編曲

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

編曲(へんきょく、英語: arrangement)は、既存の楽曲において主旋律をそのままに、それ以外の部分に手を加えて、楽曲に幅を持たせる作業の事である。主旋律に手を加える場合は、変奏と呼ぶ。英語表記では「arrangement」「transcription」の2つが用いられるが、「arrangement」の場合は主に、演奏(あるいは音源化)の際に、本来の楽曲のイメージとは異なるイメージを喚起させる目的による改題、編曲を指す。

編曲の作業は往々にして技術的なものだが、編曲者(アレンジャー)の創造的な試みが許されている場であり、時には意外な曲のリバイバルにつながることがある。『展覧会の絵』などはその一例である。

編曲の目的[編集]

編曲は目的によっておおまかに分類することができる。

  • 原曲と異なる楽器の編成で演奏をするため。独奏のための編曲も含む。
  • 原曲と異なるジャンルやスタイルで表現するため。
  • 演奏者が独自の表現をするため、また他の必要からの大まかな修正(ヘッドアレンジ)。
  • 原曲が未完成と思われるので完成させるため。

編曲の著作権法上の地位[編集]

楽曲を編曲する権利(翻案権)は著作者作詞家作曲家)が専有しており(著作権法27条)、著作者に無断で編曲を行った場合には著作権侵害となる。また、編曲された楽曲(二次的著作物)の編曲に関しては、編曲家にも著作権が認められるが、楽曲の著作者である作詞家・作曲家にも当該編曲に関する著作権が発生する(著作権法28条)。そのため、編曲された楽曲を営利目的で利用する際には、原曲の著作者との間に許諾、契約が必要であり、著作者に無断で楽曲を利用した場合には著作権侵害となる。

ポピュラー音楽における作曲と編曲[編集]

ポップスロックの場合では、作曲者がメロディーコードの指定のみという場合もある。この場合、具体的にどのような楽器を使用するか、どのようにハーモニーリズムを整えるか、楽器の効果を曲のどの場面でどう生かすべきか、など楽曲の性格を決める作業がアレンジャーの仕事である。

例えば、チャールズ・チャップリンは映画で作曲家とクレジットされることがあるが、自分の鼻歌を録音したテープを編曲家が仕上げたという意味である。

ポピュラー音楽においては、編曲はかなり自由になされており、編曲がその曲のイメージを決定付けると言っても過言ではない。例えば、例外はあるものの、同じ曲が、編曲によって、ロック風やポップス風、フォーク風になり、時には意図的に、歌謡曲風、演歌風にさえなり得る。逆に、そこまでできなければ、プロの編曲家とは言えないという考え方もある[要出典]。別な例を挙げれば、小室哲哉風、山下達郎風、60年代風、といった編曲も比較的容易に可能である。(そのため、他人の作品における編曲と類似の編曲作品を勝手に制作するという、「編曲の盗作」が発生する場合がある。)

これらの理由により、同一の作品でも、編曲によって好き嫌いが生じることが多い。

ポピュラー音楽における編曲の手法・考え方[編集]

編曲では、どのような楽器を用い、どのように演奏させるか、が重要になる。以下はポピュラー音楽における編曲の考え方の概要である。以下に記載された各セクションは状況によってシンセサイザーサンプラーリズムマシンなどの電子楽器によって代用される場合がある。

リズムセクション[編集]

リズムセクションは、ビッグバンドをルーツとする[要出典]ポピュラー音楽の編成の基本である。ギターベースドラムスキーボードの4つの楽器を用いるフォーリズム、あるいはギターかピアノのいずれかを除くスリーリズムを基本とする。[要出典]スタジオ・ミュージシャンにおいてこの4種の楽器を扱う者が多い[要出典]ことからも、このパートが編曲においても重要であることがうかがわれる。

管楽器[編集]

トランペットトロンボーンホルンなどの金管楽器系(ブラス)と、サックスフルートオーボエリコーダーなどの木管楽器系(ウッドウィンド)とに大別できる。いずれも、クラシック音楽由来の楽器である。なお、サックスはブラスセクションに組み込まれることも多い。音楽現場ではホーンセクションという呼称が一般的である。

日本以外では例えばバート・バカラックはブラスを好んで用いた。その影響もあってか、山下達郎はソロ活動開始当初からブラスを多用し、その作品のひとつの特徴となっている。ただ、ブラスの編曲は専門的な知識を要求することから、編曲家によってはその部分だけ他の人に任せる場合も多い。その場合には「ブラス・アレンジ」などと明示されることが多い。多くは管楽器の奏者が編曲することが多い。有名な編曲家としてはサックス奏者の山本拓夫、トロンボーン奏者の村田陽一松本治角田健一が有名である。

ストリングス[編集]

管楽器同様にクラシック音楽由来の楽器である。具体的にはヴァイオリンヴィオラチェロコントラバスヴァイオリン属の楽器と、ハープである。

ポピュラー音楽の場合は低音部がエレキベースなどとかぶることからコントラバスを利用する比率は低く、一般にはバイオリン、ヴィオラ、チェロの組み合わせが多用される[1]。現場で6-4-2-2などと編成を呼ぶのは、第一ヴァイオリンが6人、第二ヴァイオリンが4人、ヴィオラが2人、チェロが2人の構成であることを指す。

ただ、ブラスに輪をかけて専門的な知識が必要であることから、ポピュラーの編曲家では特定の者だけしか編曲できないことが多い。多くは専業の編曲家に依頼することが多い[1]。「ストリング・アレンジ」と記載されているのは、このようなケースである。

なお、本当のストリングを用いずに「打ち込み」によりストリングの音色を出すようなアレンジをすることが現実には多く用いられている。CDなどのクレジットを見てストリングの演奏者が記載されていないにもかかわらず曲からはストリング(のような)音色が聞こえてくる場合は、このケースと考えられる。バンドが自ら自分たちの曲を編曲しているような場合には多いようだ[要出典]

コーラス[編集]

コーラスの編曲も特殊な点があり、その部分だけを他(通常は、実際にコーラスワークを行う本人たち)に任せることが多い[要出典]。「コーラス・アレンジ」と呼ばれるケースである。

なお、管楽器、ストリングス、コーラスを三つ揃ってこなせるようになれば、一人前の編曲家として認められるとされることもある[要出典]

その他の楽器[編集]

その他、パーカッション民族楽器、特殊効果など、特徴のある音色の楽器を用いることにより、楽曲にも特徴を出すことができる場合がある。

ポピュラー音楽においてはエフェクターによる特殊効果や効果音を編曲の中に含む場合がある。曲中での歌手の声を電話から聞こえるような歪んだ帯域の狭い声に加工することであるとか、一部の楽器にディレイフランジャーなどを用いて大胆に加工するなども編曲家の指示でおこなわれることがある。爆発音や足音といった効果音も曲の一部として用いる場合がある。

打ち込み[編集]

電子楽器による「打ち込み」。近年のシンセサイザーを始めとする電子楽器の発達と音楽制作へのデジタルオーディオワークステーション(DAW)の導入により、あらゆる楽器の音を一台のデジタルオーディオワークステーション上で楽器と録音機が渾然一体となった環境で制作されることも増えてきた。コスト高や多人員確保必要性の問題を回避しつつ楽曲を豊かにできるという意味で、極めて有用な手法である。

ハーモニー[編集]

編曲においては、ハーモニーの付け替えが頻繁に行われる。

曲のテンポ[編集]

編曲において曲のテンポを変えることがしばしば行なわれる。

普遍性‐作曲との関係[編集]

ポピュラー音楽における編曲は、時代の流行に影響されることがほとんどである。ゆえに、比較的短時間のうちに「古めかしくなる」ことが多い。これに対して、曲(メロディー)そのものは古めかしくならないことがむしろ多く、編曲を変えることによって「リバイバル」させるということがしばしば可能である。

脚注[編集]

  1. ^ a b 松浦あゆみ『ブラス&ストリングスアレンジ自由自在』 リットーミュージック、2004年。

関連書籍[編集]

  • 『コンテンポラリー・アレンジャー』 ドン・セベスキー著 CTIレーベル等において名作を数多く残した編曲家によるポピュラーミュージックの編曲に関する書籍。

関連項目[編集]