中古車

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中古車(ちゅうこしゃ、 used car, a pre-owned vehicle)とは、中古自動車自転車のこと[1]

冒頭の定義で辞書に示されているように「自動車や自転車」とし、たしかに厳密に言えば中古の自転車も含むのだが、一般的には中古の自動車のほうを指すことが多いので、この記事では自動車を中心に解説する。本稿では日本の中古車について述べる。

「中古車」と言うと基本的に、消費者(末端ユーザー)によって購入もしくはレンタルされ使用された自動車が、再び売りに出されたもの、あるいはすでに再購入されたものを指す。

ただし、ナンバー登録だけなされ、全く使用していない車輌(俗に言う「新古車」。販売店がメーカーからのノルマである販売数量達成のために、「試乗車」などの名目で登録されたものが多い)も、新車/中古車という区分上では「中古車」に分類されているので、その意味では「中古車」という物は、結果として広義には、一度はナンバー登録をされた自動車全般を指していることになる。

車齢の若い車は「何年式」という場合の数字が大きいことから「高年式」といい、製造から年数が長く経っている古い車は「低年式」と呼ぶ[2]

日本の中古車市場[編集]

新車を購入した所有者が次の車に買い換える際に、それまで乗っていた車をディーラー(新車販売店)に下取りに出すか、中古車業者に売り渡す。業者が買い取った中古車は整備して自ら売るか、あるいは中古車業界のオークション市場に出される。

販売や買取業者には古物業法に基づく古物商の許可が必要になる。

市場の変遷[編集]

1960年代には中古車流通の仕組みが整っておらず、ディーラーが自社で販売しきれない下取り車は直接、あるいはブローカーを介するなどして独立系中古車販売業者に流していた。独立系業者は零細企業が多く、市場の主導権はディーラーが握っていたが、ディーラーは中古車部門にあまり力を注いでいなかった。

1970年代にはオークション形式での業者間取引が各地で行われるようになり、1980年代にはユー・エス・エスをはじめとするオークション業者による大規模な現車オークションや、オークネットによる通信衛星を介したネットオークションなどが行われるようになる。これにより大口での売却が常に可能となったため、1990年代にはガリバーインターナショナルに代表される新業態「中古車買取専門店」が各地に登場する。さらに、安定した仕入れも可能になったため、特定の車種だけを集めるなどの特徴を持った独立系販売業者も増えることとなった。

新車から中古車へ需要がシフトしたのが追い風となり、1990年代後半まで市場全体が大きく拡大。買取専門店チェーンなどが成長した一方、市場におけるディーラーの地位は相対的に低下した。

1990年代後半以降は市場全体が頭打ちとなり、単価の安い低年式車への需要シフトも起こった。

また2000年にはトヨタ自動車が買取専門店チェーンT-UPを立ち上げ日本最大級のネットワークを構築するなど、メーカー、ディーラーも中古車に力を注いでいる。

中古車の輸出[編集]

輸出された日本の中古車
トヨタ・カリーナED)※本来は国内専用車
輸出先の規制に対応するためにノーズカットにされたヒュンダイ・エラントラ(XD前期)。後ろには同様にハーフカットにされたトヨタ・カローラツーリングワゴン(AE100G型)・日産・キャラバン(E24型)の姿も。

1980年代頃から、日本で使われた中古車(乗用車、トラック、バス問わず)の輸出が多くなってきた。商用車の場合、日本語の企業・学校名が入っていたままの輸出するケースも少なくない。当初は左側通行の地域へ輸出するクルマが多かったが、1990年代から右側通行のロシア連邦モンゴルなどへも右ハンドルのまま輸出するケースが出てきた。また、盗難車の密輸出も増えてきたことから、税関のチェックも厳しくなった。
2005年頃からは急激な円安により、新車も商社を通さないで輸出する、いわゆる「並行輸出」するクルマも増えている。
尚、輸出先によっては中古車のコンプリート状態での輸出が認められず、あえてモノコックを切断し「中古部品セット」として輸出する(Aピラーあたりで切断するハーフカット、フロントオーバーハングを切り取るノーズカットの2タイプがある)場合もある。

  • ロシア

沿岸都市ハバロフスクウラジオストクなどに輸出されてきたが、政府がここにきて関税の引き上げに踏み切ったことから日本からの中古輸出が減少した。

査定[編集]

ユーザーが車を中古車業者に売却する場合、まず査定士の資格を有する業者が車を査定し、査定額を算出する。

査定のポイント

車種(中古市場での人気度)
現在の自家用乗用車の一般的な傾向であるが、伝統的(古典的)で実用性や日常での使い勝手にやや乏しいセダンクーペ3ドアハッチバックタイプのほか、後述する一部のSUVや大型ピックアップを除く国内メーカーによる海外生産車種[3]は査定が安く、逆に実用性や日常での使い勝手にやや有利なミニバンやオフロード系4WDステーションワゴン(大きな分類として"SUV"スポーツユーティリティビークルと呼ばれる)、5ドアハッチバックなどのタイプは査定が高い傾向にある。しかしミニバンステーションワゴン4WD等のSUVも市場では飽和状態になりかけており、買い取り・販売価格ともに安定期から低迷期になりかけてもいる。一方、軽自動車税金や保険料などの維持費の安さから、地方を中心に一定の中古市場があり値崩れしにくい事から、すぐ上の1000ccクラスよりも高査定が付くことが多い。
車両の仕様(グレード・装備品、色)
車種によって多数のグレードがあり、グレード毎の差に主要装備はもちろん、排気量に差がある場合もあるので査定額に大きく影響する。旧車の一例としてレビン/トレノAE80系)、およびMR2(AW10系)のケースがあり、程度によっては1600cc車ではプレミア価格が付くケースさえあるが、逆に1500cc車は不人気で買い叩かれる傾向がある。スペシャルティカーの例だとS13/14型シルビアの場合、量販グレードであるQ'sやK'sは通常の査定額となるが、廉価グレードであるJ'sは不人気で売りに出しても買い手がほとんどいないため、たとえ高年式の程度良好車であってもほとんど値段がつかない傾向にある。また、実用型ファミリーセダンの例だとT240/260型プレミオ、およびアリオンの場合、逆に最上級グレードである2.0G(プレミオ)、およびA20(アリオン)の方が下級グレードである1.5F(プレミオ)、およびA15(アリオン)よりも更に査定の面で不利になる事も決して少なくない。ラグジュアリーセダンの一例として、JZX81/90/100型マークIIチェイサークレスタの最上級グレードは3リッター車であるが、売れ筋や需要は2.5リッター車及び2リッター車であるため、不人気グレードではないものの需要などの点で不利になることもある。
ボディカラーによっても査定が変動する場合がある。同一車種同一年式同一グレードによっても人気のあるボディカラーは査定がプラスになることもあるが、逆に不人気のボディカラーだと査定が下がる場合がある。
後付品・カスタムカーに対する評価
社外装備品も評価はされるが、綺麗に付けられているか、その車種に見合ったものかどうかも判断されるため、査定額が上がるとは限らない。むしろ純正部品に戻さなければならないと判断された場合査定額が下がるケースもある(インチアップされたアルミホイールなど)。
メーカーオプションは、どれだけ高額なオプションが多数装備されていても(それが需要に影響するなどしないと)査定が上がることはほとんどない。また、人気の装備がないと査定が下がる場合もある(スポーツカー系の車種の場合、スポイラーやエアロパーツの類)。
カスタムカーを売却する際は売却先によって査定額が大きく異なるため、よく検討するべきである。VIP仕様走り屋仕様に改造されている場合、ディーラーに下取りに出した場合は査定額が大幅に減額となるが、そのような改造車を専門に扱っている店に売りに出した場合は、改造点数が多ければ多いほど高く評価されて査定が上がる傾向にある。また、低年式の人気車種も同様である。(AE86レビン/トレノ、BNR32型スカイラインGT-Rなど)
年式
年式が新しいほうが高査定額になるのは言うまでもないが、同車種同型式でもマイナーチェンジ前後やモデルチェンジ初期型末期型などで査定額に大きな差が出る。また、近年は年式が新しいほどマフラーの音量等に対する規制が厳しい傾向にあるため、同一車種の同一型式の場合、車種によっては規制が厳しくない初期モデルに人気が出ることもある。
走行距離が少なく、かつ年式相応か
軽自動車の年間標準走行距離は8,000km、普通車は10,000kmというように一定の目安があり、それを超えると減額されそれ以下の場合増額される。ただし、自動車も機械であるのである程度動かしていないと動作不調に陥りがちであり、年数から見て極端に少ない走行距離物件を探すのは困難である。これらの点で、双方に有益なのが中古車情報誌、および中古車情報検索用のウェブサイトである。

また、インターネットオークションに中古車販売業者が店頭展示中の中古車を並行して出品していることも多い。

代表的な情報誌としては、以下のものがあげられる。

これら情報誌のデータベースと連動したウェブサイトもそれぞれ用意されている。

車選び.com(株式会社ファブリカコミュニケーションズ)やcarview株式会社カービュー)のように情報誌を持たない中古車情報のインターネット専門サイトもある。

また中古車情報サイトには、中古車販売業者が開設しているものも多く存在する。

中古車販売にかかわる諸問題[編集]

事実と異なる表示[編集]

一部の悪質業者が、多走行や修復歴などのマイナスポイントを隠しプライスボードなどに事実とは異なる表示を行うなどしているケースがある。
修復歴車、重要瑕疵事項のある車両(ニコイチ車、盗難車、水没車、ヒョウ害車等)
中古車では、交通事故で破損した自動車(事故車)を修理して販売する場合があるが、この事故を隠して販売した場合、その取引が問題視される。事故車の場合は事故によって目立った破損の他に、気付かれ難い欠陥がある場合があり、消費者がそれを知らずに使用していて、機械的な問題から事故を起こす危険が伴う事もあるためである。またニコイチ車、盗難車や水没車も経歴を隠してオークション市場に流れることもある。
走行メーター改ざん
中古車の販売については、事故歴を隠して販売する以外にも、走行距離計(オドメーター)の数字を巻き戻し、走行距離を短く見せかけて販売 (いわゆるメーター戻し) することも多く、故障が発生して修理する際に、表示上の走行距離以上に部品が消耗していることが発覚するなど、トラブルが絶えない(なお、年式の割に走行距離が極端に短い(年間で2000-3000キロ程度)車も要注意。巻き戻しがされていなくても、頻繁に乗らないからという理由で保守が十分にされていない場合もある(潤滑油など油脂類が、運転させなくても時間の経過とともに劣化するため))。その他、過去の整備履歴を記した整備手帳が処分されて整備状況がわからないなど多くの問題を抱える。現在では日本オートオークション協議会が中心となり、走行メーター管理システムによる自動車オークション経由での走行距離の不正を防止する動きがある。しかし2010年頃から、この不正防止策を逆手に取る形での新たな手口でのメーター巻き戻し(特殊な機械を用いて改竄し、車検通過後に車検証を一旦返納して再登録するなど)が見られるようになっており、捜査に当たる警察などが国土交通省に対策を求める事態になっている[4]

レモン市場の問題[編集]

中古車市場はレモン市場だ、という問題は、1970年にアメリカの理論経済学者ジョージ・アカロフによって指摘されはじめ、その後も幾人もの経済学者によって研究されている問題である。中古車市場では、売り手は取引する商品の品質を(比較的)よく知っているが、買い手はそれを購入するまでその品質をよく知ることはできないため、結果として、購入した中古車は英語の俗称で「lemon レモン (すっぱいもの)」と表現されるもの つまり故障しやすい粗悪車、が多くなってしまうという市場メカニズムが働く、という問題。

環境規制に関わる諸問題[編集]

日本では自動車においては、環境負荷の低減方策については、修理などによる長期的な使用よりも新車への置き換えが政策的に進められている(新車登録からガソリンエンジンで13年、ディーゼルエンジンで11年経過後の自動車税の割増措置など)。

この一環であるNOx規制によって、関東地方関西地方などでは、古い自動車の変更登録ができなくなりつつある。ところが、同様の規制が他の地方では行われていない、あるいは規制対象外の地方にだけ大型車両の中古車販売市場がある、という問題がある。

日本の地方(大都市以外)のバス会社では経営が苦しいために新車の購入がままならず、20年以上も使い続けているバス会社も多いために、大都市で10年程度使用した規制不適合の中古バスを譲り受けて入れ替える場合が多い。規制対象となるのはトラック/バンバスディーゼルエンジン搭載乗用車であり、また、2005年に石原慎太郎東京都知事が「規制対象のディーゼル車を地方で再利用しているのは、公害問題も地方に移転しているようなものだ」と問題点を指摘し、都営バスのように地方バス会社への中古車売却を認めなくなったケースも出た。このため、中古バス市場で車両価格が急騰し、それまで老朽化した旧型車両を 整備状態の良い都営バスの中古車を購入し置き換え続けることで苦しい経営を続けてきた地方の一般路線バス事業者は中古車両の購入が困難になったが(その後、都営バスでは2008年度よりKC-代車に対して条件付きで譲渡を再開した)、石原都知事の辞任後、都議会の平成25年予算特別委員会で、今後廃車する車両がすべて排出ガス規制に適合することから、中古車両として売却し有効活用を図るとしている[5]

脚注[編集]

  1. ^ 出典:デジタル大辞泉
  2. ^ 注 - 年式が相当古い中古車は、一部の人達から「大古車」(たいこしゃ、だいこしゃ)と称される事もある。
  3. ^ 2000年代以降の国内メーカーによる海外生産車種の例・トヨタ・プロナードトヨタ・ヴォルツ日産・マーチ(4代目)、日産・ラティオ(2代目)、ホンダ・フィットアリア三菱・トライトン三菱・ミラージュ(6代目)、スズキ・スプラッシュなど
  4. ^ 不正防止策を逆手 中古車のメーター巻き戻しに新手口 朝日新聞 2014年12月9日
  5. ^ 平成二十五年 予算特別委員会速記録第四号速報版〔原田大〕

関連項目[編集]

外部リンク[編集]