音楽

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東京フィルハーモニー交響楽団
2013年秋の京都御所一般公開での雅楽の演奏
ナイジェリアオスン州においてパレードに参加するドラマー

音楽(おんがく、: music伊語:Musica)の定義には、「音による芸術」といったものから「音による時間の表現」といったものまで、様々なものがある。

西洋音楽では、リズム(律動)、メロディー(旋律)、ハーモニー(和声)をもつものが音楽とされる。そして、このような特性をもつを様々な方法で発したり、聴いたり、想像したり、楽しむ行為のことをも指す。広くは人間が楽しめたり、意味を感じたりすることのできる音全体のことをさす場合もある。

音楽の歴史は、有史以前まで遡ることが出来る(#歴史)。

西洋音楽では、「音楽の要素はリズムメロディーハーモニーの三要素からなる」と考えられている(#要素)。この場合における和声、ハーモニーとはメロディとの相対的な倍音関係を構成しており、メロディをより際立たせる役割を持っている。

音楽は、ある音を選好し、ある音を選好しない、という人間の性質に依存する[要出典]

音楽には以下の3つの要件があるとされている[要出典]

  1. 材料に音を用いる。
  2. 音の性質を利用して組み合わせる。
  3. 時間の流れの中で材料(音)を組み合わせる。

音楽行為に関しては、現代では一般的に「作曲」「演奏」「鑑賞」が基本として考えられている。作曲とは、作曲者の心に感じた事を音によって表現することである。演奏とは、再現芸術ともよばれ、作曲された音楽を実際に音として表現する行為であり、原曲を変え(=編曲)つつ演奏したり、声楽曲を器楽曲に変える(編曲)等した上で演奏する行為も演奏行為とされる。(#演奏)。鑑賞とは音楽を聴いてそれを味わったり、価値を見極めたりすることである。

音楽には様式があり、それを「ジャンル」と呼んでいる。「民族音楽」「クラシック音楽」「ジャズ」「ロック」などといった名称で呼ばれているのがそれである(#ジャンル)。

近年では人々の音楽を聴く行為を統計的に見ると、再生音楽が聴かれている割合が多くなっている(#生演奏 / 再生音楽)。

定義[編集]

広辞苑では「音による芸術」とした。

4世紀古代ローマ哲学者アウグスティヌスの『音楽論』では「musica est scientia bene modulandi (音楽とは音を良く整えるスキエンティア[注 1]である)」とした[1]。 ジョン・ブラッキングの書では「人間が組織づけた[2]」とされた。 ジョン・ケージは「音楽は音である。コンサートホールの中と外とを問わず、われわれを取り巻く音である。」と語った。

語源[編集]

呂氏春秋』(紀元前239年に完成)に既に「音楽」という表現がみられる。

音楽の由来するものは遠し、度量に於いて生じ、太一に於いて本づく(『呂氏春秋』大楽)

英語の"Music"を始め、ヨーロッパの多くの言語においては、古代ギリシャ語μουσική (mousike; 「ムーサのアート」の意)を語源とする。ムーサはミューズの名でも知られる芸術や文化を司る女神である[3]

歴史[編集]

古代の音楽の歴史[編集]

音楽は有史以前から行われていたとされるが、何時、どのように始まったかは定かでない。ただ、それはから始まったのではないかと考えられている[4]西洋では、古代ギリシアの時代にはピタゴラスプラトンにより音楽理論や音楽に関する哲学が始まっており、古代ギリシアの音楽ギリシア悲劇に伴う音楽が主であった。これが後のクラシック音楽に繋がっている。

東洋では江戸時代まで総検校塙保己一らによって温故堂で講談された和学や、中国神話によると、縄の発明者の氏族が歌舞や楽器、楽譜を発明したとされる。塙保己一は、撚糸である縄や結縄の発祥を日本列島から出土する土器や房総半島飯岡の網小屋に遺る有結網に捜し求めた研究成果を群書類従に編纂した。

  • 歌舞の発明者―『葛天氏』治めずして治まった時代の帝王。縄、衣、名の発明者でもある。
  • 瑟の発明者―『伏羲三皇の初代皇帝。魚釣り、結縄、魚網、鳥網、八卦の発明者でもある。
  • の発明者―『女媧』天を補修し人類を創造した女性。

クラシック音楽の歴史[編集]

クラシック音楽の音楽史においては、6世紀頃まで遡ることができる。まず、この頃にキリスト教の聖歌であるグレゴリオ聖歌や、多声音楽が生まれ(中世西洋音楽)、これが発展し、15世紀にはブルゴーニュ公国フランドル地方ルネサンス音楽が確立された。16世紀には本格的な器楽音楽の発達、オペラの誕生が起こり、宮廷の音楽が栄えた(バロック音楽)。これ以前の音楽を初期音楽とよぶことが多い。その後18世紀半ばになると民衆にも音楽が広まり、古典派音楽とよばれる「形式」や「和声」に重点をおいた音楽に発展した。またこの頃から一般的に音楽が芸術として見られるようになる。19世紀には「表現」に重点を置いたロマン派音楽に移行し、各国の民謡などを取り入れた国民楽派も生まれる。20世紀頃には「気分」や「雰囲気」で表現する印象主義音楽や、和声および調の規制をなくした音楽などの近代音楽が生まれ、さらに第二次世界大戦後は現代音楽とよばれる自由な音楽に発展した。

邦楽の歴史[編集]

日本では、縄文時代からすでに音楽が始まっていたが、5世紀から8世紀にかけて朝鮮半島中国から音楽を取り入れたことからさまざまなジャンルの音楽が始まった。まず、平安時代遣唐使を廃止して国風文化が栄えていた頃、外来音楽を組み込んだ雅楽が成立し、宮廷音楽が盛んになった。その後鎌倉時代室町時代には日本固有の猿楽が始まり、狂言に発展した。江戸時代でも日本固有の音楽が発達し、俗楽浄瑠璃地歌長唄箏曲など)に発展した。明治時代以降は音楽においても西洋化、大衆化が進み、西洋音楽の歌曲ピアノ曲が作曲された。昭和時代には歌謡曲流行歌などの昭和時代のポピュラー音楽が始まり、戦後はアメリカのポピュラー音楽や現代音楽が取り入れられ、演歌J-POPに発展した。

ポピュラー音楽の歴史[編集]

ポピュラー音楽の歴史は17世紀頃、アメリカへの移民まで遡る。本格的に移民が行われるようになると白人によるミュージカルのような劇場音楽が盛んになった。また、アフリカからの黒人により霊歌(スピリチュアル)、ブルースゴスペルが始まった。19世紀末にはブルースが西洋音楽と融合し、スウィング即興ポリリズムが特徴的なジャズに発展していった。1920年代にはブルースやスピリチュアル、アパラチア地方の民俗音楽が融合したカントリー・ミュージック(カントリー)が人気を集め、1940年代には電子楽器や激しいリズムセッションが特徴的なリズム・アンド・ブルース(R&B)、1950年代にはR&Bとゴスペルが融合したソウルミュージック(ソウル)が生まれた。さらに、1950年代半ばにはカントリー、ブルース、R&Bなどが融合したロックンロール(ロック)が現れ、1970年代にはヒップホップの動きが現れた。

要素[編集]

音の要素
音には、基本周波数(音の高さ、音高)、含まれる周波数(音色和音など)、大きさ(音量)、周期性(リズム)、音源の方向などの要素がある。
西洋音楽における三要素の概念
上記の要素に関連して、いわゆる西洋音楽の世界では、一般に音楽はリズムメロディーハーモニーの三要素からなる、と考えられている。ただし、実際の楽曲では、それぞれが密接に結びついているので一つだけを明確に取り出せるわけではない。また、音楽であるために三要素が絶対必要という意味ではない。たとえば西洋音楽以外ではハーモニーは存在しないか希薄であることが多いし、逆に一部の要素が西洋音楽の常識ではありえないほど高度な進化を遂げた音楽も存在する。このように、これら三要素の考え方は決して完全とは言えないが、音楽を理解したり習得しようとする時に実際に用いられ効果をあげている。
西洋音楽において和声が確立した音楽におけるメロディ
メロディ(旋律)は特に和音の構成によってなされており、和音は周波数のおよそ整数比率によって発生する。
音の発生方法
を発生する方法には口笛、手拍子、楽器などがある。西洋の伝統的な分類法においては楽器は息を吹き込む管楽器の系統で、クラリネットなどの木管楽器トランペットなどの金管楽器に分かれる)、弦を振動させることで音を出す弦楽器(弦の使用法によって、弦をはじくギターなどの撥弦楽器、弦をこするヴァイオリンなどの擦弦楽器、そして弦を打つ打弦楽器に分かれる)、そして楽器そのものを打ったり振ったりして音を出す打楽器太鼓など)の3つに分類される。楽器は地域的な特色が強く出るものであり、西洋音楽の普及によって西洋期限の楽器が世界中に広まっていったのちも、世界各地にはその土地ならではの特徴的な楽器が多く存在し、同じ楽器でも使用する素材が異なることも珍しくない[5]

音楽行為[編集]

作曲[編集]

作曲とは、曲を作ること、あるいは音楽の次第を考案することである。具体的には、楽譜を作成してゆく、ということもあれば、即興演奏という方法で、楽譜制作は抜いて、作曲をすると同時に演奏をしてゆく、ということもある。

演奏[編集]

演奏とは、実際に音を出すこと、つまり音楽を奏でることであり、楽器を奏することだけでなく、広義にはを歌うことも含まれる。 演奏には即興演奏もあれば、譜面に従った演奏もある。なかでも、ジャズでは即興演奏が多用され、一方クラシック音楽では通常は譜面の音符の通りに演奏されている。真に機械だけによる演奏は自動演奏と呼ばれている。

鑑賞[編集]

鑑賞とは、演奏を視覚、聴覚等で楽しむことにより音楽的芸術を示すことである。 音楽評論家等は職業として、それを行っていると考えて良いだろう。

音楽家[編集]

音楽家とは音楽を専門とする人のことである。一般に、楽曲を作る音楽作家や音楽を再現する実演家を指す。より細かく分けると以下のようなものがある。

また一般には音楽家と呼ばれないが、音楽関連の職業には以下のようなものが挙げられる。

ジャンル[編集]

音楽の「ジャンル」とは音楽の様式や形式のことである。古来、音楽は多くの社会で娯楽宗教儀式などを通じ、生活に密接したものになっており、多くの特徴ある形式や様式を生み出してきた。

音楽のジャンルは、現在聞くことの出来る音楽の様式・形式であると同時に、発生した源、歴史の手がかりとなっている。

かつてジャンルの変化というのは比較的ゆっくりしたものだったが、レコード等が流通するようになってからは、音楽家が地域や時代を超えてすばやく色々なジャンルの音楽を学べるようになったことにより、ジャンルの融合等の試みも生まれ、ジャンルは加速度的に分化されていった[注 2]。現代の音楽は、様々なジャンルの複雑な合成になっていることが多い。

ジャンルの例[編集]

楽器編成[編集]

楽器の編成は演奏する音楽のジャンルによってある程度左右される。例えば以下のようなものがある。

生演奏 / 再生音楽[編集]

音楽は生演奏だけでなく、記録・再生された「レコード音楽」あるいは「再生音楽」[注 3]を楽しむことができる。近年では人々の音楽を聴く行為を統計的に見ると、再生音楽が聴かれている時間・頻度が圧倒的に多くなっている[6][注 4]

生演奏と、そのパフォーミング・アート性[編集]

生演奏される音楽は、en:performing arts (パフォーミング・アート)の一種であり、(舞台上で生身の俳優によって行われる演劇演技)や、生で踊られるダンスなど、他のパフォーミング・アートと同様に)パフォーマーがパフォームするたびに、多かれ少なかれ、異なるという特徴がある。

その点、「非 パフォーミング・アート」である絵画とは異なっているのである。油絵などの場合、しばしばオリジナルの作品は1点で、そのオリジナルの作品を見るという場合、皆が同一の作品を鑑賞でき、別の日でも同一の作品を鑑賞できる、という特徴がある。音楽の生演奏にはそれが無いのである。そしてそれ(=演奏のたびに、聴き手に提示される、実際のありさま、質感、が異なること)が生演奏の醍醐味でもある。[注 5] [注 6]

記録と録音技術[編集]

音楽の記録・伝達方法として最も古いものは口承であるが、やがていくつかの民族は音楽を記号の形にして記す、いわゆる楽譜を発明し使用するようになった。各民族では様々な記譜法が開発されたが、11世紀初頭にイタリアのグイード・ダレッツォが譜線を利用した記譜法を開発し[7]、これが徐々に改良されて17世紀に入るとヨーロッパにおいて五線譜が発明された。五線譜はすべての楽曲や楽器の表記に使用でき、さらに譜面上で作曲もできるほど完成度が高かったため、以後これが楽譜の主流となった[8]

楽譜はあくまでも音楽のデータを記号に変換して記すものにすぎなかったが、1877年にエジソンが蝋菅録音機を発明すると、音楽そのものの記録が可能となった[9]録音技術はその後も発達し続け、1960年代には録音機器シンセサイザーの普及がポピュラー音楽の製作手法を根本的に変えた。1990年代にはデジタルレコーディングが普及し、音楽の加工の技術的な可能性が広がった。

配布・配信[編集]

音楽を伝達する媒体には様々なものが存在する。記録媒体に音楽を保存するものとしてはSP盤LP盤EP盤コンパクトカセット(カセットテープ)CDビデオテープLDフロッピーディスクMDUSBSDHDDDVDBDHVDなどが存在する。こうした記録媒体の音楽は、ウォークマンなどのデジタルオーディオプレーヤーをはじめとする録音再生機器によって再生され使用される。また、音楽を配信する手段としてはAM放送FM放送などのラジオ放送や、テレビなどの放送メディアが存在するほか、最近ではデータ圧縮技術を活用して、インターネット経由の音楽配信が盛んとなってきている[10]

音楽産業と大衆化[編集]

レコード

古くは王侯貴族や教会などが音楽家を保護し、そのなかで数々の名曲が生み出されていたが、18世紀頃よりヨーロッパにおいては市民の経済力が向上し、不特定多数の聴衆に向けての演奏会が盛んに行われるようになった[11]。この傾向はフランス革命以後、上記の特権階級の消滅や市民階級の経済力向上に従ってさらに加速していった[12]。また、16世紀には活版印刷の発明によって楽譜も出版されるようになった。印刷楽譜はそれまでの書写によるものより量産性・正確性・価格のすべてにおいて優れたものであり、音楽、とくに同一の曲の普及に大きな役割を果たした[13]。楽譜出版は、19世紀には商業モデルとして確立し、音楽産業の走りとなった[14]

19世紀末までは自分で演奏を行う以外は音楽を楽しむには基本的に音楽家が必要であったが、1877年にトーマス・エジソン蓄音機を発明し、次いで1887年にエミール・ベルリナーがこれを円盤形に改良し、ここからレコードが登場すると、音楽そのものの個人所有が可能となり、各個人が家庭で音楽を楽しむこともこれによって可能となった[15]。次いで、1920年代にラジオ放送が開始されマスメディアが音声を伝えることも可能になるとすぐに音楽番組が開始され、不特定多数の人々に一律の音楽を届けることが可能となり、音楽の大衆文化化が進んだ。そしてその基盤の上に、音楽の制作や流通、広告を生業とするレコード会社が出現し、大規模な音楽産業が成立することとなった。その後、テレビなどの新しいメディアの登場と普及、カセットテープや1980年代のコンパクトディスクの登場など新しい媒体の出現、1979年に発売されたウォークマンのような携帯音楽プレーヤーの登場などで音楽愛好者はさらに増加し、音楽産業は隆盛の一途をたどった。これが変化するのは、1990年代後半にインターネットが普及し初めてからである。インターネットを介した音楽供給はそれまでのように音楽を保存した媒体をもはや必要とせず、物として音楽を所有する需要は減少の一途をたどった。一方で、音楽祭演奏会はこの時期を通じて開催され続けており、ライブなどはむしろ隆盛を迎えているなど、音楽産業を巡る環境は変化し続けている[16]

音楽都市[編集]

音楽都市と言えば、一般に、音楽文化が特に豊かな都市、音楽が住民の日常生活にすっかり溶け込んでいる都市、あるいは音楽産業が非常に栄えている都市、などのことを指す。以下はその例である。

世界規模[編集]

日本国内規模[編集]

その他、音楽都市を標榜する市町村は全国各地に存在する。

音楽と脳[編集]

音楽を、単なる「音」ではなく、また「言語」でもなく、「音楽」として認識するのメカニズムは、まだ詳しくわかっていない。それどころか、ヒトが周囲の雑多な音の中からどうやって声や音を分離して聞き分けているのかなど、聴覚認知の基本的なしくみすら未解明なことが多い。しかし、音楽と脳の関係について、以下のようないくつかの点は分かっている。

  • 音楽に関係する脳:側頭葉を電気刺激すると音楽を体験するなどの報告から、一次聴覚野を含む側頭葉が関係していることは確かである。
  • 音楽、とくにリズムと、身体を動かすことは関連している。
  • 音楽には感情を増幅させる働きがある。たとえば映画・演劇などで、見せ場に効果的に音楽を挟むことによって観客の涙を誘ったり、あるいは怪談話の最中におどろおどろしい音楽を挟むことにより観客の恐怖感を煽る、といったものである。
  • 幼い頃から練習を始めた音楽家は、非音楽家とくらべて大脳の左右半球を結ぶ連絡路である「脳梁」の前部が大きい(Schlaugら、1995)。楽器の演奏に必要な両手の協調運動や、リズム・和音・情感・楽譜の視覚刺激などといった様々な情報を左右の皮質の各部位で処理し、密接に左右連絡しあうことが関係している可能性がある。
  • 絶対音感:聴いた音の音階、基準になる音との比較なしに、努力せずに識別できる能力のことで、9~12歳程度を超えると身に付けることができないといわれている。アジア系の人には絶対音感の持ち主が多いと言われているが正確なデータはなく、これが遺伝的、文化的要因のいずれによるのかも医学的な根拠は示されていない。また、絶対音感を持っている人と持っていない人では、音高を判断しているときに血流が増加する脳の部位が異なる。持っていない人では、音高を短期記憶として覚えることに関係する右前頭前野の活性が弱いのに対し、持っている人では記憶との照合をする、背外側前頭前野の活性が強かったという。また絶対音感保持者では側頭葉の左右非対称性(左>右)が強いという(Zattoreら、2003)。
  • 音楽と数学の関係:中世ヨーロッパで一般教養として体系化された「自由七科」では、音楽は数学的な学問の一つとして数えられている。また、子供に音楽の練習をさせると数学の成績が伸びたという報告(Rauscherら、1997)もあり、音楽と数学の関連性を示唆する。

学術研究[編集]

音楽を研究する学問として音楽学がある。音楽理論に関するものとしては音楽哲学音楽美学がある。ほかに音楽の歴史を研究する音楽史、各民族民族音楽を研究する民族音楽学比較音楽学音楽教育学音楽心理学音楽音響学などもある。また、文学研究でも音楽との関連などが研究される。

研究者が音楽評論を書くこともある。

文化[編集]

その文化的発展度を問わず、音楽はどの民族にも普遍的に存在しており、様々に利用されてきた。軍隊の行軍や指揮に音楽はつきもので[17]、現代においても多くの国歌の軍は軍楽隊を所持している。日々の労働にリズムをつけ効率を高めるための労働歌もまた多くの民族に伝わっており、日本でも田植え歌や木遣などはこれにあたる。歌垣のように、求愛のために音楽を用いることも世界中に広く見られる[18]。魔術的・呪術的用途、さらには宗教的用途に音楽を使用することも多くの民族に共通しており、例えばヨーロッパにおいては教会が18世紀頃までは音楽の重要な担い手の一つだった[19]

ヨーロッパの中世大学教育における自由七科のひとつに音楽が含まれていたように、音楽は教養としても重視されることが多く[20]、やがて19世紀に入り近代教育がはじまると、音楽も初等教育からそのカリキュラムの中に組み込まれていった。明治維新後の日本もこの考え方を踏襲したが、西洋音楽を扱える人材がほとんど存在しなかったため即時導入はできず、明治15年の「小学唱歌集」の発行を皮切りに徐々に唱歌が導入されていくこととなった[21]。こうした一般教養としての音楽教育のほか、音楽のプロを育成する音楽学校も世界各地に存在し、さまざまな音楽家を育成している。

音楽はしばしば、民族のアイデンティティと結びつきナショナリズムの発露をもたらす。世界のすべての独立国が国歌を制定しているのもこの用途によるものである。国歌だけでなく、一般の音楽においてもこうしたつながりは珍しくない。19世紀にはナショナリズムのうねりの中で、当時の音楽の中心地であるドイツ・フランス・イタリア以外のヨーロッパ諸国において、自民族の音楽の要素を取り入れたクラシック音楽の確立を目指す国民楽派が現れ、多くの名作曲家が出現した[22]。民族音楽においてもナショナリズムとのつながりは一般的に強いものがあり、また、ポピュラー音楽でも、民族を越えてその国家内で愛唱される場合、国民の統合をもたらす場合がある[23]

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ scientia スキエンティアは「知」で、しかもやや断片的な知、知識のこと。はるか後の時代、19世紀になって「サイエンス」(科学)の語源となる語彙。
  2. ^ その結果、広告用の単なるコピーにすぎないジャンル(名)も氾濫するが、音楽的に大きな影響力を保ち続けるジャンルもある。
  3. ^ CDや映像記録化されたもの、放送で流されるもの、を含む
  4. ^ その結果、レコード音楽への露出の多い作品や分野に人気が集まり、あまり取り上げられないジャンルや演奏家は省みられないといった弊害もある。
  5. ^ 生演奏される音楽は、同じ演奏者が演奏する場合でも、(即興演奏を認めていない場合ですら)毎回少しづつ異なる。またさらに、演奏者が異なる場合は、同じ楽譜を見て演奏する場合でも、しばしば演奏は大きく異なる。複数の演奏者が関わる作品であればなおさらである。例えば(あくまで例えばであるが)楽譜上の指示の解釈をどう実行するか、ということにも幅があり、複数の楽器を用いる場合どの楽器の音をどの程度大きくしどの楽器の音をひかえめにするか、各楽器ひとつとっても、ひとつの和音の構成音のうち、どの音を強く出しどの音を弱めに出すか、メロディーのどの部分を印象付けるか、ある音にビブラートはどの程度かけるか... 等々等々、ここでは書ききれないほど膨大な数の要素が、演奏者(たち)のその時々の判断や、ゆれうごく一種の「感覚」にゆだねられており、生演奏は演奏されるたびに異なり、特に複数の演奏者によって行われる生演奏は毎回、多かれ少なかれ異なった質感を聴き手に与えるのであり、毎回異なることによって、聴き手に一種の「驚き」や「意外性」や「新鮮味」を感じさせる可能性があるのである。
  6. ^ なお、音楽でも再生音楽(録音され、コピーされたものを再生する音楽)の場合は(同等の機器で再生すれば、ほぼ)同一のものを観賞することができる。たとえば、「演奏者Aの○○○○年--月--日の~ホールでの演奏のデジタル録音されたものを、○○社の再生装置で聴く」ということなら、AさんでもBさんでも同じ作品(細かい質感まで同一の作品)を聴くことができ、また数年後でも、数十年後でも、同じ演奏を鑑賞することができるわけである。録音・再生音楽は(聴くたびに意外なものに出会う喜びは無いかわりに)高評価を得た特定の演奏を、何度でも繰り返し聴き、理解を深めたり、演奏を心に刻みつけることができる、というメリットがある。

出典[編集]

  1. ^ アウグスティヌス著作集 第三巻
  2. ^ ジョン・ブラッキング 『人間の音楽性』岩波書店、1973年
  3. ^ 「138億年の音楽史」p72 浦久俊彦 講談社現代新書 2016年7月20日第1刷
  4. ^ 「図説 人類の歴史 別巻 古代の科学と技術 世界を創った70の大発明」p220 ブライアン・M・フェイガン編 西秋良宏監訳 朝倉書店 2012年5月30日初版第1刷
  5. ^ 「決定版 はじめての音楽史 古代ギリシアの音楽から日本の現代音楽まで」p11 音楽之友社 2017年9月30日第1刷
  6. ^ 「138億年の音楽史」p253-254 浦久俊彦 講談社現代新書 2016年7月20日第1刷
  7. ^ 「138億年の音楽史」p218-219 浦久俊彦 講談社現代新書 2016年7月20日第1刷
  8. ^ 「決定版 はじめての音楽史 古代ギリシアの音楽から日本の現代音楽まで」p12-13 音楽之友社 2017年9月30日第1刷
  9. ^ 「決定版 はじめての音楽史 古代ギリシアの音楽から日本の現代音楽まで」p132 音楽之友社 2017年9月30日第1刷
  10. ^ 「決定版 はじめての音楽史 古代ギリシアの音楽から日本の現代音楽まで」p132 音楽之友社 2017年9月30日第1刷
  11. ^ 「決定版 はじめての音楽史 古代ギリシアの音楽から日本の現代音楽まで」p42 音楽之友社 2017年9月30日第1刷
  12. ^ 「138億年の音楽史」p239-240 浦久俊彦 講談社現代新書 2016年7月20日第1刷
  13. ^ 「決定版 はじめての音楽史 古代ギリシアの音楽から日本の現代音楽まで」p40 音楽之友社 2017年9月30日第1刷
  14. ^ 「138億年の音楽史」p240 浦久俊彦 講談社現代新書 2016年7月20日第1刷
  15. ^ 「決定版 はじめての音楽史 古代ギリシアの音楽から日本の現代音楽まで」p132 音楽之友社 2017年9月30日第1刷
  16. ^ 「決定版 はじめての音楽史 古代ギリシアの音楽から日本の現代音楽まで」p132 音楽之友社 2017年9月30日第1刷
  17. ^ 「138億年の音楽史」p118-120 浦久俊彦 講談社現代新書 2016年7月20日第1刷
  18. ^ 「決定版 はじめての音楽史 古代ギリシアの音楽から日本の現代音楽まで」p8-9 音楽之友社 2017年9月30日第1刷
  19. ^ 「決定版 はじめての音楽史 古代ギリシアの音楽から日本の現代音楽まで」p96 音楽之友社 2017年9月30日第1刷
  20. ^ 「138億年の音楽史」p212-213 浦久俊彦 講談社現代新書 2016年7月20日第1刷
  21. ^ 「決定版 はじめての音楽史 古代ギリシアの音楽から日本の現代音楽まで」p147 音楽之友社 2017年9月30日第1刷
  22. ^ 「決定版 はじめての音楽史 古代ギリシアの音楽から日本の現代音楽まで」p103-104 音楽之友社 2017年9月30日第1刷
  23. ^ 「文化人類学キーワード」p196-197 山下晋司・船曳建夫編 有斐閣 1997年9月30日初版第1刷

参考文献[編集]

  • 近藤譲 『“音楽”という謎』春秋社 ISBN 4-393-93485-7
  • 岩田誠 『脳と音楽』メディカルレビュー社 ISBN 4-89600-376-4
  • 谷口高士 『音は心の中で音楽になる―音楽心理学への招待』北大路書房 ISBN 4-7628-2173-X
  • オリバー・サックス『音楽嗜好症(ミュージコフィリア)』(早川書房 2010年ISBN 978-4152091475
  • リタ アイエロ 編 大串健吾 訳『音楽の認知心理学』誠信書房 ISBN 4-414-30283-8
  • Rauscher FH, Shaw GL, Levine LJ et al., Music training causes long-term enhancement of preschool children's spatial-temporal reasoning., Neurol Res. 2-8, 19, 1997.
  • Schlaug G, Jancke L, Huang Y et al., Increased corpus callosum size in musicians., Neuropsychologia. 1047-1055, 33, 1995.
  • Zattore R., Absolute pitch: a model for understanding the influence of genes and development on neural and cognitive function., Nature Neuroscience. 692-695, 6, 2003

関連項目[編集]

外部リンク[編集]