金利平価説

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金利平価説(きんりへいかせつ、: Theory of Interest Parity)とは、外国為替レートの決定要因を説明する概念の一つで、為替レートは自国通貨と外国通貨の名目金利の差によって決定されるという説である。

概説[編集]

仮にドルと円があり、ドルの名目金利が1年5%、円の名目金利が1年1%だとする。また現在の為替レートを円/ドルでe、一年後の為替レートをfとする。このときに、通貨Aの国の債券は1年後に1.05倍に増える、一方で通貨Bの国の債券は、通貨Aから見た場合、((1\times e)\times \frac{1.01}{f})倍に増える。投資家から見て、この二カ国の債券の1年後の価値に差があれば、どちらかを売り、どちらかを買うはずである(裁定取引)。すると、裁定取引の結果、どちらの債券に投資しても利益が同じになるようになるはずだと言える(そうでなければ裁定取引が働くからである)。そのようにして1年後の価値が等しくなるとすると

1.05=(1\times e)\times \frac{1.01}{f}
f=\frac{1.01}{1.05 \times e}

となる。現在のレートが1ドル=100円だとすると一年後は1ドル=96.18円となり、円高ドル安が進むことになる。これは後述のカバーなし金利平価式である。

この為替レートの求め方は、通貨先物取引においてフォワードレート(先渡しレート)の計算に応用されている。これはカバー付き金利平価式と呼ばれる。

カバーなし金利平価式からわかるように名目金利が高い国の通貨は先々、減価する傾向にある。これは、名目金利が高い国が一般に物価上昇率も高いことと関係しており、購買力平価説とも関連が深い。

現実には、名目金利が引き上げられると当該国の通貨が増価するため、整合性がないように思われるが、この説は現在の為替レートに対して将来の為替レートがどう動くかというものであり、名目金利引き上げによって増価した通貨は、やがて減価することになる。

カバーなしとカバー付きの違い[編集]

金利平価とは、投資家によって必ず裁定取引が行われると仮定し、2カ国の為替レートは2カ国の金利で投資を考えるとすると、(為替レートの変動を加味して)どちらに投資しても期待収益率が同じ水準に落ち着くというものだった。しかしながら、将来というものを考えるにあたって、「将来の為替レート」には2つの種類のものが考えられる。「将来」を一年後とすると、1つは「1年後のスポットレート(直物為替レート)」である。もうひとつは「1年物のフォワードレート」である。1年後の為替を考慮する際に、もし1年後のスポットレートを用いるのであれば、1年間でどれだけ為替が変動するかという為替リスクを考慮する必要が生ずる。1年後のスポットレートを用いた、為替変動リスクのある(リスクがカバーされていない)金利平価説をカバーなし金利平価と言う。なお、1年後のフォワードレートを用いる場合は為替変動リスクがないので、カバーのある(リスクがカバーされている)と言う意味で、カバー付き金利平価と言う。

カバーなし金利平価[編集]

ドルとユーロを例に、カバーなし金利平価を概説した図。本文中では時間t+kを一年後として扱う。

ここで、E_t(S_{t+1})を1年後の予想スポットレート、Stを時間tにおける現在のスポットレート、ij を日本の金利、iaをアメリカの金利とする。すると、もし、投資家がリスク中立的であるなら、仮にドル金利の方が高いとすると、(日本の投資家から見たとき)次のような式(カバーなし金利平価)が成り立つまで(両者の期待収益率が同じになるまで)円に投資されるだろう。

(1 + i_{j}) = \frac {E_t(S_{t + 1})} {S_t} (1 + i_{a})

注意すべきなのは、これが日本の投資家から見たものだということだ。(1 + i_{j})は、日本の投資家が1単位の円を円建て預金したときに、1年間でどれだけの収益をもらえるかを示している。当然のことながら為替リスクはなく、金利の分だけ安全に儲けを出すことができる。右辺の\frac {E_t(S_{t + 1})} {S_t}(1 + i_{a})は1単位のドル建て預金をしたときにどのような収益があるかを示している。まず、現在の為替レートS_tで円を売り、現在の為替レート\frac{1}{S_t}だけドルを買う。これをドル建て預金として運用すると、\frac{1}{S_t}\times (1+i_a)となる。「将来のt+1時点(1年後)での直物為替レートE_t(S_{t+1})」でドル売り円買い(つまりドルを円に換えている)[注 1]をすると、\frac {E_t(S_{t + 1})} {S_t} (1 + i_{a})となる。日米で一物一価が成立するためにはカバーなし金利平価の式が成立しなければいけない[1]

これがカバーなし金利平価である。

また、仮に次のような状況だとする。

(1 + i_{j}) < \frac {E_t(S_{t + 1})} {S_t} (1 + i_{a})

このとき、つぎのような金利裁定が行われることで、カバーなし金利平価式が成立する[2]

1、このとき、ドルで投資したほうが収益が大きいので、投資家は貨幣市場で円資金を調達する。すると円金利ijが上昇する。
2、この円資金を外国為替市場でドル資金にする(円売りドル買い)。すると円安ドル高方向に直物為替レートが動く。
3、投資家はこのドル資金を貨幣市場で運用するので、ドル金利iaが下落する。
4、将来の外国為替市場で、円買いドル売りが行われるので、予想直物為替レートは円高ドル安方向に動く。
(1 + i_{j}) = \frac {E_t(S_{t + 1})} {S_t} (1 + i_{a})

しかしながら、現実世界ではカバーなし金利平価は成り立っていない。現実世界で成り立っているのはカバー付き金利平価である。

カバー付き金利平価[編集]

ドルとユーロを例に、カバー付き金利平価を概説した図。

一年後の為替レートにフォワードレートを使えば金利平価はどうなるであろうか。1年物のフォワードレートは現在において決定されるので、アメリカに投資した際の為替の変化率は、現在の直物為替レートと現在のフォワードレート(一年物)を基に算出する。そのため、カバー付き金利平価では為替変動リスクを考慮する必要はない。

(1 + i_j) = \frac {F_t} {S_t} (1 + i_a)

このとき、F_tは現在の時間tにおけるフォワードレートを指している。注意すべきは、これは日本の投資家から見たものだということである。それゆえ、ドル金利に対する投資に為替の変化率を計算している。1年後の円金利に対する投資とドル金利に対する投資が裁定取引により一致するのであれば、両者はイコールで結ばれる。これがカバー付き金利平価である。現実世界でも、カバー付き金利平価は成り立っているとされている。

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  1. ^ 日本の投資家は最終的な収益が円建てであることを望むことに注意。円建てでなければ日本国内で使用できない。

関連事項[編集]

脚注[編集]