実験経済学

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実験経済学(じっけんけいざいがく、: experimental economics)とは、経済学的な問題に対して実験的な手法[1]による研究を行う分野である。 集められるデータは主に効果量の推定、理論の妥当性の検証、および市場メカニズムの解明等に使われる。 実験経済学においては通常、現実のインセンティブを再現するために、被験者には現金による動機付けが行われる。実験は、市場やその他の交換システムがなぜ機能するのかを理解する手掛かりとなるものである。

基本的な主題は実験デザインである。 実験は、実際のフィールドか、もしくは実験室において、個人もしくは集団の行動を対象に行われる。[2]

実験のトピック[編集]

実験経済学における主要なトピックは、大まかには以下のように分けることができる。

  • 意思決定(decision making
  • 市場(markets
  • ゲーム(games
  • 交渉(bargaining
  • オークション(auctions
  • マッチング(matching
  • 協調(coordination
  • 学習(learning
  • 社会選好(social preferences
  • フィールド実験(field experiments

経済学教育の場においては、学生を実験に参加させることで経済学への理解を促すこともある。また、実験への新たなアプローチとしては、エージェント・ベースの計算モデルを用いるものがある。

手法[編集]

実験経済学は、一般的に以下のガイドラインに基づいて行われる。

  • 被験者に金銭の支払いによって動機付けを行う
  • 実験上の指示は全て公開する
  • 実験参加者を欺くことはしない
  • 特定の、具体的な状況を想定することは避ける

歴史[編集]

実験経済学は、ハーヴァード大学エドワード・チェンバレンによって始められ、Chamberlin (1948)[3]として発表された。 このチェンバレンの論文は、実験によって、市場の挙動が理論と異なり非合理的に振る舞うことを示すことを目的としていた。 これが実験経済学の始まりである[4]

チェンバレンの実験に大学院生として参加していたバーノン・スミスは、単に市場が非合理的であることを示すことを目的とせず、どのような条件やルールの下であれば市場メカニズムを機能させることができるかについて研究を始めた。 スミスはこうした実験手法の発展に貢献したことが評価され、2002年にノーベル経済学賞を受賞している。 このとき同時に受賞したのは、心理学者として行動経済学の誕生に貢献したダニエル・カーネマンである。

学術雑誌[編集]

脚注[編集]

  1. ^ Including statistical, econometric, and computational. On the latter see Alvin E. Roth, 2002. "The Economist as Engineer: Game Theory, Experimentation, and Computation as Tools for Design Economics," Econometrica, 70(4), pp. 1341–1378 Archived 2004年4月14日, at the Wayback Machine..
  2. ^ Vernon L. Smith, 2008a. "experimental methods in economics," The New Palgrave Dictionary of Economics, 2nd Edition, Abstract.
       • _____, 2008b. "experimental economics," The New Palgrave Dictionary of Economics, 2nd Edition. Abstract.
       • Relevant subcategories are found at the Journal of Economic Literature classification codes at JEL: C9.
  3. ^ Chamberlin, Edward H., 1948. "An experimental imperfect market." Journal of Political Economy, Vol. 56, No. 2 (April), pp.95-108
  4. ^ ロス・M・ミラー著、川越敏司監訳、望月衛訳『実験経済学』日経BP社、2006年

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

ソフトウェア[編集]

教育[編集]