交響曲第76番 (ハイドン)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
音楽・音声外部リンク
全曲を試聴する
Joseph Haydn: Sinfonie Nr. 76 mit Günter Wand (1996) - NDR Elbphilharmonie Orchester - ギュンター・ヴァント指揮、北ドイツ放送交響楽団による演奏(1996年)。NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団公式YouTube。

交響曲第76番 変ホ長調 Hob. I:76 は、フランツ・ヨーゼフ・ハイドン1782年に作曲した交響曲

作曲の経緯[編集]

本作が作曲された当時、ハイドンはイギリスで高い名声を誇っており[1]、ハイドンをロンドンに招こうとする交渉は最初のイギリス訪問以前の1780年代はじめにも既にあり、ハイドンはロンドンでの演奏旅行のため、1782年に本作から第78番までの3曲の交響曲を作曲した。しかし、当時ハイドンを宮廷楽長として雇っていたニコラウス・ヨーゼフ・エステルハージがこのイギリス訪問に難色を示したため、結局この時のロンドン行きは実現しなかった[2][3]。このため、本作から第78番までの3曲は『イギリス交響曲』とも呼ばれるが、後の全12曲ある『ロンドン交響曲』に比べるとずっと小規模である。

演奏旅行が中止された後、1783年にハイドンはパリの楽譜出版者であるシャルル=ジョルジュ・ボワイエ英語版にこの3曲を売り、1784年にはロンドンのフォースター社にも売った[4]

本作は同時代の人々の間で非常に人気があり、好評を博した[5]。また、後にイギリスの作曲家ロバート・シンプソン1976年に自身の『交響曲第4番 変ホ長調英語版』でこの曲を引用した[6]

楽器編成[編集]

編成表
木管 金管
フルート 1 ホルン 2 ティンパニ 0 第1ヴァイオリン
オーボエ 2 トランペット 0 第2ヴァイオリン
クラリネット 0 ヴィオラ
ファゴット 2 チェロ
コントラバス

[7]

曲の構成[編集]

全4楽章、演奏時間は約20分。

  • 第2楽章 アダージョマ・ノン・トロッポ
    変ロ長調、4分の2拍子、ロンド形式風の変奏曲
    cantabile」と書かれた、弦楽器のみによる穏やかな旋律が3回にわたって変奏曲風に演奏され(最後の1回は管楽器も加わり、カデンツァ風の部分を持つ)、その中間に短調の曲が2つ挟まるロンド形式のような形をしている。
    最初の短調の部分は管楽器を主体とした静謐な音楽、第2の短調の部分は全奏による非常に激しい曲になっている。
  • 第4楽章 フィナーレ:アレグロ、マ・ノン・トロッポ
    変ホ長調、2分の2拍子(アラ・ブレーヴェ)、ソナタ形式。

注釈[編集]

  1. ^ 大宮(1981) p.100
  2. ^ Walter Lessing: Die Sinfonien von Joseph Haydn, dazu: sämtliche Messen. Eine Sendereihe im Südwestfunk Baden-Baden 1987-89, herausgegeben vom Südwestfunk Baden-Baden in 3 Bänden. Band 2, Baden-Baden 1989, S. 211–214.
  3. ^ 大宮(1981) p.181
  4. ^ 音楽之友社のミニスコアのランドンによる序文
  5. ^ Howard Chandler Robbins Landon: The Symphonies of Joseph Haydn. Universal Edition & Rocklife, London 1955, S. 389 ff.
  6. ^ アントニー・ホヂソン(1976). The Music of Joseph Haydn: The Symphonies. ロンドン: The Tantivy Press p. 103
  7. ^ アントニー・ヴァン・ホーボーケン (1957). Joseph Haydn: Thematisch-bibliographisches Werkverzeichnis. Mainz: B. Schott's Söhne. p. 848.

参考文献[編集]

  • 大宮真琴『新版 ハイドン』音楽之友社〈大作曲家 人と作品〉。ISBN 4276220025 
  • 『ハイドン 交響曲集VIII(74-81番) OGT 1596』音楽之友社、1982年。 (ミニスコア、ランドンによる序文の原文は1966年のもの)

外部リンク[編集]