魔法戦隊マジレンジャーVSデカレンジャー

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スーパー戦隊Vシネマ
VSシリーズ
第11作 特捜戦隊
デカレンジャー
VS
アバレンジャー
2005年3月21日
第12作 魔法戦隊
マジレンジャー
VS
デカレンジャー
2006年3月10日
第13作 轟轟戦隊
ボウケンジャー
VS
スーパー戦隊
2007年3月9日

魔法戦隊マジレンジャーVSデカレンジャー』は、2006年3月10日に発売されたオリジナルビデオ作品。『魔法戦隊マジレンジャー』のオリジナルビデオ作品であり、スーパー戦隊VSシリーズの一つ。

概要[編集]

『魔法戦隊マジレンジャー』と『特捜戦隊デカレンジャー』のクロスオーバー作品であるスーパー戦隊Vシネマ第12作。マジレンジャーが6人で唯一スーパー戦隊Vシネマに登場した作品[1][注釈 1]。小津家の10年に1度の記念日・ファンタスティックハッピーデーに現れたアリエナイザーと冥獣人の連合との対決を描く。作品時間は、例年より長い47分となった[2]

2005年10月4日に起きた出来事として設定されている[3][注釈 2]。書籍『魔法戦隊マジレンジャースーパーレジェンドブック』では、『マジレンジャー』Stage.31とStage.32の間の出来事と推測している[3]

アメリカ版のデカレンジャー『パワーレンジャー・S.P.D.』の装備であるバトライズドアーマーがファイヤースクワッドの装備として登場する他、前作『デカレンジャーVSアバレンジャー』の設定(特に和風喫茶「恐竜や」が超高層ビルを本社とする大手外食産業へと急成長するなど)も一部登場する。『デカレンジャー』の設定が本作品で一部明かされている。

マジレンジャーはデカレンジャーのことを知っていた様子でウメコがジャケット姿になった際の蒔人の発言で分かる。

全員名乗りの際に「我らスーパー戦隊!」と言わない(「我ら無敵の12人!」)点やエンディングで歌を流さず[注釈 3]にマジレンジャーの挿入歌「天空界のやすらぎ」[注釈 4]のオルゴールをBGMにして視聴者に語りかける点などが従来と異なる。また、タイトルにVSがつく作品の中で本作品のみタイトルの英語表記にVSが使われていない[注釈 5]

本作品から劇場作品『炎神戦隊ゴーオンジャーVSゲキレンジャー』までは、両戦隊メンバーが1つのバンクシーンで変身している[注釈 6]

ナイ(ホラン千秋)とメア(北神朋美)の悪戯攻撃でデカレンジャーのジャスミン(木下あゆ美)とウメコ(菊地美香)がナイとメアの格好をさせられている[注釈 7]場面が登場するが[注釈 8]、あまりにも似合い過ぎな木下と菊地の姿にスタッフ・共演者一同は大盛り上がりだったという[4]。この場面ではマジレンジャーの麗(甲斐麻美)と芳香(別府あゆみ)のデカレンジャーの制服姿や、ナイとメアのデカレンジャーの制服姿およびマジレンジャーのジャケット姿も見られる。センちゃんの提案によりヒカル(市川洋介)とテツ(吉田友一)の女装シーンも登場する。

序盤でのウメコが事件に巻き込まれ、途中参加したバンが事態を悪化させるという展開は、『デカレンジャー』Episode.01を踏襲している[3]

クランクアップの日は載寧龍二(現・さいねい龍二)の誕生日と重なったため、「サプライズ誕生会」を行った。この模様はメイキング映像とともに特典映像として収録されている。

監督は、両作品のパイロットを手掛けた渡辺勝也が担当した[2]。渡辺は、『マジレンジャー』参加のため『デカレンジャー』終盤には参加していなかったことから、自ら本作品に志願した[2]

東映プロデューサーの塚田英明は、CDドラマでデカレンジャーをメインとした本作品の前日談を発売することも構想していた[5]

スーパー戦隊Vシネマの中で本作品のみUMDがリリースされている。本作品よりテレビ番組内のCMでも紹介されるようになった。[独自研究?]

2015年7月31日には、『特捜戦隊デカレンジャー 10 YEARS AFTER』の発売を記念してこの作品の上映会が行われた。

2020年11月3日、第33回東京国際映画祭にて『魔法戦隊マジレンジャー THE MOVIE インフェルシアの花嫁』、『魔法戦隊マジレンジャーVSデカレンジャー』の2本が特別上映され、橋本淳、松本寛也、甲斐麻美、別府あゆみ、伊藤友樹、市川洋介らによるオンライントークが配信された[6]

あらすじ[編集]

小津家の10年に一度のファンタスティックハッピーデーに、彼らを狙ってアリエナイザーチグカデ星人・ビルヂーグが現れる。現場に駆け付けたデカレンジャーによってビルヂーグは無力化されるものの、その仲間アルゴル星人のバボンが現れる。

マジレンジャーとデカレンジャーはその場で共闘するが、バボンの黒幕であるエージェントXを追っていたファイヤースクワッドのデカレッド(バン / 赤座伴番)が乱入。小津麗(マジブルー)と礼紋茉莉花(ジャスミン / デカイエロー)が敵の手に捕らわれてしまう。敵は人質と引き換えに小津家の持つ『天空の花』を渡すように要求してきた。

協力して事件解決にあたろうとするマジレンジャーとデカレンジャーだったが、いつになく剣呑な雰囲気のバンに魁(マジレッド)は反発する。一方、エージェントX=冥獣人デーモンのアボロスはインフェルシアの協力をも得て、ある陰謀を企んでいた。

オリジナルキャラクター[編集]

デカレッド バトライザー[出典 1]
ファイヤースクワッドとなったデカレッドの専用装備形態。マーフィーK9が体を分離させて、デカレッドの体にアーマーを装着する。急な崖の斜面を走ることができる。武器はエネルギーライフルで[7][9]、炎のエネルギー波バトライズ・ファイヤードライブ[3]を放つ。しかしそれが返ってバボンを強化させてしまい、マジブルーを連れ去られたマジレッドの怒りを買ってしまう。しかし終盤では、紆余曲折を経てデカレッドと和解したマジレッドが強化変身したレジェンドマジレッドとのタッグでエージェントXに挑む。
元々は海外版『パワーレンジャー・S.P.D.』オリジナルの装備。
諸元
冥獣人デーモン
エージェントXアボロス
身長 215 cm[10]
体重 117 kg[10]
冥獣人デーモン エージェントXアボロス[7][11]
地底冥府インフェルシアを飛び出してエージェント・アブレラの弟子となり、アブレラ亡き後にエージェントXという偽名を使いアリエナイザーたちに様々な品物を売りつけていた天空に背き続ける冥獣人。彼自身もまた様々な犯罪(バン曰く「不可思議過ぎる不可思議犯罪」)を犯してきた模様で、ファイヤースクワッドの捜査対象になっていた。
言動の端々に自分は師を超えているようなことを口にする。口癖は「私に抜かりはありません」で、自らの計略に自信を持っており、予定が狂うと動揺する癖がある。アブトレックスの同種の型である怪重機「アボトレックス」を持ち、他の冥獣人のように巨大化することはない。天空の花の力を増幅し、全宇宙を愛の無い破壊と殺戮だけの世界にしようと目論む。
  • キャストクレジットは「エージェント・アボロス」と表示されている。デザインは篠原保が担当した[12]。冥獣人が宇宙生活用の装備を身に着けており、コルセット風の装備にすることで、本来の力を抑えるような感じとなっている[13]。ネクタイやコウモリ風の羽根などはアブレラから引き継いでいる[13][12]
諸元
チグカデ星人ビルヂーグ
身長 44.3m[10]
体重 24.0t[10]
チグカデ星人ビルヂーグ
巨大なアリエナイザー。胃袋に入れたものを別の次元に転送する能力を持つ。営利誘拐の常習犯であり、バボンやエージェントXと契約し、小津兄弟を誘拐して天空の花を奪う役目を授かっていた。ジャスミンによるニックネームは「がばっとぱくっと君[3][注釈 9]。小津兄妹を狙っていたためか、「オズゥー、オズゥー」という鳴き声を発する。デカレンジャーによって誘拐が失敗し、捕まってしまったため、口封じにバボンに処刑される。
諸元
アルゴル星人バボン
身長 209 cm[10]
体重 140 kg[10]
アルゴル星人バボン
ガスドリンカーズと同じアルゴル星人だが、人間体は存在せず、両者の間に特別な繋がりは無い。既にデリート許可が降りている。アブレラの後継者、エージェントX=冥獣人デーモン・アボロスと契約しており、胸には魔導陣が描かれており、デカレンジャーやマジシャインのビーム攻撃を吸収して攻撃力に変換して追い詰めたが物理技は吸収出来ないため、マジレンジャーの魔法で一時的に追い詰められた。ウメコのように小柄の女性は好まず、大柄で逞しくて少しスネ毛の生えた女性が好み。その犠牲になったのは女装したテツとヒカルだった。
  • デザインは森木靖泰、魔導陣は企画者104の松井大が担当した[14]。アルゴル星人特有のラインに魔導陣と武器を組み込んでいる[13]。頭の形状のイメージはテンガロンハット[13]

装備・戦力[編集]

フォーメーションU2
ピンクがディーショットでビルヂークの足を攻撃し、怯んだ隙にパトレーラーのキャッチロープとパトアーマーのライトで動きを封じ、デカバイクロボが人命救助し、パトジャイラーのジャイロワッパーで逮捕する。
ウーザ・ドーザ・ザザレ
ナイ・メアと服装を取り替えられたジャスミンとウメコが、ウーザフォンで全てを元に戻す時に使った呪文。その際、バンキュリアは浴槽に落ちる。
諸元
怪重機アボトレックス
全高 50.2 m[10]
全幅 32 m[10]
重量 5,220 t[10]
怪重機アボトレックス[15][11]
エージェント・アブレラが使用した怪重機アブトレックスとカラーリングが異なる同型機である怪重機。作中ではバボンも同乗した。天空の花をセットすることでビームを宇宙から発射できる。戦車形態アブトレーラーに変形する機能を有する。
  • デザインは森木靖泰が担当した[16]。配色はアブトレックスとの違いを明確にするためアボロスをイメージした青を主体としたカラーリングに変更し[16]、胸の照射装置を変更している[13]

合体技[編集]

ダブルグリーンアタック
デカグリーンとマジグリーンがジャンプして、ディーロッドとマジスティックアックスで攻撃する。
ダブルクールショット
デカブルーとマジイエローが空中からディースナイパーとマジスティックボーガンを同時に放つ。
デカブレイクシャイニングフィスト
マジシャインがデカブレイクをマジランプの中に入れてスモーキーシャイニングアタックの応用で射出し、発射されたデカブレイクが敵に連続パンチを食らわす。
マジカルシスターズツインカムエンジェルミラクルツイスター
マジピンク&マジブルーのマジスティックを支えにして、デカイエロー&デカピンクのディーショットを置き、魔法エネルギーを込めて敵に向けて放つ技。バンキュリアを相手に使用。
ダブルレッドファイヤーフィニッシュ
デカレッド・バトライザーとレジェンドマジレッドが火の鳥となって敵に一撃を食らわす。
マジデカファンタスティクストライクアウト
マジトピアの宝である天空の花が起こした、千年に一度の奇跡の魔法。「マージ・ジルマ・デカ・マジカ!」の呪文で、12人それぞれの武器から強力な魔法力を放出する。バボンとアボロスをまとめて倒した。
ミラクルグレートノヴァ
デカレンジャーロボ、デカバイクロボ、マジキング、トラベリオン4機のエネルギーをジャッジメントソードとキングカリバーに集め、その塊を敵にぶつける技。
マジファイナルバスター
デカウイングキャノンにマジレジェンドの魔法エネルギーを込めて放つ。

用語[編集]

監獄島
アボロスが取引の場所に指定した叫びの塔があるマルデヨーナ世界。叫びの塔が崩壊すると島も沈む。
天空の花[7]
本作品の鍵となるマジトピアの秘宝。その名の通り花の形をしたガラスのような宝石であり、天空聖界宝物図鑑には載っておらず、ヒカルですらその存在を知らなかった。
しかしそれは、マジエルから深雪に授けられ、「小津家の幸せを守る宝石」として大切にされていた[注釈 10]
千年に一度の奇跡を起こすという「伝説の灯火吹雪」となって悪を打ち倒す力を与えてくれる一方、10年に一度、人間の愛を凍り付かせてしまうという。そのため、10年に一度のその日、愛の機に触れさせる必要がある。その日こそが、小津家のファンタスティックハッピーデーであった。
戦いの後、複数の白い花となり、「幸せの花」と呼ばれた。

キャスト[編集]

声の出演[編集]

スーツアクター[編集]

本作品では日下秀昭がスーツアクターを務めるデカマスターとウルザードが対決するシーンでは、岡元次郎がデカマスターのスーツアクターを務めている[1]

スタッフ[編集]

挿入歌[編集]

いずれもノンクレジット。

特捜戦隊デカレンジャー
作詞:吉元由美 / 作曲:宮崎歩 / 編曲:京田誠一 / 歌:サイキックラバー
「girls in trouble! DEKARANGER」
インストゥルメンタル版が使用された。
魔法戦隊マジレンジャー
作詞:岩里祐穂 / 作曲:岩崎貴文 / 編曲:京田誠一 / 歌:岩崎貴文

映像ソフト[編集]

  • 2006年3月10日レンタル開始[19]
  • 2006年3月21日DVD、UMD発売[20]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ マジイエロー/小津翼、マジシャイン/ヒカル、スモーキー、メーミィは次作『轟轟戦隊ボウケンジャーVSスーパー戦隊』にも登場している。
  2. ^ 作品冒頭のクレジットより。また、『ボウケンジャーVSスーパー戦隊』の「スーパー戦隊住所録」・翼の項の記載も2005年10月としている。
  3. ^ 前作同様オープニングも存在せず、本作品ではVシネマ作品で唯一主題歌が存在しない。
  4. ^ 原曲は、胡堂小梅/デカピンク役の菊地美香が歌っている。
  5. ^ 「MAGIRANGER MEETS DEKARANGER」となっている。
  6. ^ 前々作『爆竜戦隊アバレンジャーVSハリケンジャー』でも変身している。
  7. ^ これらの姿は、のちに発売された「ガールズインユニフォーム」ではシークレットアイテムとしてリリースされた。
  8. ^ 監督の渡辺は、脚本を手掛けた荒川稔久がファンの話題作りのために入れたと述べている[2]
  9. ^ ホージー曰く「ネーミングセンスがスーパークール」。
  10. ^ 万が一自分の身に何かが起こることを見据えていた深雪は、ドギーとスワンに託そうとした。

出典[編集]

  1. ^ a b c d 超解析 2018, p. 125, 「第4章 スーパー戦隊VSシリーズ / クロスオーバー作品全解説 魔法戦隊マジレンジャーVSデカレンジャー」
  2. ^ a b c d スーパーレジェンドブック 2006, pp. 74–77, 「STAFF INTERVIEW 監督 渡辺勝也」
  3. ^ a b c d e f スーパーレジェンドブック 2006, pp. 48–49, 「魔法戦隊マジレンジャーVSデカレンジャー」
  4. ^ メイキングより
  5. ^ スーパーレジェンドブック 2006, pp. 58–60, 「STAFF INTERVIEW 東映プロデューサー塚田英明 PART.2」
  6. ^ Inc, Natasha (2020年11月3日). “マジレンジャー15周年に再集結、橋本淳「奇跡が起こればこの続きが見られるかも」”. 映画ナタリー. 2020年11月8日閲覧。
  7. ^ a b c d 超全集 下 2006, p. 91
  8. ^ 30大戦隊超全集 2007, p. 42
  9. ^ a b 21st 5 2017, p. 29, 「Battle of 『魔法戦隊マジレンジャー』in 2005-2006」
  10. ^ a b c d e f g h i 21st 5 2017, p. 25, 「冥獣/冥獣人/冥府十神」
  11. ^ a b 30大戦隊超全集 2007, pp. 48–49, 「デカレンジャーの敵 宇宙犯罪者アリエナイザー」
  12. ^ a b 百化繚乱 下之巻 2012, p. 243
  13. ^ a b c d e 『魔法戦隊マジレンジャーVSデカレンジャー』(DVD)東映ビデオ、2006年3月21日。DSTD02515。  映像特典 マジデカ美術館
  14. ^ a b 百化繚乱 下之巻 2012, p. 202
  15. ^ 超全集 下 2006, p. 93
  16. ^ a b 百化繚乱 下之巻 2012, p. 211
  17. ^ ACTion 2021, p. 220.
  18. ^ a b 福沢博文 株式会社レッド・エンタテインメント・デリヴァー”. 2011年7月7日閲覧。
  19. ^ 超全集 下 2006, p. 89
  20. ^ 超全集 下 2006, p. 96

出典(リンク)[編集]

参考文献[編集]

  • てれびくんデラックス愛蔵版(小学館
    • 魔法戦隊マジレンジャー超全集』 下巻、小学館〈てれびくんデラックス 愛蔵版〉、2006年3月20日。ISBN 4-09-105107-3 
    • 『30大スーパー戦隊超全集』小学館〈てれびくんデラックス愛蔵版〉、2007年3月8日。ISBN 978-4-09-105112-7 
  • 用田邦憲 編『魔法戦隊マジレンジャー スーパーレジェンドブック』双葉社、2006年5月5日。ISBN 4-575-29892-1 
  • 『東映スーパー戦隊シリーズ35作品記念公式図録 百化繚乱 [下之巻] 戦隊怪人デザイン大鑑 1995-2012』グライドメディア、2012年10月16日。ISBN 978-4-8130-2180-3 
  • 講談社 編『スーパー戦隊 Official Mook 21世紀』 vol.5《魔法戦隊マジレンジャー》、講談社〈講談社シリーズMOOK〉、2017年7月10日。ISBN 978-4-06-509516-4 
  • 『「スーパー戦隊」vs「メタルヒーロー」超解析!』宝島社、2018年5月30日。ISBN 978-4-8002-8348-1 
  • 高岩成二『時は今― 歩み続けるその先へ ACTion 高岩成二』講談社、2021年6月29日。ISBN 978-4-06-516763-2