一物一価の法則

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一物一価の法則(いちぶついっかのほうそく、英語:law of one price[1])とは、「ある時点における同一のサービス価格はひとつしか成立しえない」とする法則[1]

概説[編集]

ジェヴォンズの無差別の法則」とも言う[1]

ただし、この法則に前提条件があり[1]、それは 1. 「完全競争市場の成立」、財の移動やサービスの提供に物理的にも人為的にも制約が無いこと 2. 商品差別化ブランド 等)や非価格競争が存在しない、である[1]


ジェヴォンズ[編集]

一物一価の法則は「ジェヴォンズの無差別の法則」ともいう。

ジェヴォンズは、価値論としての限界効用理論を構築する前提として、

  1. 完全知識・完全競争の前提
  2. 交換の当事者は個人ではなく全体
  3. 無差別の法則(一物一価の法則)
  4. 交換を無限に小分割が可能な財間の交換に限定

の4つをおき、その交換の結果としていかなる2財の交換比率も交換が完了した後に消費しうる財の数量の最終的な効用の逆数になる、とした[要出典][いつ?](交換方程式)。


ファーマ[編集]

ファイナンス理論においてはユージーン・F・ファマランダム・ウォーク理論や、効率的市場仮説において一物一価の議論が登場する[要出典]

ここではすべての情報が瞬時に価格に反映されるように裁定取引がおこなわれると仮定するならば、裁定取引をおこなう可能性がまったく無くなるとの循環論法に陥るものの、これは逆にすべての裁定機会を達成した結果として価格がランダム・ウォークを示現している証明であると提示される[要出典]。ある財物の価格が、すべての裁定機会を達成した結果として刻々とランダムに変化し、見かけ上の「一物一価」が達成されていない外見を示していたとしても(格がランダム)、刻々と織り込まれる情報が瞬時に価格に反映した結果であってその実質(値)としての一物一価は達成されている[要出典]、と説明される。

不成立[編集]

一物一価に対する概念は一物多価である。

情報対称性のもとでの一物多価

かつて、インターネット上でeコマースがまだ実現していなかったころ、「将来eコマースが実現すると商品はすっかり一物一価で売買されるようになる」などと事実ではないことを言う人がいた[2]

大昔から現在まで、現実の世界では同一商品が様々な価格で売られている。上記のような主張をする人は、世の中は現実に一物多価であるという事実を見ると「世の中で現実に同一商品が様々な価格で売られているのは価格情報が共有されていないからだろう」などといった理屈で考えていたわけである[2]。それで「eコマースで一物一価が実現する」などと事実ではないことを言っていたのである。確かにネットで世界が地域で分割されず、ひとつの大きな市場になったことで、地域を超えておおむね同じような価格で買えるようになった面もあるが、実際には同一商品が様々な価格で売られる動きも同時に大いに進行している[2]。つまり市場のルールが変わってきているのである[2]。一物多価どころか「一物個価」とでも呼んだほうが良いような状況になっている[2]。同一商品の価格が数種類設定されている、というようななまやさしいレベルではなく、同一商品がひとつひとつ個体ごとに価格が異なっていて、価格が何千通りにでも何万通りにでもつけられるのである。

[誰?][いつ?]現実世界では一物一価の法則は容易に成立しないケースが多く、取引所取引(中央卸売市場や金融取引市場)など一物一価の価格形成を目的とした指標市場(参照市場)において形成されることが多い。これは現実世界には情報の非対称性や取引慣例、距離や時間などの物理的な要素などさまざまなパーテイション(敷居)が存在するためである。[要出典]」と主張した人がいる。

ビジネスにおいては一物一価を成立させないことが裁定取引上の利得機会になることもあり、あえて情報の非対称性を演出することで取引上優位に立とうとすることがある。ガソリンスタンドの無料会員への割引などがこれである(ロックイン戦略-ベンダロックインを参照)。この項目については議論が尽きない。

一物一価が成立しない状況についてはジョン・スチュアート・ミルアルフレッド・マーシャルらによりすでに言及されており、ミルは自由競争と経済的利己心とをその理論的基礎として市場価格決定の法則を説いたが、それらの条件が働くことの比較的少ない小売商業に対してはきびしくその原理は適用しなかった[3]

マーシャルは彼の主著『経済学原理』のなかにおいてこの原理について言及しており、一物一価としての卸売価格と一物多価としての小売価格について「小売取引上では、人々は些細たる購入については余り頓着しない。紙一包を買うのに甲の店では2シリングで買えるものを乙の店で半クラウン払うこともある。しかし卸売価格の場合には全くこれとは異なる。甲製造家が紙束を5シリングで売っている場合には、その隣りの乙製造家が6シリングで売ることはできない。紙の取引を営業とする者は、紙の最低価格をほぼ精確に熟知して、それ以上は払わないからである」と主張した[4]


事例

そのほかにも

  • [要出典]《ガソリンスタンドは顧客によって値引きの幅が違う》 『これは「顧客の囲い込み」のせいだ[要出典][誰?]
  • [要出典]《男性と女性とで提供価格が異なる、小児価格の設定など》 『これは需要に対する価格弾力性の違いがあるせいだ[要出典][誰?]
  • [要出典]《借り手の信用状態や使用用途により貸出金利が違う》 『これは「品質の不均一」のせいだ[要出典][誰?]
  • [要出典]《証券取引所によって同じ上場銘柄の現時点での表示株価が異なる》 『これは「別の市場」だからだ[要出典][誰?]
  • [要出典]《同じ品質のガソリンが、別々のガソリンスタンドでは価格が違う》 『これは「地理的隔離」のせいだ[要出典][誰?]
  • [要出典]《カラオケ店は日中は安く夜間の料金は高い》 『これは「時間的隔離」のせいだ[要出典][誰?]
  • [要出典]《同じ売り場の同じ品質のタマゴでも、高い価格表示のほうが売れることがある》 [要検証 ]これは情報の非対称のせいだ[要出典][誰?]
  • [要出典]《同じ労働内容なのに正社員の賃金が高く(低く)非正規社員の賃金が低い(高い)》 『これは埋没費用・取引コストのせいだ[要出典][誰?]


[編集]

岩波経済学小事典には、[要検証 ]「逆説的であるが、常に同一の価格が成立するところを同一の市場と呼んでも差し支えない」と書いてある[5][6] [注 1]

脚注[編集]

  1. ^ もしも【市場】という項目に書いてある情報ならば、ウィキペディアではここではなく【市場】に書く。
出典類
  1. ^ a b c d e ブリタニカ百科事典【一物一価の法則】
  2. ^ a b c d e 田坂広志、石黒憲彦『日本型IT革命新たな戦略』 PHP研究所、2013
  3. ^ 村田昭治「経済学史上における卸売価格・小売価格形成の理論 : J・S・ミル、ケアンズ、シィジウィック、マーシャルの所説をめぐって」(三田商学研究2 1959-04-25)[1][2],PDF=P.5-6
  4. ^ 村田昭治「経済学史上における卸売価格・小売価格形成の理論 : J・S・ミル、ケアンズ、シィジウィック、マーシャルの所説をめぐって」(三田商学研究2 1959-04-25)[3][4],PDF=P.17-18(脚注3)
  5. ^ 岩波経済学小辞典第三版
  6. ^ 掲載されている項目名およびページ番号を明示せよ。

文献情報[編集]

  • 「「一物一価の法則」の成立を阻害する地理的要因に関する一考察」葛目知秀(日本金融学会 2004年度秋季大会2004-0911)[5][6]
  • 「経済学史上における卸売価格・小売価格形成の理論 : J・S・ミル、ケアンズ、シィジウィック、マーシャルの所説をめぐって」村田昭治(三田商学研究2 1959-04-25)[7][8]
  • 「ブランド効力の理論についての考察」大橋昭一(和歌山大学経済理論371 2013-03)[9][10]

関連項目[編集]