エホバの証人

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エホバの証人
設立年 1884年
種類 宗教法人
本部 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
公用語 英語、他
設立者 チャールズ・テイズ・ラッセル
ウェブサイト エホバの証人
ニューヨーク市ブルックリン区にある世界本部。建物の反対側には大きく『神のみ言葉 聖書を毎日読みましょう』という標語が掲げられている。
宣教の様子。聖書の例に倣い2人組みで行動するのが一般的である。マルコ 6:7。
王国会館と呼ばれる集会所で週2回の聖書講演会や勉強会等が行われる

エホバの証人(エホバのしょうにん、: Jehovah's Witnesses)は、キリスト教系の新宗教[1]の組織または信者。ものみの塔聖書冊子協会などの法人が各国にあり、ほぼ全世界で活動している。

世界本部はニューヨーク市ブルックリン区に置いているが、2015年現在ニューヨーク州ウォーウィックへ本部機能を順次移転中で、2017年に完了する予定である。なお、日本においては神奈川県海老名市に支部が置かれている。

聖書は主に新世界訳聖書(該当言語での翻訳がない場合は一般の聖書)を使用する。集会が週2日あり、大規模な大会が年3回ある。

崇拝の対象はエホバ神で、神の子イエス・キリストは崇拝の対象とせず、三位一体基本信条など他のキリスト教主要教義も否定する。このことからキリスト教では一般に異端とされる。

沿革[編集]

1870年
チャールズ・テイズ・ラッセルとその仲間がグループで聖書研究を始める。
1879年
「シオンのものみの塔およびキリストの臨在の告知者」誌(現・ものみの塔誌)を創刊。
1884年
シオンのものみの塔冊子協会がペンシルバニア州で宗教法人として認可。
1909年
本部がニューヨーク市ブルックリンに移転
1919年
「黄金時代」誌(現・目ざめよ!誌)を創刊。
1924年
WBBR(ものみの塔協会所有の最初のラジオ局)が放送を開始。
1932年
コロンバス (オハイオ州)での大会で、エホバの証人という名称が採択される。(当時の訳はエホバの證者)
1933年
ドイツのナチス政権下で布教活動が禁止され、多くの信者が強制収容所に収監される。(第二次世界大戦終結まで)
1950年
英文新世界訳「クリスチャン・ギリシャ語聖書」(新約聖書の範囲に相当)が完成。
1961年
英文新世界訳聖書が全巻完成。
2014年
公式ウェブサイトの言語数が500に達する。

歴史観[編集]

エホバの証人の信条による歴史観を次に示す。あくまで彼らの信条であり、百科事典的な見解でないことに注意されたい。

古代イスラエル
最初のエホバの証人はアベルであった。聖書中、アベルは神の「大勢の証人たち」の一人とされている。エノクノアアブラハムイサクヤコブヨセフもそのように呼ばれている。古代イスラエル人は一国民として神に献身しており、彼らもまたエホバの証人と呼ばれた。
1世紀以降
イエスはその生涯中、神の教えを宣べ伝えた。イエスの死後、一世紀のキリスト教徒たちはイエスの「証人」となった。彼らは神の栄光を証ししたゆえに、神の「証人」ともなった。しかし、西暦56年ごろ、背教が起こり、彼らの心は引き離され始めた。最後の使徒であった、ヨハネの死後、背教が拡がり始めた。エホバの証人の信条によると、初期キリスト教徒たちは聖書の教義からそれ、ギリシャ哲学や他宗教の教えを取り入れ始めた。エホバの証人は、背教したキリスト教徒たちがカトリック教会を形成した、と考えている。彼らの信条によると、この背教した状態が1914年の「終わりの時」開始まで続くことになっていた。
現代
現代のエホバの証人の起源は聖書研究者という名の宗教運動にある。聖書研究者は、1870年初頭にチャールズ・テイズ・ラッセルにより聖書研究会のクラスとして創始された。1917年にラッセルの後継者、ジョセフ・フランクリン・ラザフォードがものみの塔聖書冊子協会の会長になると、それを不服とした人々が離れていった。聖書研究者たちは1931年、ラザフォードの講演でエホバの証人(当時の訳ではエホバの證者)という名を採択した。彼を支持しない人々がラッセルの教えを引き継いだ別の聖書研究者の組織を結成した。それ以後、エホバの証人は自分たちのことを聖書研究者とは呼ばなくなった。(ものみの塔聖書冊子協会の他の会長についてはものみの塔聖書冊子協会参照)いまだバプテスマを受けていない仲間を聖書研究生と呼ぶ。

組織[編集]

統治体、地帯区、支部、地域区(廃止予定)、巡回区、各会衆という構造になっており、各々に監督や長老といった管理監督責任を担う信者が存在する。

施設については、前述の世界本部のほか、ものみの塔教育センターニュージャージー州パターソンに、ものみの塔農場ニューヨーク州オレンジ郡ウォールキルに有する。

また、世界96ヶ所に支部事務所が、239の国や地域に約11万の会衆が存在する。

聖書[編集]

エホバの証人の信者で構成された「新世界訳聖書翻訳委員会」により翻訳された新世界訳聖書を使用する。かつてはキリスト教会と同様、一般に入手可能な聖書を使用していた。例えば、英語圏ではジェイムズ王欽定訳 (KJV) とアメリカ標準訳 (ASV) を、日本では舊新約聖書(日本聖書協会文語訳)を使用していた。

今日も上記に加え、日本語出版物では新共同訳新改訳などのほか、和訳した英語訳聖書(欽定訳・今日の英語訳英語版など)を引用することがある。

統計[編集]

平均伝道者数, 1945年〜2005年

2014年の公表値によると、エホバの証人の全世界での伝道者数は約820万1,545人である[証人 1]。日本においては2014年度時点で平均21万5,292人、最高21万5,703人であるという。

教義[編集]

エホバを崇拝の対象とする。エホバとは旧約聖書にみられる唯一神の名で、発音については議論がある。伝統的にはヱホバ、学術的にはヤハウェ、ヤーウェなどの表記・読みが好まれる。原文に近い聖書写本には神聖四文字語でיהוהとあり、YHWHもしくはJHVHに相当する。

神の王国[編集]

  • 1914年を起点に、天でイエス・キリストを王として設立した。
  • キリストの再臨は「しるし」であり、目には見えない。
  • エホバの証人が全面的に支持し到来を期待している新しい社会、またそれを実現する政府。
  • 現在地上は統治していないが、近い将来にハルマゲドンでの宗教組織、政治組織などの一掃をもって開始される。
  • ハルマゲドン後、地上は千年の時を経てかつて創世記に記述されているような楽園に回復される。
  • 楽園を回復する作業を行うのは、ハルマゲドンを生き残った者たちである。

主な聖書解釈[編集]

  • 神の名はエホバである。
  • イエスは神の子であり、神ではない。
  • 聖霊は、神の活動力を指す。
  • エホバの証人は1世紀のクリスチャンの復興である。
  • 血を避けるべきという聖書の記述は、故意に血液を食したり、体内に取り入れる行為輸血を避けることも含まれる。
  • 人は死ぬと存在しなくなる。
  • 復活は「天への復活」と「地上への復活」の2種類がある。
  • 悪魔サタン及びその配下の悪霊たちは、元み使い(天使)である。アダムエバを欺いた張本人で、エホバの主権の正しさと人間の忠節に異議を唱えている。また、今でも人間社会や政府を背後で動かしている。

行動様式[編集]

  • 聖書の教義に反しない限り、国家の主権及びそれに準ずる権力に従うべきとしている。(法律を遵守や納税の義務を果たすなど)
  • 政治への参加(立候補及び投票など)をは行わない。(政治的に中立)
  • 戦争に参加せず、兵役につかない。(良心的兵役拒否
  • 格闘技に参加しない。
  • 信者間を称号で呼ぶことはなく、互いを兄弟または姉妹と呼ぶ。
  • 毎日聖書を読み研究するよう推奨している。
  • 他の宗教の冠婚葬祭に出席するか否かは「個人の良心」として各信者に委ねられている。しかし、焼香などは、宗教合同や偶像崇拝とみなし避ける。
  • 教会や寺院などの宗教施設で開かれる葬儀や結婚式への参列は、信者個々の良心上の問題とされている。
  • 反聖書的・異教由来とみなす行事は祝わない。七夕節分ひな祭りなど、民間信仰にまつわる行事も行わない。
  • 国旗敬礼(旗に対する専心)や国歌斉唱(国家の賛美)などは、偶像崇拝である。
  • 淫行・性的欲情などの不道徳・強欲なども、神ではなく各種欲求に対する崇拝者となっているという意味で偶像崇拝に当たる。
  • 宗教系の保育所や福祉施設・病院などを利用については、信者個々の良心上の問題とされている。
  • 原則、離婚及びそれに伴う再婚は禁止である。ただし、配偶者の不倫による離婚、配偶者との死別による再婚は認められている。
  • 習慣的マスターベーション、喫煙、医療目的外の麻薬は禁じられている。飲酒に関しては、適量であれば禁じていない。
  • 誕生日を祝わない。また、キリストの誕生日も祝わない。
  • 教義に著しく反した場合、審理委員会が開かれ資格などが一定期間剥奪されることがある。それでも悔い改めない場合は排斥(いわゆる破門)となることがある。

年間行事[編集]

  • キリストの死の記念を祝う。(一般に言う主の晩餐とほぼ同一)
  • 週に2回、集会を行う。(公開聖書講演会・「ものみの塔」研究、会衆の聖書研究・神権宣教学校・奉仕会)
  • 上記以外に地区大会(年1回)、巡回大会(年2回)が催される。
  • 毎回の大会において、当事者に対しバプテスマとして浸礼が行われる。

社会的側面[編集]

国旗・国歌[編集]

エホバの証人は国旗敬礼、国歌斉唱を行わない。国旗への敬礼、国歌斉唱は、国家崇拝に該当すると判断している。また国旗・国歌は偶像であり、これへの敬礼は#偶像崇拝であるとする。

兵役拒否[編集]

「戦いを学ばない」「剣を取るものは剣によって滅びる」という聖書の記述を理由に兵役を拒否する。兵役が義務化されている国々で問題視されることがある。国家はそれに対してエホバの証人を投獄するのが一般的である。近年では、良心的兵役拒否が人権の一つとして認識されるようになってきたことから、社会奉仕活動への参加を義務付けることによって、兵役の義務の代わりとする事例も増えている。場合によっては投獄ではなく、「兵役」か「処刑」かのどちらかの選択を迫られることもあったが、その場合にも処刑されることを選んだという(エホバの証人とホロコースト参照)。

政治[編集]

政治的中立を主張している。王国政府のみに対する全面的支持の表明などを根拠とし、この世の政治活動に直接関与すべきではないという姿勢をとっている。

輸血拒否[編集]

血を避けるべきとするいくつかの記述が聖書中にある。エホバの証人は、これらを輸血禁止の意味に解釈している。(キリスト教からは異論がある)

使徒15章20節
「絞め殺した動物の肉と、血とを避けるよう」(新共同訳)
創世記9章4節
「ただし、肉は命である血を含んだまま食べてはならない」(同上)

また、代替治療として無輸血治療を望み、自己輸血血液分画の使用については各人の良心に基づいて決定するとしている。

キリスト教からの批判[編集]

エホバの証人キリスト教とは、教義に共通するものはあるが、その中核をなす部分で相容れない。エホバの証人は家庭不和をもたらし、輸血拒否により命を軽視し、聖書を改ざんしているとして、対策相談窓口を開設しているキリスト教会もある。

裁判・法的規制[編集]

性的児童虐待[編集]

2012年6月13日、カリフォルニア州のAlameda County Superior Court jury(アラメダ上級裁判所)[2]で行われた裁判で敗訴が確定し、当協会は約800億円相当の協会の資産の凍結を命じられ、賠償金280万ドル(22億円)の40%を支払うように命じられた。判決によると、エホバの証人の男性信者が当時9才だった少女に1年の間、性的虐待を加えているという通報を知りながら(証人が足りないという理由で)、警察へ通報をせず、長老たちが決定した組織的な隠蔽が違法であるという判決に繋がった。しかしながら、2013年3月現在エホバの証人側がこの判決を不服として控訴している。

バーネット事件[編集]

米国ウェストバージニア州で、星条旗への敬礼を拒んだ女性信者の姓にちなむ行政訴訟。1943年6月14日米最高裁判所はエホバの証人の子弟を放校する権利は教育委員会にはないという判断を下し、勝訴が確定した。「バーネット事件」。

神戸高専剣道実技拒否事件[編集]

必須科目であった剣道の科目を履行しなかったことで退学または留年処分になったことの是非が争われたケースで、1996年3月8日、日本の最高裁判所は、学校側が主張する剣道の必須性を退け、格闘技を拒否された場合の代替措置を用意しなかったことは、学校側の落ち度であると指摘し、退学または留年処分は不当であるとの判決を下し、勝訴が確定した。

過去の法的規制[編集]

兵役や国家に対する忠誠の拒否などで処罰されたものある。エホバの証人は「彼らはその剣をすきの刃に、その槍を刈り込みばさみに打ち変えなければならなくなる。国民は国民に向かって剣を上げず、彼らはもはや戦いを学ばない」(イザヤ書2章4節)という聖書の記述に従ってであるが、当該国の軍事当局から見れば従軍拒否などはあくまでも法令違反とされる場合がある。代表的な事例として、ナチス・ドイツにおいて兵役を拒否したためにより強制収容所に送還され多くが処刑された出来事などが挙げられる(エホバの証人とホロコースト)。現代でも一部の国々で同様の事例が存在する。

カルト・セクト指定[編集]

日本においては指定されていないが、いくつかの政府はカルトまたはセクトと分類しているケースがある。例として以下の政府・議会報告が挙げられる。

題材作品[編集]

ドラマ[編集]

小説[編集]

  • 『羊飼のいない羊たち』 — 1984年津山千恵。第二次大戦中の灯台社と良心的兵役拒否を貫いた明石順三の生涯。明石は戦後、教団に対して出した公開質問状の内容が「反逆」と見なされ、排斥されている。
  • 説得―エホバの証人と輸血拒否事件』 — 大泉実成1985年6月に神奈川県で実際にあった小学生の輸血拒否事件を基に、ある信者家族の信仰と生命の尊さを巡る葛藤を一人のルポライターが刻銘に綴ったノンフィクション小説。1993年にTBSでドラマ化され話題になった。

脚注・引用[編集]

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  1. ^ エホバの証人【えほばのしょうにん】『時事用語のABC』松山大学檀研究室/株式会社エア 2000年8月13日更新。
  2. ^ Jehovah's Witnesses ordered to pay more than $20 million to woman who said she was sexually abused 『NBC NEWS』2012年6月15日午前9時6分
  3. ^ Enquête Parlementaire visant à élaborer une politique en vue de lutter contre les practiques illégales des sectes et le danger qu'elles représentent pour la société et pour les personnes, particulièrement les mineurs d'âge. Rapport fait au nom de la Commission d'enquête par MM. Duquesne et Willems. Partie II. (カルトの不法行為、社会や人々、特に未成年者にとっての危険と戦うことを目的とした政策を説明する議会公聴。ドゥケイン氏、ウィレム氏による委員会での公聴、の名称での報告 パート2) available online -- フランス語とフラマン語の2言語報告, retrieved 2007-01-08.
  4. ^ フランス語の報告1995年(英語の翻訳), フランス国民議会, 議会委員会報告
  5. ^ フランス国民議会 (1999年6月10日). “Les sectes et l'argent” (French). République Française. 2009年4月20日閲覧。 “enquête sur la situation financière, patrimoniale et fiscale des sectes, ainsi que sur leurs activités économiques et leurs relations avec les milieux économiques et financiers [カルトの財務、所有物、収益、同様にそれらの経済活動、経済・金融に関するコネクションに関する公聴]”

エホバの証人の出版物など[編集]

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関連項目[編集]

外部リンク[編集]