TPP協定交渉時の資料・交渉時に議論された影響

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TPP協定交渉時の資料・交渉時に議論された影響(てぃぴいぴききょうていこうしょうじのしりょう・こうしょうじにぎろんされたえいきょう)。ここでは環太平洋パートナーシップ協定(TPP協定)の交渉時の資料・交渉時に議論された影響について記述する。最終的な合意内容とは相違する部分もあるが、交渉についての歴史的資料として修正しないで記載する。現在の状況については、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP協定)」を含め、環太平洋パートナーシップ協定を参照ください。

TPP協定交渉時の資料[編集]

大枠合意[編集]

2011年11月12日に拡大交渉は大枠合意に至り、輪郭が発表された[1]。その中で、以下の5つが「重要な特徴」として挙げられている。

  1. 包括的な市場アクセス(関税その他の非関税障壁を撤廃)
  2. 地域全域にまたがる協定(TPP参加国間の生産とサプライチェーンの発展を促進)
  3. 分野横断的な貿易課題(TPPに以下を取り込みAPEC等での作業を発展させる)
    1. 規制制度間の整合性:参加国間の貿易を継ぎ目のない効率的なものとする
    2. 競争力及びビジネス円滑化:地域の経済統合と雇用を促進する
    3. 中小企業:中小企業による国際的な取引の促進と貿易協定利用を支援
    4. 開発:TPPの効果的な履行支援等により、参加国の経済発展上の優先課題が前進
  4. 新たな貿易課題:革新的分野の製品・サービスの貿易・投資を促進し、競争的なビジネス環境を確保
  5. 「生きている」協定:将来生じる貿易課題や新規参加国によって生じる新しい課題に対応するため、協定を適切に更新

同大枠合意に示される以上の交渉内容の詳細については、その時点では、交渉参加国から公表されていない。

守秘義務合意[編集]

2011年11月29日、ニュージーランド外務貿易省のマーク・シンクレアTPP首席交渉官は、率直かつ生産的な交渉を促進するために、通常の交渉慣行に沿って、交渉文書、政府の提案、添付資料、交渉の内容に関連した電子メール、交渉場面で交換されるその他の情報を、発効後4年間 秘密にすることに合意したことをニュージーランド公式サイトに掲載した。TPPが成立しなかった場合は、交渉の最後の会合から4年間秘匿される[2][3]。一方で、2011年10月3日、同首席交渉官は、ニュージーランド外務貿易省のウェンディ・ヒントンが、アナンド・グローバーの質問に対し、最終TPP文書は批准前の議会審査の時点で公的に利用可能になると2011年8月8日に回答したことをニュージーランド公式サイトに掲載した[4]

2012年1月27日に当時の総理大臣・野田佳彦はこれは通常の交渉の慣行に沿った扱いであるとした[5]

拡大交渉会合への参加手順[編集]

拡大交渉会合に参加していない国が、交渉国として拡大交渉会合に参加するには、既存の拡大交渉会合参加国全ての承諾が必要である。

その後の流れ[編集]

2011年12月の第10回の拡大交渉会合の概要で、「『オブザーバー参加や交渉参加前の条文案の共有は認めない』との従来方針の再確認」と「『交渉会合中はこうした国との協議は行わない』ことで意見が一致した」となされている[6]

交渉参加後発国の追加条件[編集]

後れて交渉参加を表明したカナダとメキシコが、既に交渉を始めていた九カ国から「交渉を打ち切る権利は九カ国のみにある」、「既に現在の参加国間で合意した条文は原則として受け入れ、再交渉は要求できない」との追加条件を承諾した上で参加を認められていたと東京新聞は報じた(2013年3月)[7]

2013年3月8日、外務大臣の岸田文雄は、第183回国会の衆議院予算委員会にて、当事者であるメキシコやカナダ自身が自らの立場を明らかにしていない、日本はそうした条件の提示はされていないと答弁した[8]

2013年3月15日、安倍晋三内閣総理大臣は、メキシコとカナダに送付されたと報道されている念書は受け取っていないとしながらも、「遅れて参加した日本がそれをひっくり返すことが難しいのは、厳然たる事実」として「だからこそ、1日も早く交渉に参加しなければならない」とした内容を参加表明と同時に発表した[9]

2013年4月18日、北海道新聞は、社説で、条件提示を政府が最近になってようやく認めたとしている[10]

作業部会[編集]

拡大交渉会合では、以下の24の作業部会が設けられている[11]

作業部会、リスト
  1. 首席交渉官会議
  2. 物品市場アクセス(農業)
  3. 物品市場アクセス(繊維・衣料品)
  4. 物品市場アクセス(工業)
  5. 原産地規制
  6. 貿易円滑化
  7. SPS(衛生植物検疫)
  8. TBT(貿易の技術的障害)
  9. 貿易救済(セーフガード 等)
  10. 政府調達
  11. 知的財産[12]
  12. 競争政策
  13. サービス(越境サービス)
  14. サービス(商用関係者の移動)
  15. サービス(金融サービス)
  16. サービス(電気通信サービス)
  17. 電子商取引
  18. 投資[13]
  19. 環境[14]
  20. 労働
  21. 制度的事項
  22. 紛争解決
  23. 協力
  24. 横断的事項特別部会

経済への影響[編集]

関連資料[編集]

関係国の経済規模
人口 GDP (MER) 一人あたり
GDP (MER)
GDP (PPP) 一人あたり
GDP (PPP)
原加盟国 シンガポールの旗 シンガポール 473.7万人 1,819億ドル 38,972ドル 2,387億ドル 51,142ドル
 チリ 1724.8万人 1,695億ドル 10,121ドル 2,430億ドル 14,510ドル
ニュージーランドの旗 ニュージーランド 426.6万人 1,284億ドル 30,030ドル 1,157億ドル 27,060ドル
ブルネイの旗 ブルネイ 40.0万人 145億ドル 37,076ドル 196億ドル 50,116ドル
新規参加国 オーストラリアの旗 オーストラリア 2129.3万人 1兆0,106億ドル 47,395ドル 7,953億ドル 37,298ドル
 ベトナム 8423.8万人 898億ドル 1,040ドル 2,403億ドル 2,783ドル
ペルーの旗 ペルー 2916.5万人 1,275億ドル 4,451ドル 2,458億ドル 8,580ドル
マレーシアの旗 マレーシア 2746.8万人 2,222億ドル 8,140ドル 3,841億ドル 14,071ドル
カナダの旗 カナダ 3412.7万人 1兆5,109億ドル 46,215ドル 1兆3,032億ドル 39,182ドル
メキシコの旗 メキシコ 1億0961.0万人 1兆0,881億ドル 9,566ドル 1兆5,480億ドル 14,560ドル
日本の旗 日本 1億2805.6万人 5兆4,589億ドル 42,821ドル 4兆3,095億ドル 33,805ドル

PECC(太平洋経済協力会議)試算[編集]

ブランダイス大学ピータ・ペトリ教授[15]が担当したPECCの試算では、関税撤廃に加えて非関税措置の削減、サービス・投資の自由化の効果も含めて試算した。

TPP(12か国)に参加した場合は1050億ドル程度(10兆円程度,GDP比2.0%)、RCEPに参加した場合は960億ドル(GDP比1.8%)、FTAAPに参加した場合は2280億ドル(GDP比4.3%)の効果がそれぞれあるとしている[16]

ペトリらは労働生産性と実質賃金が同じ上昇率になるとする前提条件も用いているが、現実には1970年代後半から米国の労働分配率は低下している[17]

ペトリらは計算を容易にするために、政府の財政収支と経常収支が共に均衡しているとする条件も用いている。だが現実の世界では、景気悪化の局面では政府は財政赤字を拡大させて景気底上げを図るだろう。経常収支の均衡も現実的とは言えない。リーマンショック以前、米国と東アジアとの間で経常収支の大きな不均衡が生じていた。

ペトリらによる試算は2008年のリーマンショック以前のデータに基づいている。計算過程において経済成長、輸入額、政府債務額、設備投資等様々な数値・変数を関連付けるわけだが、危機以前のデータを用いればその関連付けが危機以前のトレンドを使ってなされることになる。結果として算出されるマクロ経済指標は危機以前の延長上のものでしかなく、金融危機以後の経済事情がうまく反映されない[17]

ペトリらはFDI(foreign direct investment)が大幅に増加するというシナリオで試算を出している。TPPの全インカムゲインの3分の1を生み出すというシナリオである。

タフツ大学の研究者による試算[編集]

タフツ大学の研究者らによる試算では、TPPに加盟した場合、2025年までに全ての加盟国でTPPが雇用へのダメージになると予測されている[17]。雇用への打撃が最も軽度なのはニュージーランドの6000人分であり、そして最も深刻な打撃を受けるのは米国であり約45万人分の雇用が失われる。カナダでは約58000人分の雇用が失われる[18]日本でも約75000人分の職が失われることになると予測されている[19]

TPPに加盟した場合、2025年までにどれだけの雇用が創出されるか(千人)[17]
  日本
  米国
  東南アジア諸国

TPPに加盟した場合、2025年までに全ての加盟国で労働分配率が低下すると予測されている。カナダでは労働分配率が0.86パーセント、米国では1.31パーセントほど押し下げられると考えられている[18]。低下の度合いはラテンアメリカ諸国が最も小さく0.54%、最も打撃が大きいのが日本の2.32%である[17]

TPPに加盟した場合、2025年までに労働分配率がどれだけ変化するかをGDPに対する比率で示したもの(%)
  日本
  米国
  ラテンアメリカ諸国
  東南アジア諸国

TPPに加盟した場合、TPPがもたらす各国の経済成長率への影響にはばらつきがある。10年間で経済成長率をどれだけ底上げするかについては、ラテンアメリカ諸国や東南アジア諸国では10年間で2%以上の押し上げになる。(それでも単年度で見れば0.2から0.3%程度の押し上げでしかない。)

一方、日本や米国ではTPPは経済成長にマイナスに作用してしまうと予測されている[17]

TPPに加盟した場合、2025年までにTPPがGDP成長率をどれだけ後押しするか(%)
  日本
  米国
  ラテンアメリカ諸国
  東南アジア諸国

重大な問題点[編集]

ウィキリークスによる「TPPの草案」の一部公開[編集]

ウィキリークスがTPPの草案の一部を入手し書類を公開した。リークされたのは知的財産分野の条文草案で、TPP交渉会合の首席交渉官会合で配布された英文資料95ページとなっている[20][21]

文書では、以下のことが明らかになった[22]

など

著作権侵害について、著作権を持っている権利者が権利侵害を申請していない状態であっても、警察などの非権利者が法的措置を実行できる「著作権侵害の非親告罪化」をし、商業的動機なく実行される著作権侵害に対しても刑事制裁を確実に適用することが見込まれている。

また、この条項について文書では米国など10カ国が賛成にまわり、日本ベトナムは反対をしていた。その他ソフトウェアの改造などの「デジタルロックの開錠」を違法とすることや安価なジェネリック医薬品などの利用が制限される提案が米国からなされている。

TPPの問題点の指摘

シドニー・モーニング・ヘラルドは公開文書から、以下の様に指摘した(2013年11月)[23]

「これは消費者の権利および利益を大きく度外視していると同時に、アメリカ政府と企業の利益を優先した内容であり、製薬企業、大手IT産業、ハリウッド音楽業界に有利な内容で、まるで大企業[24]へのクリスマスプレゼントだ」

ウィキリークスの編集長ジュリアン・アサンジは、以下の様に指摘した(2013年11月)[25][26]

「TPPによる知的財産保護の枠組みは個人の自由表現の自由を踏みにじるものだ。読む時、書くとき、出版する時、考える時、聴く時、踊る時、歌う時、発明する時、それらすべてがTPPの規制対象になる。『創作活動家』、『農家とその消費者』、また『病気を持つ人や今後病気になり得る人』がターゲットにされる」。
指摘に対するコメント

アメリカ合衆国通商代表マイケル・フロマンは「ウィキリークスの公開文書から結論を導き出さないように」と発言、公開文書の信憑性についてはコメントせず、[いつ?]「合意はまだ存在せず、引き続き交渉中で最終的な条文は存在しない」と述べた[要出典]

日本のTPP担当相甘利明はウィキリークスが公開した文書について、[いつ?]公開文書の信憑性や事実関係はかなり疑わしい[要出典]」と述べた。

ISDS条項[編集]

ISDS条項(投資家対国家の紛争解決)は企業や投資家側に非常に大きな権力を与える。国家が課す法・規制が外国の企業の将来的損失となる場合、ISDS条項に従ってその企業はその国家を訴えることができ仲裁人は国家の国内法に従う必要がない[27]。その法的争いの場も特別法廷であり公正ではない。国際法の人権についての専門家アルフレッド・デ・ゼイヤスはISDS条項と特別法廷に関して投資家が政府を訴えられるが政府が投資家を訴えられないことは不公正だと述べる[28]

コロンビア大学教授ジェフリー・サックスらがTPPに含まれるISDS条項を削除するべきと唱えている[27]。TPPやTTIPに含まれるISDS条項はNAFTAに含まれるISDSをさらに拡大させたものになる。そのISDS条項は防衛・食品安全・薬品安全・環境保護・医療サービス・気候変動など米国政府の様々な政策に関心を持つ市民にとって大きな懸念事項になるとサックス教授らは述べる。

環境保護目的のための法・規制が石油ガス関連企業の将来的損失になるとみれば、それら企業が政府相手に法的措置をとり大きな賠償金を得る可能性もある[29]。すでに石油・ガス関連会社Lone Pine Resources Inc.はNAFTAに含まれるISDS類似条項を使ってカナダ政府を訴えている[30]。ケベック州がセントローレンス川下での水圧破砕法を止めるための法案を通したことが企業側の利益を損ねるとしたためである。

2015年11月上旬、バラク・オバマ政権はトランスカナダ(カナダの企業)による米国とカナダを連結する石油パイプライン建造の申し出を拒否した。そのパイプライン建造は米国の国益にならないことと気候変動への取り組みに悪影響がでることが理由であった。しかしながらその2か月後トランスカナダはオバマ政権の決定を不服とし、NAFTA11条のISDSを以って米国政府を訴えた[30]。そしてパイプライン建造計画中止にかかる損失と将来的な収益減の補償として150億ドルもの金額を米国政府に要求した。これといくらか類似するケースで企業側が勝利していることも無視できない[27]。仮に米国政府がトランスカナダに法的勝利したとしてもそれはNAFTAの制度の下であり、TPPの制度において米国政府が訴訟を回避するために何百万ドルを費やす恐れがある[30]

2018年、トランプ政権はISDS条項を否定する方針を取っている[31]

底辺への競争[編集]

バーニー・サンダース米上院議員はNAFTAなど過去に米国が締結した自由貿易協定(FTA)の結果おこったことを分析し、TPPに強く反対する[32]。TPPに加盟すればベトナムやマレーシアなど労働法が国際基準から大きく離れた国々と米国が競争する事態となる。もし競争となれば、企業側は低賃金・長時間労働など劣悪な労働環境で労働者を働かせて搾取できるようなそれらの国々に生産拠点を移すだろう。雇用がオフショアされない場合では、それらの国々と競争するために企業が人件費などを削らざるをえなくなる。結果として賃金が低下していく。それらの国々と競争することは自由貿易ではなく底辺への競争であるとサンダースは述べる[32]

サンダー・レヴィン米下院議員は「ベトナムの法は国際的労働法基準とのコンプライアンスからはずれている。もし独立した労働組合をつくろうとすれば囚人となってしまう。」と指摘[33]。対するバラク・オバマはTPPによってアジア諸国の労働者の労働環境が良くなるとし、ベトナムの労働者が独立した労働組合を結成できるようになると主張した。だが2015年5月時点でさえベトナム労働法と国際労働法基準には大きな隔たりがある。TPP発効初日から突然ベトナム労働法が修正されて国際基準にまで引き上がるとは考えにくい。レヴィンは、ベトナム政府やマレーシア政府がそれらの労働法を国際基準まで引き上げるという根拠は無いと述べる[33] [34]

エリザベス・ウォーレン上院議員は2015年5月にレポートを発表しTPPの問題点を指摘した。そのレポートによれば米国が過去に締結した自由貿易協定には、労働法について協定の内容と現実に大きな隔たりがあった。ペルーコロンビアなどと結んだ協定では、労働組合への暴力を減らすためにバラク・オバマが2011年にコロンビアとアクションプランを採用した。だが現実はその4年後に約100名もの労働組合員が殺され約1300人もの組合員が死の脅迫をうけていた[33]

外国人労働者の受け入れを促進[編集]

カナダのAFLによれば、TPPによって経営者側が際限なき数の外国人労働者をカナダに連れてくることができるようになり、経営者側がカナダ人を雇いにくくなるという。カナダの労働市場が変えられてしまい、下級労働者を搾取するような流れになると考えられている[35]

分析[編集]

ハフィントン・ポストではDean Bakerの見解、実質的にはTPPは大企業の利権を増幅させることがその目的であり、自由貿易とは関係がない、を報じている[36]

ノーベル経済学賞受賞者ジョセフ・スティグリッツによれば、TPPは最悪の貿易協定であるという[37]。 TPPは環境保護のための規制、保健、安全性のための規制、マクロ経済に影響を与える金融部門の規制などに大きな制限をかけるものである[38]。それらの規制がTPPの条項に違反すると解釈されれば海外の投資家らが政府を訴えることができ、裁判は私的な特別法廷で行われる。過去の判例からもわかるようにそのような特別法廷では、海外投資家が公正で正当な扱いを受けるべきだとする要求を、政府による規制が不当であるという根拠として解釈されていた。たとえそれらの規制が正当性のあるものであり、新たに発見された害から市民を守るための規制だったとしてもである[38]

6000ページをこえる協定の内容も複雑であり、政府を相手取って温室効果ガスの規制までもが訴訟の対象となり、その他の非常に幅広い領域において訴訟の対象になる可能性が依然として残っている。 さらには内国民待遇条項によって、大企業が最上級の扱いを受けられるホスト国での扱いと同じ扱いを要求でき、これは底辺への競争につながる。米国大統領バラク・オバマの約束したこととは正反対のことが起こるのである。TPPは21世紀の貿易ルール作りを主導する国が米国なのかそれとも中華人民共和国なのかを決定するものだとオバマは繰り返し述べていたが、本来は透明性を保ちつつ皆の意見を聞きながら協調してルールを作っていくべきだろう。しかし現実は米国の大企業によってそれらのルール作りがなされているのである。これは民主主義的原則を重んじる人間にとっては許容できないものである[38]

ノーベル経済学賞受賞者ポール・クルーグマンによれば、TPPによって多国籍企業主権国家を訴え、その裁判が部分的に民営化された司法団体によって裁かれるようなシステムが作られてしまうのだという[39]。 TPPに含まれるISDS条項によって大企業が政府を訴えることが出来、その仲裁は特別法廷の場でなされる[40]。 薬の特許や映画のコピーライトといった知的財産権も強化され、顧客の出費は上昇する。薬価は上昇し人々が薬剤にアクセスできなくなることが懸念される[39]

ゴールドマン・サックスといった巨大銀行がISDS条項を含んだTPPを推進しているのは、それを使って彼らにとって不都合な金融市場の規制を無効化することが可能になるからである[40]

脚注[編集]

  1. ^ 「環太平洋パートナーシップ (TPP) の輪郭」貿易・投資を拡大し、雇用、経済成長及び発展を支援する:TPPの輪郭(外務省仮訳)” (PDF). 外務省 (2011年11月12日). 2012年3月8日閲覧。
  2. ^ Content of confidentiality lettersMinistry of Foreign Affairs and Trade, New Zealand
  3. ^ しんぶん赤旗 TPP交渉に「守秘合意」発効後4年間、内容公開せず 2014年9月閲覧
  4. ^ Dialogue with UN Special RapporteurMinistry of Foreign Affairs and Trade, New Zealand
  5. ^ 衆議院 第180回国会 本会議 第3号”. 国立国会図書館 (2012年1月27日). 2018年8月21日閲覧。
  6. ^ TPP協定:第10回交渉会合の概要” (PDF). 外務省 (2011年12月14日). 2012年2月4日閲覧。
  7. ^ “TPP参加に極秘条件 後発国、再交渉できず”. 東京新聞. (2013年3月7日). http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2013030702000237.html [リンク切れ]
  8. ^ 衆議院会議録情報 第183回国会 予算委員会 第10号”. 国立国会図書館 (2013年3月8日). 2014年5月30日閲覧。
  9. ^ 平成25年3月15日安倍内閣総理大臣記者会見首相官邸
  10. ^ 社説TPP交渉秘密の陰で何を決める北海道新聞 2013年4月18日[リンク切れ]
  11. ^ TPP協定交渉の概括的現状” (PDF). 外務省 (2011年12月27日). 2012年1月17日閲覧。
  12. ^ 第2版がリークされている。ウィキリークス Press Release - Updated Secret Trans-Pacific Partnership Agreement (TPP) - IP Chapter (second publication) on 2014-10-16
    ジョセフ・E・スティグリッツは、リーク情報を元に交渉担当者へ意見を書き送っている。その中で、特にTRIPSを非難している。コロンビアビジネススクール Dear TPP negotiators December 6, 2013
  13. ^ 2015年1月20日段階での交渉内容が読める。ウィキリークス Secret Trans-Pacific Partnership Agreement (TPP) - Investment Chapter
  14. ^ 草案がリークされている。ウィキリークス Press release: Secret Trans-Pacific Partnership Agreement (TPP) - Environment Chapter 15 January 2014
  15. ^ Peter A. Petriブランダイス大学
  16. ^ PECC試算の概要内閣府
  17. ^ a b c d e f Trading Down:Unemployment, Inequality and Other Risks of the Trans-Pacific Partnership AgreementJ. Capaldo and A. Izurieta, Global Development and Environment Institute, Working Paper No. 16-01 Jan. (2016)
  18. ^ a b TPP's Economic Impact Will Be Fewer Jobs, More Inequality, New Study Says D. Tencer, The Huffington Post, 20 Jan 2016
  19. ^ Trans-Pacific Partnership Signed in New Zealand amid Mass ProtestsT. Peters, Centre for Research on Globalization, 10 Feb 2016
  20. ^ “米、TPP交渉で企業寄りの姿勢 ウィキリークス公開文書”. AFPBB. (2013年11月14日). https://www.afpbb.com/articles/-/3003264 
  21. ^ Secret Trans-Pacific Partnership Agreement (TPP)
  22. ^ “ウィキリークスがTPP文書公開 知財分野の条文案か”. 産経新聞. (2013年11月14日). https://web.archive.org/web/20131114172707/http://sankei.jp.msn.com/world/news/131114/amr13111421510004-n1.htm 
  23. ^ Trade deal could be bitter medicine
  24. ^ 全国貿易協議会(NFTC)の公表されている会員企業で列挙する。インテルマイクロソフトIBMGAPコカ・コーラファイザーシティグループダウ・ケミカルGEヒューレット・パッカードジョンソン・アンド・ジョンソンリーバイスオラクルP&Gタイム・ワーナー、VISA(バンカメ)、ウォルマートゼロックスなど
  25. ^ TheWikiLeaksChannel
  26. ^ ウィキリークス、TPP知財分野交渉の草案との文書掲載
  27. ^ a b c The real danger in TPPL. Johnson, L. Sachs and J. Sachs, CNN, 19 Feb 2016
  28. ^ TPP 'fundamentally flawed,' should be resisted - UN human rights expertRT, 2 Feb 2016
  29. ^ Hilary Should Catch up to Bernie on the TPPL. Cohen, The Huffington Post, 12 Feb 2016
  30. ^ a b c The TPP Trades Public Interest for Corporate ProfitsJ. Redman, Foreign Policy In Focus, 17 Feb 2016
  31. ^ 2018.03.08 ついに米国もISDS否定~世界に取り残された、哀れな日本農業共同組合新聞
  32. ^ a b So-called 'free trade' policies hurt US workers every time we pass themB. Sanders, The Guardian, 29 Apr 2015
  33. ^ a b c Trans-Pacific Partnership won't improve workers' rights in Asia, critics warnS. Greenhouse, The Guardian, 21 May 2015
  34. ^ Top House Democrat on trade opposes Trans Pacific PartnershipK. Snell, The Washington Post, 18 Feb 2016
  35. ^ Trans-Pacific Partnership will undermine Canada's labour market, says Alberta groupCBC News, 19 Apr 2016
  36. ^ Will the Trans-Pacific Partnership Turn Silicon Valley Into Detroit?D. Baker, The Huffington Post, 9 May 2016
  37. ^ TPP 'worst trade deal ever,' says Nobel-winning economist Joseph StiglitzCBC, 31 Mar 2016
  38. ^ a b c In 2016, let's hope for better trade agreements - and the death of TPP J.E. Stiglitz, The Guardian, 10 Jan 2016
  39. ^ a b Trade and Trust P. Krugman, The Opinion Pages, The New York Times, 22 May 2015
  40. ^ a b Why Goldman Sachs Likes Obama’s Trade Agenda Z. Carter, The Huffington Post, 26 May 2016

参考文献[編集]

  • 中野剛志「リベラルな保護主義に向けて」『環』第45号、藤原書店、2011年、126頁。 
  • 中野剛志『TPP亡国論』集英社新書、2011年3月。ISBN 978-4087205848 
  • 小倉正行、合同出版編集部『これでわかるTPP問題一問一答』合同出版、2011年5月。ISBN 978-4772610292 
  • 『TPPコーメンタール』日本関税協会、2019年6月。ISBN 978-4-88895-445-7