連邦準備制度

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連邦準備制度
Federal Reserve System (英語)
FRSのあるエクルズ・ビル(Eccles Building)
FRSのあるエクルズ・ビル(Eccles Building)
所在地 ワシントンD.C.
20th Street and Constitution Avenue NW
位置 北緯38度53分34.8秒 西経77度2分44.8秒 / 北緯38.893000度 西経77.045778度 / 38.893000; -77.045778
連邦準備制度理事会議長 ジャネット・イエレン
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
通貨 アメリカ合衆国ドル
ISO 4217 コード USD
基準貸付利率 0-0.25%
預金基準金利 3.5%
ウェブサイト federalreserve.gov

連邦準備制度(れんぽうじゅんびせいど、英語: Federal Reserve System, FRS)はアメリカ合衆国中央銀行制度を司る企業体で、ワシントンD.C.にある連邦準備制度理事会 (Board of Governors of the Federal Reserve System または Federal Reserve Board, FRB) が全国の主要都市に散在する連邦準備銀行 (Federal Reserve Banks, FRB) を統括する組織形態を特徴とする私立銀行群。英語では主に the Fed と略称する。(ただし正式な略語では無い)

日本での略称は FRS だが、実際には連邦準備制度と制度を運営する「理事会」はあまり区別されず、両者とも FRB と呼ばれることが多い。また、連邦準備制度理事会の長は議長 (Chairman of the Federal Reserve Board) と呼ばれる。2014年2月1日からはジャネット・イエレン議長(第15代)。

歴史[編集]

アメリカの国法銀行発行の銀行券と同時期の日本の国立銀行紙幣。発券銀行名First National Bank of Trenton、国債を担保に発行していることが読み取れる。

1907年恐慌[編集]

1776年の建国以来、アメリカ合衆国では第一合衆国銀行や、第二合衆国銀行のような試みはあったものの、分権主義者の反対で取り潰される等して、中央銀行は成立せず、個々の銀行等が米国債や金準備を使って紙幣を発行していた。しかし、1907年にロンドンでの米銀の手形割引拒否に端を発する恐慌が起き、アメリカ合衆国内の決済システムが混乱した。

FRB設立[編集]

ジョージ・コーテルユー財務長官は、金融業界を保護するために、経済の安定を維持する国家主導の十分な能力が必要であると考えた。その対策として、まずオルドリッチ・ヴリーランド法英語版1908年)でアメリカ通貨委員会英語版を設立。1910年11月22日ジョージア州沿岸のジキル島英語版J・P・.モルガンが所有するジキル島クラブ英語版[1]で秘密会議が開かれ、FRB設立について計画が討議された。J.P.モルガンやポール・ウォーバーグドイツ語版英語版ジョン・ロックフェラーの後ろ盾の下に、1913年に、ウッドロウ・ウィルソン大統領がロバート・オーウェン英語版カーター・グラスの提出したオーウェン・グラス法英語版に署名し、同年多くの上院議員が休暇で不在の隙を突いて12月23日ワシントンD.C.に駐在する連邦準備制度理事会と12地区に分割された連邦準備銀行により構成される連邦準備制度が成立した[2]。「準備」とは預金準備のことを意味する。

金融政策の独自性[編集]

発足当時は政府の強い影響を受け、金融政策の独立性は保証されなかったとされるが、ノーベル経済学賞受賞の経済学者ミルトン・フリードマンをはじめとして、「世界恐慌にまで発展した1920年代のアメリカの金融バブル崩壊に際して、連邦準備制度が明白な不作為によって事態を深刻化させた」と指摘する論者がいる。この考え方は今ではベン・バーナンキ(第14代議長)をはじめとする経済学者に広く受け入れられている[3]第二次世界大戦後、ブレトンウッズ体制がスタートし、FRBと財務省が協定を締結し、金融政策の独自性を持つようになったとされる。

主要業務[編集]

フェデラル・ファンド金利の推移(1954年~2005年)

組織[編集]

連邦準備制度理事会[編集]

連邦準備制度理事会 (Federal Reserve Board of Governors) は連邦準備制度の統括機関。中央銀行に相当。14年任期の理事7人によって構成され、理事の中から議長・副議長が4年の任期で任命される。議長・副議長・理事は大統領上院の助言と同意に基づいて任命する。

金融政策の策定と実施を任務としており、また連邦準備制度の活動の最終責任を負う。

大統領に対して、政府機関中最も強い独立性を有する一方で、世界経済に対する影響力は絶大であるため、FRB議長は「アメリカ合衆国において大統領に次ぐ権力者」と多くの人々に考えられている[4]

現在の理事会メンバーは以下の通りである。定員は7人。

役職 氏名 就任年月日 任期満了予定年月日 前職
議長 ジャネット・イエレン 2010年10月4日[5] 2024年1月31日(理事の任期[5]
2018年2月3日(議長の任期[5]
連邦準備制度理事会副議長
副議長 空席
理事 ダニエル・タルーロ 2009年1月28日[6] 2022年1月31日[6] ジョージタウン大学ローセンター教授[6]
理事 サラ・ブルーム・ラスキン 2010年10月4日[7] 2016年1月31日[7] メリーランド州金融規制委員[7]
理事 ジェレミー・スタイン 2012年5月30日[8] 2018年1月31日[8] ハーバード大学教授[8]
理事 ジェローム・パウエル 2012年5月25日[9] 2014年1月31日[9] カーライルグループ(Carlyle Group)幹部[9]
理事 空席

連邦公開市場委員会[編集]

連邦公開市場委員会 (Federal Open Market Committee, FOMC) は、FRBが定期的に開く会合で、FRB理事7人と連邦準備銀行総裁5人(ニューヨーク連邦準備銀行総裁と、持ち回りで選ばれる他地区連銀の総裁4人。それ以外の地区連銀総裁も議論には参加するが議決権はない)で構成されるアメリカの金融政策決定機関である。議長はFRB議長、副議長はニューヨーク連邦準備銀行総裁が担当する。

FOMC定期的会合は年間8回開かれ、フェデラル・ファンド金利の誘導目標、及び公定歩合が決定されるが、市場の急変などでは臨時会議が開かれ、暫定的に公定歩合などが決定される(例:2000年末の株価大暴落時や、エンロンショック2007年8月17日の0.5パーセント引き下げ等)。

連邦準備銀行[編集]

12の地区割。■は本部所在地。☆はFRS。

連邦準備銀行 (Federal Reserve Banks) は市中銀行の監督と規制など、公開市場操作以外の連邦準備制度の業務を行い、また連邦準備券ドル紙幣)の発行を行う。連邦銀行(連銀)と呼ばれることもある。以下の12地区に分割されている。

地区 銀行 本部所在地
第1地区 ボストン連邦準備銀行 マサチューセッツ州ボストン
第2地区 ニューヨーク連邦準備銀行 ニューヨーク州ニューヨーク
第3地区 フィラデルフィア連邦準備銀行 ペンシルベニア州フィラデルフィア
第4地区 クリーブランド連邦準備銀行 オハイオ州クリーブランド
第5地区 リッチモンド連邦準備銀行 バージニア州リッチモンド
第6地区 アトランタ連邦準備銀行 ジョージア州アトランタ
第7地区 シカゴ連邦準備銀行 イリノイ州シカゴ
第8地区 セントルイス連邦準備銀行 ミズーリ州セントルイス
第9地区 ミネアポリス連邦準備銀行 ミネソタ州ミネアポリス
第10地区 カンザスシティ連邦準備銀行 ミズーリ州カンザスシティ
第11地区 ダラス連邦準備銀行 テキサス州ダラス
第12地区 サンフランシスコ連邦準備銀行 カリフォルニア州サンフランシスコ

このうち第2地区のニューヨーク連邦準備銀行が全体の要となる。

連邦準備銀行の株主[編集]

連邦準備制度は株式を発行していないが、連邦準備銀行は株式を発行している。しかし、日本政府が株式(正確には出資証券)の55パーセントを保有し、残りが公開市場(ジャスダック)で流通されている日本銀行と異なり、合衆国政府は連邦準備銀行の株式を所有しておらず、各連邦準備銀行によって管轄される個別金融機関が出資(=株式の所有)義務を負っている[10][11]。また、個人や非金融機関の法人は連邦準備銀行の株式を所有できない。

個別金融機関による出資額は金融機関の資本規模に比例するが、連邦準備銀行理事を選出する際の投票権は出資規模に関わらず一票ずつであるため、大手銀行が主導権を握るといったことはできない[11]

連邦準備法[12]により、連邦準備銀行の株主が連邦準備制度に及ぼす影響力はきわめて小さいものに限定されている。連邦準備法における連邦準備銀行の株主の位置づけは、9人の連邦準備銀行理事のうち6人を選定するにすぎない(他の3人は連邦準備制度理事会が指名)[13]。また、連邦準備銀行理事の権限は理事長の選出のみであり、その理事長の権限も以下のものに限られている。

  • 連邦公開市場委員会(FOMC)委員12人中5人の選出[14]
  • 連邦準備制度理事会への提言[15]

従って連邦準備銀行の株主の意思が連邦準備制度を動かしているという一部の説は誤りであり、法規上または現実においても、連邦準備制度は大統領の指名と議会の承認による連邦準備制度理事会の主導により運営されている。但し、連邦準備制度理事会が政府機関であるのに対し、連邦準備銀行が民間企業の形式を採っているのは事実である。とはいえ完全な民間企業とも言えず、両者を折衷した性格を持っている[11]

歴代議長[編集]

氏名 期間 大統領
1 チャールズ・S・ハムリン
Charles S. Hamlin
Charles Hamlin-headshot.jpg 1914年8月10日 - 1916年8月10日 ウッドロウ・ウィルソン
2 ウィリアム・P・G・ハーディング
William P. G. Harding
William P.G. Harding-headshot.jpg 1916年8月10日 - 1922年8月9日 ウッドロウ・ウィルソン
ウォレン・ハーディング
3 ダニエル・R・クリシンジャー
Daniel R. Crissinger
Daniel R. Crissinger cropped.jpg 1923年5月1日 - 1927年9月15日 ウォレン・ハーディング
カルビン・クーリッジ
4 ロイ・A・ヤング
Roy A. Young
Roy A. Young 2.jpg 1927年10月4日 - 1930年8月31日 カルビン・クーリッジ
ハーバート・フーヴァー
5 ユージン・メイアー
Eugene I. Meyer
EugeneMeyer.jpg 1930年9月16日 - 1933年5月10日 ハーバート・フーヴァー
フランクリン・ルーズベルト
6 ユージン・R・ブラック
Eugene R. Black
1933年5月19日 - 1934年8月15日 フランクリン・ルーズベルト
7 マリネア・S・エクルズ
Marriner S. Eccles
Marriner Eccles.jpg 1934年11月15日 - 1948年1月31日 フランクリン・ルーズベルト
ハリー・S・トルーマン
8 トマス・B・マッカーベ
Thomas B. McCabe
1948年4月15日 - 1951年3月31日 ハリー・S・トルーマン
9 ウィリアム・マチェスニー・マーティンJr.
William McChesney Martin, Jr.
William McChesney Martin jr.jpg 1951年4月2日 - 1970年1月31日 ハリー・S・トルーマン
ドワイト・D・アイゼンハワー
ジョン・F・ケネディ
リンドン・ジョンソン
リチャード・ニクソン
10 アーサー・F・バーンズ
Arthur F. Burns
ArthurBurns USArmyPhoto 1955.jpg 1970年2月1日 - 1978年1月31日 リチャード・ニクソン
ジェラルド・R・フォード
ジミー・カーター
11 G・ウィリアム・ミラー
G. William Miller
Portrait of G. William Miller.jpg 1978年3月8日 - 1979年8月6日 ジミー・カーター
12 ポール・A・ボルカー
Paul A. Volcker
Paulvolcker.jpg 1979年8月6日 - 1987年8月11日 ジミー・カーター
ロナルド・レーガン
13 アラン・グリーンスパン
Alan Greenspan
Alan Greenspan color photo portrait.jpg 1987年8月11日 - 2006年1月31日 ロナルド・レーガン
ジョージ・H・W・ブッシュ
ビル・クリントン
ジョージ・W・ブッシュ
14 ベン・S・バーナンキ
Ben S. Bernanke
Ben Bernanke official portrait.jpg 2006年2月1日 - 2014年1月31日 ジョージ・W・ブッシュ
バラク・オバマ
15 ジャネット・イエレン
Janet Yellen
Janet Yellen official portrait.jpg 2014年2月1日 - 現在 バラク・オバマ

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ Jekyll Island Clubアメリカ合衆国国家歴史登録財となっている。
  2. ^ クリスマス休暇中、自分たちが買収した議員を残らせ、95名の下院議員と32名の上院議員が不在の中で採決を決行した。[要出典]
  3. ^ Wood & Woods 1990, p. 420
  4. ^ アメリカ国務省. “連邦政府”. アメリカ合衆国駐日大使館. 2010年6月25日閲覧。
  5. ^ a b c 連邦準備制度理事会のホームページに掲載されたイエレンの経歴(英語)
  6. ^ a b c 連邦準備制度理事会のホームページに掲載されたタルーロの経歴(英語)
  7. ^ a b c 連邦準備制度理事会のホームページに掲載されたラスキンの経歴(英語)
  8. ^ a b c 連邦準備制度理事会のホームページに掲載されたステインの経歴(英語)
  9. ^ a b c 連邦準備制度理事会のホームページに掲載されたパウエルの経歴(英語)
  10. ^ 連邦準備制度理事会 (2007年3月7日). “FRB: FAQs: Federal Reserve System”. 連邦準備制度. 2010年6月17日閲覧。
  11. ^ a b c Woodward, G. Thomas (1996-07-31). “Money and the Federal Reserve System: Myth and Reality - CRS Report for Congress, No. 96-672 E”. Congressional Research Service Library of Congress. http://home.hiwaay.net/~becraft/FRS-myth.htm 2010年6月17日閲覧。. 
  12. ^ http://www.federalreserve.gov/aboutthefed/fract.htm
  13. ^ http://www.law.cornell.edu/uscode/html/uscode12/usc_sec_12_00000302----000-.html
  14. ^ http://www.law.cornell.edu/uscode/12/263.html
  15. ^ http://www.federalreserve.gov/aboutthefed/fac.htm

参考文献[編集]

  • Wood, John Cunningham; Woods, Ronald N. (1990), Milton Friedman: Critical Assessments, Routledge, ISBN 0415020050 
  • フルフォード, ベンジャミン (2008/12/20). アメリカが隠し続ける金融危機の真実. 青春出版社. ISBN 978-4-413-03698-6. 

外部リンク[編集]