ジョセフ・E・スティグリッツ

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 ジョセフ・E・スティグリッツ
ニューケインジアン経済学
生誕 1943年2月9日(70歳)
インディアナ州ゲーリー
国籍 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
研究機関 コロンビア大学
研究分野 マクロ経済学
公共経済学
情報経済学
母校 MIT
影響を
受けた人物
ジョン・メイナード・ケインズ
ロバート・ソロー
影響を
与えた人物
ポール・クルーグマン
ゼイソン・ファーマン
実績 スクリーニング
課税, 失業
情報 - IDEAS/RePEc
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ノーベル賞受賞者 ノーベル賞
受賞年:2001年
受賞部門:ノーベル経済学賞
受賞理由:情報の非対称性を伴った市場の分析

ジョセフ・ユ-ジン・スティグリッツJoseph Eugene Stiglitz, 1943年2月9日 - )は、アメリカ人の経済学者で、1979年にジョン・ベーツ・クラーク賞2001年ノーベル経済学賞を受賞した。コロンビア大学教授。2013年現在における最も活動的且つ影響力のある経済学者の一人である[1]

ローレンス・サマーズと経済学界にそびえる2本柱とされている[2]IMFの経済政策を厳しく批判している[3]

目次

略歴[編集]

出版[編集]

2002年にはGlobalization and Its Discontents(邦題:世界を不幸にしたグローバリズムの正体)を出版、この本は世界で100万部以上売れ、30ヶ国語以上に翻訳された。この本の中で、なぜグローバリゼーションシアトルジェノヴァのようなWTOへの抗議活動を発生させたかに関するいくつかの理由を示した。

2003年には1990年代の好景気とその崩壊を分析した"The Roaring Nineties"(邦題:人間が幸福になる経済とは何か――世界が90年代の失敗から学んだこと)と"New Paradigm for Monetary Economics"(邦題:新しい金融論――信用と情報の経済学)を出版。2005年には"Fair Trade for All"を出版し、2006年の夏には"Making Globalization Work: The Next Steps to Social Justice"(邦題:世界に格差をバラ撒いたグローバリズムを正す)を出版した。

2012年の『世界の99%を貧困にする経済』は日本でもベストセラーになった[6]

人物[編集]

経済学への貢献[編集]

スティグリッツの著名な業績は、ある経済主体が他者の私的情報を得るために使用される技術であるスクリーニングに関するものである。情報の非対称性の理論に対する貢献により2001年、ジョージ・アカロフマイケル・スペンスと共にノーベル経済学賞を受賞した。さらに、研究面で数多くの優れた論文を書くだけにとどまらず、自ら経済政策を遂行する立場にもなった。

  • 2000年7月、スティグリッツは発展途上国が政策を模索することを助け、より多くの市民が経済政策に参加できるようにすることを目的として、コロンビア大学にInitiative for Policy Dialogueを共同設立した。
  • 数学的手法を使わずに東欧の社会主義体制が失敗した背景や、市場における不完全情報の機能、「自由な市場」が資本家にとって実際はどのようなシステムなのかというテーマに関する見解を著した。

主張[編集]

  • 世界の指導者に対し、国内総生産(GDP)の検証で思い悩まず、繁栄を測るより広範な指標を重視するよう呼び掛けている[10]
  • 2010年10月現在の欧州中央銀行(ECB)やアメリカの連邦準備理事会(FRB)の超緩和政策は、景気回復を後押しするというより世界を「混乱状態」に陥れていると批判し、日本やブラジルなどの国々は輸出業者の防衛を余儀なくされていると指摘している[11]
  • 欧州連合(EU)の緊縮財政を推し進めていることについて、「誤った政策」だと指摘し、欧州域内と米国の経済成長鈍化につながるとの見方を示している[12]。また、EUの緊縮策は間違いなく成功の見込みが最も薄いもので、欧州は自殺に向かっていると語っている[13]。イギルスの財政赤字の削減開始は時期尚早とするゴードン・ブラウン元首相を支持している[14]
  • 金融市場にシステムの機能を損なうような取引を控えさせ、世界的危機が貧しい国に与えた打撃に対して償う資金源とするために、金融市場に新しい税を導入するべきだとの見解を示している[15]。また、銀行が私利を追求しても(=貪欲)、それは社会の幸福にはつながらないと指摘している[16]
  • タイ政府に、環太平洋戦略的経済連携協定は危険であり、その多国間協定に参加しないように助言をしている[17]。協定内容が非公開であり、製薬会社が自分たちの利益増加のために薬価制限の上限撤廃を求め政治家にロビー活動を行っているためである。協定参加による薬価上昇は、タイ国内産業とりわけジェネリック医薬品産業に打撃をあたえる。
  • アメリカのシステムをゆがめているのは富裕層で、経済に貢献する以上に稼いでいると指摘し、富裕層に対し増税をすべきだと主張している[18]
  • アジアの経済統合はアメリカが市場を支配することへの対抗勢力として非常に重要であることを強調し、南北の貿易格差や国際的な財務不均衡、およびその不安定さといった欠陥を是正することにもなるのではないかと期待している[19]
  • 日本の海外援助について「日本は世界第二位の経済大国であり、グローバリゼーションを良くするために責任を負っている。 日本は経済発展を実現した国でもあり、世界の平和や貧困撲滅に前向きに取り組んできた国である。日本に対しては、今後も途上国援助に積極的に関与してもらいたい」と述べている[20]
  • 日本がバブル崩壊後にから10年以上も名目GDPの成長不全やデフレーションに陥っていることを指摘し、その状態から経済を好転させるために財政赤字を紙幣増刷によってファイナンスするように提言している[21]。新しく刷られたお金を人々が持てばそれらの人々のいくらかが財やサービスの消費にお金をまわそうとするだろうし、銀行など金融機関が貸し出しを増やし景気を刺激するからである。これはいわば政府が発行する紙幣、すなわち政府紙幣[22]のことである。これは無利子国債を中央銀行が買い取ることと実質等しい。
  • 日本の経済を刺激する方法に、円高を食い止め製造業の輸出競争力を向上させる、サービス産業の強化、富裕層の資金を低所得の人たちに行き渡らせ格差の是正に取り組むこと等を挙げている[23]。日本の円について「日本のデフレの原因は、為替の影響が大きかった。円安が続けば、その状況は変わる。現実問題として、アメリカが金融緩和を進めれば、円高になるので、対抗することが必要だ」と述べている[24]
  • 安倍晋三の経済政策「アベノミクス」の副作用が懸念されていることについて「実施しないほうが将来的なリスクになる」と述べている[25]
  • 単純な貨幣数量説に従ったマネタリズムには根拠となる理論がなく、一部の実証分析があるだけとして批判しており、コストプッシュ・インフレに対して利上げで対応するような機械的に行うインフレターゲティングには批判的な立場をとっている[26][27]
  • 労働者の労働環境改善や福利向上を目指し、ジェフリー・サックスローラ・タイソンロバート・ライシュなどと協同し米国議会へ2014年度までに現行の時給7.25ドルから9.80ドルへの最低賃金引き上げを求める手紙を送っている[28]

IMF批判[編集]

2002年の『世界を不幸にしたグローバリズムの正体』の中で彼は、グローバリゼーションの必要性は認めた上、反グローバリゼーションはむしろワシントン・コンセンサスへの反対を示すものと見ている[29]。その上、いわゆる東アジアの奇跡は、最小政府を志向するワシントン・コンセンサスに従わなかったからこそ実現したものとしており[30]、ワシントン・コンセンサスに対する疑問を呈している。また同書ではIMF批判が展開されており、IMFの推し進めた資本市場の自由化は、アメリカの金融セクターのために広範な市場を開拓した反面、その本来の使命であるはずのグローバルな経済の安定には寄与しなかったものとしている[31]。またIMFをG7の債権国の代理者[32]と位置づけており、貧しい国々が貧しいままであるような制度設計をしたアメリカ合衆国の金融セクターに対する不満を表した。

その一方で、IMFと表だって対立はしないもののIMFの方針に全面的に従うということもせず独自の発展政策を採っているポーランドなどの国々の成功事例を挙げている(のちにIMFにはリーマン・ショック直後の2008年11月からポーランドから元首相のマレク・ベルカが転身し、2010年6月にポーランド国立銀行総裁として本国に戻るまで欧州局長を務めることになるが、この期間ベルカは国際的な資本移動に関してIMFの公式ブログサイト「iMF Direct」上で最近のIMF内部のマネタリズムの風潮とはかなり異なる、ケインズやスティグリッツと同様の見解を精力的に披露している[33])。

邦訳著書[編集]

単著[編集]

  • 『スティグリッツ公共経済学(上)公共部門・公共支出』、藪下史郎訳、マグロウヒル出版、1989年(第2版2003年)
  • 『スティグリッツ公共経済学(下)租税・地方財政・マクロ財政政策』、藪下史郎訳、マグロウヒル出版、1989年(第2版2004年)
  • 『世界を不幸にしたグローバリズムの正体』、徳間書店、2002年
  • 『人間が幸福になる経済とは何か――世界が90年代の失敗から学んだこと』、徳間書店、2003年
  • 『世界に格差をバラ撒いたグローバリズムを正す』、徳間書店、2006年
  • 『スティグリッツ教授の経済教室――グローバル経済のトピックスを読み解く』、藪下史郎・藤井清美共訳、ダイヤモンド社、2007年 ISBN 978-4-478-00084-7
  • 『スティグリッツ国連報告』、森史郎訳、水山産業株式会社出版部、2010年
  • 『フリーフォール――グローバル経済はどこまで落ちるのか』、楡井浩一・峯村利哉共訳、徳間書店、2010年
  • 『世界の99%を貧困にする経済』、楡井浩一・峯村利哉共訳、徳間書店、2012年 ISBN 978-4-198-63435-3

共著[編集]

  • (カール・E・ウォルシュ)『スティグリッツ入門経済学』、藪下史郎・秋山太郎・蟻川靖浩・大阿久博・木立力・宮田亮・清野一治共訳、東洋経済新報社, 1994年(第3版2005年、第4版2012年)
  • (カール・E・ウォルシュ)『スティグリッツミクロ経済学』、藪下史郎・蟻川靖浩・木立力・秋山太郎・大阿久博共訳、東洋経済新報社、1995年(第3版2006年)
  • (カール・E・ウォルシュ)『スティグリッツマクロ経済学』、藪下史郎・金子能宏・清野一治・秋山太郎・木立力共訳、東洋経済新報社、1995年(第3版2007年)
  • (ブルース・グリーンウォルド)『新しい金融論――信用と情報の経済学』、東京大学出版会、2003年
  • (リンダ・ビルムズ)『世界を不幸にするアメリカの戦争経済 イラク戦費3兆ドルの衝撃』、楡井浩一訳、徳間書店、2008年
  • (ジャンポール・フィトゥシ、アマルティア・セン)『暮らしの質を測る――経済成長率を超える幸福度指標の提案』、福島清彦訳、金融財政事情研究会、2012年
  • ジョージ・ソロスクリスティーヌ・ラガルドほか)『混乱の本質――叛逆するリアル 民主主義・移民・宗教・債務危機』、徳川家広訳、土曜社、2012年
  • (ジョージ・ソロス、クリスティーヌ・ラガルドほか)『世界は、考える』、野中邦子訳、土曜社、2013年

共編著[編集]

論文[編集]

出典[編集]

  1. ^ 木暮太一の「経済の仕組み」 世界一わかりやすいスティグリッツの経済学 第1回 「経済学は選択の科学」現代ビジネス 2013年1月10日
  2. ^ 嫌われ経済学者スティグリッツニューズウィーク日本版 2009年8月24日
  3. ^ a b ジョセフ・スティグリッツ博士 早稲田大学特別講演(2007年10月22日) - QuonNet 2009年4月10日
  4. ^ 【書評】スティグリッツ教授が暴く米億万長者の「秘密兵器」Bloomberg 2012年6月13日
  5. ^ http://www.jinfo.org/Nobels_Economics.html
  6. ^ 「経済の政治化」米の成長を阻害 ジョセフ・スティグリッツ氏に聞く(2-1) (1/4ページ)SankeiBiz(サンケイビズ) 2013年1月4日
  7. ^ Osbourne's first budget? It's wrong, wrong, wrong! The Independent 2010年6月27日
  8. ^ 友寄英隆 『「新自由主義」とは何か』 新日本出版社、東京、2006年8月、p.54。ISBN 4-406-03307-6
  9. ^ 米経済、力強い回復の可能性は極めて低い=スティグリッツ氏Reuters 2009年9月4日
  10. ^ スティグリッツ教授:GDP「崇拝」回避を、広範な指標の重視要請Bloomberg 2009年9月14日
  11. ^ FRBとECBの超緩和政策、世界を混乱に=スティグリッツ氏Reuters 2010年10月6日
  12. ^ スティグリッツ氏:欧州の緊縮財政は誤り-成長鈍化につながるBloomberg 2010年9月8日
  13. ^ スティグリッツ教授:欧州の緊縮策は「自殺」への処方箋Bloomberg 2012年4月27日
  14. ^ ノーベル賞のスティグリッツ氏とソロー氏:英首相を支持-財政再建でBloomberg 2010年2月19日
  15. ^ スティグリッツ教授:金融市場に新税導入を、経済「汚染」の賠償Bloomberg 2009年10月5日
  16. ^ ジョセフ・スティグリッツ教授 特別寄稿 「もう同じ過ちは繰り返すな! 2009年に得た厳しい教訓」ダイヤモンド・オンライン 2010年1月5日
  17. ^ Avoid mistake the West:Joseph Stiglitz The Nation 2013年3月17日
  18. ^ 米大統領選:論戦の裏に2人のコロンビア大教授-増税で対立Bloomberg 2012年7月20日
  19. ^ Asian Economic Integration- Current Status and Future Prospects -RIETI 2002年4月
  20. ^ 【セミナー報告】 ジョゼフ・スティグリッツ教授講演会 「グローバリゼーションの中の途上国開発と日本への期待」JICA研究所 - JICA 2007年8月22日
  21. ^ Lessons from Japan's economic malaise Joseph Stiglitz, Project Syndicate 2003年3月12日
  22. ^ 関税・外国為替等審議会 外国為替等分科会最近の国際金融の動向に関する専門部会(第4回)議事録 2003年4月16日
  23. ^ 世界経済の課題 “格差の是正” - これまでの放送NHK Bizプラス 2012年8月14日
  24. ^ 日銀 黒田新体制始動 “物価目標 2%実現を”NHK Bizプラス 2013年3月21日
  25. ^ 消費税は消費を冷やす“悪い税金”ノーベル賞学者テレ朝news 経済ニュース 2013年5月31日
  26. ^ ジョセフ・E.スティグリッツ 『スティグリッツ教授の経済教室 : グローバル経済のトピックスを読み解く』 藪下史郎,藤井清美訳、ダイヤモンド社、東京、2007年10月、25頁。ISBN 978-4-478-00084-7
  27. ^ The Failure of Inflation Targeting
  28. ^ Top economists: Time to raise the minimum wage learn forward, MSNBC 2012年7月24日
  29. ^ 『世界を不幸にしたグローバリズムの正体!』p313
  30. ^ 『世界を不幸にしたグローバリズムの正体!』p130
  31. ^ 『世界を不幸にしたグローバリズムの正体!』p294
  32. ^ 『世界を不幸にしたグローバリズムの正体!』p296130
  33. ^ iMF Direct Marek Belka

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

先代:
ローラ・タイソン
米経済諮問委員会委員長
1995年 - 1997年
次代:
ジャネット・イエレン
先代:
ローレンス・サマーズ
世界銀行チーフエコノミスト
1997年 - 2000年
次代:
ニコラス・スターン