交響曲第31番 (ハイドン)

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交響曲第31番ニ長調 Hob.I:31は、フランツ・ヨーゼフ・ハイドン1765年に作曲した交響曲である。『ホルン信号』(Hornsignal)の愛称で知られ、名前の通り4本のホルンが活躍するほか、随所に協奏曲的な箇所があり、終楽章がゆっくりした変奏曲になっているなど、ハイドンの交響曲の中でも独特の内容を持っている。

長らくハイドンの交響曲は後期のもの以外無視されてきたが、本作は初期の交響曲の中で例外的によく知られる。しばしばハイドンの作品を取り上げたことで知られるアルトゥーロ・トスカニーニは1931年以来3回この曲を指揮し、1938年の演奏の録音が残っている[1]

概要[編集]

交響曲第28番から31番までは自筆原稿が残っており、1765年に書かれたことが明らかである[2]。当時ハイドンはエステルハージ家の副楽長だったが、エステルハージ家に4人のホルン奏者がいた時期は特定されていて、1763年の8-12月と1765年5月-1766年2月である[3][4]。4本のホルンを使った交響曲にはこの曲のほかに交響曲第13番交響曲第39番交響曲第72番があり、ほかに7声部ディヴェルティメント(Hob.II:D22)も4本のホルンを使用するが、いずれもこの時期に書かれたと考えられている(ただし第39番については議論あり)。この中では本曲がホルンをもっとも効果的に使っている。なお第72番は第2楽章で独奏楽器が活躍し、最終楽章がさまざまな楽器の活躍する変奏曲になっているなど、本曲との共通点が多い。

一般に使われる「ホルン信号」という愛称は後世のものだが、すべての楽章でホルンが活躍するこの曲の特徴をよく表している。愛称にはほかにも「狩場にて」(auf dem Anstand)、「ニュルンベルクの郵便ホルン」などがある。ただし軍楽信号と郵便ホルンの音は使われているが、狩のホルンの旋律は使われていない[4][5]

第2楽章と第4楽章ではホルン以外にも独奏楽器が協奏曲的に活躍する。特に第4楽章ではコントラバスにも独奏を与えている。

楽器編成[編集]

ホルンは4本ともD管を使用する。ただし第2楽章では2本がD管、2本がG管を使用する。

構成[編集]

第1楽章 Allegro[編集]

ニ長調、3/4拍子、ソナタ形式。4本のホルンのユニゾンによる軍楽的な信号音に続き、弦を伴い、独奏ホルンが郵便ホルンを表すオクターブ跳躍の第1主題を提示する。第2主題はフルートの上昇旋律と弦による対話で構成されている。再現部は最初から郵便ホルンの主題が現れるが、曲の終わりにコーダのようにして最初の信号音が現れる。

第2楽章 Adagio[編集]

ト長調、6/8拍子、ソナタ形式。ホルン以外の管楽器は休み、独奏ヴァイオリンと独奏チェロの活躍する合奏協奏曲風の楽章になっている。まずピッツィカートの伴奏に乗って独奏ヴァイオリンがシチリアーノ風の優美な主題を提示し、2本のホルンがそれに続く。独奏チェロも長い旋律を奏する。伴奏音型を担当する第2ホルンはかなり技巧的に作られている。

第3楽章 Menuet - Trio[編集]

ニ長調。メヌエット主部は全奏による。トリオではホルンとオーボエ、ヴァイオリン、フルートなど様々な音色の重なりが工夫されている。

第4楽章 Finale: Moderato molto - Presto[編集]

ニ長調、2/4拍子、変奏曲形式。弦楽器による主題に続いて7つの変奏が続く。第1変奏はオーボエとホルン各2本、第2変奏は独奏チェロ、第3変奏はフルート、第4変奏はホルン四重奏、第5変奏は独奏ヴァイオリン、第6変奏はトゥッティ、第7変奏は独奏コントラバスを主とする。その後短い経過部を挟んで音楽は突如Presto、3/4拍子となり疾走する中、ホルンにより再び第1楽章冒頭の信号音の動機が再現され堂々と終わる。

脚注[編集]

  1. ^ Sonimex の CD「Toscanini dirige Haydn: Symphonies 31 (Horncall) + 98」CR 1842 の Harvey Sachs による解説、1983年
  2. ^ 大宮(1981) 表p.5
  3. ^ 大宮(1981) p.71
  4. ^ a b デッカ・レコードのホグウッドによるハイドン交響曲全集第4巻、ウェブスターによる解説、1990年
  5. ^ 大宮(1981) p.175

参考文献[編集]

  • 最新名曲解説全集1 交響曲I(音楽之友社
  • 大宮真琴 『新版 ハイドン』 音楽之友社〈大作曲家 人と作品〉、1981年。ISBN 4276220025
  • 『ハイドン 交響曲集III(28-40番) OGT 1591』 音楽之友社、1982年。(ミニスコア、ランドンによる序文の原文は1965年のもの)

外部リンク[編集]