交響曲第98番 (ハイドン)
交響曲第98番変ロ長調 Hob.I:98は、フランツ・ヨーゼフ・ハイドンが1792年に作曲した4楽章からなる交響曲で、第1期ロンドン交響曲の中の1曲。同年の3月2日にハノーヴァー・スクエア・ルームズにおいてザロモンの演奏会で初演された。
自筆譜はかつてベートーヴェンが所有しており、その後ベルリンのプロイセン国立図書館が所蔵していたが、第二次世界大戦後は長らく行方不明だった[1]。現在はヤギェウォ大学図書館が所蔵している。
楽器編成[編集]
チェンバロは第4楽章の最後近くに独奏が出現するが、これはハイドンの全交響曲の中でチェンバロが必要な唯一の箇所である。初演ではハイドン本人がチェンバロの前に座っていたと伝えられており、ハイドン本人によって演奏されたと考えられるが、チェンバロ独奏部は自筆譜にはあるが当時の筆写譜や印刷譜には存在せず、本来は曲の一部ではなくてその場だけのサービスのつもりだったかもしれない[3]。
楽章[編集]
第1楽章 Adagio - Allegro[編集]
序奏は2⁄2拍子で、弦楽器のみで演奏される。短調ではじまるが、主部の第1主題が使われているところに特徴がある。
主部はアレグロになるがそのまま2⁄2拍子で始まる。提示部終わりあたりにオーボエによって神秘的な4つの2分音符による主題が出現する。展開部は対位法的である。
第2楽章 Adagio[編集]
ヘ長調、3⁄4拍子、ソナタ形式。トランペットとティンパニは休み。主題が英国国歌である『国王陛下万歳』に似ているとも言われるが、モーツァルトの『戴冠式ミサ』(K.317、1779年)のアニュス・デイとも共通している。また、交響曲第41番「ジュピター」(K551、1788年)の第2楽章とも共通したところがある。ドナルド・フランシス・トーヴィーによれば、親友であるモーツァルトが作曲の前年である1791年2月に亡くなったことに対する哀悼の意が込められているという[4]。なお、同じ主題をハイドンは『ハルモニー・ミサ』(Hob.XXII:14、1802年)のアニュス・デイにも使用している。
短調で激しく盛り上がった後に最初の主題が再現されたとき、チェロ独奏による対旋律が加えられる。
第3楽章 Menuetto: Allegro - Trio[編集]
華やかなメヌエット主部では途中でフルート独奏が聞かれる。トリオではファゴットと第1ヴァイオリンに旋律が現れ、途中でファゴットがフルートと交替する。
第4楽章 Finale: Presto[編集]
6⁄8拍子、ソナタ形式。展開部は弦楽器のみになり、ヴァイオリン独奏による終結主題が変イ長調で演奏され、全奏と交替する(初演ではおそらくザロモン本人によって演奏された)。それが終わると再現部にはいるが、それについで突然速度がモデラートに変わった後、最初の速度にもどって全奏で長いコーダが演奏される。その後にさらに11小節のチェンバロの独奏が加えられた後、本物の終結に至る。
脚注[編集]
- ^ 『ハイドン 交響曲集XI(93-98番) OGT 1599』音楽之友社、1982年。(ミニスコア、ランドンによる序文の原文は1966年のもの)
- ^ 自筆譜にはチェンバロが指定されており、これは第1回ロンドン旅行のザロモン・コンサートでハイドンがチェンバロの前に座ったという記述にも一致する。しかし、初演の聴衆のひとりであったサミュエル・ウェスレーが後年回想したところでは、ハイドンはピアノで演奏したという。参照: Symphony No. 98 in B-flat major, Hob. I:98, New York Philharmonic, (2018-01)
- ^ ハイドン全集(JHW)の「ロンドン交響曲2」のロバート・フォン・ツァーンによる解説、1997年
- ^ Tovey, Donald Francis (1935). “Symphony in B Flat (Salomon, No. 8; chronological List, No. 98)”. Essays in Musical Analysis. 1. Oxford University Press. p. 352
外部リンク[編集]
- ハイドンの交響曲第98番の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト。PDFとして無料で入手可能。
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