公共経済学

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公共経済学(こうきょうけいざいがく,: Public economics)とは、地方公共団体などの公共部門が行う経済活動を、経済学の側面から分析する学問である。また、公共部門と民間部門の事業分担の関連、市場の失敗の問題、所得分配公平性の問題、社会的意思決定機構の問題なども扱われる。

公共経済学の定義[編集]

公共経済学とは、資源配分の効率性と所得配分の公平性の達成を目的とする公共経済部門を分析する学問分野である。

市場による調整機能には、以下2つの欠点がある。 第1に、市場による調整機能が最適資源配分を達成するにはまず次の4条件が必要である。

  1. 費用逓減産業が存在しない。
  2. 外部効果が存在しない。
  3. 公共財が存在しない。
  4. 不確実性が存在しない。

これらの条件が満たされないとき、市場は最適資源配分を達成し得ないので、それを市場の失敗と呼ぶ。このとき、公共経済部門が市場に介入し市場機能を補強するか、あるいは市場機能を全く利用できない場合には別の資源配分機構を設けて、最適資源配分を実現することが要請される。

第2に、市場による所得分配は、必ずしも公平性という社会的倫理基準を満たすとは限らない。この場合、公共経済部門が社会保障政策等により公平な所得配分達成のため介入する必要がある。

公共経済学のアプローチ[編集]

経済学は市場を前提とし、その中でのの生産、分配、消費の問題を考察することが多い。しかし、第二次世界大戦後の環境問題、都市問題、福祉問題への関心の高まりは、非市場的分野での公共サービスの提供や、公共交通、水道事業等の準公共財を提供する公共部門の経済活動と、その資源配分問題に経済分析の手法を拡大させることを要請した。こうした非市場的分野と公共財ないし準公共財を対象とする経済学は、ミクロ分析の厚生経済学と結んで公共経済学として発展した。公共経済学はいまだ体系化されてはいないが、次のようなものがある。

費用便益分析による公共施設の決定
例えば、羽田成田に続く第三の空港を何処に作るかに際して、複数の候補地のそれぞれについて費用の合計と便益の合計を出し、相互比較したうえで最適のものを選ぶというようなもの。
限界費用価格形成原理の適用
地方公共団体が運営する公益事業に関して、収穫逓増で準公共財の供給を行うときの望ましい料金水準・料金体系の決定や、一般財政から補助するときの基準を明確にするもの。
市場の失敗
環境改善のための課徴金政策や、外部性の経済学を適用したもの。

公共経済学の発展[編集]

過去において、公共部門の経済活動あるいは民間経済に対する干渉の問題は財政学あるいは厚生経済学の領域で扱われていた。これが1960年代以降、公共経済学という領域の問題になったのには、次の3つの理由が考えられる。

第1に、公共部門の量的かつ質的拡大が上げられる。量的に見ると政府支出の名目GDPに占める割合は先進資本主義国では10%から20%となっている。また財政規模から見ても国民所得に占める租税・税外負担率は、低い国でも25%、高い国になると50%近くなっている。このような公共部門の量的拡大は、公共部門の民間経済への影響をより重大なものにした。質的拡大についても、医療、住宅、教育などの面で純粋公共財から私的財に近いものまで、公共部門により供給されるようになった。また社会保障制度の充実、あるいは所得再分配面での公共部門の活動の強化が、人々により強く要請され公共部門が拡大した。

第2に、市場で取引されない財の増大とともに、それらの財の最適供給および費用負担方法を決定する問題が生じ、そのために政治機構による意思決定の分析が必要となった。

第3に、財政学、厚生経済学にはすでにある定着したイメージがある。そこで両者からイメージされる分野とは若干異なり、もう少し広い分野あるいは両者に共通する分野を扱うものとして公共経済学という言葉が利用されるようになった。

以上のような理由から、公共経済学は財政学、厚生経済学を含んだより広い学問領域として発展してきた。

参考文献[編集]

  • P. Samuelson, "The pure theory of public expenditure," Review of Economics and Statistics, 1954.

関連項目[編集]