購買力平価説

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PPP評価を調整した各国のGDP (2007年)

購買力平価説(こうばいりょくへいかせつ、Purchasing Power Parity Theory, PPP)とは、外国為替レートの決定要因を説明する概念の一つで、為替レートは自国通貨と外国通貨の購買力の比率によって決定される、という説である。1921年スウェーデン経済学者グスタフ・カッセル外国為替の購買力平価説として発表した。

絶対的購買力平価[編集]

基準になるのは、米国での商品価格とUSドルである。理論上は対USドルだけではなく、どの通貨に対しても購買力平価は算出可能である。物やサービスの価格は、通貨の購買力を表し、財やサービスの取引が自由に行える市場では、同じ商品の価格は1つに決まる(一物一価の法則)。

一物一価が成り立つとき、国内でも海外でも、同じ商品の価格は同じ価格で取引されるので、2国間の為替相場は2国間の同じ商品を同じ価格にするように動き、均衡する。この均衡した為替相場を指して、購買力平価ということもある。

購買力平価=(1海外通貨単位(基軸通貨であるUSドルが使われることが多い)あたりの円貨額(やその他の海外通貨)で表示した)均衡為替相場=日本での価格(円)÷日本国外(米国)での価格(現地通貨)

これが厳密に成立するにはすべての財やサービスが自由に貿易されねばならない。

実際には、為替相場が厳密に購買力平価の状態になっていて、かつ2つの貨幣による経済のインフレーションデフレーションなどがそのまま為替相場に反映され購買力平価の状態が保たれる、ということはないと考えられている。為替相場は購買力の他にも様々な要因によって影響されるためである。但し、購買力平価から大きく乖離した状態が長期的に続くことは難しいと考えられている。

第一勧銀総合研究所は「現実の為替相場と購買力平価が常に一致しているわけではなく、むしろ乖離するほうが普通ある」と指摘している[1]

購買力平価説に則って、ドル円について「輸出物価ベースの購買力平価では1ドル=85円程度であるため大した問題ではない」という議論があるが、これは実質実効為替レートと同じく貿易面での有利・不利を含意しており、円高を考える際には適切ではないことに留意すべきである[2]

経済学者高橋洋一は「学者などがある時点で計算した購買力平価や実効為替レートなどの数字を掲げて議論したとしても、企業・財界など、輸出が困難になり国内で企業を維持できないため海外展開をしようと考える人達の意見とは全く違うものであり、意味のない議論である」と述べている[3]

相対的購買力平価[編集]

為替相場は2国における物価水準の変化率に連動するという考え方。またはそれによって求められる為替相場。 正常な自由貿易が行われていたときの為替相場を基準にして、その後の物価上昇率の変化から求められる。現在はこの求め方が主流となっている。

A国の相対的購買力平価=基準時点の為替相場×A国の物価指数÷A国国外の物価指数

基準時点については、(日米間の場合)日米ともに経常収支が均衡し、政治的圧力も無く自然に為替取引が行われていた1973年(特に4-6月期の平均=1ドル265円)が選ばれている。

これが厳密に成立するには全ての財・サービスが同じ割合で変動しなければならない。

PPPレートの推計[編集]

多くの研究者によって推計が試みられているが、国際連合の提唱により国際比較プログラム(ICP)が実施され[4][5]、現在は主にこの結果が利用されている。

ICP事業は主にGDP比較の目的で1969年から実施されており、1993年(1990年を対象とした調査)以降はOECD/Eurostatのみで続けられたが、2005年を対象に再び世界規模の調査が実施され、2007年末に世界銀行より結果が公表された(ただし2005年のみならず、過去一度も調査に参加していない国も多数ある)。

OECD統計の相対的価格レベル[編集]

OECDは、家計最終消費支出と為替レートを考慮したPPPにより、加盟各国の価格レベルを毎月統計している。

Price level (USA = 100で換算)[6]
オーストラリア 164
オーストリア 114
ベルギー 120
カナダ 132
チリ 78
チェコ 84
デンマーク 152
エストニア 87
フィンランド 130
フランス 117
ドイツ 109
ギリシャ 102
ハンガリー 74
アイスランド 122
アイルランド 128
イスラエル 116
イタリア 101
日本 150
韓国 83
ルクセンブルグ 127
メキシコ 70
オランダ 114
ニュージーランド 132
ノルウェー 168
ポーランド 63
ポルトガル 100
スロバキア 78
スロベニア 93
スペイン 105
スウェーデン 138
スイス 176
トルコ 56
英国 137
米国 100

ビッグマック指数[編集]

ビッグマック

購買力平価の一つ。マクドナルドが販売しているビッグマックの価格で各国の購買力を比較し、算出した購買力平価のこと。イギリスの経済誌『エコノミスト(The Economist)』が発表したものが起源となっている。

ビッグマックによる購買力平価日本でのビッグマックの価格(円)÷海外でのビッグマックの価格(現地通貨)

物価感覚の比較の簡便で実用的方法ではあるが、次のような理由で、限界もある。

  • たった1品目では厳密な比較ができない事はいうまでもない。例えばビッグマック1つ分のお金を稼ぐのに必要な労働時間が世界一短いのは、比較的物価が高いはずの日本である。これは、ファストフード店が激しい価格競争に晒されているかそうでないか、といった各国独自の特殊な事情[7]が絡むからである。
  • 牛肉などの価格は、その国の農業政策による補助金などが影響するが、その分も考慮されていない。
  • 間接税(消費税)の分は考慮されていない。したがって消費税が高率である国(北欧)では、価格がその分だけ高くなるが、それについての補正はされていない。実際、2011年エコノミスト誌のビックマック指数(表)[8] を見ると、間接税が高率である北欧では数値が突出して高くなっていることがわかる。
  • エコノミスト誌はビッグマック指数のほか、トール・ラテ指数(スターバックス指数)などの指数も発表しているが、円ついてはトール・ラテ指数の場合、ビッグマック指数とは逆に、さらに円安の余地があることになり、ビッグマック指数とは結果が大きく異なっている[9][10]

脚注[編集]

  1. ^ 第一勧銀総合研究所編 『基本用語からはじめる日本経済』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2001年、77頁。
  2. ^ 円高は経済政策の失敗が原因だSYNODOS -シノドス- 2010年10月13日
  3. ^ 2012年インタビューFNホールディング
  4. ^ 国際比較プログラムへの参加(総務省統計局)
  5. ^ International Comparison Program(世界銀行)
  6. ^ [1] OECD November 8, 2012
  7. ^ 人口密度に起因する土地代の影響等
  8. ^ 2011年エコノミスト誌のビックマック指数(表)
  9. ^ The Starbucks index: Burgers or beans?The Economist 2004年1月15日
  10. ^ 円は割高か割安か、「バーガノミクス」という指標で探りました。FNNニュース 2013年2月19日

関連事項[編集]

外部リンク[編集]