ソリッドステートドライブ

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2.5インチサイズの標準的なSSD

ソリッドステートドライブ英語: Solid State Drive, SSD)とは、半導体メモリディスクドライブのように扱える補助記憶装置の一種である。シリコンドライブ半導体ドライブメモリドライブ擬似ディスクドライブなどとも呼ばれる。

SSDとしては広義に、メモリにRAMを用いたもの(ハードウェア方式のRAMディスク)と、フラッシュメモリを用いたものに分類される。本項では特に断りのない限り、後者のフラッシュメモリを用いたデバイスについて説明する。

概要[編集]

PCI Expressの拡張カード型(上)と、M.2コネクタのもの(下)
USB接続の外付けSSD

メモリとしてRAMを用いるRAMディスク(ハードウェア方式)の場合、揮発性メモリを使用するため、バックアップ電源を持たないと電源の切断によって記憶内容が消えてしまう事が多い。一方で、メモリに不揮発性メモリであるフラッシュメモリを用いた場合、電源切断後も内容を長期にわたり保持できる[1][2]。なお2010年時点で、シーケンシャルアクセスの転送速度と比較した場合、一般的にフラッシュメモリを用いた製品よりもRAMディスクのほうが高速である。ただし、技術革新によりRAMディスクとフラッシュメモリの差は年々近づいている。

SSDはハードディスクドライブ (HDD) の代替デバイスとして登場したため、多くが2.5インチサイズでシリアルATAなどHDD同様のインタフェースを持つ。M.2PCI Expressに対応したものもあるほか、USBによる外付けドライブ化されたものも登場している。

既存のHDDに比べ高速で消費電力が低く、発熱が少なく耐衝撃性に優れ、軽量で動作音も発生しない。SSDの価格性能比は年々向上しているため、2012年現在、主流にはほど遠いまでも、PCにHDDの代わりにSSDを搭載して発売される機種が増え始めている。モバイル用途に設計されているノートPCや、特に携帯性が重視されるタブレットPCでは多くの機種がSSDを採用している。また、HDDとSSDのどちらか一方を選択することが可能なパソコン[3]や、HDDとSSDを同時に搭載する機種[4]も販売されている。

一方、高スループットと低消費電力という利点のため、2011年頃からデータセンターではHDDに替わってサーバに採用されつつある[5]。また、一部のカーナビビデオカメラPNDでもSSDが使われ始めている[6]。さらに大容量化したものも放送用ビデオサーバなどの業務用専用装置での使用例があり、HDDと比較してビット当たり単価は高いもののより優れた高速性・高信頼性を生かして利用されている。

転送速度は急速に高まりつつあり、たとえば2009年の第二四半期の東芝製SSDでは、読み出しが200MB/s、書き込みが240MB/sで、HDDの約5倍となっており、初期の製品が発表されてからわずか半年あまりで、それぞれ2倍・3倍の性能向上を果たしている。さらに、HDDとフラッシュメモリの双方の長所を取り入れようと、これらを組み合わせたハイブリッドHDDも開発され、実用化されている。

HDDメーカーもSSDの登場に対応した動きを見せている。2008年11月には、日立グローバルストレージテクノロジーズ (HGST) がフラッシュメモリのメーカーでもある米インテルとサーバ機向けのSSDの共同開発に関して提携した。また、HDD業界2位の米ウェスタン・デジタルがSSDメーカーである米SilionSystems, Incを2009年3月に買収した[6]

なお、同じ内部構造でもUSBメモリメモリカード等のUniversal Serial Bus マスストレージクラスインタフェースを持つデバイスは、通常はSSDには直接分類されない、若しくはSSDのサブクラスとして「Universal Serial Bus SSD」のように分類される[7]。また、ソフトウェアによるエミュレートの場合もSSDには分類されない。HDDをベースにフラッシュメモリをキャッシュとする物についてはハイブリッドHDDを参照のこと。

歴史[編集]

フラッシュメモリで構成されるSSDが誕生したのは1991年のことであり、この3年前(1988年)に設立したばかりのサンディスクIBMThinkPad penコンピュータ向けに容量20MBのATA互換SSDを開発・出荷したところから始まる[8][9]

サンディスクでは会社設立当初から磁気ディスク光ディスク等の回転式記録媒体を固体状のフラッシュメモリに置き換えることを狙い、将来像としてSSDが世界中に普及する姿を描いていた。そうした中で、1個のメモリセルに1ビットを越えるデータを記録する「マルチレベル」と呼称する技術と、コントローラ技術により従前から存在する回転式記録媒体をエミュレートする「システムフラッシュ」と呼称する手法の2つを新たなコンセプトとして打ち出し、これらのコンセプトに沿った最初の製品として前記のSSDが開発された[9]

この最初に開発された20MBのSSDのOEM価格は1MBあたり50ドルと高価だった。この約20年後にあたる2010年に同じくサンディスクが記憶容量64GBのSSDを発売した際には、1GBあたりの単価はわずか2ドルとなっていた。この64GBのSSDが発売される2年前にあたる2008年には東芝からもSSDを世に送り出し始めていた[10][9]

更に2012年に入ってからは1GBあたりの単価で1ドルを割り込むようになり、同年12月時点での1GBあたり単価は「0.8~0.9ドル程度になっている」と指摘された[11]

2012年6月には中央大学がReRAMとNANDフラッシュメモリを組み合わせたSSDのアーキテクチャを開発した。[12]

東芝は2012年10月に容量1.6TBのエンタープライズ向けSSDをサンプル出荷する旨発表している[13]

コントローラとメモリ[編集]

2.5インチサイズのSATA SSDを分解した画像
(左側の正方形のICがコントローラ、右側の長方形のIC 6個がフラッシュメモリである。)

以下の通り、デバイス内にはフラッシュメモリとキャッシュ用のDRAMメモリ、アクセスを制御する専用のコントローラチップなどが組み込まれている。

一般的にSSDで用いられるフラッシュメモリチップの転送速度はHDDよりも劣っている。ただしSSD内部には複数個のフラッシュメモリチップを搭載することができ、それらを専用IC等を用いて並列動作させることで、HDDと同等、あるいはそれ以上の性能が確保されている。

コントローラ[編集]

コントローラは、フラッシュメモリチップと接続端子の間で読み書きを制御する集積回路である。一般的なSSDのコントローラには組み込みプロセッサファームウェアが内蔵されている。SSDの性能寿命を左右する重要な要素となっており、読み書き速度や書き換え回数の上限もファームウェアを含むコントローラチップの仕様で決まるため、チップベンダーやチップの型番が明記される事が多い。圧縮書き込み機能や暗号化機能を持つものもある。

コントローラが行う処理には次のようなものがある。

SSDの性能は、デバイス内でのNANDフラッシュチップ並列数により変化する。単体のフラッシュチップは低速であるため、アクセス負荷がチップに効率的かつ均等に分散される状況では、並列数が帯域幅に比例し、またチップの高いレイテンシも隠蔽されることになる[15]

2009年マイクロンインテルは、SSD内部のアーキテクチャにストライピング(RAID 0と同様)とメモリ・インターリーブの手法を導入し、3GbpsシリアルATAの帯域幅に迫るSSDを発表した[16]

2010年2月、マーベルよりS-ATA 3.0 (6.0Gbps) 接続に対応したSSDコントローラチップが公開され、同年3月マイクロン・テクノロジからCrucialブランド製品としてS-ATA 3.0 (6.0Gbps) 接続対応のRealSSD C300が発売された。シーケンシャルリード時に355MB/sec(公称値)を出し、S-ATA 2.0 (3.0Gbps) の理論速度上限である300MB/secを超越している[17]

2011年にはサンドフォースが並列度を倍加させるとともに、コントローラとフラッシュの間でデータの圧縮を行うことにより、6GbpsシリアルATAの帯域幅に迫る消費者向けのSSDを発表した[18]

フラッシュメモリ[編集]

通常は複数個のメモリチップが使用され、データを記憶する。コントローラチップとフラッシュメモリチップのダイの仕様が同じであれば、他の要因でボトルネックに達するまでは、同時にアクセス出来るダイの実装数が多い大容量製品でより書き込み速度が高くなる。

2018年現在、SSD内部の記憶用半導体素子には大記憶容量が比較的容易に得られるNAND型フラッシュメモリが使用されている。

記憶領域についてはフラッシュメモリ同様、積層プロセスを用いて3次元フラッシュメモリ等を記憶チップとして利用し、更なる容量単価の減少と総容量の増加が予定されている。

HDDのような機構部品を持たず、半導体のみにより構成されるSSDは、高集積化の技術的余地が大きく、今後の市場の要求次第では極めて高集積度の不揮発性の記憶装置が作られる可能性がある。SSDだけに限らず、MRAMFeRAMReRAMのような半導体型記憶装置すべてに今後の高集積度化の可能性があるが、NAND型フラッシュメモリは既に製品化されていて記憶容量の集積密度も遜色がないという点で他よりは比較的現実性が高いと考えられる。

現在、3次元セル積層技術が有望な技術として注目されている。 [19]。例えば東芝は実装面積が18mm×14mmの128GバイトSSDを試作した。これを16個使用すれば1.8インチHDDのパッケージ内に2Tバイトの製品が作れることになる。この試作品では16個の容量32GビットのNANDフラッシュメモリチップと1個のコントローラオップを25μmまで薄く削り、17枚をeMMCパッケージに積層実装した[6][20]

2012年6月には中央大学ReRAMNANDフラッシュメモリを組み合わせたSSDのアーキテクチャを開発した。現時点で量産研究段階にある不揮発性メモリReRAMは、フラッシュメモリより大幅に高コストであるが、読み書きが大幅に高速であるため、キャッシュに用いる事により、SSDの全体としてのスループット向上(高速化)、低消費電力化、長寿命化に資するという[21]

SSDのコストの約80%を占めるNAND型フラッシュメモリ半導体が安価に大容量化出来れば、販売価格は安く出来る。現状のSLC型を4値による2ビット/セルのMLC型にするだけでなく、既に8値による3ビット/セルのMLC型が検討されており、また、プロセスルールの微細化によって大容量化が図られている。多値化や微細化によって書き換え回数が減少するが、周辺技術でカバーし切れるのかという問題がある。例えば、90nmのSLC型では書き換え可能回数は10万回程度だったものがMLC型 (2bit/cell) の50nm世代では2万回以下に、MLC型40nm世代や2009年-2010年から量産が始まる予定の30nm世代では1万回以下(3,000回という予測もある)にまでなる。

記憶素子による分類[編集]

この記憶素子は次の4種類に大別される。

  • SLC型 (Single Level Cell)
  • MLC型 (Multi Level Cell) 多値 NAND
  • TLC型 (Triple Level Cell)
  • QLC型 (Quad Level Cell)

これらは記憶素子内の蓄積電荷量、つまり、電位の検出区分に違いがある。

SLC型

SLC型は1つの記録素子に1ビットのデータを保持する。

蓄積電荷量の検出を "Hi/Low" の2値で判断するため、記録素子の劣化やノイズといった多少の蓄積電荷量のバラツキは問題とならない。

  • 書き換え可能な上限回数が多い
  • データ保持期間が比較的長い

SLC型はその書き込み速度と書き換え可能な上限回数が大きいことにより、サーバ向け[22][23]や産業用の組み込み装置など、信頼性向上や保守頻度の低減を優先し、コスト高がある程度許容される用途で普及している。

MLC型

MLC型は1つの記録素子に2ビット以上のデータを保持する。多値NANDという。

蓄積電荷量の検出を"Hi/Low"だけでなく、2つの間にいくつかの中間値を設定して、4値や8値、16値といった多値で判断する。記録素子の劣化やノイズによって少しでも蓄積電荷量に変動が生じると、保持していたデータは誤りとなる。その場合、フラッシュメモリ回路やコントローラ内の誤り検出訂正回路によって自動的に正しいデータに修正される(エラー訂正)。一般的にMLC型の記録素子は、エラー訂正機能との併用が必須となり、SLC型と比べ多くの冗長エリアが必要となる。またこれらのエラー状況を監視する事により、「メモリーブロック不良」が検出され、代替メモリーブロックに切り替えられる。

MLC型はSLC型と比べて書き換え可能な回数とデータ保持期間で劣るが、1セルあたりの記憶容量が倍増(4値の場合)する。同じセル数(体積)であれば大容量化が、同じ容量ならば低価格化(少セル化・小型化)が可能となり、大容量製品を安価に提供することが可能となる。長期間の使用や高信頼性を求めず、主に価格や小型化を重視する製品に用いられる。そのため、出荷数や採用数ではSLC型を上回っており、デジタルビデオカメラや個人用PCなどの民生用途では今後もMLC型が普及していくものと見込まれている。

その他の型

SLCとMLCを混用した製品も存在する。Samsungの技術者によるとコントローラの設定で同じセルをSLCにもMLCにも使用することが可能で、製品に両方を設定しSLC部分をキャッシュとしてMLC部分を主記憶部分とするEVOシリーズがある。

キャッシュメモリ[編集]

キャッシュメモリには128Mバイト程度のDRAMを使用することが多く、読み書きの高速化に寄与する。部分的な書き込み時には対象となるブロック全体を一時的に保持するのに使用される。また、1つのブロックに対する複数の細かな書き込み要求ではフラッシュメモリに書き込まずにキャッシュメモリに蓄えておき、ある程度まとめてから1度に書き込むことで、書き込み可能回数の実質的な向上を行なうのにも使用される。

廉価帯の製品ではキャッシュメモリが省略されているものがある。

フラッシュメモリと、DRAMを用いたコントローラを搭載したものが主流であるが、2012年5月にはバッファローメモリメルコホールディングス傘下)が、DRAMの代わりに不揮発性メモリであるMRAMをキャッシュメモリに採用したSSDを産業向けにサンプル出荷開始した。製品は、組み込み向けに比較的小容量(数ギガバイト)で、突然の電源断でも書き込みデータや、コントローラの管理データを保持し、耐障害性の向上、低消費電力化などが図られるという[24]

外形状とインタフェース[編集]

外装が全体を保護・支持するが内蔵型のものでは外装を持たないものもある。USBに対応することで、外付けSSDとして使用できるものも存在する。

HDDの代替デバイスとして[編集]

3.5インチ・2.5インチサイズのIDE接続SSD

HDDの代替デバイスとして使われるため、HDD同様のインタフェースを持つものが多い。初期の頃にはIDE端子を搭載するSSDがあり、シリアルATA (SATA) 移行前の古いノートPCでもATA接続で利用することが可能であった。また、ATA (IDE) 端子に対しSATA・SSDを接合するゲタとよばれるアダプタも開発された。他にも、主に1.8インチHDDのリプレイス用としてZIFLIFに対応したものも開発された。HDDでSATAが主流になるにつれて、SSDもSATA接続に対応したものが主流になった。

なお、SSD普及の時期から、ほとんどのドライブはSATAインターフェイス搭載であるが、従来のIDEインターフェース搭載の古いPCでも使えるようにしたものもある[25]

SSDの大きさに関する標準規格はないが、1.8インチや2.5インチといった小型HDDの形状に対応したマウント部を持つ外装が存在する[6]。2013年5月時点では、ノートパソコンで多用される2.5インチハードディスクドライブ (HDD) のサイズおよびねじ穴位置に合わせたものがほとんどである。そのため、デスクトップパソコンの3.5インチベイに取り付けられるアダプタが付属するものも多い。厚さは7ミリと9.5ミリのものがある。 なお、ノートパソコンに取り付ける(HDDと置き換える)場合、パソコン本体によっては(薄型のモバイル機など)7ミリ厚のものしか対応できない場合があり、注意が必要である。

SSD専用フォームファクタ・規格[編集]

mSATA SSDと、それを外付け (USB) 化するケース

2013年頃からmSATA (mini-SATA) に対応したSSDが登場した。mSATAはシリアルATAと同じ規格の信号を利用した端子で、通常のHDDやSSDと違って基板上に直接実装でき、電源コネクタと信号ケーブルが不要となり且、旧来のHDDの外殻に合わせたサイズ・形態から解放されるため、省スペース化が必要な小型PCやノートPCに利用される。mSATAに対応した製品によっては、Intel Smart Response Technology (ISRT) で使用するHDDキャッシュに用いられるが、通常のHDD(1.8インチHDD)と同じ単体のSSDとして使えるものもある。

SSDはHDDのアクセス速度を大きく改善するという目的を達成したが、やがてHDDの速度を想定して作られたインタフェース規格の転送速度の上限に達した。SATA Expressなどより高速なPCI Express等の従来規格を利用した製品が登場したほか、M.2U.2など専用のフォームファクタ・規格に準拠した製品、AHCIの代わりにNVM Express (Non-Volatile Memory Express, NVMe) を利用した製品などがある。

上述の通り、SSDはHDDとは明確に異なる動作原理を有し、その特性もHDDとは大きく異なる。このため、形状・耐久性から制御コマンドに至る広範な規格の標準化が求められている。

アメリカの工業化規格団体のひとつであるJEDECは、2007年より小委員会においてSSDの標準化作業を開始し、2010年9月に「SSDが要求される機能および耐久性試験の方法に関する規格」(JESD218)と「耐久性試験を行う際にかかる負荷に関する規格」(JESD219)を策定した。標準化作業は現在も進行中である。

また、OSとSSD間の通信に用いるコマンドセットなどのインタフェースに関しては、2008年4月にインテルがマイクロソフトやデルと共同で「不揮発性メモリ ホストコントローラインターフェース規格」(NVMHCI Spec. Rev 1.0) を発表している。

組み込み向け[編集]

スマートフォンその他の組み込み機器に搭載されるフラッシュメモリのインタフェースは、SATAではなくeMMCが主流である。一部のノートパソコンタブレットにはeMMCのSSDが搭載されている[26][27]

また、eMMCの後継候補としてUniversal Flash Storageと言う規格がある。

OSの対応[編集]

OSにおいて、開発・発表時にSSDが実用化されておらずSSDでの利用が想定されていない場合、HDD用の処理がSSDに適用される場合がある。結果的に、ハード特性の違いから寿命が短くなったり不都合を生じたりすることがある。

Windowsにおいては、Windows VistaまでHDDのための自動デフラグメンテーション機能が働くため、放置すると無用な書き換え処理によってセルの寿命が消費される。一方で、Windows 7以降からはHDDとは別種の記憶装置「SSD」として扱われ、デフラグメンテーションSuperFetchReadyBoostなどの対象から除外とウェアレベリング(Trimコマンド)をサポートしている[28]

Linuxカーネル2.6.28 からはウェアレベリングなどのサポートが改善され、セルの寿命をできるだけ延ばすなどの対策がとられている[29]

OpenSolarisなど一部のOSでは、SSDに対応したファイルシステムがある[30]

HDDとの比較[編集]

HDDとSSDの構成部品の違い

HDDに対する強みは、主にモーターやアームといった機構部品による可動部を持たないことにある。

SSDの短所は、HDDに比べて記憶容量あたりの単価が高く、記憶素子の書き換え回数に上限があることである。HDDと同様の使用方法のままでは、比較的早期に書き換え可能回数の上限を越えてしまい、やがては内部の記憶素子の劣化が進行することで記憶情報の保持が出来なくなる。(#問題点の節を参照)

2009年秋現在、SSDは同サイズ・同容量のHDDと比較して数倍の価格で販売されているが、これらの差は徐々に縮まりつつある。

以下は各比較に対し有利である方に○をつけたものである。

比較対象 SSD HDD 理由など
静粛性 HDDはディスクの回転および磁気ヘッドの移動の際に機械動作音が発生する。
SSDにはそのような物理的動作がないのでHDDよりも動作音は圧倒的に少ない。
アクセス速度 HDDはディスクの回転と磁気ヘッドの移動によって目的のデータにアクセスするためシークタイムが発生する。
SSDはそのような物理的駆動がない。
書き換え耐性 SSDが情報の記録・読み出しに使用しているフラッシュメモリは、書き込み・消去(内部動作)のたびに素子が劣化する。
ウェアレベリングを用いてもHDDの耐性には及ばない。
書き換え頻度の高いデータベースやキャッシュなどの記録用途にはHDDが向いている(このような用途にSSDを使うと短期間で寿命を迎えうる)。
データの保持期間 SSDのデータ保持期間は10年前後。HDDの磁気記録そのものについては100年以上保持される。
(ただし、様々な環境による影響を受けてどちらも上下する)
省電力・低発熱性 ○[※] HDDは円盤の回転に常時電力を使う。
SATA接続のSSDはデータアクセス時に大電力を利用する程度であるが、NVMeSSDではコントローラの発熱が問題となる。
耐衝撃性・耐振動性 ディスク型記録媒体は基本的に振動が加わると正常なデータアクセスが困難になる。
さらにHDDはプラッタと磁気ヘッドの間がごく僅かであり振動や衝撃が加わるとヘッドクラッシュを起こしうる。
耐環境性 SSDよりも高い環境温度まで対応している。産業用では動作温度-60℃~95℃まで対応している製品もある。
障害復旧 HDDは歴史が長くノウハウが蓄積され、データ復旧技術も確立されている。
SSDはメモリチップへの書き込み方法が搭載されているコントローラーチップに依存しており、故障時の完全なデータ復旧方法は確立されていない。
省スペース性 HDDはディスクを機材内に収めるスペースが必要になる。
SSDはメモリチップやコントローラチップなど部品のほぼ全てを、基板上に直接配置でき省スペース性に優れる。
容量単価 HDDは安価、SSDは高価である。
(ただし、徐々にその差は埋まりつつある)
大容量性 製品単位ではHDDの方が大容量である。
(ただし、徐々にその差は埋まりつつある)

読み書き速度[編集]

連続読み書き速度の比較では、SSDは最新型のHDDを大きく上回る速度を既に実現している[31]。ディスクドライブのアクセス時間(ヘッドシーク待ち時間や、ディスクの回転待ち時間など)は、メモリに比べて非常に長い(約100万倍)ので、SSDに置き換えることで、特にランダムアクセススループットを大幅に高めることができる。

HDDとSSDの速度比較
HDD (7200rpm) 約175 MB/s[32]
SSD(SATA接続) 約550 MB/s[33]
SSD(NVMe接続) 約3500 MB/s[34]

シーケンシャルアクセスの性能が広告用のベンチマーク結果としてよく出されるが、ランダムアクセスの性能にも注意を払う必要がある。HD Tune Proなどの、ベンチマークソフトのランダムアクセスのWriteの値でそれがわかる。

ランダム書込み(特に小ファイル)の速度については、2008年に広まりを見せたJMicron製コントローラチップ「JMF602」搭載のSSDはHDDよりも遅かった。しかし、2009年に発売されたIndilinxやインテル製のコントローラチップを搭載したSSDでは、内部に大容量のキャッシュメモリ (DRAM) を搭載することで、小ファイルの書き込み時の内部遅延を隠蔽しHDDよりもはるかにランダム書込みが高速な製品が登場した。

適した用途[編集]

データの読み出しが中心で、書き込みをほとんど行わないものでは、フラッシュメモリの欠点である書き換え可能回数の少なさが緩和される。例えば、オペレーティングシステムやアプリケーションソフトといったプログラムファイルは一度インストールされると、アップデート機能で新たなファイルが上書きされるまで、読み出しのみとなる。同様に、編集などによる再保存を行わないデータも、読み出しが中心となる。例えばWindowsにおいては、OSの起動に関して劇的な改善が見られる[35]

小さなファイルの高速読み出しやインデックスなどの作成で、たくさんのファイルにアクセスするときにアクセス速度が重要になる場合もある。フラッシュメモリとHDDの比較では、フラッシュメモリにはシーク時間が存在しないことの速さ(HDDのシークの遅さ)が読み出し速度の遅さを相殺する。

典型的なものでは、音楽データファイルを格納するデジタルオーディオプレーヤーのフラッシュストレージがある。データを一度保存すると、あとは読み出しが中心となり、再生には高速な読み出し速度を必要としない。またストレージ容量の大容量化が進むにつれて、繰り返し古いデータを削除して新しいデータを入れるといった操作の頻度も低下し、欠点である書き込み耐性の低さが現れにくくなる。

適さない用途[編集]

上記とは反対の性質をもつものは適さない。読み書きの対称性では、例えば繰り返し更新を行うデータベースのデータファイルや、書き込みが繰り返し行われるキャッシュファイル、用途によっては大量に作成されるテンポラリ(一時)ファイルなどがある。キャッシュファイルやテンポラリファイルについては、これらを使用しないオンメモリのシステムやソフトを用いることで対処できる。

データの読み書き速度では、大容量のファイルの保存や読み出しを短時間あるいは頻繁に行う用途、例えば、100MB単位の大容量の音声データ(WAVなど)や映像画像などのデータ編集には向いていない。

このように、データの再生や数MB程度の小規模なファイルの出し入れが中心の使い方か、データベースやワークステーション的な使い方が中心かによって向き不向きがある。

また、2015年現在、データの保持期間はHDDよりも劣るため[36][2]、長期間通電しない用途には向いてない。

問題点[編集]

書き換えへの耐久性[編集]

ハードディスクに比べて、書き換え可能回数が少ない。特にサーバデータベースなどの用途では寿命が短くなる場合がある。

ただ欠点とされる書き換え回数の制限も、特定の記憶素子に書き換えが集中しないように分散化させるウェアレベリングや、短時間での頻繁な書き換えを避けるためのキャッシュメモリの併用、既に不良回避のために存在する冗長記憶領域とは別に、書き換え回数制限の回避を目的とした広い冗長記憶領域の確保によって改善できる。

SSDメーカーは、コントローラチップでのウェアレベリング(書き込み分散化技術)やキャッシュメモリの搭載などの緩和策によって、毎日50GBの書き込みを行った場合でSLC搭載製品では20年以上、MLC搭載製品で4年以上の寿命があると主張している[37][38]

海外のテストサイトによる2013年から実施された耐久試験では、総書き込みバイト数が700Tバイトから2Pバイトで書き込みエラーが発生しており、計算上は最低でも毎日10Gバイトのデータ書き換えを約190年実行してようやくエラーが発生する状態であり、実用上は問題のないレベルとなっている[39]

データの保持期間[編集]

SSDはデータ保持時間がHDDよりも短い。特に高い室温環境で無通電状態で放置すると、数週間から数ヶ月でデータが消失するおそれもある[6][2]。HDDの磁気記録そのものについては100年以上保持されるのに対し、SSDのデータ保持期間は10年前後との指摘もある。

フラッシュメモリ半導体が元々データ保持時間が有限であり、セルの微細化はそのままこの時間短縮となって現れる。HDDのように機構部品の寿命を除けば半永久的な情報保持原理のものと同じ感覚で扱うと、書き換え回数が少ない読み出し専用であっても2-3年程、早ければ1年も放置すればデータは失われてしまう。例えば、90nmのSLC型ではデータ保持時間が10年弱程度だったものがMLC型(2bit/cell)の50nm世代では5年前後に、MLC型40nm世代では2年前後、MLC型30nm世代では1年程になる。さらに高温環境下で無通電状態だと数ヶ月~数週間のスパンで消失のおそれもある。[2]

解決方法として通電時にコントローラで時間経過情報を参照し再書き込みを行うなどが考えられており、一部メーカで部分的に実装している[40]。 また、新しい低コスト化及び容量増加の手法としてとNAND素子の3次元セル積層技術が注目されている[20]

データの復旧[編集]

歴史が長くノウハウが蓄積され、データ復旧技術も確立されているHDDと異なり、SSDにおいては故障時の完全なデータ復旧方法は確立されていない。

SSDはメモリチップへの書き込み方法が搭載されているコントローラチップに依存しており、コントローラがメモリに記憶した際のアルゴリズムが分からないと、データを戻すことができないためである。『(SSDは)データ復旧作業そのものが現実的ではない』と指摘する声もある[41]

デバイスの発熱[編集]

SSDの高速化に伴い、コントローラからの発熱が問題となっている。「サーマルスロットリング」と呼ばれる熱暴走を回避する機能が働くことで、性能が低下する[42]

SSDメーカーは、標準でヒートシンクを取り付けた製品を展開しているほか[43]、別売りのSSD冷却用ヒートシンクも市販されている。

長期使用に伴う性能低下[編集]

SSD長期使用者や多頻度利用者(容量一杯まで書き込みを行うなど)から、書き込み性能が購入時よりも低下したという報告が多数上がっている。

データを削除して空き領域となった所に再度書き込みが行われる際、データの消去処理などが追加で実行されている可能性が高い。SSDは購入当初は書き込みの際、消去済みの初期化ブロックに対して"書き込み"だけをするため処理は速い。しかし、HDDを想定した一般的なファイルシステムにおいては、書き込まれたデータを削除して空き領域とする場合、ディスクの管理情報を書き換えることでデータをOSから見えなくするだけであって、実際にはデータそのものは消去されず、空き領域にそのまま残ることになる。SSDを使用し続けることでこのような「データが残っている空き領域」が増加していくが、これらの領域はSSD側で一定の時点で消去されることはなく、そこへの新しいデータの書き込み命令があった時に初めて消去される。消去処理は、書き込み処理より約100倍ほど時間がかかり、単なる書き込みの度に “古いデータの消去 + 新しいデータの書き込み” のような2つ以上の処理を必要とするため速度が低下する。

「消去を一括に広範囲で行う」という特性上、本来消す必要の無い領域まで余計に消去してしまうため、その領域については元の値を書き戻すステップが必要となってしまう。NAND Flashの一般的な仕様の一つである「読み書きは2kB単位、消去は256kB単位」というシステムを例にとると、たった1ビットの値を書き換えるだけでも最悪のケースでは128回の読み込みと1回の消去、そして128回の書き戻し動作が行われる。

プチフリーズ[編集]

2008年7月頃よりJMicron製コントローラチップ「JMF602」を搭載したSSD製品で、Windowsの動作が一時的に止まるという問題がインターネット上で多数報告された[44]。一般に「プチフリ」と言われている。

原因は問題のコントローラICあるいはその制御ファームウェアであり、読み書きが混在して集中した場合、処理速度が極端に低下、あるいはICそのものが一時的に無反応に陥り、現象が発生すると推測されていた。この問題は大量の読み書きが同時に発生した場合に特に表面化するという特性があり、PC環境によっては表面化しない場合がある。

製品レベルでは根本的な解決には至らず、同社の後継製品である「JMF612」、または他社製コントローラチップが採用された製品を使用することが対応策となった。ユーザーレベルでの様々な回避方法は報告されており、例えばバッファローのターボSSDやI-O DATAのマッハドライブなど発売元が提供する各種ソフトや、マイクロソフトが提供するEnhanced Write Filterなどを導入することにより、ある程度軽減することができたとの報告もある。

ファームウェアの不具合[編集]

SSDに採用されるコントローラのファームウェアが、何かしらの問題を抱えている場合がある。

  • Intel SSD 320シリーズの、ファームウェアのバージョン"0362"を除くそれ以前のバージョンでは、不意の電源断の後にドライブの容量がOSから8MBだけ認識されるようになり、元の内容が読み書き不能になる現象が報告されている。俗に「8MB病」と呼ばれている[45]
  • Crucial m4と同社 C300シリーズの初期ファームウェアでは、シリアルATAのLPM (Link Power Management) 機能がアクティブの場合にSSDが応答を停止するというトラブルが報告されている。m4はファームウェア更新、C300はホスト側でLPM機能をオフにする事により解決する。この現象は俗に「LPM問題」と呼ばれている。
  • Crucial C300シリーズの初期ファームウェア ("0006") では、Windows 7などTRIMコマンドが有効な環境で、フラッシュメモリの消耗度合が通常使用の何10倍にもなるバグがある事が報告されている。
  • Crucial m4シリーズの初期ファームウェア("0009"以前)では、使用時間が5184時間以上になると応答を停止するバグがある事が報告されている。この現象は俗に「5184時間問題」と呼ばれている。

古いOSにおける対応[編集]

脚注[編集]

[ヘルプ]
  1. ^ ただし2015年現在、データの保持可能期間は概ね、HDDのそれよりも大幅に短い
  2. ^ a b c d JEDEC SSD Specifications Explained - Alvin Cox [Compatibility Mode] 0 (PDF)”. JEDEC. 2012年7月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年9月22日閲覧。
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  8. ^ イノベーションの歴史 - サンディスク(日本法人)Webサイトより
    《2014年4月29日閲覧(→アーカイブ);当該ページ内に設置されている西暦年タグで「'91」タグを選択することで閲覧可能》
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    上記記事のオリジナル:Lucas Mearian (2012年12月18日). “ついに「1GB=1ドル」を切り、SSDは本格普及へ向かう”. COMPUTERWORLD(IDG). https://web.archive.org/web/20121230213337/http://www.computerworld.jp/topics/561/205925 2014年4月29日閲覧。 ※現在はインターネットアーカイブに残存
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  23. ^ SunもSSD製品投入へ、ハイエンドサーバの世界で急速に広がるSSD マイコミジャーナル
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  30. ^ SPARC/Solarisへの投資継続を表明、オラクル「Solaris OSではSSDを統合してI/O性能を劇的に向上するファイルシステム「ZFS」を持つ。」
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  35. ^ 速い。長い。SSDモデルなら約10秒の高速起動 ジャケットスタイルモバイル レッツノートJ10
  36. ^ USBフラッシュメモリよりも大きく劣る
  37. ^ MtronとSuper Talentが高性能/高信頼性をアピール PC Watch
  38. ^ Super Talent's MasterDrive MX series Data Sheet
  39. ^ SSDにデータを書込みまくり再起不能に追い込む耐久試験で分かった信頼性に関する真実とは?GIGAZINE、2015年3月16日
  40. ^ 制御ICで決まるSSD、微細化進展で信頼性確保が課題に EE TIMES Japan
  41. ^ DOS/V POWER REPORT 2018年10月号 p58
  42. ^ M.2 SSDは冷却が必要?・・・・・・など、“ストレージのギモン” 3点を解決
  43. ^ よく冷える最速クラスのNVMe SSD「Plextor M9Pe(Y)」の実力をテスト
  44. ^ 最新SSD完全解説 | SSD完全攻略マニュアル | DOS/V POWER REPORT
  45. ^ 『Intel SSD 320』“8MB病”に対処するファームウェアをアップデート

関連項目[編集]

外部リンク[編集]