エンジンスワップ

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サーブ・96のエンジンルームだが、フォード製V型6気筒エンジンに換装されている。

エンジンスワップ(Engine Swap)とは、現に自動車に搭載されているエンジンを取り外し、別のエンジンに載せ換えることを言う。エンジン移植エンジン換装とも言う。

日本国外における事例[編集]

特に新興国や途上国にあたる地域でのエンジンスワップには以下のような背景があり、その最たる例としてランエボのドライブトレーンを東南汽車・リオンセル(ランサーの中国現地生産車)に移植した、いわば「リオンセル・エボリューション」の例(後述)がある。

  • 自動車の国産化に力を入れる関係で、完成車輸入に高額の関税が掛けられている。
    • 例:プロトン・インスピラと三菱・ランサー・・・基本的には同じクルマだが、ランサーは完成車輸入の為に現地生産車のインスピラより高額である。
  • 国によっては海外ブランドであっても自国の工場で生産していれば国産車と見なされ関税が免除される。
  • 対象となる車種に現地生産車が存在する。(例:ランサー/ミラージュに対するリオンセル、サトリア、インスピラ。ミラに対するカンチルクリサビバ。)
    • これらの原型となった車種にホットモデルが存在する場合、中古エンジン等を輸入し載せ替えることもある。

日本国内における事例[編集]

日本国内に於いて、エンジンの取り外しを伴う整備・改造は分解整備に該当し、認証整備工場(及びそれを包括する指定整備工場)での整備が必要となる。 自動車の基本性能を高めるために行われるチューニングの一つであり、大半はそれを狙って搭載されていたエンジンより上級の性能を持つものに換装するが、稀に例外もある。

  • エンジンの故障の為
    • 自動車の故障のうち、エンジンブローは外装系の破損を除いて最も大きな故障内容である。エンジン内部の整備、載せ替えは相当な手間、時間を要する為、作業工賃も高額(部品代を含んで数十万円単位)となる傾向があり、オーナーの愛着や市場価値が認められる車両の場合等を除き、エンジンブロー=買い替えという図式が成り立つ。
      エンジンは自動車を構成する要素の中では主たるものであるが、数万点に及ぶ自動車を構成する部品の中では同時に部品の集合体に過ぎない。加工技術、素材、組み付け精度の向上などによって製造方法に起因する故障は少なくなっているが、使用過程に於いてエンジンオイル交換を怠ったり、運転操作に問題があったりした場合などに致命的な故障が発生する場合も多々あり、自動車整備業界に於いてエンジンの故障はさして珍しい事ではない。
      元々エンジンユニット自体複数の車種にまたがって使用されてきたが、近年ではプラットフォームの共用化やOEMなどで同一のエンジンを搭載する車種は増えている。また日本では中古車価格の下落が激しく、一定の年数が経てば大概はわずかなダメージでも解体屋送りにされてしまう。そのため主要な車種であれば中古エンジンの供給は問題なく、安く行われると考えられる。そのような状況であれば、動作確認の取れた中古エンジンに載せ替えてしまうのは確実で(故障したエンジンに手を入れるより)場合により安く、そして手っ取り早いやり方といえる。
  • 環境法律の変化に対応させるため。
  • チューニングするための「ベース車を作る」というケース
    • いわゆる「ハコ替え」と呼ばれる、老朽化または損傷したモノコックの交換を目的とするケース。モノコックを交換することは書類上不可能なので、新たに購入した状態の良い車両にこれまで使用してきたエンジンを換装することになる。一種のニコイチ。なお、フレーム式の車両では同形式どうしの車体の載せ換えは自由で(SUVのフレームに乗用車の車体を載せるような、年式や形状が著しく異なる場合は改造申請が必要。)、車台番号が打刻されたフレーム自体の交換も「フレーム交換許可申請」と「職権打刻」で可能である。
    • 市場で高価な希少グレードや人気車種を購入せず、他のグレードをそれらへの改造ベース車(種車)として入手するケース。「エンジン形式」、「ターボの有無」、「ATかMTか」などの仕様によって極度に流通価格・流通量が異なる(例:AE80系レビン・トレノマークIIBros.)ため、エンジンスワップを行うことで「希望のグレードを安価に作る」、あるいは高額になっても良好な程度となることから十分コストに見合うケースもままある。これらの場合、エンジンの移植先はモノコックの程度がいい同型車であればいい。そのため「安くて程度が良いモノコックが豊富にある」[3]と言う背景から積極的に廉価グレードを購入する場合[4]も見られる。
  • その他
    • 原動機を載せ替えるという手法から言えばコンバートEV(改造電気自動車)も広義のエンジンスワップと解釈でき、法的にも「燃料の変更を伴うエンジンスワップ」の扱いである。

トヨタ車[編集]

  • AE86型カローラレビンスプリンタートレノへ、DOHC5バルブ機構をもった4A-GEをスワップ。
    • 4バルブ4A-Gエンジンは、年式から劣化が見られるため、同一型式である4A-GEに乗せ換えることで数十馬力のパワーアップも得る(実測で110馬力程度→カタログ値160馬力)。
    • 同一型式のエンジンであるので、構造変更手続きは不要である。
    • また、AW11型MR2やA63型カリーナへのスワップもマニアの間では行われている。
    • スーパーチャージャーの付いたAE92、AE101 GT-Z用4A-GZEや一部、コアなファンの中には4A-FEエンジン車や5A-FE車(要構造変更)にスワップする者もいる。
    • ただ、元々横置き用のエンジンを縦置き用にスワップするため、単純に載せ替えるだけではなく、かなりの量の加工が必要となる。
  • XE10型トヨタ・アルテッツァ2JZ-GTEをスワップ。
    • ワゴンモデルのジータやセダン輸出仕様車には3,000ccモデルがあり(国内仕様セダンでは2,000cc 自然吸気(NA)モデル(3S-GE1G-FE)のみのラインナップ)、モアパワーを求めてスープラ等に使用されていた2JZ-GTEエンジンをスワップする。日本仕様車にも2JZ-GE搭載車はあった(ジータやプラットフォームを共用するプログレ)ため、エンジンマウントなどが比較的容易に入手、装着できる。
    • トヨタの縦置き6気筒エンジン車は、(基本的には)同系統エンジンでなくとも積み替えることができる。
    • 1G→1JZなどがその例で、ユーザーニーズへの対応の為に同一モデルでも排気量ラインナップ(たとえばA70スープラは2Lの1G、3Lの7M、2.5Lの1JZとバリエーションが存在する)を多数揃えていたことからできる芸当である。

日産車[編集]

  • シルビアのNAモデル(Q's・specS)に、ターボエンジンをスワップ。
    • S13型からよく行われている改造である。ホットモデルであるK'sはやはり玉数が少なく、事故車も多い。そこで、車両台数が多く状態もいいQ'sをターボエンジンに載せ換え、「K's仕様」を作成する。
    • 車両台数そのものは多いので、チューニングショップでもノウハウが溜まっていることもあり、比較的安価にターボ化できることもあって一時期はターボ仕様のQ'sも比較的多かった。
    • また、S13の前期型はCA18DE/DETエンジンで排気量も少なく、パワーも見劣りした為、中期以降のSR20DETやS14,S15型のエンジンに乗せ換える例も見られる(兄弟車の180SXに多い)。時にはスカイラインGT-Rに積まれているRB26DETTを積む事もある。
  • ノーマルモデルのスカイラインセフィーロローレルクルーに、トップモデルのGT-RのエンジンであるRB26DETTをスワップしたりトヨタの1JZ-GTEや2JZ-GTEを搭載する場合がある。
    • RB20DETやRB25DEなど、ノーマルモデルのスカイライン(多くはFR車)にハイパワーエンジンを積むことで、走行性能の向上を図る。また、このRB25もRB20エンジン搭載車に換装されるときがある。
    • トランスミッションは4WD(GT-R)→FRとなるため、ケースはFR用のまま、中身のみGT-R用を流用したりと、手間がかかる。しかしRB26DETTでトランスファーが入っているオイルパンについては、RB20/25用がそのまま流用出来る為加工はいらない。
  • スカイライン系の直列6気筒搭載FR車にSR20DETエンジンをスワップ。
    • アルミブロックの直列4気筒エンジンであるSRエンジンは鋳鉄製直列6気筒のRBエンジンよりも大幅に軽量であり、フロントセクションの軽量化と搭載位置の後退により回頭性が上がりドリフトに適する車両になる。R32スカイラインの廉価グレードには同時期のシルビアに搭載されていたCA18エンジンが搭載されていたモデルがあり[5]、4気筒エンジンの搭載は困難なことではない。
  • L20エンジン搭載車のスカイライン、フェアレディZ、ブルーバード、ローレル、セドリック・グロリアにL28エンジンをスワップ。
    • 人気の高い車種が多かったこともあり日本中に広く広まった。また、同系統エンジンである為のスワップの容易さ、長期に渡り製造されていたことによる個体数の多さ、パーツ流用や専用部品を追加して大幅なパワーアップが出来ること(自然吸気のままでも3倍以上になる)などの理由により、70年代から80年代前半までの間、日本で最も盛んに行われたエンジンスワップの例である。エンジンスワップに併せ、純正の小型なキャブレターや初期のインジェクションからソレックスウェーバー等の大径キャブレターに交換する場合が多い。現在でも熱狂的な愛好家が多く存在する。米国ではフェアレディZにV8エンジンを搭載するケースも多かった。

その他の車種[編集]

モータースポーツ[編集]

全日本プロドリフト選手権全日本GT選手権SUPER GTのGT300クラスのように、競技カテゴリーによっては競技車両にベース車と異なるエンジンの搭載が認められることがあり、次のような事例が見られる。

  • ベース車より大排気量のエンジンに換装
    エンジンが大型化されるため直接的なパワーアップを期待できる。反面車両重量と燃料消費量は上がる。
  • ベース車より小排気量のエンジン、または同等の排気量だがシリンダー数の少ないエンジンに換装
    マシンの軽量化を目的に採用されることがある。過給機を装着してパワーダウンを補うことが多い。
    • 全日本GT選手権の三菱・FTOに4G63ターボを搭載。(ベース車は同じ2000ccクラスの6A12
    • SUPER GTのトヨタ・スープラ3S-GTEを搭載(ベース車は2JZ-GTE)
    • ダカール・ラリーの三菱・パジェロ(2代目)に4G63ターボを搭載。(市販車改造クラス、ベース車は6G72)
  • ベース車と同等だが異なる仕様のエンジンに換装
    • 三菱・パジェロのラリー仕様では6G74エンジンのGDI仕様からMIVEC仕様に換装。

特に使われるエンジン[編集]

  • トヨタ・2JZ-GTE 日産・RB26DETT
    どちらも国内最高峰の出力と耐久性を持つため、モアパワーを狙うチューニングに使われる。同系列の1JZ-GTE、RB25DETなども使用されることがある。
  • 日産・SR20DET
    アルミブロックの4気筒エンジンであるためチューニングベースとなりやすいエンジンの中では軽量である。フロントの軽量化を目的に、6気筒エンジン搭載車から換装するドリ車が特に多い。フロントの軽量化は、回頭性を向上させる効果がある。スーパーGTでも行われる手法である(この場合はトヨタの3S-GTE)。

構造変更検査[編集]

エンジンスワップには、「同一型式のものを載せ換える(SR20DEからSR20DETなど)」場合「型式・排気量の異なるものに載せ換える(VQ20DEからVQ25DDなど)」場合がある。

前者の「同一型式のものを載せ換える」場合、「ターボチャージャースーパーチャージャーの有無」「動弁機構の違い」は「補記類の違い」によるものとされているので、(現状では)構造変更検査を受ける必要はない。

しかし、後者の「型式・排気量の異なるものに載せ換える」場合は車検証記載の原動機型式や排気量が異なる(VQ20からVQ25へ変更になる)ため、構造変更検査を受ける必要がある。

原動機変更の為に構造変更検査を受ける際に問われるのは、主に次に挙げるものである。

  • クラッチトランスミッションプロペラシャフトファイナルドライブ等の駆動系が耐えられるか
  • エンジンマウント・エンジンメンバーなどが耐えられるか。
  • スワップする車両が対応している排出ガス規制値を満たすエンジンであるか。
    • 例:当該車両より新しい年式のエンジンは搭載可能であるが、その逆は排出ガス規制に通らないものが多い。
  • エンジンなどの寸法の都合でボディを切断・加工した場合、そのボディの強度は十分か。

自動車以外でのエンジンスワップ[編集]

自動車以外での輸送機器でも使用過程にある機材の原動機を異なる機種に換装するケースがある。

脚注[編集]

  1. ^ レストレーションの一環として、上級あるいは新型エンジンを用いず、程度の良い同型式エンジンへ換装し、オリジナルの状態を保つ。型式が同じ故、法的には修理・整備と見なされる。
  2. ^ 部品に欠品が発生したことにより、必要に迫られて行うエンジンスワップもある
  3. ^ 「需要と供給の関係で同じ車種でもグレードや年式、仕様によって著しく中古車価格や流通量が異なるケースが存在する」「グレードによってユーザー層が異なり、荒い運転をされがちなスポーティグレードに比して、おとなしく乗られることの多い低廉グレードの車両はモノコックの程度が良いと見なされる」など
  4. ^ シルビアのQ's改K's、レビン/トレノのAE85改86、マークII系、ローレル、セフィーロ等のAT/NA改MT/ターボなど
  5. ^ 但しシルビア系がツインカムのCA18DE(T)なのに対し本車はSOHCのCA18iである。車検証上ではどちらも同じCA18であり、法的には同じエンジンと見なされる。
  6. ^ ただし、種車の液体式変速機を流用したため、出力は本来の330PS(または350PS)から250PSに落として使用していた。

関連項目[編集]