VIPカー

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トヨタ・セルシオにおける例

VIPカー(ビップカー、ヴィップカー、VIP Car)とは、主にかつて高級車として販売されたが旧型になって安価になった中古車に独特な装飾を施した改造車の総称、あるいはその改造形態のことである。「要人 (VIP-Very Important Person)が乗る自動車」を目指した改造を標榜してこの名で呼ばれるものであり、実際に要人が乗るための自動車ではなく、要人とは一切関係がない(後述)。

起源[編集]

その起源についてはいくつかの説があり、確たる説は不明だが、暴走族の車両改造スタイルとして発祥した改造車であるとする見解は多くに共通している。

関西圏では、阪神高速環状線における警察環状ローリング族撲滅作戦により走れなくなった暴走族チームの一部が、車をシビックなどから旧型の高額自動車の安価な中古車に乗り換えて改造をしたのが始まりとされる。

関東圏では暴走族車両として、ハイソカーと呼ばれた4ドアハードトップ車を改造するジャンル、いわゆるチバラギ仕様が根付いており、その延長線上であるという認識もある。この傾向は仙台を中心とした東北地方でも見られる。

また、一時メルセデス・ベンツのチューンド部門であるAMGや、ケーニッヒのチューンドカー、特に1980年代後半の黒系でまとめられた中古車をモチーフとして改造されることも多く、これが起源であるとする説もある。

概要[編集]

外装は、大径・大音量マフラーへの換装や、車高のローダウン、威圧的な形状をしたエアロパーツの取り付け、アルミホイールフェンダーの大型化、ホイールとボディーの段差をなくす(面一―ツライチと呼ばれる)などの改造がされる。また原色系の派手な塗色も好まれ、場合によっては塗り替えられる。

内装は、応接間をモチーフに大理石調や木目調の装飾が施されることが多い。その他、房などを用いた和風の装飾、原色や光り物などを用いた派手な装飾など様々である。なお、スモークフィルムの貼り付けがなされることも多いが、夜間などに見えにくくなることから規制がされている(後述)。

最近では比較的シンプルな改造や、白や黒など控え目な塗色が好まれ、内装は多数の小型モニターや大音量のオーディオウーファー発光ダイオードのネオン管を装備しているものが主流である。 マフラーに関しても純正マフラーの出口部分だけを加工するようになった。この場合、車内外の静粛性は犠牲にならない。 このほかメルセデス・ベンツ Sクラスレクサス・ESなどを参考に、屋根を黒く塗ることもある。さらにこの流れからヨーロッパのチューナーなどを意識したユーロスタイルや、そのユーロスタイルをベースにして、スーパーカーなどの外観の造型を意識してのエアロパーツの加工などを行ったハイパーユーロと呼ばれるスタイルが生まれている。

2000年代初頭には運転席や助手席にバケットシートを入れ各種追加メーターやスポーティーハンドル ロールバー、外装に後付け牽引フック、GTウィングやボディにダクト加工、130パイ以上の砲弾型マフラー大振りなオーバーフェンダーに18インチのマイスターやエクィップなどのホイールをショルダーツラに合わせるスポーティーVIPが一時期流行した。

VIPカーのオーナーを対象として、チームクラブ連合などと呼ばれる団体や、ミーティングイベント、ドレコン(ドレスアップカーコンテスト)などと呼ばれる集会がある。これらは暴走族とは異なり全国規模になることが多い。そのため、プレートと呼ばれるフロントガラスに提示する室内用装飾品やステッカーなどで自らが所属する団体をアピールしていることが多々ある。

呼び名[編集]

専従の運転手がおり、オーナー本人は後席に乗車する一般社会の“ショーファードリブン・カー”リムジン)ではなく、“オーナー自らハンドルを握って運転する”という違いには注意しなければならない。一般にVIP(ヴイ・アイ・ピー)として扱われるのは後席の乗員である。また、「VIP」を「ビップ(ヴィップ)」と読むのは、語学的には誤りである[1]。VIPを「ビップ」「ヴィップ」と読むと軽蔑的な響きがするためである[2]

なお、専門誌、特にVIPCAR誌が意図的に上記のような改造高額大型セダンを「ビップカー」と名づけたのは、ショーファードリブン・カーのイメージをあえて打ち消すためであると公式コメントを発表しているが、「VIP」は前述の通り「ブイ・アイ・ピー」と発音するのが正しいものであるため、この意図は広く理解されることなく定着してしまい、誤りを誤りであると気付かずそのまま使用したものと一般的に解釈されるようになってしまった。

VIPカーという言葉の語源は、古くはY30型セドリック/グロリアにおいて1984年1月に追加された旗艦モデル「V30EブロアムVIP」からという説や、雑誌『ヤングオート』(現在休刊)のコーナー、VIPCLUBであったという説などがある。

マイナスイメージ[編集]

VIPカーへの改造による、その車種に対するイメージの悪化を嫌う人もいる。これは派手な内外装、車の出す騒音、一部の違法改造、あるいは所有者自身の印象から、一般的には暴走族と見なされることが多いためである。

アメリカのカスタムシーンに影響を与えて、ヘラフラッシュというジャンルが生まれた。外観が特徴的で目立ちやすいことから、マナーの悪さが目立ち悪印象を抱かれることも多く、Very Immoral Person's carの略と揶揄されることもある。

また、自分の車に「BIP」と書かれたシールを貼った者が目撃されていることから、蔑む意味でわざと「BIPカー」と呼ぶ場合もあるが(似たような例にX JAPANhideが亡くなった際に車のリアガラスにカッティングシートで文字を貼っていたが、「X-japan hide Forever」とするところを、「hibe」としていたため、一時期ネットコミュニティでは同語を用いて揶揄していた)、これは「ボロいVIPカー」や「馬鹿の乗るVIPカー」と意味づけされている。「ボロい」とは、VIPカーに改造される車は年式落ちで安価に入手することができる型落ち高額車が使われることを指摘している。

改造[編集]

車検証の記載事項を超える改造、安全性に問題がある改造、整備不良と扱われる改造などは継続車検が受けられないばかりか、警察に検挙されることもある。特にスモークフィルムの貼り付けは一般的であるが、フロント側にも貼り付けて「フルスモーク」化するのは違法であり、施工業者も逮捕された事例がある。

価格の安い旧式の中古車をベースにする場合、低排出ガス車認定制度が開始された平成12年以降に生産されたものでなければ、ガソリン代や自動車税など維持費も高額となり、また、そういった低年式車両は老朽化、メカニカルの複雑さから故障の多さや補修部品確保の問題にも注意が必要である。そもそもセルシオやシーマと言った一部のセダン系の車種は高級車としての位置づけのため、元来維持費が高額(燃料はハイオク指定、加えて燃費が著しく悪いなど)であるため、平成12年以降に生産された車種であっても一部のそうした車種は維持費がそれ相応にかかる。

改造パーツを装着して車高を下げることで、最低地上高が拳(こぶし)ひとつすら入らないくらい低いものとなっている車両が多く存在する。これらの改造は車両の道具としての実用性が考慮されておらず、例えば道路脇施設への出入りの際に縁石が切り下げてあるにも関わらずバンパーの下部を擦ったり、ぶつけて割ってしまったりするケースも多くあり、最悪の場合、中心の部分か盛り上がっているかまぼこ型の踏切で立ち往生するケースも存在する。これらの対策として、近年ではコンピューター制御により、リモコン1つで車高をコントロール出来るエアサスペンションシステムが存在しているが非常に高額であるである為、スプリングをカットしたり、車高調を入れるものが主流である。

またこれらの理由に加え、ベース車両のほとんどがFR車のため、降雪時の走行は困難である。実際降雪地域の冬季にはあまり見かけることはないが、晴れて道路に雪がない休日にはまれに見ることができる。

近年、ガソリン価格の高騰が進んでいることから、維持費節減を狙ってハイブリッド仕様車が設定されている高年式車がベースとなる場合がある。

日本国外への影響など[編集]

アメリカでは日本におけるVIPカー黎明期と同じく、取り締まりの厳しくなったスポーツコンパクトからの乗り換えユーザーが多いという。これを受けて海外へ進出する国内のVIPカー用改造パーツメーカーも見受けられる。近年ではヘラフラッシュからの流れで、日本のVIPカーのカスタム手法を基本としつつも、JDMUSDMの要素を取り込んだスタンススタイルというカスタムが生まれている。

対象車種[編集]

一般的にはトヨタ製大型高級セダンやY31系セドリックグロリア以降の日産製大型高級セダンが対象車種である。そのほか、海外の高級セダン(メルセデスベンツBMWアウディなど)も含まれる。また、本来別ジャンルであるラグジュアリーカーもVIPカーに含まれることがある。これは、主に両者のカスタム指向や車の形態などに類似性があることによる。

主なベース車両としてセンチュリーセルシオクラウンクラウンマジェスタトヨタ・マークⅡアリストプレジデントインフィニティQ45シーマ、セドリック/グロリア、レジェンドインスパイアセンティアディアマンテなどがある。 最近ではレクサスシリーズや先述の後継車種であるフーガマークXもベースとなっている。

セダンよりも室内空間が広く取れるミニバンをベースとすることもあり、アルファードヴェルファイアエスティマエルグランドオデッセイなどが代表車種として挙げられる。このうち、最後部座席を撤去して大型ディスプレイやネオン管で装飾を施し、巨大ウーファーなどを埋め込む改造車はオーディオカーと呼ばれる。また、ハイエースキャラバンなどのワンボックスカーを改造したものはバニングと呼ばれ、暴走族等の改造が由来だと言われている。

税金が安い軽自動車をベースとする同様の改造も行われており、軽トールワゴンワゴンRムーヴekライフなどが対象になる。だがこのような車種の場合、VIPカーとはいわない。

パーツのブランド[編集]

VIPカーにおいては、ベース車両のランク以外に装着する各パーツのブランド(メーカー)も重視される。中にはVIPカー専用のパーツブランドも存在する。VIPカー愛好者の中では著名なVIPカーオーナーが設立したメーカーもある。

  • インパル
  • ジャンクションプロデュース
  • エボリューション
  • アドミレイション
  • WALD
  • インシュランス
  • ワイズ
  • ギャルソン(ブラックマフィア、D.A.D)
  • ファブレス
  • ブレーン
  • K-BREAK

ホイール[編集]

BMWチューナーアルピナや、メルセデスチューナーのブラバスロリンザーなどのホイールが加工流用されることもある。

  • OZレーシング
  • ワーク
  • BBS
  • MAE
  • レーベンハート(タケチプロジェクト)
  • スピードスター(SSR)
  • ウェッズ(Kranze)
  • スーパースター(LEONHARDIRITT)

脚注[編集]

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  1. ^ VIP の発音は[viːaɪˈpiː](「ヴイ・アイ・ピー」または「ブイ・アイ・ピー」)が正しく、/vɪp/(「ヴィップ」「ビップ」)とは発音しない。 - プログレッシブ英和中辞典(小学館
  2. ^ プラクティカル ジーニアス英和辞典 ISBN 9784469041682大修館書店) 1695ページ/当該項目より

関連項目[編集]