土佐弁

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土佐弁(とさべん)は高知市を始め、高知県の中部・東部で話される日本語の方言である。四国方言に分類される。京阪式アクセントの地域が多いが、山間部には垂井式アクセントが分布する[1]

音韻[編集]

  • 母音は丁寧に発音される[2]
  • ウ音は、やや奥舌で[2]、西日本方言の中でも特に円唇性が強い。
  • 二重母音の ei をはっきりと保存している[2]
例:「計算」の発音
(土佐弁)「ケイサン」
(標準語、関西弁)「ケーサン」
  • 「じ」と「ぢ」、「ず」と「づ」の四つ仮名を区別する[3]
  • 一部地域では「つ」、「づ」が[tu]、[du]で発音される。
  • 「~して」「~した」で終わる言葉がイ音便で「~いて」「~いた」になる。
例:「どうした」→「どういた」 「そして」→「そいて」 「あした(明日)」→「あいた」

文法[編集]

アスペクト[編集]

土佐弁では英語のような完了アスペクトが存在する。

たとえば「宿題やったが?」という問いに対して、副詞などに頼ることなく、以下のように答え分けることができる。

  • 現在進行的なアスペクトの例:
(土佐弁)「やりゆうよ」
(標準語)「(今)やっているよ」
(英語)"I'm doing it(now)."
  • 現在完了的なアスペクトの例:
(土佐弁)「やっちゅうよ」
(標準語)「(もう)済ませているよ」
(英語)"I've(already)done it."

(し)よった」ならば過去進行の、「(し)ちょった」ならば過去完了のアスペクトとなる。完了アスペクトが明示できるというのは西日本方言によくある特徴である。

語彙[編集]

人称代名詞[編集]

  • おら(男の一人称 話者は高齢者、最近はあまり使わない)
(使用例)おらんくの池には潮吹く魚がおよぎよる。(よさこい節)
(東京)私の家の池には潮吹く魚が泳いでいる。
  • わし(男の一人称)
(使用例)わしくの子は、川へあいをおさえにいったでよ。
(東京)私の子供は、川へを捕りに行ったよ。
  • 僕らぁー(男の一人称 複数でも単数でも使用、最近はこれが一番多い)
(使用例)僕らぁーは、山へいたずり採りにいっちょった。
(東京)僕は、山へいたどりを採りに行っていた。
  • あて(女の一人称 話者は高齢者、最近はあまり使わない)
(使用例)あてらぁーの時は、きーの値がしよったきに仕事があったで。
(東京)私達の時代は、木の値段が高かったので仕事があったよ。
  • うち(女の一人称)
(使用例)うちんくのたーは、年がいてよう作らんきに、いのす植えたぞね。
(東京)私の家の田んぼは、高齢になって耕作できないので、柚子を植えたのよ。
  • おまん(男女二人称単数):「ら(ー)」をつけると複数
(使用例)おまんらーご飯食べー。
(東京)お前達ご飯を食べなさい。
  • おんし(男の二人称)
(使用例)おんしゃー何しよりゃー?(非難の気持ちがある)
(東京)お前は何をしているんだ?
  • われ(男の二人称)
(使用例)わしんくの子らはまだ帰らんが、われんとこの子はかえってきちゅうがかよ。
(東京)私の家の子供達はまだ帰ってこないが、あんたのところの子は帰ってきているのかい。
  • おまさん(目上の人に使う二人称)
(使用例)おまさん、のうが悪いろう。
(東京)あなた、具合が悪いでしょう。

名詞、動詞、形容詞など[編集]

  • 親族語など
    • おとやん(おとうさん)
    • おかやん(おかあさん)
    • おんちゃん(おじさん)
    • おばちゃん(おばさん)
    • じんま(じじい)
    • ばんば(ばばあ)
  • おどろく(目が覚める)
(土佐弁)「おとろしい夢を見たきに夜中におどろいたがよ
(標準語)「恐ろしい夢を見たので夜中に目が覚めたのよ
  • かく((重いものを)もちあげる)
※「駕籠かき」の「かき」である。
  • ごくどう(怠惰者)
  • ばー(~くらい) どればー(どれくらい)
  • ひーとい(一日)
中央では廃れた古語「一日(ひとひ)」からの転訛。

助詞、助動詞など[編集]

  • ~が(終助詞。標準語の「の」に相当。平叙文にも疑問文にも用いられる)
(土佐)「かまんが?」「かまんが!」「そうながや?」
(標準語)「いいの?」「いいの!」「そうなの?」
  • ~ちや(一般的な終助詞。「~だよ」のような感じ)
  • ~ちゃあ+否定語(この構文では「ちゃあ」は疑問詞の後につき、標準語の「も」に相当)
(土佐)「誰ちゃあおりゃあせん」「なんちゃあない」
(標準語)「誰もいやしない」「何でもないよ」
  • き、きに(理由を示す助詞。標準語の「ので」に相当)
例文は上記に数例あるので参照のこと

その他の言い回しなど[編集]

  • 能が悪い
(土佐)この道具は能が悪い。
(東京)この道具は「使い勝手」が悪い
  • せられん(禁止の表現)
(土佐)「いかんちや、せられん
(東京)「ダメだよ、やっちゃダメ
  • ~にかあらん
(土佐)「あの店はラーメン屋に変わったにかあらん
(東京)「あの店はラーメン屋に変わったらしい
※「~に違いない」のようなニュアンスも含む。
  • よう~せん(~できない)
(土佐)「むつかしゅうてようせん
(東京)「難しくてできない
※おおむね関西弁に同じ。

土佐弁に関連した人物・作品など[編集]

小説
映画
ドラマ
漫画
アニメ
ゲーム

その他[編集]

  • 土佐弁の使いまわしなどについては、高知新聞社刊、「土佐弁さんぽ」に詳しい。

参考文献[編集]

  • 飯豊毅一・日野資純・佐藤亮一編『講座方言学 8 中国・四国地方の方言』 国書刊行会、1982年

脚注[編集]

  1. ^ 山口幸洋『日本語東京アクセントの成立』港の人、2003年、163頁-167頁
  2. ^ a b c 『講座方言学 8 中国・四国地方の方言』 430頁-431頁
  3. ^ 『講座方言学 8 中国・四国地方の方言』291頁

関連項目[編集]

  • 幡多弁(高知県西部で話される方言)