デフレーション
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デフレーション (英: Deflation) とは、物価が持続的に下落していく経済現象を指す[1]。略してデフレとも呼ぶ。日本語では通貨収縮。対義語に物価が持続的に上昇していく現象を指すインフレーション (英: Inflation) がある。 ディスインフレーションについては、下部に記載。
デフレは解決すべき問題であるということは、経済学者・エコノミストで全員一致している[2]。
目次 |
概要 [編集]
経済全体で見た需要と供給のバランスが崩れること、すなわち総需要が総供給を下回ることが主たる原因である。貨幣的要因(マネーサプライ減少)も需給ギャップをもたらしデフレへつながる。物価の下落は同時に貨幣価値の上昇も意味する。なお、株式や債券、不動産など資産価格の下落は通常デフレーションの概念に含まない(参考:物価)。
19世紀の産業革命の進展期においてはデフレは恒常的な通貨問題であり、金本位の退蔵(グレシャムの法則)に見られる貨幣選好やインフレ抑止のための不胎化政策、技術革新による供給能力の飛躍的な進展がデフレをもたらしていた。ケインズ政策や管理通貨制度が普及した後はインフレーションに比して圧倒的に少ない。ジョン・メイナード・ケインズは、ハイパーインフレを除けば、インフレよりもデフレの方が害が大きいと述べている。その理由は世界経済が低迷している中で、富裕層に損をさせるよりも経済的弱者の失業を促進させる方が経済へのダメージが大きいからである[3]。
デフレの定義 [編集]
経済協力開発機構(OECD)によればデフレは「一般物価水準の継続的下落」と定義されている[4]。IMFや内閣府は2年以上の継続的物価下落をデフレと便宜的に定義してデフレ認定を行なっている[5]。一時的な物価下落をデフレと呼ぶ識者もよく見られるがOECDの定義やIMF・内閣府の基準からすると誤用である。
経済学者の岩田規久男は著書『デフレの経済学』で「相対価格の変化と絶対価格の変化とを区別することが重要である。平均的な価格である物価が相対価格の変化によって影響を受ける理由はない」と指摘している[6]。経済学者の高橋洋一は「ミクロ(個別価格/相対価格)とマクロ(一般物価)の混同は経済学者の議論の場でも時々見られるが、ミクロの個別価格の平均としてマクロの物価があると思い込むのは短絡的である」と指摘している[7]。
メディアで「食のデフレ」などと言った表現がなされる場合があるが[8]、デフレとは相対価格(個別価格)ではなく一般物価水準(または総合物価)の下落を指しているので本来の意味からすれば誤用である。
経済への影響 [編集]
デフレは実質利子率と実質賃金の高騰を生み、企業収益を圧迫する[9]。その結果、企業活動は停滞し、失業は増大する[9]。デフレは企業も消費者もリスクを避けがちになり、消費や投資も伸びない悪循環で経済の活力がどんどん落ちる[10]。また、デフレ下でも労働者の賃金は急に下げにくいので、企業はリストラを進め、非正規雇用や失業が増える[11]。
個々人では、デフレによって好影響が悪影響を上回る者、あるいはその逆の者が存在する。一方で、社会全体では一般に悪影響が大きい。
マイルドなインフレ状態なら社員の昇給に経営者はさほど苦労せずに済むが、デフレに陥ると人件費は事実上増加してしまい経営者にとって大きな負担となり、リストラを敢行したり雇用システムそのものを見直しせざるを得なくなる[12]。
代表的な影響は債権・債務問題である。物価の下落は、実質的な返済負担増となる(デットデフレーション、英語:Debt Deflation)[13]。そのため、借り手である債務者から貸し手である債権者への富の再配分が発生する。物価下落によって実質金利が上昇する。なお、たとえば1万円で買えるものの量が増えるから一見メリットがあるように見えることは、実際にはその1万円を稼ぐこと自体が困難になるため、デフレで有利になるとは言えない。
デフレは名目的には低い金利に見えても、お金の借り手にとっての負担はデフレの分だけ重くなる[11]。この場合の借り手には、日本政府も含まれまる[11]。デフレの状況は税収が上がらないので財政再建にとっては大きなマイナス要因である[2]。
アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)のジャネット・イエレン副議長は「日本の名目所得、名目国内総生産(GDP)は20年前より若干低い。これは注目すべき点で、日本のあらゆる問題の根源となっている」と指摘している[14]。
メリットを受ける人 [編集]
物価下落により実質金利(実質利回り)が上昇する、すなわち同額の名目利子の受け取りであっても実質価値が上昇する。また、デフレの局面では物価下落を織り込んだ金利が形成されるため、市中金利は低下する。そのため、国債などの債券を保有している者は、(高利回り)債券の価格が上昇して利益となる。
名目額(名目賃金)が固定された収入がある者も、物価の下落(実質賃金の上昇)により実質的な生活水準が向上する[15][16]。
経済学者の中澤正彦は「デフレは椅子取りゲーム」と表現し、「正規雇用という安定した『椅子』に座り収入がある人にとって、物価が安くなって歓迎すべき状態になっている」と指摘している[11]。
デメリットを受ける人 [編集]
物価下落は名目値の硬直性と衝突して企業収益を停滞させ、国民の雇用と所得を減退させる[17]。
住宅ローンなどで債務を抱える者は、物価の下落によって実質的な債務が増大する[13]。
名目金利の低下により、市中変動型の債権(普通預金など)の利子収入は減少する。
名目金利の低下する速度以上の物価の下落が発生している局面では、実質金利が上昇し投資活動が低下する。これが経済活動を停滞させる要因となり、賃金の下落や失業(フィリップス曲線を参照)[15]、ひいては消費支出の減少とさらなる企業活動の停滞をもたらす要因となる(デフレスパイラル)。
経済学者の深尾光洋は「デフレを放置することは、日本政府の信用の失墜を放置するということである」と指摘している[18]。
デフレスパイラル [編集]
経済全体で供給過多・需要不足が起こって物価が低下する。商品価格が低下すると生産者の利益が減り、利益が減った分だけ従業員の賃金が低下する[19]。また企業の利益が減ると雇用を保持する余力が低下するので、失業者が増える[19]。従業員と家族は減った賃金で生活をやりくりしようとするため、あまり商品を買えなくなる(購買力の低下)[19]。その結果商品は売れなくなり、生産者は商品価格を引き下げなければならなくなる[19]。物価が下がっても名目金利は0パーセント以下に下がらず、実質金利が高止まりし、実質的な債務負担が増す。債務負担を減らすために借金返済を優先する企業個人が増え、設備投資や住宅投資が縮小される。投資の縮小は総需要の減少へつながり、物価の低下をもたらす。このような循環がとどまることなく進むことを「デフレスパイラル」と呼ぶ。
「大恐慌」も参照
デフレギャップ [編集]
詳細は「産出量ギャップ」を参照
デフレギャップ(Deflationary gap)は、実際の需要が現実の供給力を下回り、
- 総供給>総需要
の状態となったその差(乖離、ギャップ)のこと。「マイナスの需給ギャップ」や「GDPギャップ」とも言う[20]。デフレギャップの増大は商品の在庫の増大や雇用の減少(失業者増大)とも関係し、デフレが継続する要因となる。デフレギャップを解消するには、需要を増やすか供給を減らす必要があるが、市場において供給システムが出来上がっているケースで供給を減らすことは容易ではない。一般に政府が減税、金融緩和政策、政府支出を増大させるなどを行い需要を喚起する政策が取られる。国によっては兵役で雇用を創出する場合もある。日本ではこのギャップの数値は、内閣府のレポートに「需給ギャップ」として発表される。
デフレと経済活動停滞の因果関係 [編集]
通常、名目金利はゼロ未満になり得ないので、デフレが継続し期待インフレ率がマイナスになると実質金利(名目金利-期待インフレ率)が高止まりしてしまう。また、名目賃金には下方に硬直性があるため完全雇用の達成に十分なほど下落することは難しく、デフレ下では実質賃金も高止まりしてしまう。実質金利の高止まりは設備投資を抑制し、実質賃金の高止まりは雇用を抑制してしまう。このように、デフレ期待はそれ自体が企業や家計の貯蓄や投資行動といった将来予測を通じて経済活動に直接悪影響を及ぼす。
日本の名目GDPが伸びない原因はデフレであり、名目GDP成長率は実質GDP成長率とインフレ率を足したものである(名目GDP成長率=実質GDP成長率+インフレ率)が、日本は2011年現在毎年1パーセントのデフレが続いているため実質GDP成長率が1パーセントあっても差し引きはゼロである(実質GDP成長率1%+インフレ率-1%=名目GDP成長率0%)[21]。
岩田規久男は「デフレの最大の問題は(物価下落の継続で)モノに比べてお金の価値が上がった結果、企業がお金を使わずにため込んでいること[22]」「(デフレである)現在では日本の企業までもが家計のように金融資産を運用する[23]」「デフレである限り企業が巨額の余剰資金を抱えたままにしていることで設備投資や消費などが動き出さないといった状況から抜け出せない[24]」と述べている。また岩田は「(日本の)少子化、非正規社員の増加、企業倒産の増加、国の税収が増えないことなどは、デフレや円高で不況が続いたのが原因。日本の自殺者が3万人台になっている状況も、このことと無関係ではない。実証研究したところによると、自殺の一定割合以上は経済的要因が原因だとわかっている」と述べている[25]。
経済学者の岡田靖は「デフレは経済を著しくぜい弱なものとすることは、過去10年以上の日本の実験で明らかだ」と述べている[26]。
中澤正彦は「デフレは、好況と不況を繰り返しながら成長していくという経済に対し自動調整機能が効かない状態。その意味ではハイパーインフレと遠戚関係にあるともいえる」と指摘している[11]。
深尾光洋は「デフレを止めることによって企業部門の再生が可能になる。売り上げが増えるので、借金が返せるようになるということである。そしてさらに、財政についても引き締めが可能になる。つまり金融政策で緩和ぎみにすれば財政は引き締められ、財政の再建が可能になる。デフレを止めるということが金融再生および財政再建の必要条件になる」と指摘している[18]。
日本のデフレスパイラル化について [編集]
経済学者の池尾和人は「今(2002年)のデフレというのは、過去のデフレとは違い、スパイラル化していない。すぐ1930年代の経験に話が飛んで、1930年代のときのデフレはどうやって克服したとか言うが違う[27]」「戦前の世界恐慌時のデフレは確かに大問題だった。今(2010年)は二つの点が違う。第1に、相対価格が非常に大きく動いている。平均値はマイナス1%程度だが、30%も下落している商品もあれば、上昇している商品もある。戦前は、一律に低下した。第2は、当時のデフレは物価の下落率が2ケタ以上の異常事態だった。だが、現在は1%程度の下落が続き、スパイラルに加速しているわけではない[28]」と指摘している。
経済学者の齊藤誠は「デフレは続いているが、年率1.1%程度の軽微なものだ」と述べている[29]。
経済学者の浜田宏一は「デフレ状況の中では、デフレ率が変わらなくても過剰設備・失業率が増えていくという関係がある」と指摘している[30]。
経済学者の伊藤隆敏は「現在(2012年)はデフレスパイラルの状態に陥っている。物価が下落しているので、賃金は下がり、投資も増えないため、成長率も上がらない。そのためデフレ予想から脱却できず、物価が下落するという悪循環になっている」と指摘している[31]。
経済学者の片岡剛士は「日本の物価上昇率はGDPデフレーターでみて平均1%程度のマイナスとなっている。この事実からデフレが大した問題ではないと主張するのは早計である。平均1%の物価下落でも、積もり積もればその効果は大きい。1年間で一気に数十パーセントの物価下落が生じれば、雇用環境にも大きな影響が生じるため人々が経済危機だと認識するのは容易である。日本の問題は、平均して年1%程度のデフレが15年超つづくことで、経済停滞が長期化してしまっていることにある。悪化した雇用環境や円高基調で進む為替レートといった現象も、この年1%程度のデフレが長期化した結果であることを十分に認識しておくべきである」と指摘している[5]。
デフレ下での成長 [編集]
池尾和人は「デフレで経済の調子が悪いは、原因と症状を取り違えた表現だ[32]」「因果関係としては、経済の悪化、需要の弱さを反映して、デフレが起こる。デフレが経済を悪化させるフィードバックはあって、経済が好転するきっかけがつかみにくい状況をつくり出してはいるが、副作用的なものと見るべきだ。だから、マイルドなデフレのまま景気が回復することも起きる。その実証例が、2003年(の日本)だった[28]」と指摘している。
「日本はデフレが続いているにもかかわらず2002年からは景気が回復した、だからデフレは景気とは関係がない」という議論があるが、経済学者の若田部昌澄は「日本がデフレに陥っていた1990年代にも2回程度の景気回復があったが、そのたびに景気回復が頓挫した。原因には、2000年8月の速水優日本銀行総裁によるゼロ金利政策解除といった政策の失敗もある。デフレの下での景気回復はきわめて脆弱であり、現在(2008年)の景気回復はほとんど枕詞のように『実感なき』と呼ばれるほど勢いが弱い。デフレの下では給料などの名目値が伸び悩むから実感に乏しい」と指摘している[33]。
経済学者の田中秀臣は「日本の景気は、2003-2006年末まで景気回復基調だったといわれているが、その水準はずっと低いままだった。外需によって、輸出産業を中心に企業収益は改善したが、名目賃金はまったく伸びず所得は頭打ちだった。名目成長率が伸びない限り、所得水準も上がらない」と指摘している[34]。
対策 [編集]
- デフレーション対策の例
- 量的緩和、信用緩和
- 通貨高の是正[2]
- 外国為替相場への介入
- 金融機関に対する政府保証や資本注入
- 累進課税制度など税制による自動的な減税効果(ビルト・イン・スタビライザー)
-
- 期限付きの減税措置[31]
- 一時的な財政出動[31]による総需給ギャップの改善
-
- 政府保証や政府買い取り制度(金融資産、穀物・原油など基幹資源など)
- 家計への財政を通じた所得補填
- 現金・預金・国債など政府が保障するすべての金融資産に対しての課税[18]
など
対策についての議論 [編集]
「マンデルフレミングモデル」も参照
デフレは貨幣的現象であると考えられているので[36][37]、通常は金融政策によって対処される。商品価格や賃金の政府統制は物価変動を直接管理する有効な手段であるが、自由市場を通じた財の最適分配をかえって阻害するものとして批判がある。
浜田宏一は「貨幣とモノ・サービスは分離されているので、貨幣政策によってモノ・サービスの向上は図れないという理論がある。だがリーマン・ショック後の世界は、貨幣とモノ・サービスとが切り離せないことを示した」と指摘している[38]。
経済学者のジョセフ・E・スティグリッツは「日本のデフレの原因は、為替の影響が大きかった。円安が続けば、その状況は変わる。現実問題として、アメリカが金融緩和を進めれば、円高になるので、対抗することが必要だ。日銀は日本国債をより積極的に買い入れるなどし、対抗しなければならない」と指摘している[39]。因みに為替レートとインフレ率について、明確な一方的因果関係は検出されていない[40]。
池尾和人は「インフレを起こすだけで良いなら話は簡単だ。貨幣を発行して財政支出を賄う政策を実施すれば可能だろう。しかし経済政策の目標は国民の経済的な満足度を高めることのはずだ。そういう手段でインフレを達成しても本当に改善したことにはならない」と述べている[41]。
需給ギャップの解消を円滑とするよう足並みをそろえた財政政策や、潜在成長率を引き上げて金融緩和の効果を高めるような規制緩和政策など、その他の政策による補助も有効とされる。
期待の重要性 [編集]
経済学者のトーマス・サージェントによれば、政府の戦略・レジームに変更があれば民間経済主体は必ずそれに対応して、消費率・投資率・ポートフォリオなどを選択するための戦略・ルールを変更するとしている[42]。例えば政策当局が将来的にインフレを許容する行動をとると予想されるか、或いはそれを許容しないと予想されるかで、消費・貯蓄・投資などに関する企業・家計の意思決定は、大きく異なってくる[42]。
予想インフレ率の推計が政策レジームの変化(またはゲームのルールの変化[43])を検出するために重要な役割を果たす[44]。
経済学者の伊藤元重は「デフレマインドとは、将来にわたって景気が低迷し物価や賃金が下がり続けるという予想が経済に定着していることを意味する。だから消費も投資も増えず、デフレが続く。現在(2012年)の日本の状況で言えば、経済にデフレマインドが定着しているのが、日本経済がデフレから脱却できない最大の理由である」と指摘している[45]。
岩田規久男は「多くの人が抱くデフレ予想をインフレ予想に変えなければ、デフレ脱却はできない[46][47]」「銀行貸し出しは増える必要はない。デフレ予想がインフレ予想に転換すれば企業がため込んだ内部留保を使って生産のための投資を始める[48]」と指摘している。
伊藤隆敏は「期待が変わらなければ賃金や物価の変化も期待できない。皆がデフレ予測を持っていれば賃金も下がるし、価格も下落する。デフレの自己実現的な期待が生じてしまう」と指摘している[49]。
片岡剛士は「デフレが続くという予想(デフレ予想)が強固である限り、公共投資といった財政支出(財政政策)を行なったとしても、それが呼び水となって民間投資や民間消費が力強く増加することはない。こういった時には、たんに量的緩和といった形でマネーを供給するのではなく、将来、デフレではなくインフレが生じていくのだという予想(インフレ予想)を形成させることが必要となる。このための手段として有効なのがインフレターゲット政策で、たんなる量的緩和ではなく、インフレターゲットつきの量的緩和が必要となるわけである」と指摘している[5]。
金融政策 [編集]
岩田規久男は「デフレ予想をインフレ予想に転換できるのは金融政策だけだ[37][46]」と主張している。
岩田は「日銀がマネタリーベースをインフレ率が安定的に上がるまで増やすことを表明すれば、インフレ予想が生まれる。将来、貸し出しや銀行の証券投資などが増え、それに伴って貨幣供給が増えるだろうと投資家が予想するからである」と述べており[50]、高橋洋一は「マネタリーベースを増やせばインフレ予想が高まる」と述べている[51]。
片岡剛士は「デフレは財と貨幣の相対価格である物価の継続的下落を意味するので、貨幣に影響を与える金融政策なくしてデフレを語ることは不可能である」「デフレ予想が根深い状況の下での金融緩和策の効果は、昭和恐慌や世界恐慌の経験に照らすと、金融緩和→デフレ予想の払拭→資産価格上昇→資産効果による消費増、為替レートの円安による輸出増、内部留保を用いた投資増→以上による総需要の増加→将来のデフレ予想ではなく物価の上昇(デフレ脱却)→借り入れ増による金融システムの復活となる考えられる。昭和恐慌や大恐慌からの脱却過程といった成功例においても、金融緩和により即座に貸し出しが進むという状況にはならず、金融緩和の実行から貸し出しが進むまでには、一定の時間的なズレが生じる。金融緩和により、デフレ予想を変え、インフレ予想を早期に形成することが重要である」と指摘している[5]。
池尾和人は「インフレは貨幣膨張によるサポートなしには起こらないが、逆に、金融緩和があれば必ず可能というわけではない。インフレを起こすのは貨幣的要因だけなのかといえば違う」と述べている[52][27]。
財政政策 [編集]
財政政策を重視する論者によれば、デフレは需要の不足に原因があり、物価下落の期待が形成されている状態なので、金融緩和しても増大したマネーは貯蓄に回ってしまい、国内の投資や消費は増えない。そのため、国債によってマネーを吸い上げて公共投資を行い、需給ギャップを埋める必要がある。金融緩和政策は積極的な財政政策とセットでなければ効果的にデフレを克服することはできない[53]とする。
デフレ下の財政出動については岩田は「時間稼ぎにはなるが、財政の持続可能性に影響が出るので、長期的には続けられない」と指摘し、金融緩和のない財政出動だけでは「金利上昇などの副作用がある」と述べている[54]。
深尾光洋は「財政政策は、効果がゼロではないが、公共投資をやった場合でも、用地買収の費用を引いて、乗数を掛けるとケインズ乗数はせいぜい1.4から1.5ぐらい。そうすると、需給ギャップが6%とすると30兆円の財政支出を現状から20兆円増やして、そこで少なくとも横ばいにする。そして、その水準を維持していく必要がある。これは無理だし、むしろ財政の破綻のリスクを高める」と指摘している[18]。
日本のデフレの原因について [編集]
大恐慌時のデフレ不況 [編集]
世界恐慌の原因は世界各国が金本位制への復帰に固執したことにある[55]。日本は政策担当者たちが旧平価による復帰に固執したことによって、デフレ政策を意図的に選択し、デフレ不況を追求した[55]。
平成のデフレ不況 [編集]
GDPデフレーターという総合的な物価指標で見た場合1997年の消費税引き上げという特殊要因を除けば日本のデフレは1994年第3四半期から続いている[56]。デフレ現象が現実に起こった国は第二次世界大戦後においては、1990年代以降の日本以外にない[56]。日本の長期デフレの原因をめぐっては専門家ごとに様々な説が唱えられており、デフレが始まって16年以上も経つにもかかわらずにコンセンサスが得られていない。
2012年4月21日、ワシントンで行われたフランス銀行主催のパネルディスカッションで、日本銀行の白川方明総裁は日本について「人々が将来の財政状況への不安から支出を抑制し、そのことが低成長と緩やかなデフレの一因になっている」と述べている[57]。
2012年6月4日、白川総裁は都内の講演で「少子高齢化とグローバル化という構造変化への対応が遅れていることが、低成長、ひいてはデフレの基本的な原因」と指摘している[58]。池尾和人も同様の指摘をしている[32]。
経済学者の齊藤誠はデフレの原因について「資源価格の上昇と国際競争力の低下による海外への所得流出にある」とし「金融政策で克服するのは難しい」と述べている[59]。
1997年から始まった日本の金融危機について、FRBはが研究を行ってきたことは広く知られており、危機が訪れたとき、デフレ阻止に向けて急速な金融緩和を行うべきであるという結論は、インターネット・バブル崩壊と「世界デフレ」の危機に関しては予期した以上の成果へ結びついた[60]。FRBは2002年7月に「デフレ防止策について1990年代の日本の経験の教訓」というFRBスタッフによるディスカッションペーパー[61]を公表し、そのなかで日銀が阪神・淡路大震災後も金融スタンスを変えなかったことや、1997年に消費税を増税したことに言及し、財政構造改革の政策スタンスを転換し所得・消費税等を引き下げることにより経済を刺激できた可能性について言及している[62]。経済学者の田中秀臣などはこの論文を引用し1990年代のこれらの政策態度により日本は完全な長期停滞に突入したと論じる[63]。
岩田規久男は「2011年3月現在の日本経済はデフレの状態にあるが、デフレの最中の増税によって内需が減少すれば、一層のデフレになる」と指摘している[64]。
「消費税#経済への影響」も参照
日銀理論 [編集]
原田泰は日本銀行の理論(日銀理論)について「これまで日銀は、銀行貸出が伸びない限り金融政策には効果がないので実体経済には何も起きない。金利がゼロになったら金融政策は何もできない。物価は金融政策では決まらない。何も起きないからとどんどん量的緩和を進めていくと日本銀行のバランスシートが悪化し、円が暴落する。日本銀行のバランスシートの拡大は通貨の信認を揺るがす。一度インフレになったら止めることは出来ずハイパーインフレになる。デフレは、中国から安価な製品が流入してくるからである。人口や成長力などの実体経済によってインフレ率が決まる等々と唱えてきた」と述べている[65]。
高橋洋一は「『物価は金融政策では決まらない』を基本とした『日銀理論』は、その変形バージョンがたくさんある。これらは金融政策無効論とデフレ責任転換論である」と述べている[66]。
日本銀行の責任について [編集]
高橋洋一は「普通の国の金融政策は、物価上昇率を1-3%にするのが当たり前だ。言い換えれば、金融政策でGDPギャップを埋めている。GDPギャップがあるうちは、デフレになるからだ」と述べている[67]。
池尾和人は「望ましい水準を実現できていない日本銀行には、責任がある。なぜ達成できていないか、誠実に説明しなければならない義務がある」と述べている[28][41]。
経済学者の片岡剛士は「デフレからの脱却にもっとも大きな影響を及ぼすのは、中央銀行の金融政策である[68]」「15年にわたりデフレに陥っており、このデフレには日銀による金融政策運営の問題が大きいと考えている[69]」と指摘している。
経済学者の浅田統一郎は「日本のデフレ不況の主要な原因は、20年間に渡って続いた、日本銀行による極度に消極的な金融政策である」と指摘している[70]。エコノミストの飯塚尚己は「日本経済がデフレ下にあるのは、日銀の政策が繰り返し失敗に終わった結果だ」と指摘している[71]。
若田部昌澄は「日銀は消費者物価指数上昇率0%あるいはデフレを目標として金融政策を運営しているのではないかという疑いさえある」と指摘している[33][72]。高橋洋一は「日銀は『インフレ目標』ならず『デフレ目標』を持っているのかとさえ思えてくる[73]」「日銀は2000年以降、物価上昇率をマイナス1-0%に運営してきた。この実績を見る限り、酷いデフレにならないように、しかしデフレ脱却はしないように、日銀は『デフレ・ターゲット』をしてきたといっていい[67]」と指摘している。
2011年9月7日、白川日銀総裁は、金融政策決定会合後の記者会見で「日銀のマネタリーベースの対国内総生産(GDP)比は24.6%に達しており、米連邦準備理事会(FRB)の17.4%や欧州中央銀行(ECB)の11.5%を上回っている」とし、金融緩和が足りないとの批判について「明らかに事実に反している」と反論している[74][75][76]。
それに対し高橋洋一は「日本は現金決済取引が多いので、以前からマネタリーベースの対GDP比は、カード決済などで現金をあまり使わない欧米より高かった。問題はマネタリーベースの対GDP比の『水準』ではなく『変化』である。マネタリーベースの対GDP比の変化でみても、日本の金融緩和は足りない」と指摘している[76]。
浜田宏一は「日本は現金社会なので、ベースマネーの比率が多いのは当たり前。対GDP比での議論はまったく意味がない」と指摘している[77]。
為替との関係 [編集]
経済学者のジョセフ・E・スティグリッツは「日本のデフレの原因は、為替の影響が大きかった。円安が続けば、その状況は変わる。現実問題として、アメリカが金融緩和を進めれば、円高になるので、対抗することが必要だ」と指摘している[78]。
構造デフレ論 [編集]
デフレは貨幣的な現象ではなく構造的な現象であって、金融政策では克服できない[79]。デフレの原因は、合理化やグローバル化の進展によってもたらされている、構造的な供給過剰だからであるという説[80]。
池尾和人は「需給ギャップの解消のために、今(2002年)の日本の産業構造というのは、潜在的な需要構造とミスマッチを起こしている部分が非常に多い。全体としては超過供給という形になっているが、目に見えない超過需要がいっぱいある。需給ギャップを調整するために産業構造調整が必要だ」と指摘している[27]。
福井俊彦元日本銀行総裁は「デフレの背景には金融政策の対象である貨幣的現象以外に世界経済、日本経済それぞれの構造変化という側面もある。ひとつの手段(金融政策)で対応できるとは考えづらい」と述べている[81][82]。
経済学者の榊原英資はグローバリゼーションと技術革新を背景として生じているような『構造的デフレ』に対しては、財政・金融政策は無力であると主張している[83][82]。
経済学者の野口悠紀雄は「日本とアメリカの物価動向は、大きく違う。日本はデフレになったが、アメリカはならなかった。問題は、雇用の受け皿だ。アメリカでは製造業より生産性が高いサービス業が引き受けたのに対して、日本では製造業より生産性が低いサービス業が引き受けたのだ。ここに大きな違いがある」と指摘している[84]。
経済学者の野口旭は「デフレの原因とは、あくまでもデフレ・ギャップすなわち『総供給と総需要の差』であるから、総供給の変化だけを見ても、一般物価がどう動くは分からない。たとえば、総供給の拡大と同程度あるいはそれ以上に総需要が拡大すれば、デフレはまったく起こらない。つまり、仮に総供給がどう変動しようとも、マクロ政策によって総需要さえ調整できれば、需給ギャップを縮小させることは常に可能である」と指摘している[82]。
高橋洋一は「企業の生産性を上げることは出来ても、国全体として生産性を上げることは難しい。国の生産性を上げる方策があれば、世界中で貧困国などなくなる。生産性とデフレに関係性はない 」と指摘している[85]。
「聖域なき構造改革」も参照
池尾和人は「円安になるということは、生活水準を落とすことだというのは認識しておく必要はある。インフレになるということも購買力が失われて、資産の実質価値が失われることだと認識しておくべきだ。だから、雇用そのものが失われてしまうより、少し購買力が失われるほうがいいだろう」と指摘している[27]。
輸入デフレ論 [編集]
日本のデフレは、中国を初めとした新興国からの安価な輸入品の増加によって引き起こされたとする説[82][86]。中国を中心とするアジア諸国の工業化が急速に進んだ結果、これらの国々からの廉価な製品が流入しそれが日本の物価を押し下げる原因であるとしている[87]。
詳細は「輸入デフレ論」を参照
ITによるコスト削減について [編集]
根津利三郎は「ITによるコスト削減は先進各国共通。むしろ設備投資に占める情報関連投資の割合の低さから、日本ではIT活用によるコスト削減は他の国よりも遅れている」と指摘している[88]。
人口減少デフレ論 [編集]
「藻谷浩介#『デフレの正体』」も参照
藻谷浩介は日本のように高度に発展した社会では高齢化の進行が耐久財分野での有効需要の減少をもたらしデフレの要因となっており、従来型の金融政策ではなく高齢者世代から若年者世代への所得の移転を税制などにより促すことが必要であると論じる。一方で民間の論調は人口減少デフレ論には懐疑的である。ダイヤモンドZAi2011年5月号は「2011年現在韓国、ロシア、東欧諸国は人口が減っているが、名目GDPは成長を続けている」と論じている[89]。
内閣府『平成23年度経済財政白書』で、生産年齢人口の減少がデフレの原因であるか否かを検証している[5]。各国比較を行なってみると、生産年齢人口の減少と物価下落が併存している国は日本だけという結果が得られている[5]。一方で、将来の生産年齢人口の減少は、期待形成を通じて将来の物価動向や成長率を押し下げるという可能性が指摘されている[5]。
2010年11月4日、白川日銀総裁は、都内で講演し、「労働力人口の減少が日本経済にボディーブローのように効いている」と指摘。人口減少に伴う成長率の低下が、「長期の需要低迷やデフレの原因となっている」と述べた[90]。また2012年5月30日白川総裁は、日銀金融研究所主催のコンファレンスで、日本の人口動態の変化が成長率に影響しているとの見解を示した。白川総裁は、「2000年代の10年間について先進24カ国(OECDに1990年代までに加盟した高所得国の内1990年代以降の生産年齢人口と、GDPデフレーターが利用可能な24カ国[91])の人口増加率とインフレ率を比較すると、両者の間に正の相関が観察されるようになっている。マネーの増加率とインフレ率の相関が先進国で近年弱まってきていることと対照的だ」と述べ、「将来起こる成長率の低下を先取りする形で、需要が減少し、物価が下落する一因となった」と述べた[92]。
白川のレポートについて高橋洋一は「OECD加盟国34ヵ国のうちスロバキア(2000年12月14日加盟。)、チリ(2010年5月7日加盟。)、スロベニア(2010年7月21日加盟。)、イスラエル(2010年9月7日加盟。)、エストニア(2010年12月9日加盟。)は除かれている。これらの国は人口減少もしくは人口増加率が大きくないにもかかわらず、インフレ率が高い国だ。これらを除くと、見かけ上は人口増加率とインフレ率が相関をもっているように数字操作ができる。さらに5ヵ国を除いているが、これらがどのような国なのか、資料からは分からない[93]」「過去のデータを散布図にしても、人口減少によってデフレになるというデータはない[94][70]」「人口減少は日銀には手が出せない分野だからデフレや名目GDPの低迷は日銀の責任でないという言い訳[95]」と指摘している。
高橋は「世界各国のデータを調べても、人口減少の国は20か国近くあるが、日本だけがデフレで名目GDPの伸びは日本が世界最低[95]」「世界のデータを見ても、一般物価増減については、人口増減とはまったく関係がなく、通貨量と関係がある[96]」「デフレや名目GDPの低迷はマネーの伸び率をコントロールしている中央銀行の責任[95]」と指摘している。
岩田規久男は「デフレの原因として、生産年齢人口が減っているからだという説があるが、生産年齢人口が減っているのは日本だけではない。白川総裁は生産性が低いことをデフレの理由に挙げているが、日本よりも低い国はいくらでもある。デフレなのは日本だけだ。貨幣以外がデフレの原因だという説は、データを国際比較すれば、破綻する」と指摘している[97]。
浜田宏一は「経済成長のために、人口増は絶対必要である。しかし、『人口減がデフレの要因である』と言ったまともな経済学者はいないが、日本ではそれが盛んになって、日銀の白川方明総裁までそれに乗って喋っていた状態である」と述べている[98]。浜田は「人口がデフレの要因であるというのは、理論的にも実証的にも根拠がない[99][100]」「もちろん人口は成長の要因にはなるが、実質生産に人口・生産年齢人口が影響するのは当たり前のことである。しかし、貨幣的現象である物価・デフレに人口が効くというのは、経済の解剖学である『国民所得会計』、経済の生理学である『金融論』から見ても、まったく的外れな議論だ[100]」と述べている。
片岡剛士は「世界と比較しても、デフレと人口減少が併存している国をみつけることは難しい[101]」「デフレは、総需要が総供給を下回る、もしくは支出のスピードが供給のスピードを下回ることから生じる。人口減少は、中長期的な成長力(供給力)を低下させるため、インフレ要因であってデフレ要因ではない。人口減少がデフレに繋がるという議論は『人口減少により国内市場が縮小する』という認識によるのものだろう。もし人口が減り国内市場が縮小するとの見通しが高まれば、企業は海外に進出して国内需要減少分を輸出で補おうとするはずである。さらに、少子高齢化が進む未来にあっては、市場構造が現在とは異なるだろう。高齢者が増えれば、高齢者のニーズを反映した商品を供給しようと市場は変化するはずだ。産業構造は変化していくため、現状の産業構造にもとづいて国内市場の縮小を論じることは意味がない[102]」と指摘している。
イングランド銀行(英中央銀行)金融政策委員会(MPC)元委員のアダム・ポーゼン氏は「日銀はデフレの原因は人口構成などの要素によるものでインフレを創出させようとするのは無意味だと考えているが、それは自滅的な予言だ」と述べた[103]。
賃金の下落 [編集]
国税庁の統計によると、民間企業の年収は1997年の467万3000円をピークに下落し、2011年は409万円となっている[104]。
黒田東彦日本銀行総裁は物価と賃金の関係について「大まかに見れば、物価と賃金はシンクロ(同期)して動いている」と述べている[105]。
根津利三郎は「デフレが日本特有の現象である以上、原因も日本特有のものがあるはずである。それは日本でのみ賃金が傾向的に下がり続けていることだ。賃金が下がれば、勤労者は購買力を失う。そのため企業は価格を下げて販売量を維持しようとする。価格が下がれば生産性の向上がない限りコストを下げるため賃金のカットが避けられない。こうしてデフレと賃金下落のスパイラルが続いているのが日本の現状だ」と指摘している[88]。
経済学者の吉川洋は「デフレはマネーではなく、賃金で決まる」と述べている[106]。それについて高橋洋一は「マネーがデフレと賃金を決める」と反論している[106]。
原田泰は「(2007年の)日本経済が良い要因は雇用の拡大である。雇用が増えたのは賃金上昇を抑えたからだ。賃金が上がらずに雇用が増えたのはジレンマだが、仕方がない。賃金を上げれば、失業率が高かった元に戻ってしまう。2002年までの『失われた10年』の間は、景気が悪いのに賃金が上がり続けた[107]」「失業率が下がっていけば、いずれ賃金は上がる。しかし、雇用が伸びる前に賃金を上げては、かえって雇用の伸びを妨げることになりかねない[108]」と指摘している。
池尾和人は「賃金の名目収入を下げるということについて抵抗感があるし、それが維持されているから緩やかなデフレが続いているということがある。それを考えると、緩やかなデフレの下で名目賃金を止めておくとすると、その緩やかなデフレに見合うだけの労働生産性の上昇が全く発生していないと、それは経済全体としては辛くなる。そういう意味で、マイルドなインフレーションの状況のほうが経済調整がやりやすいから、そういう状況がコストなしに実現できるのであればその方がいい」と指摘している[27]。
「リフレーション#失業と賃金について」も参照
デフレの歴史 [編集]
「日本の経済史」も参照
1880年代前半に大蔵卿(1885年(明治18年)の内閣制度発足に伴い、大蔵大臣)の松方正義が緊縮財政を行い、それまで濫発されていた不換紙幣を償却し、日本銀行を設立して銀本位制を実現させた。この緊縮財政の結果、デフレ不況となった(松方デフレ)。
濱口雄幸首相と井上準之助蔵相が緊縮財政を行い、1930年に円切り上げ(円高)となる旧平価で金本位制に復帰し(いわゆる金解禁)、デフレ不況となった。
世界恐慌下のアメリカ合衆国においては、当初、財政均衡主義が主流だったため、ビルト・イン・スタビライザーの効果が低下し、デフレスパイラルに陥った。設備投資はほぼ壊滅的とも言えるほど減少し、失業率が25パーセントにのぼった。1936年の夏以降、インフレを懸念したFRBは金融の引き締めを決意し実行したが、これが失敗に終わり、再びアメリカはデフレ不況に戻る[109]。大恐慌時代のフランスは、イギリスや日本をはじめ各国が金本位制から離脱していったにもかかわらず、長期的に金本位制に固執し、フランの価値を維持しようとしたため、アメリカよりも長くデフレ不況が続き、社会は深刻な分断状態に陥った[110]。
第二次世界大戦後、1949年に超均衡予算を中心とするドッジ・ラインが実施されて、デフレ不況(ドッジデフレ・安定恐慌)が起こった。
急激な利上げと総量規制による貸出の制限でマネーサプライの伸びがマイナスになるほどの引締め政策でバブル経済が崩壊した1992年以降、ディスインフレーション(物価上昇率の低下)の傾向を示すようになり、1997年(平成9年)の消費税等の増税・歳出削減などの緊縮財政により消費者物価上昇率がマイナスになり、デフレの様相を呈するようになった。同年に発生したアジア通貨危機や、これに続いた日本の金融危機も原因として挙げられている。日銀による2000年のゼロ金利政策解除や2001年の国債30兆円枠による緊縮財政、民営化、規制緩和などの誤った経済政策により、デフレがさらに激しくなった。
1990年代から21世紀初頭に日本において見られた資産価格のデフレーションは、主に中央銀行(日本銀行)の金融引き締めがその原因の一つであったと考えられており、1990年代以降の日本の経済停滞(いわゆる「失われた10年・失われた20年」)の相当部分は、日銀の金融引き締めに端を発した資産デフレに責任があるとする向きもある。
デフレ期待を解消し停滞を打破するために量的緩和が開始された。この政策には、ゼロ金利の長期化が予想されることで中長期の金利を低下させる時間軸効果があるとされる。名目金利は0パーセントまでしか下げられず、デフレ下ではそれ以上の金融緩和ができない(流動性の罠)とされるが、インフレ期待などを通じた間接的な効果があるかどうかについては、様々な議論がある。
2006年では、2002年からの緩やかな景気回復により消費者物価指数ベースでのデフレ終了が見込まれ量的緩和が解除された。しかし、生鮮食品と石油関連価格を除いた実体的な物価を表すコアコアCPIを見ると、日本はまだデフレ傾向にあったため、翌年の2007年から景気の転換局面に入ってしまった[63]。
そして2008年の世界金融危機とそれに伴う不況により、デフレスパイラルは日本のみならず世界規模での再来が懸念されている。日本以外の国の中央銀行は、総需要を増加させるために自国の市場に大量の資金を投入したが、日銀は金融緩和余地の少なさを理由に量的緩和をほとんど行わなかったため、コアコアCPIは0%を下回り、その後約-1.5%まで下がった[63]。2009年11月の日本政府の月例経済報告において「緩やかなデフレ状況にある」と3年5ヶ月ぶりにデフレを認めた[111]。
ハイパーインフレーション国家だったジンバブエが2009年にデフレーションに転じた。2009年1月の消費者物価指数は前月と比べて2.3%下落し、翌2月も前月比3.1%の下落となった。
ディスインフレーション [編集]
物価上昇率(インフレ率)が低下すること、即ち、物価は上昇しているが大きく上昇しなくなることはディスインフレーション (disinflation) 、略してディスインフレであって、デフレではない。デフレーションは物価上昇率(インフレ率)がマイナスになることである。
リフレーション [編集]
リフレーション (reflation・略称リフレ)は過剰設備の解消に因って物価下落率が縮小し物価上昇率が0以上に向かうことである。
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関連項目 [編集]
- インフレーション
- 良いデフレ論争 - 同じ金額の貨幣でより多くのものを買えるようになるデフレーションが景気(経済成長率)の拡大を伴うという意見もある。これを良性と悪性とに分類しようとする議論があった。
- 輸入デフレ論 - 輸入デフレ論も良いデフレ論も相対価格(個別価格)と一般物価を混同した初歩的な誤りである。
- 円高不況
- リフレーション
外部リンク [編集]
- Deflation - an outline of the problems (PDF) (英語) 『デフレーション - 問題の概観』 (スウェーデン国立銀行)
- スウェーデン国立銀行「デフレ:問題の概観」 (日本語) 上記の翻訳(一部分のみ)