humansystem

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humansystem
TM NETWORKスタジオ・アルバム
リリース
録音 1987年7月20日 - 8月29日
セディックスタジオ
CBSソニー信濃町スタジオ
スマイルガレージ
ビクター青山スタジオ
サウンド・シティ
一口坂スタジオ
東京
1987年9月4日 - 9月18日
Ignited Productions
Record One
Image Recording
ロサンゼルス
ジャンル ロック
シンセポップ
時間
レーベル EPIC/SONY
プロデュース 小室哲哉
チャート最高順位
TM NETWORK アルバム 年表
Gift for Fanks
(1987年)
humansystem
(1987年)
CAROL 〜A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991〜
1988年
『humansystem』収録のシングル
  1. Kiss You (世界は宇宙と恋におちる)
    リリース: 1987年10月1日
  2. RESISTANCE
    リリース: 1988年1月1日
  3. Be Together
    リリース: 1999年8月21日
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humansystem』(ヒューマン・システム)は日本の音楽グループTM NETWORKの5枚目のアルバム。

1987年11月11日にエピックソニーレコード(現・エピックレコードジャパン)よりリリースされた。

背景[編集]

当時の最新鋭デジタル機器を取り入れ、ロサンゼルス東京でレコーディングされ、前作『Self Control』から1年を経ず発売された。ロサンゼルスのミュージシャンとのコラボレーションによる作品。

アルバムタイトルは小室による造語で、「TM NETWORK FANKS CRY-MAX」開催時に思いついた。由来として、この頃の小室は「機械と人間の融合」を唱えており、世間にコンピュータの使い手としてインパクトを与えたことを前提に、「system」で「冷たい」「組織」「管理」等お堅いイメージを出しつつも、「human」という肯定的な要素を加えようとしたものである。小室がロサンゼルスのスタッフ・一般人にタイトルが何を連想するのかを聞くと「1対1の人間のつながりから、学校・会社・国・恋人の中の人間のつながり、そして地球・太陽系・宇宙まで含めた色々な関係性を表現したもの」と小室の考えたコンセプトに密接な答えを出してくれて、「大丈夫だ」と確信し、すぐに小室みつ子とコンセプトを共有した[1][2]。意図は「人間関係はそれ自体が出会わないと始まらない。出会いのタイミングとチャンスはある程度は自分で動かせるものだし、運命より自分の力で動かして欲しい」「自分が出会ってきた人達の関係をちょっと振り返ってもらって、自分の力をどう作用しているかを見直せば、自分の過去を客観的に判断できる」というテーマを込めた。タイトルの語感はできるだけ、お固く冷たいイメージを探し、「軟らかくしたくなかった。『聴いてみると取っつきやすかった』と思ってもらえたら幅が広がっていいかも」という狙いがあった[3]

当初は「FANKS」の「FUNK」の部分をもっと過激に表現するために、「汚いノイジーな音色を切り取り、それをサンプリングコラージュしながら新しい音色を作り、ドラムとギターとボーカルだけでTMサウンドを確立する」ことを目標にしていて、レコーディングはヨーロッパで現地に行くのはメンバー3人とマニピュレーターだけで、現地のフランク・ザッパの系列の音を出せるドラマー・ギタリストと一緒にやるためにオファーを出していたが[4]、小室が「正確でタイトなタイプではなく、崩れた部分を魅力とする個性的なドラマー」と評価し、重要視していたミッシング・パーソンズテリー・ボジオが契約上の理由でご破算となった。しかし、「『billboard TOP40』で日本人に数々の世界的なヒットチューンを送り込む人」と絶賛していたミック・グゾウスキーとは契約できたため、「『Self Control』に引き続いて、わかりやすい曲を作る」ことを全体的なコンセプトとし[2]、小室は「無事に成し遂げることが出来た」と語った[5]

1988年度の売り上げは23万枚でオリコン年間41位。総合の売り上げは38万枚で、その当時の自己新記録だった。

1999年鈴木あみによってカバーされた『Be Together』など、他のアーティストによってカバーされている楽曲が多い。

録音[編集]

デモテープは1987年7月下旬に小室と木根が共同で10曲作った。木根が2曲・後は小室が制作した。海外でのレコーディングのスケジュールが差し迫っていたため、状況に応じて、メロディ・テイク等をその日の内に決めなければならない程の即断即決を迫られた。コンセプトの全体像が固まったのは日本でのレコーディング終盤で、その頃同時に日本・海外のサポートミュージシャンを同時に決めて、許諾を得た後に契約を進めつつ、4曲程日本でレコーディングした。この時既にウォーレン・ククルロとも契約を結んでいたが、小室曰く「エキセントリックな弾き方をする人」だったため、ポップな曲を安全パイとして鳥山雄司を筆頭とした日本のギタリストに任せて、冒険できる曲をウォーレンにやってもらった。逆にロサンゼルスのレコーディングでは、小室が思う通りの時間が取れ、午後2時から翌日早朝5時まで行った。海外のエンジニアからは「信じられない…」ときつそうな表情で見られたという[2]

レコーディングの手法は日本・海外両方とも小室独自のノウハウを駆使し、まず小室が先にキーボード・ドラム・ギターをシンセサイザーで手弾きをしながらコンピューターで譜面を作って、それをサポートミュージシャンが直接聞いて演奏した後に、サポートミュージシャンの実際の演奏に差し替えていく方針をとった。スティーヴ・フェローンはデモテープを2〜3回聞いて、すぐに本番に入った後一発でOKテイクが出たが、ウォーレンはギターのサイドのカッティングだけで5時間かけたため、小室は気が遠くなった。但し、このコンピューターを使ったレコーディング方法は、お互いが同じミュージシャンとしてやりやすく感じたという[2]

事前に小室によってまとめられたデモテープの段階で、担当してもらうミュージシャンの癖・雰囲気も想定しながらドラム・ギター・サックスのサンプリングを含めて打ち込んだアレンジ・ミキシングが既にトラックダウンの状態まで出来上がっていたため、今までの「レコーディングの最中に楽曲そのものが変わりかねない予想外のフレーズが出てきたため、それに合わせてアレンジを変える」作業とは逆の「デモテープに忠実に再現すること」を念頭に入れた。そのため、全く最初に思い描いた全体像が崩れず期待通りに仕上がったため、「プロデューサーとして最もうれしいこと」と語っている[6]

海外のプロデューサー・エンジニア・ミュージシャンの次元の高さに向き合うために、小室は他のスタッフに一任・分担せずにアレンジャー・プロデューサーとして取るに足らないような細かい所まで1つ1つ指示を仰ぎに向かった。海外のスタッフの様に上がったテイクから順にミキシングしていくやり方だったので、スタジオを行ったり来たりと大変な思いをした。何ヶ所ものスタジオのクレジットが明記されているのはその名残りで、ロサンゼルスのスタッフからも「こんな大きなプロジェクトは珍しい」と言われた。逆に小室は「もし東京で行ったら道路が渋滞して、こうは行かなかっただろう。これだけレコーディングに集中できたのは初めてだった」と振り返っている[2]

宇都宮はこれまではOKテイクを3テイクキープして、その中からベストを選んで、それを元にまた部分的に歌い直していたが、本作は『TM NETWORK TOUR'87 FANKS! BANG THE GONG』『TM NETWORK FANKS CRY-MAX』を終えてからレコーディングに入った。宇都宮は「コンサートをこなして、肺活量もかなり増えたのか、ほとんど録り直しがなかった。ボーカルに表情を出せた」と振り返っている[3]

デジタルレコーディングで使えるダイナミックレンジを犠牲にさせないこととシンセサイザーのノイズ音を取り除くという小室自身の意向により、他のアルバムに比べて録音レベル(音量)が小さめとなっている[7]。また、CDジャケットの裏面にもEPICソニーから発売されていたCDアルバムでは珍しく、主に当時のCBSソニーから発売されていたCDアルバム等で使われている「DR(デジタル・レコーディングの略)」のロゴマークが表示されている(初回版のみ)。

当時ロサンゼルス最大のマスタリングスタジオであったバーニー・グランドマン・マスタリングで、バーニー・グランドマン自らがマスタリングを手がけた。バーニー・グランドマン・マスタリングは現在、東京にも拠点を設け、数多くのJ-Pop作品も手がけるようになっている。なお、ミックスは、マライア・キャリーエリック・クラプトンら、数々の有名アーティストを手がけているミック・グゾウスキーが手がけた。

コーラスについては、クレジットに記している通りにTM NETWORK自身が行っているが、大変苦労したという。特に「Children of the New Century」は夜から始めて朝方まで本人達が納得がいくまで懸かったという。木根は「魔のコーラス」と自称している。

音楽性[編集]

音色のコンセプトはドラムとギターを前面に出す様にした。特にギターはリフを中心にそのパートのメロディを多く入れるようにした。シンセサイザーのパートは「なるべく耳にしたことのない音色」を求めた。しかし、「世界に全く存在しない音色」ではなく、民族音楽の音色・シンセサイザーが世に出た頃の下から上へと上がるポルタメントを取り入れた音色を目指した。その結果を前に小室は「TMのサウンド・ビート感はそんな簡単には崩れない。いくらギターが前面に出ても、TM以外の音にならない」という自信が持てた[2]

作詞のコンセプトは「理屈としてこれを言いたい」ということを良しとせず、客観的な立場と目線で書いた。当初は楽曲のタイトルの最後に「~LOVERS system」「~SOCIAL system」等を付けようとしたが、そこまで固定するのはやめて、最初は「Kiss You」で地球サイズのシステムの話をして、最後は「This Night」で最少人数だけど、最も強い大切なシステムの話で終わることにした[2]

収録曲[編集]

編曲は全曲小室哲哉

  1. Children of the New Century
  2. Kiss You (More Rock)
    • 作詞:小室みつ子 作曲:小室哲哉
    11thシングルのアルバムバージョン。曲の冒頭や所々で飛び交って来るトランシーバーのノイズ音やストリングス・前奏や間奏のセリフを省略、間奏の台詞の代わりにギターソロに差し替え、アウトロが延長されていてカットアウトで締め括る等、シングルバージョンとは大幅に異なり、ロック色を押し出している[8]
  3. Be Together
    • 作詞:小室みつ子 作曲:小室哲哉
    後にシングル『Get Wild(再発盤)』のカップリング曲としてシングルカットされている。BOØWYの「B・BLUE」に対抗して作ったという。間奏のギターソロはB'z松本孝弘が演奏している。
  4. Human System
    • 作詞:小室みつ子 作曲:小室哲哉
    アルバムタイトル曲。モーツァルトピアノソナタ第11番(トルコ行進曲)のメロディーをイントロ・アウトロ・リフレインのオブリガートに引用している。
  5. Telephone Line
    この曲のラフテイクでは木根がボーカルを執っている。なお、このバージョンは『TMN GROOVE GEAR』に収録されている。
    木根は「オケはエレクトリックだけど、ヒューマンなバラード」、「『しんみり』とは違った形で表現したくて作った曲」[9]「最初は『ELOが真似したくなりそうなバラード』を作ろうとしたが、次第に一人歩きしてビートルズ調の歌メロになった」[8]と語っている。
  6. Leprechaun Christmas
    • 作詞:小室哲哉、小室みつ子/作曲:小室哲哉、木根尚登
    雪が降らないロサンゼルスで、小室は東京のクリスマスを恋しがりながら書いた[8]
  7. Fallin' Angel
    • 作詞:小室みつ子 作曲:木根尚登
    実際は小室が先にバックトラックを作り、木根が後からボーカルのメロディを載せるといった共作になっており、木根本人も「小室ならこんな曲を作るだろう」と思い、作曲したという。順序を逆にすることで自分からは絶対に出ないようなメロディーが出たという[9][8]
  8. Resistance
    • 作詞:小室みつ子 作曲:小室哲哉
    後に12thシングルとしてシングルカットされている。
  9. Come Back to Asia
    • 作詞:小室みつ子 作曲:木根尚登
    後に12thシングル『Resistance』のカップリング曲としてシングルカットされている。木根はインタビューに「今までの自分にはないタイプの曲」、「シルクロードをテーマにした、オリエンタルな感じの曲に仕上がった」と答えている[9]
  10. Dawn Valley (Instrumental)
    • 作曲:小室哲哉
    小室の「ピアノの生音を使ってみたい」という単純な理由からできた[8]
    ドラムマシンを使用せずに、小室が即興で弾いたテイクに、ジェリー・ヘイが譜面なしでジャズの即興演奏の要領で弾いた[2]
    ジェリーはこの曲のみの参加で、本楽曲だけでアルバムの全体像を想像し、「日本ではこういう曲が1位になるのか…俺も日本でやりたい」と言った。それを聞いた小室は「若い人達はあまり耳にしたことのない音だと思うので、これを聞いて広がってくれたらいいな」と思った[2]
  11. This Night
    • 作詞・作曲:小室哲哉
    本作のラストを飾る曲。ラフテイクでは小室がボーカルを執っている。なお、このバージョンは『TMN GROOVE GEAR』に収録されている。

参加ミュージシャン[編集]

リリース履歴[編集]

No. 日付 レーベル 規格 規格品番 最高順位 備考
1 1987年11月11日 EPIC・ソニー LP
CT
CD
28・3H-310
28・6H-265
35・8H-145
1位
2 1991年9月5日 EPIC・ソニー CD ESCB-1209 -
3 1996年6月17日 EPIC・ソニー CD ESCB-1756 -
4 2000年3月23日 エピックレコード CD ESCB-2117 -
5 2004年3月31日 エピックレコード CD ESCL-2527 - CD-BOXWORLD HERITAGE DOUBLE-DECADE COMPLETE BOX』(完全生産限定盤)収録
紙ジャケット、24bitデジタルリマスタリング仕様
6 2007年3月21日 ソニー・ミュージックダイレクト CD MHCL-1039 - 紙ジャケット、デジタルリマスタリング仕様(完全生産限定盤)
7 2013年2月20日 ソニー・ミュージックダイレクト Blu-spec CD2 MHCL-30012 161位 デジタルリマスタリング仕様

脚注[編集]

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  1. ^ 「TM NETWORK TIMEMACHINE BOX 1984→1994」148ページの小室哲哉 のインタビュー
  2. ^ a b c d e f g h i 自由国民社刊『シンプジャーナル』1987年12月号p.11 - p.15より。
  3. ^ a b 自由国民社刊「シンプジャーナル」1988年2月号p.17 - p.20より。
  4. ^ 自由国民社刊『シンプジャーナル』1987年5月号p.19 - p.20より。
  5. ^ 「TM NETWORK TIMEMACHINE BOX 1984→1994」150ページの小室哲哉 のインタビュー
  6. ^ TM NETWORK 1987, p. 60
  7. ^ ブックレットには「このCDは、製作者の意図に依り、デジタル録音の特性を生かしたダイナミックレンジに十分な余裕を持たせたサウンドとなって居ります。この為全体のレベルが多少低めに感じられる事がありますが御了承下さい」の表記がある(初回版のみ)。なお、1990年代前半以降の再発売版(2013年に発売されたBlu-spec CD2版も含む)は通常の録音レベルでリマスタリングされているため、その問題は解消されている。一方でLP盤のカッティングは笠井鉄平(笠井満)が担当したため「このレコードは、原音をより忠実に再現するために、一般のレコードより高いレベルでカッティングされております。このため再生機によっては、再生能力を超え「歪」「針とび」等を起こす恐れがあります。御使用になる前に「針先点検」「針圧調整」を充分に行なって下さい。」との表記がある。
  8. ^ a b c d e ソニー・マガジンズ刊『WHAT's IN?』1992年3月号52P-55Pより。
  9. ^ a b c 「TM NETWORK TIMEMACHINE BOX 1984→1994」152ページの木根尚登のインタビュー

参考文献[編集]

  • TM NETWORK『humansystem』CBS・ソニー出版、1987年。ISBN 4-7897-0336-3