近畿方言
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近畿方言(きんきほうげん)、俗に言う関西弁(かんさいべん)は、近畿地方(関西)で話される日本語の方言の総称。西日本方言に属する。上代から近世中期までの中央語である畿内語・上方語の系統を引き継ぐ方言で、現在も共通語・東京方言に次ぐ認知度と影響力を持つ。
目次 |
[編集] 概説
古代より近畿地方は畿内平野部を中心に発展した。平安以降は京都、近世以降は大阪が最大都市となって文化圏を形成し、言語面でも京阪を中心に比較的まとまった方言圏が形成された。一方で京阪から離れた辺地、特に奈良県奥吉野や兵庫県但馬や京都府丹後の方言は、東京式アクセントであるなど京阪方言的性格が薄い。東条操は「兵庫県の但馬ことばは、京都府の丹後ことばと共に、鳥取県の方言に似たところがあり特に但馬ことばは中国方言と見るべきものである」と述べている[1]。
近畿地方の周辺を見ると、四国方言が音韻・語法とも近畿方言に近く、但馬弁などより京阪方言に似るものもある。特に徳島県は大阪や神戸などとの交流が活発なことから言語面でも影響が強く(「徳島弁」の記事中「関西方言との関係」の節を参照)、また兵庫県淡路島とは対岸同士ではほとんど方言に変わりがない。次いで近いのは北陸方言で、特に福井県嶺南は鯖街道などを通じて京阪地方との繋がりが深く、言語の点でも近畿方言とは切り離せない関係にある[2]。また岐阜県西濃の方言もアクセントなどに近畿方言との関連が見られる。
現代の近畿方言で最も勢力が強いのは中心都市大阪の方言であり、お笑いなどを通じて日本全国にも広く認知されている。そのため近畿方言と大阪弁は同一視されやすく、「芸人」「商人」「ヤクザ」など大阪弁のイメージ・ステレオタイプ(大阪弁#役割語としての大阪弁参照)で一括りにされやすい。しかしステレオタイプな大阪弁は誇張が加わるため実際の方言とは異なる場合が多く、またお笑いの大阪弁は全国の視聴者にわかりやすいよう共通語を交えるなどするため、伝統的な方言と異なる「吉本弁」だと揶揄する声もある[3]。
[編集] 地域別区分
近畿方言は他の方言区画よりは比較的均一である。しかし個々の方言意識は高く、特に京阪とでは、京言葉は優美で上品だが馬鹿丁寧で陰険、大阪弁は威勢は良いが下品でどぎついなどとされ、強い対抗意識を持ってきた。洒落本『弥味草紙』(1759)にも「此ごろ京よりきたるうかれ女、なにはのどうとんぼりといへる所のうかれ里にたよりてつとめしに、やゝもすれば京ことばをもつてひとをいやしめ、大きいはいかつい、ぬくいはあたたか、其外やごとなきことばのはし\゛/をおぼへて、そのうたてさ[4]かぎりなしとや」とあるほどである。
近畿方言の地域区分には様々な案が提唱されているが、ここでは楳垣実が1954年に発表した区分案[5](京阪のほぼ中間である交野市付近を中心に、おおよそ半径50km圏内を「内近畿方言」、半径50〜100km圏内を「中近畿方言」、半径100km圏外を「外近畿方言」と大別するもの)を参考とした。各方言の詳細は各項目(現在近畿2府5県と福井県南部の方言でウィキペディア上で独立したページが設けてあるのは、五十音順に淡路弁・伊賀弁・伊勢弁・近江弁・大阪弁・河内弁・紀州弁・京言葉・神戸弁・志摩弁・摂津弁・泉州弁・高浜弁・但馬弁・丹後弁・丹波弁・奈良弁・播州弁・舞鶴弁・三重弁・若狭弁)を個別に、周辺の他方言との比較については日本語の方言の比較表を参照。
- 内近畿方言
- 一般に「関西弁」として認識される方言。当記事もこの方言を中心に著す。
- 東・内近畿方言
- 西・内近畿方言
- 東・中近畿方言
- 西・中近畿方言
- 南・中近畿方言
- 南・外近畿方言
- 北・外近畿方言
- 丹後大部分、但馬の方言。
[編集] 歴史
「日本語#歴史」も参照
上代から近世まで日本の中心は畿内だったため、上代は奈良盆地、平安以降は京都の方言が長らく中央語とされた。東国武士の勢力が強まる中世以降は「公家ノ人々、イツシカ云ヒモ習ハヌ坂東声ヲツカヒ、着モナレヌ打烏帽子ニ額ヲ顕シテ、武家ノ人ニ紛レントシケレ共」(『太平記』)のようなことも起こるが、日本語の規範とされたのは依然京都方言であり、中世末にポルトガルなどから来日していた宣教師達も公家の京都方言を標準語として扱っている[6]。
歴史が変わるのは江戸中期である。上方に対抗しうる江戸の町人文化が開花を迎え、江戸言葉が成熟し始める。2つの有力方言が併存・拮抗する日本語史上唯一の事態が生じ、徐々に江戸言葉が優勢となっていく。江戸後期には、上方周辺や西回り航路寄港地を除き、江戸言葉の優位と上方言葉の威信低下は明らかであった[7]。そうした歴史的背景から、現代に繋がる上方と江戸の言語対立意識が形成されることとなる。滑稽本『浮世風呂』(1808)にも江戸女と上方女の言葉争いの描写がある(以下はその一部)。
- 「そんなら言はうかへ。江戸詞のからを笑ひなはるが、百人一首(ひやくにんし)の歌に何とあるヱ。「ソレソレ。もう百人一首(ひやくにんし)じゃ。アレハ首(し)じゃない百人一首(ひやくにんしゆ)じゃはいな。まだまアしゃくにんしト言はいで頼母しいナ。「そりゃア、わたしが言損(いひぞこねへ)にもしろさ。「そこねへ、じゃない。言損(いひそこない)じゃ。ゑらふ聞づらいナ。芝居など見るに、今が最後(せへご)だ、観念(かんねん[8])何たら言ふたり、大願(でへがん)成就忝ねへなんのかの言ふて、万歳(まんぜへ)の、才蔵(せへぞう)のと、ぎっぱな[9]男が言ふてじゃが、ひかり人(て)のないさかい、よう済んである。「そりゃそりゃ。上方も悪い悪い。ひかり人ッサ。ひかるとは稲妻かへ。おつだネヱ。江戸では叱(しか)ると言ふのさ。アイそんな片言は申ません。「ぎっぱにひかる。なるほど。こりゃ私が誤た。
江戸時代は、大坂が商都として栄え、京都を凌ぐ上方最大の都市となった時代でもある。豊かな経済力を背景に上方文化の中心をも担うようになり、言語面でも大坂方言が台頭するようになった。新語の発信源も京都から大坂に移り、近畿方言の潮流が変わった。こうして保守的な京都方言と進取的な大坂方言とで意識し合うようになった。
なお、上方言葉が権威ある言葉とされた江戸中期まで、江戸の一部の上級武士・富裕層・教養層は上方言葉を真似た話し方をしていたとされる。その後江戸言葉の地位向上に伴い上方風の話し方は廃れたが、一方で上方風の言い回しは「老人の言葉」「権威者の言葉」として歌舞伎や戯作などでステレオタイプ化されていった。これが「わしは知らぬのじゃ」のような老人や古風な権威者(殿様など)の役割語の起源である(老人語も参照)。[10]
江戸言葉の優勢は、明治の東京奠都によって揺るぎないものとなる。自ずと標準語は東京方言を基盤に形成され、近畿方言は一方言に甘んずることとなった。反発はあったものの、標準語教育や標準語に対する規範意識の高まりなどから、近畿方言も標準語の影響を受けるようになっていった。1954年に梅棹忠夫が「第二標準語論[11]」(“関東系標準語”に対抗して、関西弁を基とする第二の標準語を作ろうという論)を唱えたこともあるが、実現はしなかった。
[編集] 現状
話者人口の多さや京阪神の文化力・経済力を背景に、近畿方言は依然有力な方言勢力となっている。特に近代以降大阪で発達した漫才は、ラジオやテレビといった音声・映像メディアで人気を博し、「漫才」のイメージとともに日本全国に大阪弁の浸透を促すこととなった。1980年代以降は漫才ブームや関西お笑いタレントの東京進出の活発化によって、近畿方言はより全国の視聴者にとって身近な言葉となり、若年層を中心に近畿方言のイメージが単なる「漫才師の滑稽な言葉」から「場を楽しませる打ち解けた言葉」へ変化しつつある。そのため、アイドルのようにイメージを重視し共通語を努めて話すことの多かった業界でも、方言を隠匿せず、むしろプラスの要素とすることも増えている。例えば藤原紀香はドラマ『愛と青春の宝塚』『あなたの人生お運びします』『大奥』で関西弁を話す役を演じ話題になった。
近畿方言は、単に全国で通用するだけでなく、共通語や各地の方言に影響を及ぼすことさえある。「きしょい」「しんどい」「ずぼら」「ぼやく」「めっちゃ」「むかつく(=腹立たしい)」「ややこしい」「ヤンキー」など幅広い語彙が共通語化したり、「関東はバカ、関西はアホ」だったのが東京でも「アホよりバカの方がきつく聞こえる」者が多数派となったり[12]、関西の若者言葉「やん」が中国・四国・九州などの若年層に流入する、といったことが起こっている。
全国に通用するという自負と、近世以来の東京への対抗心から、近畿方言話者は自分達の方言に対する愛着心が強いとされる。実際、2000年に大阪で行われた意識調査でも、東京の言葉に対しては7割が「嫌い」「どちらかと言えば嫌い」、地元の言葉に対しては9割が「好き」「どちらかと言えば好き」と回答している[13]。しかし他方言と同じく共通語化は進んでおり、京阪神の若年層では共通語や東京の若者言葉が混合した、以下のようなネオ方言が主流となっている(1993年に大阪府寝屋川市で収録された20歳女性と21歳女性の会話例)[14]。
- A:やっぱり髪の毛さあ、このままパーマあてるか、ちょっとショートめに切るか、どうしよっかなあ、迷ってんねんやん。
- B:短く切ったら?
- A:うーん。そうやんなあ。結構、雑誌にあんまりいいの載ってないからなあ。
近畿地方には、京都の御所言葉、大阪の商人言葉(特に船場言葉)や芸能言葉(関西歌舞伎・文楽・上方落語・漫才など)、遊郭言葉(京都嶋原や大坂新町など)、志摩半島の海人言葉、紀伊山地の林業や山岳信仰関係の言葉、伊勢の獅子舞神楽言葉など、階層・職業別に多様な言葉遣いがあった。しかし近代化以降、特に戦後は旧来の階層社会や生活習慣が大きく変質したため、多様性は薄れている。多様性の衰退は地域間でも起こっており、交通網の発達に伴う大阪を中心とした京阪神圏の交流の活発化・拡大によって、「関西共通語」(関東の首都圏方言に相当)とも言うべき方言に均質化する傾向にある(これを「関西弁」と称する場合もある)。例えば互いに意識し合ってきた京言葉と大阪弁も、かつてのような大きな違いは高齢層でしか聞かれない。
演芸文化に支えられ、近畿圏の放送局のローカルバラエティ番組では、出演者やアナウンサーが方言でトークを進めることが珍しくなく、共通語の規範とされることの多いNHKも例外ではない。方言がメディアという公の場で一定の幅を利かせているのは他地方ではあまり見られないものである。気さくで和やかな印象から地元視聴者に親しまれているが、メディアの強い影響力から、放送で話される方言(多くは関西共通語)は近畿方言均質化の一因となっている。
[編集] 音韻
共通語や東京方言と比べて際立つ近畿方言の音韻の特徴は、母音ははっきり丁寧に、子音は弱く軽く発音する傾向が強いということである。
母音を丁寧に発音することで
- 1音節語は原則として長音化する。 (例)蚊→かぁ 木→きぃ 子→こぉ
- これに関連してか、「早う学校行こう→はよがっこ行こ」のように、本来長音のものが短音化する現象もある。
- 母音の無声化や脱落が少ない。 (例)「ネクタイです」→東京「ネkタイでs」・関西「ネクタイですぅ」
- 他方言には多く見られる「おめえ」「すげえ」のような連母音変化は、「教える→おせる」「見える→めえる」「痒い→かいい」「良い→ええ」などの数例を除いてほとんど起こらない。
- 紀伊の一部などでは「エイ→エー」の変化も起こらない。 (例)「先生」→京阪・東京「せんせえ」・紀伊の一部「せんせい」
といった現象が起こる。 母音の転訛も他方言と比べると少ないが、「動く→いごく」「キツネ→けつね」「タヌキ→たのき」のように一部の語彙では転訛が起こる。
子音を弱く発音することで
- 子音が脱落しやすいことから、ウ音便が発達した。 (例)安く買ひたり→安う買うた
- サ行音が弱いことから、ハ行音への転訛やサ行イ音便が起こる。 (例)しつこい→ひつこい それで→ほんで 貸して→貸いて・貸いせ
- ザ・ダ・ラ行音の混同が起こる。紀伊などで顕著。 (例)全然→でんでん 淀川の水→よろがわのみる からだ→かだら・からら
といった現象が起こる。このほか、
- 撥音の多用
- 「う」が唇を丸めて発音されやすい(円唇後舌狭母音)。
- 「ひ」の調音位置が共通語と異なる(声門摩擦音)
- 河内などでラ行音を巻き舌で粗野に発音することがある(歯茎ふるえ音)。
- 促拗音化(一部の表現) (例)年寄り→とっしょり 好きやねん→すっきゃねん カツオ→かっつぉ
- 撥拗音化(一部の表現) (例)賑やか→にんぎゃか 死による→しんにょる
などの特徴もある。またガ行鼻濁音は広い地域で聞かれたが、東京以上に衰退が進んでいる。1999年の兵庫県高砂市での調査によると、ガ行鼻濁音を発音する人の割合は、70-87歳の老年層では74%なのに対し、17-20歳の若年層では8%となっている[16]。
母音重視で撥音を多用する近畿方言は、子音重視で促音を多用する東京方言と比べて「柔らかい」「悠長」「余情的」あるいは「歯切れが悪い」「鈍重」「しまりが無い」などの印象を与える。もっとも、早口でまくしたてる漫才などでの大阪弁のイメージから、現在は「騒々しい」「テンポが良い」といった印象も強い。
[編集] アクセント
近畿地方は京阪式アクセントの一大勢力圏である。京阪式は共通語の東京式アクセントと違いが大きく、近畿方言らしさを印象付ける大きな要素となっている。京阪式には東京式にない特殊な音調があるとして近畿方言を声調言語とする学者もいる。
一口に京阪式と言っても個人・地域差があり(例:地下鉄「低高低低」「低低低高[17]」 東京「高高高高(大阪)」「低低低高[17](京都)」)、変化も起こっている。変化が最も進んでいるのは京阪神であり、「京阪式」と言えども京阪から離れた和歌山県田辺市付近・徳島県東部・高知県中東部に最も伝統的なアクセントが残る[18]。
現在の京阪神でのアクセント傾向としては、共通語の影響による東京式化あるいは中間化(例:花子「低低高[17]」→「高低低」)、拍内下降の消滅(例:雨ぇ「低高低」→「低高」)、一部2音節語での助詞が続く場合のアクセント変化の衰退(例:海「低高」海が「低低高」→海「低高」海が「低高低」)、2音節目での強勢(例:頭「高高低/高低低」→「低高低」 卒論「低低低高[17]」→「低高低低」)、東京の平板アクセント化に似た無核化(例:映画「高低低」→「高高高」)などがある。
隣接する中国地方と東海地方は東京式であり、違いが明瞭である。近畿地方内でも、中国地方に続く形で兵庫県但馬と京都府丹後、孤立した形で奈良県奥吉野に東京式の領域があり、また京阪式と東京式の接触地域や紀伊半島の一部では垂井式アクセントなどの特殊なアクセントがある。そうした地域では、1音節語の長音化が少なかったり連母音変化が盛んだったりと、音韻面でも他の近畿方言との共通性が薄い。これはアクセントと音韻のなんらかの関連を匂わせるものとして注目される。
[編集] 表現
- 活用
- 動詞連用形音便
- ア・ワ行五段動詞(ハ行四段動詞)に「た」「て」が接続する場合、連用形がウ音便となる(例:言うた
会 うて)。ただし3音節語と「食う」では音便が省略されやすい(例:思 た笑 て)。中近世にはサ行四段動詞のイ音便も盛んで、現在も京阪神以外の高齢層などに残る(例:指いた 出いて)。また「行てまえ」「持て来い」など一部の表現で略音便が起こることがある。
- ア・ワ行五段動詞(ハ行四段動詞)に「た」「て」が接続する場合、連用形がウ音便となる(例:言うた
- 特殊な五段動詞
- 「飽く」「借る」「染む(しゅむ)」「足る」「垂る」などは、関東では近世に一段化したのに対し、関西ではそれ以降も五段活用を保った(例:図書館で本を借った←→図書館で本を借りた)。ただし現在は共通語の影響で関西でも一段形が主流である。
- 形容詞連用形
- 形容詞と希望の助動詞「たい」の連用形には中世以来ウ音便を用い、
- 語幹がウ音/オ音で終わる→そのまま長音化。 (例)暑う 遅う
- 語幹がア音で終わる→オ音に変化させた上で長音化。 (例)
長 う 行きとう - 語幹がイ音で終わる(シク活用)→拗音化させた上で長音化。 (例)楽しゅう よろしゅう
- の3種類がある。しかし現在では活用が簡略化しており、特に後ろが「ない」「なる」などの場合、3は「楽しゅうない」→「楽しいない」のような拗音を直音化させた形、2は「
長 あない」「行きたあない」のような語幹と同じ形が主流となっている。これに長音の短音化が加わり、1から3全てが「暑ない」「長ない」「楽しない」のように語幹のみの無活用形となりつつある。 - 後ろに「て」「ても」が付く場合、「かって」(例:長かって おいしかって 無かって)と活用させることもあり、助動詞「たい」「んかった」などにも当てはまる(例:行きたかって 行かんかって)。また連用形に「に」を加えたり、婉曲な「連体形+こと」で代用することもある(例:よろしゅうに頼んます 楽しいことない)。
- 形容詞と希望の助動詞「たい」の連用形には中世以来ウ音便を用い、
- 関西では「ちゃうちゃうちゃう」「そやそやそや」など、テンポよく言葉を重ねることが共通語よりも盛んである。また京都には「あっつい暑いなぁ」や「きつきつ詰める」のような表現がある。
- 性差
- 共通語同様、近畿方言でも性差による表現の違いが存在する。とりわけ近代の大阪では「嫌やしぃ(=嫌だわ)」「買うとうわ(=買っとくれよ)」「見てみいで(=見てみなさいよ)」のような独特の女性語が発達した。近畿方言の性差の特徴は、女性語が男性層にも広まるケースが多いことである。「や」「へん」「はる」「やんか」などの基本的な表現の多くも、元は女性層で生まれた語である。
- 詠嘆表現
- 近畿方言に「あつーい!」「あちぃ!」のような語法はなく、「あっつぅ」「あぁしんど」のような語幹用法を多用する。「たい」にも当てはめることができる(例:海外行きたぁ)。近世から近代にかけての女性層では「語幹+やの」とも(例:あぁしんどやの)。
- 「ある」「いる」「おる」
- 人や生物の存在を表す際、東日本では「いる」を、西日本では「おる」を用いるが、京阪と滋賀では「いる」を中立以上の表現、「おる」をやや粗野で見下げた表現(「おります」「おられる」の形で用いる場合は除く)として両方を使い分ける(「いる」「おる」の使い分けは江戸・東京に影響されたものか)。「いる」に進行形を掛け合わせた「いてる・いとる」もあり、特に大阪で多用する。無生物の存在には共通語と同じく「ある」だが、紀伊の一部では古典用法そのままに無生物以外にも「ある」を用いる(例:婆さん、あるか?)。
- 共通語で「ある」の否定形を作れない(×あらない)のと同じく、近畿方言でも「あらん」は一般的でない。代用の表現には、「無い」に加えて、共通語「ありゃしない」に当たる「あらへん・あれへん」がある。共通語では「ありゃしない」よりも「無い」を多用するが、近畿方言では「あらへん・あれへん」の方が多用される。
- 「ある」の丁寧語に「御参らす」の転「おます」があり、大阪を中心に関西の広い地域で用いた。京都などでは「おはす」の転「おす」、大阪船場では「ござります」の転「ごわす・ごあす」とも。用法は「ございます」と同じで、「で」に付いて丁寧な断定を表したり(例:ほんまでおます)、形容詞の連用形に接続したりする(例:暑おます)。否定形はそれぞれ「おまへん」「おへん」「ごわへん・おわへん」。
- 近畿方言では敬語から侮蔑語に至るまで待遇表現が発達しており、顕著な近江弁では若年層でも7種類の待遇表現(「行かはる」「行かある」「行かる(行く+やる)」「行かる(行く+らる)」「行かんす」「行きやる」「行きよる」)を使い分けるという[19]。近畿方言の待遇表現の特徴は、第三者の動作に対して日常的に多用することであり、これは敬語表現で際立つ。
- 敬語体系は、紀伊を除き(紀州弁#敬語参照)京都を中心にして複雑に発達した。東京方言の敬語の基礎も江戸初期に京言葉の影響を強く受けて形成されたものであり、「お寒うございます」「しておりません」などに名残が見られる。明治以降は敬語体系の簡略化(「はる」への収斂)や共通語化が進むが、共通語では廃れつつある第三者への尊敬語の多用など、素材敬語的な性格は強く保たれている[20]。
- 「ます」
- 共通語と同様、敬体には「ます」を用いる。ただし勧誘「ましょう」が「まひょ」、否定「ません」が「まへん」などと転ずることがある。否定には「連用形+はしませぬ」の転で婉曲な「(「へん」と同じ接続)+しません・しまへん」もある(例:行かしまへん・行けしまへん)。過去形「ました」は大阪と京都でアクセントが異なり、大阪では「し」で下げるのに対して、京都では「ま」で下げる。近世大坂などでは「やす」とも言い(例:わかりやした)、これは江戸にも伝わった。
- 連用形+「なはる」 (例)行きなはる
- 「なさる」の転。語頭に「お」を付けることも多い。明治以降「やはる」「はる」などの変化形が広まり「なはる」は古風な表現となったが、「はる」の命令形は普及しなかったため、命令表現には「なはる」の命令形「なはれ」や「なはい」(転じて「ない」とも)が用いられ続けた。「ておくれ」と共に用いることが多い(例:行っとくんなはれ・なはい)。丹波・丹後では「なる」。
- 五段ア音・その他連用形+「はる」 (例)行かはる
- 「行きなはる」→「行きやはる」→「行きゃはる」と転じたもの。相手や第三者に対する軽い敬意を表す。京阪を中心に広い地域で用いる。大阪では「なさる」への回帰意識から五段動詞でも「連用形イ音+はる」とすることも多い(例:行きはる)。「て」に接続する場合は「てはる」と「たはる」の2通りがあり、「たはる」は主に京都で用いる(例:行ってはる 行ったはる)。京都などでは第三者の動作を表す際に「はる」を用いる頻度が特に高く、身内や同輩以下の動作にも敬意をほとんど伴わずに用いることがある(例:兄ちゃんが泣かさはった)。
- 「(お)連用形+やす」 (例)お行きやす
- 「はる」よりも敬意の高い表現で、丁寧な命令表現としても多用。「ておくれ」と共に用いることが多い(例:行っとくれやす・行っとくりゃす)。金田一春彦によると「お 連用形+遊ばせ」が「お行きあすばせ」→「お行きあす」→「お行きやす」と転じたものという。京都で盛んな表現だが、それ以外の地域でも「ごめんやす(=ごめんなさい・ごめんください)」のように慣用表現で用いることは多かった。「お行きやしとくれやす」のように「やす」を重ねると極めて高い敬意を表す。「て」に接続する場合は「て御居やす」の転「といやす」とする(例:行っといやした)。くだけた表現に「やす」+「や」の転「やっしゃ」(例:ごめんやっしゃ)などがある。
- 連用形+「て」+断定の助動詞 (例)行ってや 行っとってです
- 連用形+「やる」 (例)行きやる
- 「ある」を待遇の補助動詞に転用したもの、近世には相手の動作に対して軽い敬意を、近代以降は同輩以下の第三者の動作に対して親しみの意を加える。大阪などで主に女性が用いるが、現在は衰退が進む。
- 連用形+「おる・よる」 (例)行きおる 行きよる
- 「おる」を待遇の補助動詞に転用したもので、同輩以下の第三者の動作や作用に対して軽い侮蔑・苛立ち・不快などの意を加える。男性のくだけた会話では侮蔑の意をほとんど伴わずに多用されることもある。
- 侮蔑語
- 近畿方言の侮蔑語としては「くさる」「さらす」「けつかる」などがあり、なかでも「けつかる」は非常に強烈な悪態語である。「くさる」は連用形と「て」に、「さらす」は連用形に、「けつかる」は「て」に付けて用いる。「けつかる」単体では「ある」「いる」の卑語(ただしほぼ死語)を、「さらす」単体では「する」の卑語を表す。
- 丁寧な表現
- 京阪では相手に対してなるべく丁寧に、へりくだって表現しようとする傾向が強い。近代の商家で「さようでござりましてござります」のような二重敬語を多用したり、「ぶぶ漬けでも…[23]」や「ぼちぼちでんなぁ」のような婉曲法が発達したりした。改まった会話だけでなく日常会話でもその傾向はあり、連用形表現の多用(後述)、「どいたれや」「堪忍したって」のような第3者的な婉曲な命令・依頼表現(後述)などはその典型と言える。共通語では過剰敬語とされがちな「(さ)せてもらう・いただく」も関西から全国に広まった表現という[24]。
- 敬称の「さん」(くだけた場面では「はん[25]」とも)も日常的に多用し、「おはようさん」「おめでとうさんです」などの慣用表現、「えべっさん」「おひがしさん」「すみよっさん」のような神仏社寺名、通常のオフィスマナーではよくないとされがちな団体・法人名などにも盛んに「さん付け」が行われる。「お芋さん」「お豆さん」「おくどさん」「飴ちゃん」など、生活に身近な物(特に飲食物)も盛んに敬称を付ける(女房言葉を庶民が応用したものという)。
- 連用形+「てる」「とる・とおる」
- 「ている」「ておる」の転。西日本で盛んなのは「とる・とおる」であり、近畿地方でも広く用いるが、京阪と滋賀では東日本方言的な「てる」も併用する。「いる」「おる」の使い分けと同様、「てる」を中立な表現、「とる・とおる」をやや粗野で見下げた表現とする。
- 他の西日本方言では「とる・とおる」は結果・状態、「おる・よる」は進行・継続を表す。大阪などでも江戸後期以前はそうであり、播磨や丹波などでは現在もこの用法を保つ。播磨・神戸では「とる」「よる」は「とう」「よう」と転ずることが多く、播州弁と神戸弁の一大特徴とされる。 (例)こけよった!(危うく転ぶところだった!) 桜が散っとう(桜が散ってしまっている) 桜が散りよう(桜が今まさに散っている/散ろうとしている)
- 連用形+「たある・たる」
- 「てある」の転。紀伊・和泉などでは「ちゃある」。共通語とは「ている」「てある」の使い分けが異なる場合がある(例:たかが知れたある←→たかが知れてる)。また「ある」を「いる」の意で用いる紀伊の一部では「てある」を「ている」の意で用いる。
- 連用形+「てまう」
- 「てしまう」のくだけた表現。東京の「ちまう」「ちゃう」に当たるが、「できちゃいます!」のように宣伝文句などで多用することはない。
- 連用形+「かける」
- 「かける」には「…し始めた途中」と「もう少しで…し始める」の二つの意味があるが、関西では前者で用いる傾向が強い。例えば「ご飯を食べかけた時に電話が鳴った」の場合、東京では「さあ食べようという時」と捉える人が多いのに対し、関西では「2、3口ほど口に含んでいた時」と捉える人が多い。また「先に行きかけといて」(先に行き始めておいて)のように「かける」を依頼・命令表現でも用いる。
- 連用形+「とく」「んとく」
- 「とく」は「ておく」の転、「んとく」は「んとおく」の転。共通語では「とく」「ないでおく」は「前もってその動作を済ませておく」または「その状態で放置しておく」といったニュアンスで用いるが、近畿方言ではそうしたニュアンスなしに用いることがあり、特に「行っとき」「行かんとき」「行かんといて」のように軽い命令・禁止表現で多用する。
- 断定の助動詞
- 「や」 (例)ほんまや
- 室町以降「である」の変形「であ」が「ぢゃ(じゃ)」、江戸後期以降さらに「や」と転じて成立(関東の「だ」も「であ」の転)。「じゃ」は関西の大部分では大正までに取って代わられ、罵倒など強い口調の際に終止形を用いるのみとなった(例:何見とんじゃ!)。活用での「だ」との違いには、「であって」に近い過去中止形「やって」(例:実家が貧乏やって、若い頃苦労したわ)がある、仮定形「なら」はほとんど用いない(後述「仮定」参照)などがある。
- 指示語「こそあど」との接続では、「そ」「ど」の場合「そうや」「どうや」→「そや」「どや」と短音化することが多い。さらに「せや・しや」「でや」などと転ずることもある。
- 共通語では「だから」「だが」「だったら」のように「だ」を文頭で用いることがあるが、「や」には当てはまらない(例:○そやさかい ×やさかい)。ただ若年層では共通語の影響から「やけどさぁ」のように文頭でも「や」を用いるようになった。
- 体言に付く場合は、「の」を介して「のや」とする。くだけて「んや」「ねや」「にゃ」などとも。「や」との接続は、「のや/んや」は「なのや・なんや」(例:ほんまなんや)、「ねや」は「やねや」(例:ほんまやねや)とする。共通語「のだ・んだ」と違い、敬体にも接続可能(例:○行きますのやで←→×行きますのだよ)[26]。「ねや」がさらに転じたものが後述「ねん」である。
- 断定「や」に似たものに、「嘘やない(か)」のような「やない(か)」がある。これは「ではない(か)」の転であり「や」とは別物だが、「や」同然に認識され多用される。このほかにも「や」に引かれてか、「やら」の転「や」(例:何や知らんけど なんやかんや)、終助詞「や」(後述)、「やんか・やん」(後述)など、近畿方言では「や」を多用する傾向がある。
- 「だす」「どす」 (例)ほんまだす・どす
- くだけた文での助詞の省略は東京よりも盛んである。頻繁に省略が起こるものに目的格「を」や後述「と」「て」があるほか、1音節語の後は語の長音化とともにほぼ省略が起こる(例:目ぇ痛い)。
- 引用の格助詞
- 「言う」「思う」の前の「と」「て」は省略が頻繁に起こる(例:田中さん言う人 田中さんや思た)。とりわけ「言う」の前は省略の頻度が高く、改まった会話でも起こりやすい。「て」前の促音化は共通語ほど起こらず、「や」に接続する場合も「やて」とすることが多い(例:田中さんて人 そうなんやて)。また「と言う」の縮約形は「つう」ではなく「ちゅう」とする(例:田中さんちゅう人)。
- 終助詞
- 近畿方言でも様々な終助詞を用いる。敬体にも盛んに付けたが(例:あきまへんがな ほんまですねん)、現在は「敬体+わ」「敬体+やん」以外は廃れつつある。「だす・どす・です」「ます」などに付けた時、「す」が促音化・撥音化することがある。これは大阪で顕著であり、大阪弁らしさを醸し出す一因となる(例:儲かりますか→儲かりまっか ぼちぼちですな→ぼちぼちでんな)。
- 「ねん」
- 先述「ねや」の転で、「ね」とも。撥音で終わることから「ねや」より語感は柔らかいが、相手への自己主張の意は強い。「や」との接続は「ねや」と同じ(例:ほんまやねん)だが、若年層の一部で「や」を介さず直接体言に付ける例がある(例:好きねん)。「や」からの派生意識が薄れたため「やねんや」や「やねんやん(か)」(若年層)のような表現も可能(例:ほんまやねんやろ。共通語に直訳すると「本当だのだのだろ」)。
- 「てん」
- 過去「た」+「のや・ねや」の転で、「のや・ねや→ねん」の類推から生じた。和泉など一部では、「た」に「ねん」を直接付けた「たねん」とも。
- 「な」
- 終助詞としてはもちろん、間投助詞や呼びかけの感動詞としても多用する(例:なぁなぁ、私なぁ、昨日なぁ、…)。現在は共通語「ね」も併用するようになり、目上に対してや改まった場での「な」は避けられるようになった。似た表現に中近世に多用された「のう」があり、現代ではやや粗野な表現として主に男性が用いる。英国の翻訳会社Today Translationsの調査によると近畿方言の「Naa(=なぁ)」は世界で最も翻訳が難しい言葉第3位であるという[30]。
- 「わ」
- 東京の女性語と同形だが、近畿方言の「わ」は下降調で男女とも多用する。ただし「わ」に抑揚を付けて詠嘆の意を強める「わぁ」は男性はあまり用いず、東京の女性語「わ」に近いと言える。また「や」「ねん」に「わ」を付けるのもやや女性的とされる。かつては「わ」の強調表現に「わい」も多用したが、現在は年配男性以外ほとんど用いない。「な」とともに用いることも多い(例:ほんまやわな)。促音化すると「っさ」となる(例:行きまっさ)。
- 「で」
- 強調・注意・問いかけなどを表す。「ぜ」の転だが、東京の「ぜ」とは、「行こうぜ」のような勧誘用法はあまり一般的でない、「よ」程度の軽い意味合いで女性も多用する[31]、といった違いがある。
- 「ど」
- 「ぞ」を強めた言い方。「ぜ」→「で」と比べて、「ど」は男性的で粗野な印象が強い。
- 「や」
- 命令・勧誘・禁止などの文末で共通語以上に多用する。尻下がりに強く言い切るか、尻上がりに柔らかく発音するかでニュアンスが変わる。共通語と違い、詠嘆の終助詞として形容詞や助動詞の終止形には付けない(例:×もうええや←→○もういいや ×わからんや←→○わかんないや)。
- 「いな」「いや」
- 近世に多用された表現で、様々な文末に付けて強調・感動などを表す。「いな」と「いや」では「いや」の方がやや強い意味合い。現在では連用形命令表現の強調(後述)や「かいな・かいや」「わいな・わいや」「どいな・どいや(「兵庫神戸のなんどいや」として神戸弁の特徴とされた)」などで残る。
- 「がな」
- 主張・啓発・たしなめ・慰めなどを表す。京阪神以外では「が(あ)」などとも。
- 「え」
- 柔らかな主張・問いかけなどを表す。「京どすえ」の諺にあるように、京都の女性語としてよく知られる。促音化すると「っせ」となる(例:行きまっせ)。
- 「の」
- 柔らかな疑問を表す。女性的な表現だが、関西では男性も多用する。「ん」「のん」と撥音化することがあり、「のん」は特に大阪で多用する(例:何するん/するのん?)。「のん」は準体助詞としても用いる(例:それは私のんや)ほか、女性層では軽い主張にも用いる(例:私東京行くのん)。「や」との接続は「の・のん」は「やの・やのん」、「ん」は「なん」とする(例:ほんまやの・やのん・なん?)。
- 「よ」「さ」
- 共通語の影響で現在使用が盛んになっている表現。共通語の影響を受ける以前は、「よ」は一部地域(紀伊や滋賀など)を除いて命令形の後に用いるのみ、「さ」は京都などで「わさ」など限られた表現で用いるのみだった。
- 疑問・反語
- 共通語と同様、通常は「か」、念を押す場合は「かい」を用いる。「かい」に含みを持たせる場合は「かいな」「かいや」とする。「か」の代わりに「かえ」または「かい」の転「け」を用いることもある。京阪神では粗野な表現として男性がくだけた会話で用いるが、「か」と同等あるいは丁寧な語として多用する地域もあり、特に河内弁の特徴として知られる。地域によっては「こ」とも。なお「何だっけ?」のような「け」とは無関係である。
- 「やんか」「やん」
- 反語的な断定や主張を表す。「やんか」は明治後期・大正頃に大阪の若い女性層から広まった表現で、「やないか」の転とする説と「や」+「んか」とする説がある。地域・個人によっては「け」を用いた「やんけ」や、強めた言い方「やんかいな」「やんかいさ」なども。「やん」は「やんか」の省略で、戦後に若い女性層を中心に広まった。関東の新方言「じゃん」とは、敬体に接続が可能なこと(例:ほんまですやん)や「だろ?」に近い用法(例:まさか…嘘やん?!)[32]、語尾を下降させる婉曲な伝達表現(例:今度私東京行くんやん↓・やんかぁ↓)、「だよな/だよね」に当たる「やんな」(例:ほんまやんな)などの違いがある。また「ねん・てん」に「やんか」を接続させる場合、「ねんか・てんか」と省略することがある(例:ほんまやねんか)。
- 「かて・かって」
- 原因・理由
- 関西で広く用いた表現に「さかい」がある。中世末の成立とされ、語源については名詞「境」の転用との説や古語「け」に由来するとの説がある。「さかいに」「さかいで」「さけ」などとも。「大阪さかい」の諺があるほどに近畿方言を代表する表現だったが、現在は共通語「から」に押されて死語に近い。「さかい」のほか、大阪などの「よって・よってに」、京都(特に女性層)などの「し」(例:そやし言うたやろ)などもある。
- 否定
- 未然形+「ん」、五段ア音またはエ音・上一段イ音またはエ音・下一段エ音+「へん」 (例)行かん 行かへん 行けへん
- 「ん」は文語助動詞「ず」連体形から派生した「ぬ」の転。「へん」は「ん」の強調表現「連用形+はせん」が幕末から明治にかけて「行きはせん」→「行きやせん・行きやへん」→「行きゃせん・行きゃへん」と転じたもの。明治以後「へん」は急速に普及し、強調の意が薄れるとともに「ん」を圧倒するまでになった。紀伊・奈良・三重などでは「やん」とも。
- 「ア音+へん」は京都で、「エ音+へん」は大阪でそれぞれ盛んな語法。「へん」の前が1音節の場合は前音を伸ばす形が主流である(例:出えへん)。上一段に接続する場合「ひん」に転ずることがあり、特に京都で顕著である(例:起きひん 見いひん 居いひん)。サ変の否定は「しやへん」の転「せえへん」「しいひん」(京都)、カ変の否定は「きやへん」の転「けえへん」「きいひん」(京都)などとなる。カ変に関しては、共通語「来ない」に影響された「こおへん」が主流となりつつある(播磨方面から広まり出したという)。
- 活用は共通語「ない」ほど発達しておらず、活用形が全て同じの連用形・終止形・連体形しかない。連用形は「んで」「んでも」で用い(例:行かんでもええ)、形容詞「無い」と接続する場合は「んこと」(例:行かんことない)、動詞と接続する場合は「んよう」(例:行かんようになる)で代用する。ただし若年層では共通語「なく」と「ん」の混合形「んく」が広まりつつある(例:行かんくても 行かんくない 行かんくなる)。
- 未然形+「な」 (例)行かなあかん
- 「ねば」→「にゃ」→「な」と転じたもの。後ろに「ならん」が付く場合は「なならん」より「んならん」(「ら」は省略することも)とすることが多い。
- 未然形+「いで」 (例)行かいで
- 共通語「ずに」に相当。「未然形+んで」あるいは「未然形+ずて」の転という。「いでか」の形で反語表現にも用いる(例:行かいでか)。後述「んと」に押されて京阪神では死語に近い。
- 未然形+「んと」 (例)行かんとあかん 仕事もせんと遊んでばかり
- 「…ねば」を表す場合と「…ずに」を表す場合があり、前者は「ぬと」の転、後者は「ずと」の転で、明治期に「んと」に集約されたという。集約されてもアクセントの違いは残っており、前者は平板に、後者は「ん」で下げる。
- 過去形
- 否定の過去形は室町以来の「なんだ」(例:行かなんだ)があり、明治には「へん」成立に伴って「せなんだ」の転「へなんだ」やその変形「へんなんだ」なども生まれた(例:行かへなんだ 行かへんなんだ)。しかし大正頃から共通語「なかった」と「ん」「へん」の混合形「んかった・へんかった」が登場し、現在「なんだ」の類は死語に近い。
- 不可能
- 他の西日本方言と同様、近畿方言では能力による不可能と状況による不可能を区別する。しかし現在では、区別のない共通語の影響から区別が曖昧化しつつあり、両者の混合形(例:よう泳げん・よう泳がれへん)が用いられるようになるなどしている。
- 能力による不可能 「よう 未然形+ん」 (例)浮き輪なしには よう泳がん
- 行う能力が無くて、行う立場になくて、行うのが憚られて、行う気になれず、到底出来ないという意味合いを表す。「よう」は「能く」のウ音便形であり、「良う・善う・好う」と違い平板に発音する。古語「え…ず」と同義で、それから派生したとされる。
- 状況による不可能 未然形+「れへん」 (例)クラゲがおって泳がれへん
- 大阪など通常の否定を「エ音+へん」とする地域で多用する。可能動詞を用いない古い表現だが、これは可能動詞を用いた不可能表現と「エ音+へん」の同音衝突を避けるために古形が保たれたもの。京都など通常の否定を「ア音+へん」とする地域は可能動詞を用いた「エ音+へん」を多用し(例:泳げへん)、「れへん」を多用する地域とそうでない地域の者同士で意思疎通に支障をきたすことがある。例えば、京都人が「(都合が悪くて)行けない」の意で「行けへん」と言ったのを、相手の大阪人は「(行きたくないから)行かない」と取り違えてしまうなど。
- 命令
- 近畿方言では様々な命令表現が発達し、強い命令と穏やかな命令を場面に応じて細かに使い分ける。
- 命令形表現
- 五段・カ変動詞の命令形は共通語と変わりないが、サ変・一段動詞の命令形には文語命令形「…よ」の転「…い」を用い(例:見よ→見い)、そのうちサ変と下一段の場合は前のエ音に引かれて「…え」と発音することが多い(例:
為 よ→せい・せえ 食べよ→食べえ)。女性は通常連用形表現を用いることが多く、前田勇は「若しも大阪女にして『上れ』だの『飲め』『待て』だの云つたとするならば、それは男か鬼のやうな女であらう。」とまで述べている[33]。なお「しろ」「食べろ」など「ろ」で終わる命令形は本来東日本方言であり、明治以降に標準語として東京から伝播するまで関西では用いなかった。命令形(「…ろ」を含む)の後ろに付ける終助詞としては「よ」「や」が一般的。
- 五段・カ変動詞の命令形は共通語と変わりないが、サ変・一段動詞の命令形には文語命令形「…よ」の転「…い」を用い(例:見よ→見い)、そのうちサ変と下一段の場合は前のエ音に引かれて「…え」と発音することが多い(例:
- 連用形表現 (例)行き
- 穏やかな命令表現。「連用形+なされ」の後略。後ろには「な」「や」を付けることが多いが、若年層を中心に「よ」を付けることもある。1音節語ではほぼ必ず、1音節語以外でも穏やかに念を押す場合に、長音化(ただし下一段は「え」ではなく「い」とすることが多い)が起こる(例:
為 ぃ来 ぃ 行きぃ 食べぇ・食べい)。一段動詞では連用形表現と命令形表現は同形になるが、アクセントによる区別があり、例えば「見てみい」「食べえ」は「い」「え」で下げると命令形表現、平板だと連用形表現を表す。また一段動詞では「い」をより伸ばして念を強めることがある(例:食べいいな・いや)。京都などでは「お行き」「お見」のように「お」を付けて丁寧語化させることもある。
- 穏やかな命令表現。「連用形+なされ」の後略。後ろには「な」「や」を付けることが多いが、若年層を中心に「よ」を付けることもある。1音節語ではほぼ必ず、1音節語以外でも穏やかに念を押す場合に、長音化(ただし下一段は「え」ではなく「い」とすることが多い)が起こる(例:
- 否定の助動詞+疑問の終助詞
- 「行かんか」のような否定の助動詞と疑問の終助詞による表現も多用する。「かい」を用いるものはとりわけ強い命令を表す(例:行かんかい!)。動詞未然形に付くものだけでなく、幾分穏やかな命令として「連用形+ん+疑問」(例:行きんかいな)や「て+ん+か」(例:行ってんか)もある。
- 「て」を用いた表現
- 「て」も共通語と同様に多用する。後ろには「な」「や」を付けることが多い(例:行ってな・行ってや)。「てえ」と伸ばすとやや甘えた表現になる(例:行ってえなぁ・やぁ)。
- 以上のほかにも、京都の女性層で同輩以下に用いる「よし[34]」(例:行きよし)など、各地に特有の表現がある。
- 禁止
- 命令表現と同様、禁止表現にも通常のものと連用形や「て」を用いる穏やかなものがある。
- 終止形表現
- 共通語と大きく変わらないが、サ変の場合「するな・すんな」に加えて「すな」の形も用いる、「な」を強める場合「なよ」ではなく「なや」とする(例:行くなや)などの違いがある。
- 連用形表現 連用形+「な」 (例)行きな
- 穏やかな禁止表現。「連用形+なさるな」の後略。「な」前は長音化することがある(例:しぃなや)。「な」のほかに「なや」「ないな」なども用いる(例:行きなや 行きないな)。命令表現と同形になることがあるが、アクセントによる区別があり、例えば「行きな」を平板に発音すると命令、「な」で下げると禁止を表す。
- 「て」を用いた表現 (例)行ってな
- 命令表現だけでなく禁止表現でも「て」を用いた表現がある。用法は連用形禁止表現に類し、「てな」「てなや」「てないな」などの形で用いる。命令表現と同形になることがあるが、アクセントによる区別があり、例えば「行ってな」を平板に発音すると命令、「な」で下げると禁止を表す。
- 意志・勧誘
- 推量
- 明治以降「や」を用いた「終止形+やろう」が主流で、「行ったろう」「赤かろう」「なかろう」などの表現は共通語以上に古めかしいものとなっている。丁寧形も「敬体終止形+やろ」(促音化すると「っしゃろ」)であり、「だす」「どす」の推量形も共通語「でしょう」のような形は取らず「だすやろ・だっしゃろ」「どすやろ・どっしゃろ」とする。また「だろう」は男性的なニュアンスが強いが、「やろう」は女性も多用する。
- 打ち消し推量も明治以降は「(へ)んやろ」が主流。かつては「まい」を用いたが、共通語にはない「未然形+う+まい」という形もあり(例:しょまい 行こまい 食べよまい)、各地で「未然形+う+まい(か)」を勧誘表現に用いた(例:早う行こまいか)。
- 仮定
- 仮定は「連用形+たら」にほぼ一本化されている。例えば共通語では「行ったら」「行けば・行きゃ」「行くと」「行くなら」「行くのなら」「行くのだったら」などと言い分けるところも、近畿方言話者は「行ったら」と「行くのやったら」で済ませる傾向がある。特に「なら」は「ほんなら・ほな」(「それなら」の転)や「さいなら」など慣用表現以外ではほとんど用いない。
- 授受
- 共通語とは、「てやる」を「たる」や「ちゃる」(紀伊・和泉など)と縮めることが多い、「Aが…してくれる」よりも「Aに…してもらう」の形式を好む、「欲しけりゃくれてやる」のような自分から相手への動作に対する「くれる」を用いない、「邪魔やさかい退いたれや(=邪魔だから退いてくれよ)」「堪忍したって(=勘弁して)」のように「やる」を用いた第三者的で婉曲な命令・依頼表現がある、といった違いがある。また「やる」の強い言い方に大阪などの「こます」があり、「行てこましたろか(=やっつけてやろうか)」のような喧嘩言葉や、自分の動作に諧謔性を込めるのに用いる(例:何もええこと無いし、もう寝てこまそ)。
- 使役
- 共通語ではやや古風となった「す」「さす」を近畿方言では現在も常用する。ただし活用は「ささん(=させん)」「さした(=させた)」のように五段化して用いることが多い。「さす」を「連用形+やす」とする地域もある(例:見やす 来やさん)。
- 「と違う(か)」 (例)チャウチャウちゃうんちゃう?
- 共通語「ではない(か)」に当たる表現には「やない(か)」に加えて「と違う(か)」がある。「と」は頻繁に省略が起こる。「違う」は、終止形・連体形と「ます」に続く連用形では「ちゃう」「ちゃいます」と転ずることが多い。近年若年層を中心に「違うかった」「違うくて」のように「違う」を形容詞的に活用させることがある(本来の形は「ちご(う)た」「ちご(う)て」)。
- 共通語「○のよう・んな(に)」に当たる表現に「○ない」がある。語源については、「○のよう」の転とする説や「○概」の転とする説(「○ŋai」→「○nai」)[36]がある。 (例)調子どないや? どないもこないも
- よく知られた京阪の一人称には、少女や若い女性が用いる「うち」(複数形「うちら」は男性も使用)、「わたい」の転「わて・あて」(元は女性語で、のち男性も使用)、「わし」の転で男性が用いる「わい」(二人称でも使用)がある。現在「わて・あて」「わい」は年配者以外ほとんど用いない。
- 京阪では二人称には東京などと同様「あんた」「おまえ」を多用する。「あなた」は江戸後期に一度死語化しており、丁寧な二人称には「おたく(さん)」や「あんたはん」(くだけた形で「あんさん」とも)、「おまはん」(「御前様」の転。同輩以下に対して)などを用いた。
- 「自分」や「われ」「おのれ・おんどれ」など一人称を二人称で用いる例があるが、これは関西に限ったものでなく、東京の「てめえ」などと同様のものである。
[編集] 語彙
現在近畿地方で広く用いる語彙の多くは、京阪で生まれて各地へ伝播したものである。近畿地方外に広まるものも少なくなく、「おおきに」が西日本各地や北前船寄港地でも用いられたのは好例である。また大阪が近世から近代まで商工業の拠点だった歴史から、「ちょろまかす」「勉強する(=安くする)」「ぼったくる」「ぼろい(=労せず儲かる)」など大阪の商業用語のいくらかは全国に広まっている。「関東煮」「レーコー」など飲食関係の語彙については近畿地方#食文化を参照。
- あかん【明かん】 - 駄目だ。いけない。「埒があかぬ」の略。「あかへん」とも。
- あかんたれ【明かん垂れ】 - 駄目な奴。弱虫。小心者。
- あこ・あっこ【彼所・彼処】 - 「あそこ」の転。
- あじない・あんない【味無い】 - 美味しくない。まずい。京都などの言い方。
- あて - 酒の肴。お通しのことは「突き出し」と言う。
- あほう・あほ【阿呆・阿房】 - 愚かなこと。関東の「馬鹿」に対する。強めて言う場合「あっぽ(う)」などとも(主に子供)。
- あほほど【阿呆程】 - (馬鹿みたいに)数量が甚だしい様子。
- あほんだら【阿呆陀羅】 - 大馬鹿野郎。
- あんじょう - 上手に。上手く。「味良く」の転。 (例)あんじょう頼んまっさ(上手く頼みますよ)
- いかのぼり・いか - 凧。共通語「たこ」がタコに由来するのと同様、姿がイカに似ることに由来。
- いきる【熱る・熅る】 - 気持ちが高ぶる。熱を上げる。怒る。転じて、調子に乗る。粋がる。名詞形「いきり」で調子に乗る奴の意。 (例)あいつ最近いきっとんな(あいつ最近調子乗ってるよな)
- いけず - 意地悪。近世には「いかず」とも。元は「一筋縄では行かぬ」ことから、強情者・頑固者・ならず者などを指した。
- いこる【熾る】 - 「おこる」の転。炭火が安定して燃えている様子。 (例)炭がええ感じにいこっとるな(炭が良い感じに熾ってるな)
- いちびる - 調子に乗る。ふざける。名詞形「いちびり」でお調子者の意。
- いと - 娘。お嬢ちゃん。「いとけない(=幼い)」あるいは「いとしげない(=愛しい)」の略か。「ぼん」の対義語。 (例)いとはん(お嬢ちゃん)
- いぬ【去ぬ・往ぬ】 - 帰る。去る。古語「いぬ」の残存。 (例)とっとといね!(とっとと失せろ!)
- いや - 「い」に抑揚を付けて、女性が多用する。「おやまあ」などに相当。
- いらう【弄う】 - いじる。触る。弄ぶ。「いろう」とも。 (例)かさぶたいろうたらあかん(かさぶたを弄っては駄目だ)
- いらち【苛ち】 - 短気者。せっかち。「いらつ」(苛立つ、焦る)の名詞形。大阪人気質を端的に表す言葉とされる。
- いわす - やり込める。やっつける。「グウの音を言わす」ことから。転じて、せしめる。(体を)壊す。 (例)肩をいわした(肩を壊した)
- ええ - 「よい」の転(古語「えし」の転とする説もある)。終止形・連体形のみで用い、「えかった」「えければ」のような語法はない。関東の「いい」は「ええ」がさらに転じたもの。丁寧表現には「よろしい」を多用し、「ええです」は一般的でない。また「かわええ」という表現は誤りである(「可愛い」は「かわ良い」ではなく「かわゆい」の転であるため)。 (例)ええし(良家。金持ちの家。「ええ衆」の転)
- えげつない - 強烈な。卑劣な。あくどい。露骨な。かつては「いげちない」「いげつない」と言った。
- えずく - 吐き気を催す。吐く。吐き気が込み上げた時の声(オエッ)と「衝く」が組み合わさったものという。
- えらい【偉い・豪い・苛い】 - 立派な・大変な・大変に・とても・とんでもないの意で多用するほか、一部で「くたびれる」の意でも用いる(「しんどい」普及以前は広く用いた)。大変に・とてもの意で用いる際、本来の連用形「えろう」よりも「えらい」が多用される[37]。 (例)えらい遠いとこまで行ってえらなったわ(とても遠いところまで行ってくたびれたよ) えろう・えらいすんまへん(どうもすみません)
- えんりょのかたまり【遠慮の塊】 - おかずの最後の余り物。互いに遠慮し合ってなかなか箸が付かないことから。
- おいえ - 座敷。台所を指すことも。「御上」の転という。「おいえさん」で(町家の)奥さんの意。 (例)おいえへ上がっとくれやす(座敷へお上がり下さい)
- おいでやす【御出でやす】 - 歓迎の意を表す挨拶言葉。より丁寧で幾分改まった表現に「お越しやす」がある。
「おいでやす」と地名(滋賀県野洲市)とをかけたコピー - おいど【御居処】 - お尻。女房言葉由来。
- おおきに・おおけに【大きに・大けに】 - 大いに。感謝の意を表す挨拶言葉としても用いるが、これは「大きにありがとう」などの後略。
- おかん、おとん - 「お母さん」「お父さん」のくだけた言い方。
- おことおお・おことう(さん)【御事多(さん)】 - (大晦日など)仕事納めの挨拶言葉。相手の年末の多忙に対するねぎらいと敬いを表す。
- おしピン【押しピン】 - 画鋲。
- おちょくる - からかう。小馬鹿にする。
- おとつい - 一昨日。「遠つ日」の転。
- おはようおかえり(やす)【御早う御帰り(やす)】 - 出立を見送る挨拶言葉。「早く帰って来てください」の意であり、「さっさと帰ってください」ではない。
- おぼこい - 幼い。子供らしい。あどけない。うぶな。「産子」の転「おぼこ」の形容詞形。
- おもろい - 面白い。否定形「おもろ(う)ない」はくだけて「おもんない」とも。元は男性語。
- おやかましさん・おやかまっさん【御喧しさん】 - 辞去する際の挨拶言葉。
- ○かいせい【回生】 - 大学○年生。厳密には在学年数を指し、留年等で在学年数と在籍学年が異なる場合は「4年次6回生」(入学して6年目の大学4年生)などとする。元は京都帝国大学の用語だが、関西一円の学生言葉となっている。 (例)何回生?(何年生?) 同回生(同学年の学生) 上回生(上級学年の学生)
- かしわ【黄鶏】 - 鶏肉。
- がしんたれ【餓死垂れ】 - 意気地無し。甲斐性無し。能無し。
- カッター(シャツ) - ワイシャツ。狭義では学生用シャツを指す。ワイシャツ#日本語での呼び名についても参照。
- かなん【適ん・叶ん・敵ん】 - 嫌だ。やり切れない。堪らない。「かなわん」の略。「かなへん」とは言わない。
- かまへん・かめへん【構へん】 - 構わない。「かまわへん」の略。「かまん」とは言わない。
- ×がめつい - 大阪弁と認識されがちな語彙だが、実際は劇作家菊田一夫が1959年に発表した戯曲『がめつい奴』で広めた造語である。がめつい奴#形容詞「がめつい」の造語を参照。
- かんこくさい【紙子臭い】 - 焦げ臭い。きな臭い。
- かんてき - 七輪。転じて、癇癪。 (例)かんてき者(癇癪持ち)
- きがわるい【気が悪い】 - 感じが悪い。嫌な感じ。
- ぎょうさん【仰山】 - 数量・程度が甚だしい様子。「ようさん」とも(「ようけ」との混合か)。
- けったい - 奇妙。変。不思議。おかしい。「卦体」または「希代」の転という。
- けったくそがわるい【けった糞が悪い】 - 癪に障る。忌々しい。気味が悪い。「けった糞」は「けったい」の派生語。
- ごあさって【五明後日】 - 「今日」から数えて五日目、つまり「しあさって」の翌日。東京では「やのあさって」。ちなみに「しあさって」で「あさっての翌日」を指すのは関西から東京に伝わった用法である[38]
- こうと【公道】 - 質素で地味だが上品さを兼ね備えている様子。 (例)こうとなお部屋どすなあ(質素ななかに上品さのあるお部屋ですなぁ)
- こける【転ける】 - 転ぶ。倒れる。他動詞形は「こかす」。
- こそばい・こしょばい - くすぐったい。かゆい。「こそばゆい」の略。名詞形「こそぼる」でくすぐるの意。
- ごつい - でかい。強い。いかつい。ひどい。1970年代以降の大阪などでは主に「ごっつ」の形で強調の副詞としても用いる。 (例)ごっつやばい(かなりやばい)
- ごんた【権太】 - 腕白小僧。やんちゃ坊主。強めた言い方は「ごんたくれ」。人形浄瑠璃『義経千本桜』の登場人物名から。
- さし【差し】 - 物差し。定規。
- さぶいぼ【寒疣】 - 鳥肌。ぞっとした時のものは「ぞぞ毛」とも。 (例)あー、さぶいぼが出た(あー、鳥肌が立った)
- さら【新・更】 - 新しいこと/もの。共通語でも「更地」「まっさら」などの表現に残る。 (例)さらの皿(新品の皿)
- しい - 「する」の連用形名詞化。…しがちな人。…してばかりの人。「要らんことをする」→「いらんことしい」や「ええかっこをする」→「ええかっこしい」や「真似をする」→「まねしい」など。
- しばく - 叩く。引っぱたく。バブル期頃には「茶ぁしばけへん?」「ネズミしばけへん?」のように、…を飲食しに行く・…へ遊びに行くの意で用いるのが流行した。
- しゃあない・しやない - しょうがない。仕方がない。「
仕様 (が)ない」の転。 - じゃまくさい【邪魔臭い】 - 面倒臭い。 (例)邪魔臭い仕事やなぁ(面倒臭い仕事だなぁ)
- じゅんさい【蓴菜】 - 捉えどころが無い。転じて、どっちつかず。でたらめ。いい加減。ジュンサイはぬめりがあって箸で掴みにくいことから。 (例)じゅんさいなことすな(いい加減なことをするな)
- しょうもない・しょうむない【仕様も無い】 - つまらない。面白くない。くだらない。
- しるい・しゅるい【汁い】 - 水気が多く、湿っている様。「じるい・じゅるい」とも(「じゅくじゅく」などからの類推か)。 (例)雨で道がじゅるいなあ(雨で道がぬかるんでるなあ)
- しんきくさい【辛気・心気臭い】 - じれったい。苛立たしい。まどろっこしい。
- しんどい - 疲れる。苦しい。「辛労」の転「しんど」の形容詞化という。 (例)家計がしんどいわ(家計が苦しいよ)
- すい・すいい【酸い・酸いい】 - すっぱい。共通語でも「酸いも甘いも…」の慣用句に残る。
- すかたん - まぬけ。とんちんかん。見当違い。なお「まぬけ」も関西から広まった表現である。
- すこい - ずるい。狡猾。「こすい」の倒語。
- ずっこい - ずるい。「すこい」と「ずるい」の混合か。
- ずつない・じゅつない【術無い】 - なす術がなくて辛い。苦しい。古語「ずちなし」の転。 (例)ようけ食べてずつないわ(沢山食べて腹が苦しいよ) 気ずつないなぁ(きまりが悪いなぁ)
- せいだい - 精々。大いに。うんと。「せいざい」などとも。「精(を)出して」の転という。 (例)せいだい気張りや(大いに頑張りなさいよ)
- せたらう・せったらう【背たらう】 - 背負う。「せたろう」とも。
- せんど【千度】 - 何度も。たびたび。転じて、大層。ひどく。 (例)せんど言わすな!(何度も言わせるな!)
- たく【炊く】 - 煮る。炊飯以外にも用いる。 (例)夕飯は大根の炊いたんやで(夕飯は大根の煮物だよ)
- だぼ - 馬鹿。「あほ」よりもやや強い言い方。播磨・神戸で用いる。
- ちゃいする - 〔幼〕捨てる。 (例)そんなばばいもんちゃいし(そんなばっちいものはポイしなさい)
- ちょう・ちょお - ちょっと。当然ながら「超」とは無関係。 (例)ちょお待ってえな(ちょっと待ってよ)
- ちょうける・ちょける【嘲ける】 - ふざける。おどける。名詞形「ちょけ」でふざけたことをする・言う人の意。
- つぶれる【潰れる】 - 「駄目になる」「平らに変形して壊れる」だけでなく、外見上の変形を伴わない破損・故障にも用いる。 (例)テレビが潰れおった(テレビが壊れた)
- てれこ - 逆さま。あべこべ。歌舞伎用語「手入れこ」から。
- てんごう・てんご - いたずら。悪ふざけ。冗談。
- でんぼ【出ん坊】 - 腫れ物。出来物。吹き出物。
- ど - 名詞・形容詞・形容動詞の語頭に付けて罵り・呆れなどを添える。転じて、単なる強調。 (例)どあほ どぎつい ど根性[40] どたま(=ど頭) ど派手 ど真ん中
- どつく・どづく【ど突く】 - 叩く。殴る。
- どつぼにはまる【ど壺に嵌る】 - 最悪の状態になる。やることなすこと全て悪い方向に向かう。「どつぼ」は肥溜めの意。元は芸人の楽屋言葉。
- どもならん・どんならん - 「どうにもならぬ」の転。どうしようもない。お終いだ。
- どんくさい【鈍臭い】 - 鈍い。手際が悪い。
- どんつき【どん突き】 - 突き当たり。
- ないない【無い無い】 - 〔幼〕片付ける。 (例)おもちゃないないしょうな(おもちゃをお片付けしようね)
- なおす【直す】 - 片付ける。元の場所に戻す。 (例)これ棚になおしといて(これ棚に片付けておいて)
- なんきん【南京】 - カボチャ。京都では「かぼちゃ」や「おかぼ」。
- なんば【南蛮】 - トウモロコシ。「南蛮キビ」の後略。
- なんぼ【何ぼ】 - 幾ら。幾つ。どれほど。「何程」の転。 (例)なんぼのもんじゃい(なんだってんだい)
- ねき【根際】 - 側。近く。
- ぱっち - 丈の長い股引。
- はばかりさん【憚りさん】 - 労をねぎらう挨拶言葉。
- ばり - とても。かなり。九州北部・山陽地方由来の言葉で、1980年代に神戸を中心に流行した。
- はんなり - 上品で華やかな様子。上品で爽やかな様子。 (例)はんなりしたお味やなぁ(上品で爽やかなお味だなぁ)
- びびんちょ - 〔幼〕汚らしい者を仲間外れにする時の囃し言葉。えんがちょ。「べべんちょ」などとも。
- ひらう【拾う】 - 連用形ウ音便「ひろうた・ひろうて」からの類推で生じた語形。享保期以降「ひろふ」よりも優勢となった。 (例)落ち葉をひらいに行った
- べべた - びり。最下位。「べべ」「べべちゃ」や「どべ」(ど+べべた)などとも。
- ほかす【放下す】 - 放り捨てる。 (例)この書類ほかしといて(この書類捨てといて)
- ほげた【頬桁】 - 文句。(目上に対する)反論。物言い。原義は「頬骨」。 (例)ほげたを吐く(文句を言う)
- ほしい【欲しい】 - (「て」の後に付けて)…してもらいたい。昭和以降、広く全国に通用するようになった。対義語は「要らん」。 (例)来てほしい(来てもらいたい) 来ていらん(来てくれるな・来てくれなくとも良い)
- ほたえる - ふざける。じゃれる。
- ぽち - 祝儀。チップ。「ぽち」を入れる袋が「ぽち袋」である。
- ほっこり - (一仕事を終えて)安堵感とともに程よく疲れた様子。ほかほかと温かな様子。転じて、ふかし焼き芋を指すことも。近年、のんびりするなどの意で用いる者が増えている。 (例)ほっこりしたし、ほっこり食べて一服しょう(くたびれたし、焼き芋食べて一服しよう)
- ぼん - 坊や。特に、良家の坊ちゃん。「坊」の転。「ぼんぼん」「ぼんち」などとも。 (例)ぼんぼん育ち(お坊ちゃま育ち)
- ぼんさんがへをこいた【坊さんが屁を放いた】 - 〔幼〕だるまさんがころんだ。「においだら臭かった」と続ける。
- ほんま【本真】 - 本当。実際。「本間」は誤字。 (例)ほんまもんの味(本物の味)
- まいど【毎度】 - 大阪の商業社会で広く用いる挨拶言葉。
- マクド - マクドナルドの略。マクドナルド#呼称も参照。
- まったり - まろやかでこくのある味わい。じっくりと。くどくどと。1990年代以降、のんびり・ゆったりした様子の意で用いる者が増えている。
- まんまんちゃん - 〔幼〕仏様。地域によっては月なども指す。「南無阿弥陀仏様」の転。お辞儀を表す「あん」を後ろに付けると、仏への祈りの動作を表す。 (例)お仏壇にまんまんちゃんあんしいや(お仏壇にお祈りしなさいよ)
- みずくさい【水臭い】 - 水っぽい。塩気が足りない。転じて、よそよそしい。
- みずや【水屋】 - 食器棚。台所全体を指すことも。
- めっちゃ - とても。超。「めちゃくちゃ」の略で、1970-80年代以降急速に広まった。「めっさ」などとも。同様の語に「むちゃくちゃ」の略「むっちゃ」などがある。
- めばちこ【目ばちこ】 - 麦粒腫。ものもらい。京都などでは「めいぼ・めぼ」(目疣)。
- めんちきる【めんち切る】 - ガンをつける。睨みつける。「目ん玉切る」→「めんた切る」と経て成立したという。
- モータープール - 駐車場。パーキング。進駐軍用語をハイカラ好きの大阪人が真似たのが始まり。ただし英語での本義は「配車場に待機する車群」。中部地方(金沢・静岡など)以西で広く用いる。
- もむない・もみない - 美味しくない。まずい。「旨うもない」あるいは「旨みがない」の転という。大阪などの言い方。
- やつす【俏す・窶す】 - おめかしする。名詞形「やつし」でめかし屋の意。もとは歌舞伎界の隠語で、江戸時代に町人層で流行語として広まったもの。
- ややこしい - 煩雑だ。厄介だ。面倒だ。紛らわしい。怪しい。「赤ん坊」を意味する「ややこ」の形容詞化。赤ん坊の世話は面倒で大変だということから。「ややこい」などとも。
- やんぺ・やんぴ - 物事をやめる時の掛け声。主に子供が用いる。「止め」の転か。 (例)もうやーんぺ(もうやーめた)
- ようけ・よけ - 数量が甚だしい様子。たくさん。「余計」の転。
- よばれる【呼ばれる】 - 御馳走を頂くの意で多用する。転じて、単に「食う」の丁寧語として用いることもある。 (例)たんとよばれいや(たくさんお食べなさいよ)
- よむ【読む】 - 数を数える。共通語でも「鯖を読む」「票を読む」などの表現に残る。 (例)十読んでから風呂から上がりや(十数えてから風呂から上がりなさいよ)
- よろしゅうおあがり(やす)【宜しゅう御上がり(やす)】 - 拙い食事を十分に召し上がって下さいましたの意で、「ご馳走様」に対する語。十分に召し上がって下さいの意で「いただきます」の後に用いる家庭もある。
- わや - 滅茶苦茶。道理に合わない。台無し。駄目。「枉惑」の転「わやく」の派生。「わやくちゃ」「わやくそ」などとも。 (例)さっぱりわやや(ちっとも上手くいかない)
[編集] フィクションの関西弁
「大阪弁#役割語としての大阪弁」および「役割語」も参照
文学・ドラマ・映画などの世界で、近畿方言は共通語を話すキャラクターとの差別化の記号としてよく利用される。漫画やアニメでもキャラクター要素のひとつとして定着し、関西出身の声優が地の言葉で活躍している(参考リンク)。海外作品の方言場面の邦訳に当てられることもある(韓国映画『友へ チング』など)。
しかしフィクションでの近畿方言は大袈裟な誇張や誤ったアクセント・イントネーションなど不自然な似非方言であることが多く、また道化役・三枚目役や主人公と対立する役の役割語とされやすい。そのため、近畿方言話者にとって違和感や不快感の対象となることがしばしばある[41]。
似非ばかりということはなく、近畿方言話者自身による描写は基本的に正確である。近畿方言話者でなくとも、大阪出身者に校正をさせてまで登場人物の大阪弁の正確さを追求した谷崎潤一郎(東京出身)の例[42]もある。ただし活字では方言のニュアンスは表現しにくく、近畿方言話者でも自然な近畿方言の再現は難しい。例えば、大阪弁による恋愛小説『感傷旅行』を著した田辺聖子は、柔らかな大阪弁を表現するのに「したりイな」のような表記の工夫を試みている。
フィクションに描かれる近畿方言は、知名度が高く、母語とする作家も多い大阪弁や京言葉が多いが、それ以外の方言を描く作品もある。例えば、和歌山県北部の方言が会話文に登場する有吉佐和子の小説『紀ノ川』、主人公らの会話が淡路島由良の方言で展開される藤堂裕の漫画『由良COLORS』[43]、人物ごとに関西各地の様々な方言を描き分ける木村紺の漫画『神戸在住』などがある。
[編集] 脚注
- ^ 東條操 (1954)『日本方言学』(吉川弘文館)
- ^ 楳垣実 (1962)『近畿方言の総合的研究』5頁(三省堂)
- ^ 『新日本語の現場』方言の戦い(38)「吉本弁」ほとんど共通語(2006年6月8日付読売新聞)
- ^ 嘆かわしさ。感じの悪さ。
- ^ 『国文学解釈と鑑賞』「方言の日本地図」号(至文堂)
- ^ ジョアン・ロドリゲス (1604)『日本大文典』
- ^ ここまで、阪口篤義編 (1990)『日本語講座第六巻 日本語の歴史』(大修館書店)の徳川宗賢「東西のことば争い」を参考文献とした。
- ^ 当時上方では「くゎんねん」と発音していた。
- ^ 立派な。
- ^ 金水敏 (2003)『ヴァーチャル日本語 役割語の謎』(岩波書店、ISBN 978-400006827-7)
- ^ 梅棹忠夫 (1954)「第二標準語論」『言語生活』第三十三号(筑摩書房)
- ^ 陣内正敬 (2003)「コミュニケーションの地域性と関西方言の影響力についての広域的研究」
- ^ 陣内正敬 (2003)「コミュニケーションの地域性と関西方言の影響力についての広域的研究」
- ^ 真田信治 (1996)『地域語の生態シリーズ 地域語のダイナミズム―関西』(おうふう)
- ^ 江戸っ子から「大根と刎ねべき文字は刎ねもせず 刎ねずとも良きごぼうごんぼう」と揶揄された。
- ^ 松田謙次郎 (2004)「ことばのバリエーション」『ことばの科学ハンドブック』(研究社)
- ^ a b c d 後ろに助詞などが来る場合は最後も低。
- ^ 近世初期の書物『補忘記』に書き残されたアクセントを保つという。
- ^ 宮治弘明が1986年に行った滋賀県内の高校生対象の調査による。
- ^ 宮治弘明 (1987)「近畿方言における待遇表現運用上の一特質」『国語学』151集
- ^ 兵庫県高等学校教育研究会国語部会編 (2003)『兵庫県ことば読本』(東京書籍)
- ^ みなと舞鶴ちゃったまつりなるイベントが開催されるほど「ちゃった」は舞鶴弁の特徴とされるが、「ちゃった」の使用地域は丹波や播磨の一部(兵庫県多可郡加美)にも分布する。
- ^ 「ぶぶ漬け」の話は落語「京の茶漬け」から広まった誇張ともいう。
- ^ http://www.let.osaka-u.ac.jp/~okajima/zatu/sasete.txt
- ^ イ音・ウ音・撥音・ハ行の後では「はん」にはなりにくい。従って京阪電鉄のキャッチコピー「おけいはん」は厳密には誤用。
- ^ 近代初期までは江戸・東京でも「ますのだけど」「ますのだろう」のように敬体と「だ」を併用することがあった。
- ^ 東京の「です」も、江戸後期の成立当初は咄家・太鼓持・女芸者・新吉原の茶屋女など限られた階層の表現であり、中流以上では用いなかった。(1917年『口語法別記』)
- ^ 東京の「です」とは別に、近世上方にも独自の「です」があったとする説もある。
- ^ 「『デアル』トイフ詞ニハ『花ヤ』『綺麗ヤ』『賑ヤカヤ』ナド『ヤ』トイフ 又『花ドス』『綺麗ドス』『賑ヤカドス』ハ従来一般ニ用ヰラレタル語ナリト雖近来漸次減少シテ『花デス』『綺麗デス』『賑ヤカデス』ノ方ニ移リ行ク傾キアリ」(1906年『口語法調査報告書(下)』の京都からの報告)
- ^ Congo word 'most untranslatable'(2004年6月22日付BBCニュース)
- ^ そもそも「ぜ」を「で」に言い替え始めたのは女性層である。
- ^ この用法は「嘘やん」以外で用いることは稀。
- ^ 前田勇 (1949)『大阪辯の研究』
- ^ 有名な京言葉の一つだが、近代の成立とされ歴史は浅い。
- ^ 「せう」の転。「しょう」がさらに転じたものが江戸・東京の「しよう」である。
- ^ 前田勇 (1965)『上方語源辞典』
- ^ 間違った日本語として槍玉に挙げられる「すごい楽しい」に類するが、「えらい+形容詞」は寛政期には既に使用例がある。
- ^ 東京では本来「明日→あさって→やのあさって→しあさって」の順だった。
- ^ 「ピンからキリまで」の「ピン」と同じ。
- ^ 「ど根性大根」のように肯定的に用いるのは戦後からの用法で、本来は「腐った根性」「曲がった根性」といった意。
- ^ 『関西外国語大学留学生別科日本語教育論集四』(1994)
- ^ 谷崎潤一郎 (1931)『卍』の後書き「卍緒言」(改造社)
- ^ 漫画「由良COLORS」が人気 舞台は淡路の漁師町(2008年7月11日付神戸新聞)
[編集] 参考文献
- 前田勇 (1949)『大阪辯の研究』(朝日新聞社)
- 前田勇 (1965)『上方語源辞典』(東京堂出版)
- 日本放送協会 (1966)『全国方言資料 第4巻 近畿編』(日本放送出版協会)
- 井之口有一・堀井令以知 (1992)『京ことば辞典』(東京堂出版、ISBN 4-490-10305-0)
- 井上史雄ほか (1996)『日本列島方言叢書 (13) 近畿方言考』(ゆまに書房、ISBN 4896688368)
- 藤原与一 (1996)『日本語方言辞書―昭和・平成の生活語―』(東京堂出版、ISBN 978-4490104288)
- 中井幸比古編 (2002)『京阪系アクセント辞典』(勉誠出版、ISBN 4-585-08009-0)
- 井上史雄・鑓水兼貴 (2002)『辞典〈新しい日本語〉』(東洋書林、ISBN 978-4887215320)
[編集] その他関連書籍
- 前田勇 (1964)『近世上方語辞典』(東京堂出版)
- 牧村史陽 (1984)『大阪ことば事典』(講談社 講談社学術文庫、ISBN 4061586580)
- 堀井令以知 (1999)『上方ことば語源辞典』(東京堂出版、ISBN 4490105177)
- 大阪女子大学国文学研究室 (1992)『上方の文化―上方ことばの今昔』(和泉書院、ISBN 4870885514)
- 尾上圭介 (2004)『大阪ことば学』(講談社 講談社文庫、ISBN 4062747901)
- 山下好孝 (2004)『関西弁講義』(講談社 講談社選書メチエ、ISBN 4062582929)
- 真田信治、岡本牧子・氏原庸子 (2006)『聞いておぼえる関西(大阪)弁入門』(ひつじ書房、ISBN 978-4894762961)
[編集] 外部リンク
- 関西ことば辞典(「めざせNATIVE関西人」内)
- 関西弁基礎講座(「東京弁は伝染るんです」内)
- 京言葉
- 全国大阪弁普及協会
- (英語)Kansai Dialect Self-study Site

