カノン (パッヘルベル)

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3つのヴァイオリンと通奏低音のためのカノンとジーグ ニ長調
Pachelbel's Canon - Mus.MS 16481-8 Page 1.jpg
ヨハン・パッヘルベル
別名 パッヘルベルのカノン
形式 室内楽
調拍子 ニ長調、4/4
テンポ  速度指定なし
出版年 1680年頃
制作国 神聖ローマ帝国の旗 神聖ローマ帝国
作品番号 PWC 37, T. 337, PC 358
プロジェクト:クラシック音楽
Portal:クラシック音楽
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Jeffrey C. Hall (2008)

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ヨハン・パッヘルベルカノンは、ドイツ作曲家ヨハン・パッヘルベルバロック時代中頃の1680年付近に作曲したカノン様式の作品である。「3つのヴァイオリンと通奏低音のためのカノンとジーグ ニ長調」(: Kanon und Gigue in D-Dur für drei Violinen und Basso Continuo)の第1曲。この曲は、「パッヘルベルのカノン」の名で広く親しまれており、パッヘルベルの作品のなかで最も有名な、そして一般に知られている唯一の作品である。

しばしば、クラシック音楽の入門曲として取り上げられる。また、ポピュラー音楽において引用されることも多い[1][2]卒業式結婚式離任式BGMとされることもある。

曲の構成[編集]

カノンが有名だが、原曲はカノンとジーグで1組になっており、カノンの次にジーグが演奏される。ヴァイオリン3本と通奏低音の編成で書かれている。

カノン[編集]


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ニ長調、4分の4拍子。三声の同度カノンであるが、カノン声部だけで構成される純粋なカノンではなく、オスティナート・バスを伴う点が標準的なカノンとは異なる。オスティナート・バスの上に展開されるという意味で、パッサカリアないしシャコンヌとしてこの曲をみなすこともできる。カノンは、半終止で終えられるごく短い2小節単位で進められ、オスティナート・バスが和声的に束縛し続けるため、複雑なカノンにはなり得ない。

カノンとしては、オスティナート・バスの呈示に続き、全27種類の旋律が編まれる。下記の楽譜はその冒頭部の例である。

カノンの冒頭の9小節。旋律が他のパートへそのまま受け継がれている。三声による同度カノンである。

第1ヴァイオリンに現れる水色のカノン旋律Aが第2ヴァイオリン、第3ヴァイオリンへと順々に受け渡されていく。緑色のカノン旋律B、桃色のカノン旋律C、橙色のカノン旋律Dがそれぞれ2小節の長さで現れた後、他のパートへ順に受け継がれていく。

Pachelbel Canon bass line (quarter notes).svg

同じく2小節単位のオスティナート・バスは変わることなく繰り返される。このオスティナート・バスは、末尾の2拍を除いてゼクエンツで構成される。一般的なカノンにも見受けられるように、カノン声部がいつも同じ和声進行で設計されているわけでなく、時に異なる和声を生み出すが、基本的にオスティナート・バスの上に下記の和声が彩られる。

コードネーム表示:D - A - Bm - F#m - G - D - G(Em/G) - A

芸大和声式表示: I - V - VI - III - IV - I - IV(II1) - V


ジーグ[編集]

フーガ風な処理で始められるニ長調、8分の12拍子の典型的なジーグ。現代では第1曲カノンが単独で頻繁に演奏されるのに比べると演奏機会は少ない。

和声進行[編集]

先述の通り、このカノンのオスティナート・バスゼクエンツで構成されており、数あるゼクエンツの型の中でも、この進行は大逆循環[3]とも呼ばれる。この種のゼクエンツは旋法的な和声の振る舞いによるもので、機能和声とはまた別のコンセプトで成立するが、4度上の和声へと進行するという大循環の強進行に反して、この大逆循環のゼクエンツは4度下の和声へと進行する弱進行を進行の骨格としており、作曲学的には使用しづらいゼクエンツの部類に属する。

しかし、ゼクエンツそのものは繰り返し打ち寄せる波のように耳に馴染みやすい特性があるため、繰り返し聞くとゼクエンツの進行に呪縛されるような効果がある。このゼクエンツの効果こそが、パッヘルベルのカノンが広く受け入れられた大きな要因となっている。現代において、様々な種類のあるゼクエンツを知らない一般のリスナーやアマチュア音楽家たちがこの進行に捕らわれ、引用したり、模倣する例が多いが、これを用いることはしばしば、創意が足りないことの代名詞のように言われることさえある。一部の世界で「カノン進行」と呼ばれることがあるようであるが、カノンとは和声進行に関する定義を含まないため、「パッヘルベルのカノンに用いられているのと同じゼクエンツ進行」を意味する表現とみなされる。

脚注[編集]

  1. ^ 例えば、山下達郎の「クリスマス・イブ」には、間奏に彼自身の多重コーラスによるパッヘルベルのカノンが引用されている。
  2. ^ 合唱曲『遠い日の歌』(作詞岩沢千早・作曲橋本祥路)にも引用されている。
  3. ^ 大阪音楽大学付属音楽院のツイート

外部リンク[編集]