コンテンツにスキップ

エズラ記

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
エズラ記
Liber Esdrae
エズラ記(レニングラード写本)
基本情報
宗教 ユダヤ教、キリスト教
作者 エズラ(伝承)
複数の歴代誌史家(高等批評)
言語 ヘブライ語
時期 紀元前6–5世紀(伝承)
紀元前4–3世紀(高等批評)
章節 10
Wikisource
テンプレートを表示

『エズラ記』(エズラき、ヘブライ語: עזרא ezrā エズラー、英: Book of Ezra)はヘブライ聖書中の一書で古代ユダの歴史を記す。 ユダヤ教聖書配列では「諸書」の一つとして扱われ、キリスト教では歴史書として『歴代誌』のあとにおかれる。

巻名は、捕囚からの解放後、エルサレムに派遣された律法の書記官(ヘブル語:ソーフェール)で、律法によってユダヤ民族をまとめなおそうとした人物エズラに由来している。

構成

[編集]

ヘブライ語聖書では、かつて『エズラ記』と『ネヘミヤ記』が同じ一つの書物(巻物)を構成しており、単に「エズラ」と呼ばれていた。現在でも学術的にはこれを「エズラ=ネヘミヤ(英語版)」として区別する。現在のように、その前半が『エズラ記』、後半が『ネヘミヤ記』として分割されはじめたのは、15世紀から16世紀初頭のことである[1]。

19世紀から20世紀にかけては、『エズラ記』『ネヘミヤ記』は、『歴代誌』と同様「歴代誌史家」とよばれる同じ著者グループによる著作であると考えられていた。しかし現在(20世紀後半以降)では、その文体などから、『エズラ=ネヘミヤ』は歴代誌とは個別に編纂されたものであるという見解が一般的である[2][3][4]。

言語

[編集]

エズラ記は大部分がヘブライ語で書かれているが、4:8–6:18、および7:12–26はアラム語で書かれている[5]。これはペルシア王との間の書簡の引用を含んでいるためである(アラム語はアケメネス朝の公用語であった)。

内容

[編集]
  • 捕囚後の帰還 1:1-6:22
  • エズラの事跡 7:1-10:44
    • エズラの帰還(7章)
    • バビロンからの帰還とエルサレムへの旅(8章)
    • 異民族との結婚とその解消(9章-10章)

その他のエズラ記との区別

[編集]
書記官エズラの名を冠した諸書の各聖書版における書名対応表
マソラ本文(ヘブライ語聖書) 七十人訳聖書 (ギリシア語) ウルガタ訳 (ラテン語) 口語訳聖書 新共同訳聖書
Ezra(英語版) Esdras B I Esdras エズラ記 エズラ記
II Esdras ネヘミヤ記 ネヘミヤ記
Esdras A III Esdras 収録せず(外典) エズラ記(ギリシア語)
IV Esdras 収録せず(偽典) エズラ記(ラテン語)(エズラの黙示録)

ヘブライ語聖書のエズラ記

[編集]

ヘブライ語聖書の『エズラ記』は、現在のキリスト教徒が使用している聖書の『エズラ記』と『ネヘミヤ記』を一冊にしたものである。

ギリシャ語聖書のエズラ記

[編集]

七十人訳聖書などの一般的なギリシャ語聖書には以下の2つの『エズラ記』が収められている。

エスドラスα(第1エズラ書)
正典の『歴代誌』から『エズラ記』にかけての内容を独自資料を加えて記したもの。
エスドラスβ(第2エズラ書)
正典の『エズラ記』と『ネヘミヤ記』を合わせたものである。

ラテン語聖書のエズラ記

[編集]

ウルガタなどの一般的なラテン語聖書には以下の4つの『エズラ記』が収められている。

エズラ記1(第一エズラ記)
内容は正典の『エズラ記』そのものである。
エズラ記2(第二エズラ記)
内容は正典の『ネヘミヤ記』そのものである。
エズラ記3(第三エズラ記)
内容はギリシャ語聖書のエスドラスαと同じである。
エズラ記4(第四エズラ記)
ラテン語聖書独自の『エズラ記』である。全体で16章からなるが、もともと第3章から第14章までの部分が存在し、第1章と第2章(第五エズラ記)および第15章と第16章(第六エズラ記)は、ラテン語写本には見られるが東方写本には見られないことから、キリスト教徒による付加であると考えられてきた[要出典]。しかし、オクシリンコス・パピルスから15章57–59節の4世紀のギリシャ語断片が発見されている((P.Oxy. VII 1010))[6]。

「旧約聖書続編」のエズラ記

[編集]

旧約聖書続編には以下の2つの『エズラ記』が収められている。

エズラ記(ギリシャ語)
内容はギリシャ語聖書のエスドラスαを翻訳したものである。
エズラ記(ラテン語)
内容はラテン語聖書の第四エズラ記(全十六章)を翻訳したものである。

脚注

[編集]
  1. ↑ Bogaert, Pierre-Maurice (2000). “Les livres d'Esdras et leur numérotation dans l'histoire du canon de la Bible latin”. Revue Bénédictine 110 (1–2): 5–26. doi:10.1484/J.RB.5.100750.
  2. ↑ Grabbe, Lester; Rogerson, John William (2003-11-19). "Ezra". In Dunn, James D. G. (ed.). Eerdmans Commentary on the Bible. Wm. B. Eerdmans. ISBN 9780802837110.
  3. ↑ Williamson, Hugh G. M. (1985). Ezra, Nehemiah. Vol. 16. p. xxi–lii.
  4. ↑ Gary N. Knoppers, I Chronicles 1–9, Anchor Bible Commentary Vol. 12 (New York:Doubleday, 2003), pp. 80–89.
  5. ↑ James H. Charlesworth – "Announcing a Dead Sea Scrolls Fragment of Nehemiah" – The Institute for Judaism and Christian Origins – Retrieved 20 August 2011.
  6. ↑ AnneMarie Luijendijk; Brent Nongbri (2025). “The Codicology of Early Christian Books from Oxyrhynchus: Insights from a Papyrus Codex of Matthew (P.Oxy. I 2) and a Miniature Parchment Codex with 6 Ezra (P.Oxy. VII 1010)”. Paul Dilley and Katherine Tachau, eds. 2025. The Manuscript across Pre-modern Afro-Eurasia: Papers Relating to a Mellon-Sawyer Seminar at the University of Iowa. ISAW Papers 29. 2026年2月23日閲覧。.

関連項目

[編集]

外部リンク

[編集]