創世記

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動
光と闇の分離

創世記そうせいきヘブライ語בראשיתギリシア語Γένεσις)は、古代ヘブライ語によって記された、ユダヤ教キリスト教の聖典で、イスラム教啓典である聖書旧約聖書)の最初の書であり、正典の一つである。写本が現存しており、モーセが著述したとされている。いわゆるモーセ五書は、ユダヤ教においてはトーラーと呼ばれている。

『創世記』はヘブライ語では冒頭の言葉を取ってבראשית‎(ベレシート)と呼ばれているおり、これは「はじめに」を意味する。また、ギリシア語の七十人訳では、2章4節[注 1]からとってΓένεσις(ゲネシス)と呼ばれており[3]。「起源、誕生、創生、原因、開始、始まり、根源」の意である[4]

主な内容[編集]

内容は、「天地創造と原初の人類」、「イスラエルの太祖たち」、「ヨセフ物語」の大きく3つに分けることができる。

  1. 天地創造と原初の人類
  2. 太祖たちの物語
  3. ヨセフの物語
    • 夢見るヨセフ 37章 - 38章
    • エジプトでのヨセフ 38章 - 41章
    • ヨセフと兄弟たち 42章 - 45章
    • その後のヨセフ 46章 - 50章

ユダヤ人の歴史の物語は、聖書で『創世記』の次に置かれている『出エジプト記』へ続いていく。

ヘブライ語聖書における創世記の成立・編集について[編集]

神話風の原初史、父祖の物語、ヨセフ物語の三つの部分から成るが、これらはもともとは別の物語であり、成立過程の異なった物語を、連続する物語としても読めるように編集したものである。[5] 創世記を含むモーセ五書が現在の形に編集された時期は、紀元前550年前後のバビロニア捕囚期とされる。[6]

原初史に見られる大きな特徴としては、叙述の重複として、同じことについて2度、それも違ったことが語られている箇所が多くみられることである。このことに言及した解説では、例としてノアの箱舟に乗り込む命令が2回なされるところ[7]では、動物の数を種類ごとに分けて入れよという命令と、種類の区別なく入れよという命令が2回なされていることがあげられている。[8][9][10]これは、現在の形に編集するときに、内容の似た別個の二つの話があり、それらを組み合わせてひとつの話に編集したためであるとされている。[11]また、神の呼称にもヤハウェとエロヒム(神)の二つがあり、それらが理由もなく交替して現れてくることも、内容の似た別個の二つの話を組み合わせてひとつの話に編集したためであるとされている。[12] ヤハウェの呼称を用いる文書については、古いものでは前10世紀に成立したと考えられている。[13][14]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 「これが天地創造の由来である。」[1]
    原文:“Αὕτη ἡ βίβλος γενέσεως οὐρανοῦ καὶ γῆς, ὅτε ἐγένετο[2]

出典[編集]

  1. ^ 口語訳聖書『創世記』2章4節”. Wikisource. 2017年12月12日閲覧。
  2. ^ Γένεσις, Κεφάλαιον β'(七十人訳聖書『創世記』2章)”. Wikisource. 2017年12月12日閲覧。
  3. ^ Carr 2000, p. 491.
  4. ^ Γένεσις - LSJ The Online Liddell-Scott-Jones Greek English Lexicon” (英語). Thesaurus Linguae Graecae. 2017年12月12日閲覧。
  5. ^ 岩波書店1997年旧約聖書〈Ⅰ〉創世記(月本昭夫解説P181)
  6. ^ 伝承が文書の形にまとめられるきっかけとなったのは、前586年のエルサレム神殿の破壊と、バビロン捕囚に伴う異教の地への強制移住であったとされている。 岩波書店2000年旧約聖書〈Ⅱ〉出エジプト記 レビ記(レビ記の解説P425、山我)
  7. ^ 創世記7:1と6:18
  8. ^ 岩波書店2000年旧約聖書〈Ⅱ〉出エジプト記 レビ記(出エジプト記解説P396、木幡)
  9. ^ 創世記7:2と6:19
  10. ^ 冒頭部分においても天と地、昼と夜も2回創造されている。創世記1
  11. ^ 岩波書店2000年旧約聖書〈Ⅱ〉出エジプト記 レビ記(出エジプト記解説P396、木幡)
  12. ^ 例として創世記6:5と創世記6:9等がある。
  13. ^ 岩波書店2000年旧約聖書〈Ⅱ〉出エジプト記 レビ記(出エジプト記解説P402木幡)
  14. ^ モーセの十戒に見られる、他の神々と共存した観点を持つ拝一神教は古いものとされ、創世記の原初史に記されている唯一絶対神信仰は、紀元前550年前後のバビロニア捕囚期の時代のものと考えられている。(岩波キリスト教辞典2002年P869、「拝一神教」の項目、山我哲雄)

参考文献[編集]

  • Carr, David M. (2000). Freedman, David Noel; Myers, Allen C.. eds. Eerdmans Dictionary of the Bible. Amsterdam University Press. ISBN 9780567372871. https://books.google.co.jp/books/about/Eerdmans_Dictionary_of_the_Bible.html?id=P9sYIRXZZ2MC&redir_esc=y 
  • 木幡藤子 ・山我哲雄翻訳 岩波書店 2000年『旧約聖書〈Ⅱ〉出エジプト記 レビ記』(出エジプト記の解説、木幡藤子  レビ記の解説 山我哲雄)
  • 月本昭男訳 岩波書店 1997年『旧約聖書〈Ⅰ〉創世記』(創世記の解説月本昭男)
  • 岩波キリスト教辞典 岩波書店2002年 編集者 大貫隆、名取四郎、宮本久雄、百瀬文晃 執筆者 青木茂 他多数 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]