ミクロ経済学

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ミクロ経済学(ミクロけいざいがく、: Microeconomics)は、マクロ経済学に並ぶ近代経済学の主要な一分野である。

経済主体の最小単位と定義する家計(消費者)、企業(生産者)、それらが経済的な取引を行う市場をその分析対象とし、世の中に存在する希少な資源の配分について研究する経済学の研究領域であり、最小単位の経済主体の行動を扱うためミクロ経済学と呼ばれる。

これとは別に個別の経済活動を集計したマクロ経済学という領域もあり、ミクロ経済学と併せて経済学の二大理論として扱われている。ただし、現代ではマクロ経済学もミクロ経済学の応用分野の一つという面が強い。ミクロ経済学は、その応用分野であるマクロ経済学財政学金融論公共経済学国際経済学産業組織論などに対して、分析の基礎理論を提供する役割をも果たしている。

ミクロ経済学の誕生は、1776年のアダム・スミスの著書『国富論』に始まる[1]

主要理論[編集]

以前はミクロ経済学とは一般均衡理論を中心とした価格理論を指していたが、現代のミクロ経済学の発展はゲーム理論の功績が大きく、どちらもミクロ経済学に欠かせないものとなっている。

価格理論[編集]

需給理論[編集]

需給理論は特定の市場における需要供給の原理について説明した理論であり、需要理論と供給理論に分けて考えることができる。

需要とは支払い能力を伴う特定の(もの、およびサービス)を消費しようとする欲望であり、これはその財の価格などによって変動する。経済学においてはあらゆる価格帯での需要を需要表としてまとめて観察し、その価格の変動に伴う需要量の変動を曲線として示したものを需要曲線と言う。需要曲線は一般的に価格が高ければ需要量は減少し、低価格なら需要量は増大する相関関係があり、これを需要の法則と言う。(ものが安いほどよく売れる)つまり、一般に需要曲線は右下がりとなる。

一方で供給とは物財・サービスを市場に提供する活動であり、これもまた価格などによって変動する。あらゆる価格帯における供給量の変動を曲線として示すと同じように供給曲線が見られる。一部の例外を除いて、供給曲線は価格が低ければ供給量は減少し、価格が高くなれば増大するという需要曲線とは正反対の関係があり、これを供給の法則と呼ぶ。つまり、一般に供給曲線は右上がりとなる。

均衡理論[編集]

市場というメカニズムは価格を通じて需給を均衡させる。価格とは財に対して貨幣により示される相対的な価値であり、これは需要と供給の均衡によって左右される。価格は中立的である上に柔軟に市場で管理されているため、優れた資源の配分に貢献している。

価格調整の過程においては需要と供給の法則が大きく影響を与える。市場においては購買は低価格を望み、販売は高価格を望むという正反対の行動の原理が一般的に作用するため、両者の考えが一致する価格が調整されていく。その過程においては余剰と不足という二つの不均衡を想定することが可能であり、余剰とは所与の価格では供給量が需要量を超えている状態を指し、商品価値の下落を招く。不足は所与の価格では需要量が供給量を超えている状態を指し、商品価値の高騰を招く。こうして均衡された商品価値が市場の中で規定され、生産物の供給量と需要量が等しい状態に向かう。つまり、一般に財の価格と数量は需要曲線と供給曲線の交点で均衡する。その一方で、財の価格と数量は、市場における貨幣価値の自己表現という性格を併せ持つ。

市場構造[編集]

市場構造とは経済学的な意味での市場が持つ構造であり、競争の性質と度合いによって分類することができる。効率性や有効需要あるいは厚生といったいくつかの観点から、市場構造を見極めることが一般的になっている。

完全競争について完全な情報を持つ不特定多数の消費者と、同じく財について完全な情報を持つ多数の生産者が存在し、カルテル不買運動などを起こさない完全競争の元での市場構造であり、消費者は自己の効用(財から得られるメリット)を最大限にするように、生産者は自己の利益を最大限にするよう行動する条件の下では、個々の企業が価格を統制することができず、需給理論に基づいた均衡的な価格が自然と導き出される。そのために企業はその均衡価格に従って生産の規模などを決定することとなる。ただしこれは非常に理論的な状況であり、多くの場合は不完全競争となっている。

不完全競争としては独占的競争寡占独占があり、独占的競争は商品の差別化により市場の一部を独占し、寡占は少数の販売者が特定の産業全体を支配し、独占では単一の販売者が特定の商品や産業を完全に支配している市場構造である。不完全競争では商品差別化非価格競争、共謀や価格協定(カルテル)が引き起こされやすくなり、消費者は不当に高い価格で財を購入することになることが多い。近年では、不完全競争の分析をゲーム理論の応用として体系的に考えることが多い。

ゲーム理論[編集]

価格理論において仮定される完全競争においては、他の経済主体の行動が自分の利得に影響を与えることはなかった。しかし、現実の経済現象においては、例えばライバル企業の動向が自社の利益を左右するように、自分の利得が他の経済主体の行動に影響を受けていると考えるのが自然である。このとき、自分の最適な行動は他者の行動によって変わり、他者にとって最適な行動は自分の行動により変わる。このように、最適な行動が相互に依存し、相手の行動を読み合う必要が生じるような状況をゲーム理論は分析対称としている。

脚注[編集]

  1. ^ 岩田規久男 『経済学を学ぶ』 筑摩書房〈ちくま新書〉、1994年、171頁。

関連項目[編集]

消費者行動分析[編集]

企業行動分析[編集]

市場分析[編集]