリーミング配信サービスに移行した。ケーブルテレビではなくインターネット経由のHuluやNetflixで有料コンテンツを視聴することが人気となるにつれ、高速インターネット回線を導入済みの家庭ではケーブルテレビの解約が進むのではないかという考えが広まりつつある[4]

その一方で、ライターの松村太郎週刊アスキーに連載していたコラムの2018年1月18日の記事の中で、「スポーツ番組など、動画配信サービスでは対応されていない番組を見るにはケーブルテレビの契約を復活させる必要がある」と、ストリーミングサービスの死角を指摘している[1]

新型コロナウイルスのパンデミックは、コードカッティングの動きを推し進めたとされている。eMarketerの調査によると、2020年に米国の600万世帯が従来の有料テレビ放送を解約し、過去最大の減少となった[5]

日本での類例[編集]

2021年にドン・キホーテNHK受信料問題を回避できるチューナーレステレビを発売し、ヒット商品となった[6]

脚注[編集]

注釈[編集]

出典[編集]

  1. ^ a b 松村太郎 (2018年1月18日). “アメリカで進むCATVの“コードカット”とストリーミング、そしてラーメンの話”. 週刊アスキー. 2021年5月29日閲覧。
  2. ^ Amazon、映画製作MGM買収で合意間近と報道 約1兆円(写真=ロイター)”. 日本経済新聞 (2021年5月25日). 2021年5月29日閲覧。
  3. ^ ケーブルテレビ用のチューナーはリモコン信号の受信部を良好な位置にするためにTVセットの上に置かれることから「セットトップボックス」(Set top box; STB) と呼ばれ、インターネット上での動画はこの「トップ」を飛び越えて映像が再生されることから、米国などでは「"over-the-top" video」という表現が用いられている。
  4. ^ 消えるケーブルテレビ? 米国で進む「コード・カッティング」の実態”. 日本経済新聞社 (2011年2月17日). 2011年2月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年5月29日閲覧。
  5. ^ Perez, Sarah. “2020年米国の有料テレビ契約が過去最大の減少、新型コロナで消費者離れが加速” (英語). TechCrunch Japan. 2021年9月24日閲覧。
  6. ^ 「DIMEトレンド大賞」家電部門賞に輝いたドン・キホーテの担当者に聞く〝テレビを見れないテレビ〟を作った理由|@DIME アットダイム

参考[編集]

関連項目[編集]