ヴェイパーウェイヴ

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Vaporwave
様式的起源 現代美術ポップ・アートチルウェイヴ, ニューエイジ, ラウンジ・ミュージック, アンビエント, エレベーター・ミュージック, スムーズジャズ, R&B[1][2]
文化的起源 2010年
動画・音声共有Webサイト
使用楽器 Audacity,Sound Forge,Ableton Live,FL Studio,GarageBand
サブジャンル
Future Funk英語版, Future Disco英語版, Future Jazz英語版, VRwave英語版, Future Vision英語版, Mallsoft英語版, Eccojams英語版, Bongwave英語版, Moiréwave英語版, Vapor Dub英語版, Pipe Dreams英語版, Computer Dreams英語版, Vaporgaze英語版, Oceangrunge英語版, Vaportrap英語版, Vapordelic英語版, Juchewave英語版, Laborwave英語版, Vapornoise英語版

ヴェイパーウェイヴ: Vaporwave)は、2010年代初頭にWeb上の音楽コミュニティから生まれた音楽のジャンルである。大量生産の人工物や技術への郷愁、消費資本主義や大衆文化、1980年代のヤッピー文化ニューエイジへの批評や風刺として特徴づけられる[2][3]インターネットが成熟を迎えた2010年代を象徴する音楽ジャンルである。

このジャンルでは徹底して作品の無意味さを追求している。アートワークでは過去に流通した商品の画像を中心に収集してコラージュする。作品のタイトルは無意味な日本語を適当に貼り付けるだけ。サウンドに至っては、著作権違反を前提としており、一般的には価値が低いとされる音源(テレビCM,スーパーマーケットのBGM,知名度が低い音楽作品等)を中心にサンプリングして美しく聴こえるように加工してしまっている。作品内には特段具体的なメッセージはなく、ただ単に既成概念に対する痛烈な皮肉が存在するのみである。何よりもこのジャンルの制作者自身がメジャーアーティストになって表舞台に立つことを好まないため、アンダーグラウンド極まりない異質な音楽ジャンルであると言える。

概要[編集]

チルウェイヴウィッチハウスと同様に、ヴェイパーウェイヴはネット上のコミュニティ(Turntable.fm.ほか[4][5])から誕生した。音楽的には、1980年代から1990年代にかけての大衆音楽、ラウンジ・ミュージックスムースジャズコンテンポラリー・R&Bなどのサンプリングを基本とし[4]、そこからループ、ピッチダウン、チョップド&スクリュード英語版などエフェクトを重ねていくことによって制作される[6][7][8]。この編集により一種独特な音が生まれ、さながら蒸気に包まれるような感覚を与えることからヴェイパーウェイヴと名付けられたとも、もしくはチルウェイヴのパロディのように生まれた経緯からそう呼ばれるようになったとも推測されている[9]。あるいはVaporwareの引用であるともされる。

一聴すると、どれもレトロ感があり1980年代AORニューエイジ(日本では癒し系音楽として紹介される)のようにも感じられるが、既に大量に廃棄されてしまった廃材をコラージュして楽曲を作成することで、音楽作品をポップアート化し、音楽作品が持つ作品性すらも風刺するようなアンダーグラウンドな音楽表現が実現されている。他のジャンルからの盗用のみで作品制作を行うヴェイパーウェイヴの非作品性は、音楽の進歩の終焉を告げ知らせているようでもある。

様式的なアートワークや作品名も、この音楽ジャンルを強く特徴付けている。アートワークは主として、80~90年代に流通した製品、旧式コンピュータによるCGや旧式コンピュータそのもの、VHSスチール、カセットテープ、サイバーパンク、古典彫刻などをモチーフとしている[10]。何れも過去の時代では大量に流通していた物ばかりである。プロモーション・ビデオは、1980年代から1990年代にかけての深夜のテレビ番組の感覚を、それも安物のブラウン管テレビで映し出したような感覚を再現した物が多い。

素材を集めて加工する関係上、2005年にYouTubeを発端として始まった動画共有サービスの普及と、2000年代後半におけるPCの急速な性能向上が、このジャンルの成立に大きく寄与していると言える。そもそもの思想が反消費主義であるため、2013年頃にヴェイパーウェイヴの人気が上がり始めると、制作者達からは「ヴェイパーウェイヴは死んだ」との意見が出るようになった。

このジャンルから派生して現れたフューチャーファンクは、日本の80年代シティ・ポップを主なサンプリングネタとしており、日本の80年代シティ・ポップが海外で評価される下地を作った。2018年に至るも、フューチャーファンク及びシティ・ポップの人気は海外では加熱中である。

歴史[編集]

前史[編集]

動画共有サービスの登場と普及[編集]

2005年に、動画共有サービスであるYouTubeがサービス提供を開始した。2005年2月14日にwww.youtube.comのドメインが有効化された。2005年4月23日にYouTubeで最初の動画がアップロードされた。以後、世界中からインターネットに向けて多種多様な動画・音声素材のアップロードが行われるようになった。2005年5月にYouTubeのベータ版が一般に公開された。2005年11月に、ロナウジーニョが出演したナイキの広告動画が初めて100万回の再生数を記録した。2007年頃には動画共有サービスそのものが世界的に認知されるようになった。このような動画共有サービスの普及によって作品公開の敷居が大幅に下がり、マルチメディアによる文化的交流が急速に活発化して行った。

ヴェイパーウェイヴ的な音楽の出現[編集]

ヴェイパーウェイヴという単語が提唱される以前では、2010年にダニエル・ロパティン(現在ではワンオートリックス・ポイント・ネヴァーとして知られる)が発表した『Chuck Person's Eccojams Vol. 1』と、2011年にジェームズ・フェラーロが発表した『Far Side Virtual』がジャンルの発展を促したとみなされている[11][12]

確立[編集]

ヴェイパーウェイヴと呼ばれるジャンルの確立に対して重要な貢献を行ったアーティストとして、アメリカ合衆国在住の女性トラックメイカーであるVektroidがあげられる[13][14]。彼女は2010年から2013年までに多数の音楽作品をWebサイト上で発表し、この音楽ジャンルの発端と目されている。彼女は Macintosh Plus, New Dreams Ltd, 情報デスクVIRTUAL など複数の名義を使用し、企業を模した自主ネットレーベルであるNew Dreams Ltd.を立ち上げた後に作品を公開、各種SNSを駆使した広報活動を行った。このような広報戦略の採用によって、リスナーに対してあたかもそういった音楽が同時多発的に制作されているように見せかけることに成功した。中でも2011年に発表されたMacintosh Plus名義のアルバム『Floral Shoppe』はヴェイパーウェイヴを代表する作品として知られ、多数のリミックス作品も作られている[15]。彼女や同じく草分け的存在であるInternet Clubの知名度が高まるにつれ、同様の作品を制作するフォロワーも現れることになった。ヴェイパーウェイヴはその後、BandcampSoundCloud4chan などを通じて拡散されていった[1][4]

後続のアーティストやレーベルが現れる中、2012年末にSAINT PEPSIが発表した『EMPIRE BUILDING』や『Hit Vibes』などのディスコ・ファンクに傾倒した作品は衝撃を呼び、フューチャーファンク・ヴェイパーブギといったサブジャンルへと派生することになった[16]。また、2013年1月から『#SPF420FEST』と題してネット上でヴェイパーウェイヴの音楽フェスが行われている[17][18]

支離滅裂な日本語の羅列の多用もあって、日本でも2012年9月頃から異質な音楽ジャンルとして認知され始め、ヴェイパーウェイヴを意識したアーティストも現れ[19]、音楽メディアのele-king[20] や音楽ブログのHi-Hi-Whoopee[21]、ライターの国分純平のブログ[22]などのサイトで特集された[23]

解釈[編集]

音楽ライターのアダム・ハーパーは、ヴェイパーウェイヴについて「皮肉的に、諷刺的にもしくは真に加速主義 (Accelerationism)」の様なジャンルだと言及した。また彼は、ヴェイパーウェイヴという名前自体が、開発が告知されたが実際には製造されなかったものを指すヴェイパーウェアと、資本主義のもとに容赦なく昇華された本能的精神エネルギーについての知識の両方に頷けられる言葉だと記した[24]

情報デスクVIRTUAL(Vektroidの別名義)は自身のアルバム『札幌コンテンポラリー』について、国際交流の新たな可能性をちょっとだけ垣間見えるアルバムであり、1995年ごろのe-Asiaのアメリカによる高文脈化のパロディだと述べた[25]シチュアシオニスト・インターナショナルから着想した別のアーティストは、資本主義のごまかしを明らかにしようとする試みを込めた商業音楽の解体であると彼女の仕事を説明した[24]

主要アーティスト[編集]

Web上への作品アップロード以外に情報公開を行わない傾向が強く、実態が明らかでないアーティストも多い。

  • 2814英語版 - 米Rolling Stone誌の新人アーティスト特集(2015年11月)において取り上げられた[26]
  • Blank Banshee
  • Based Frequency
  • BETA HI-FI
  • CYBEREALITYライフ
  • death’s dynamic shroud.wmv
  • Golden Living Room
  • Hong Kong Express
  • Infinity Frequencies - Future Frequencies, Local News 等の別名あり。
  • Internet Club - 別名としてwakesleep, datavis, Datavision Ltd., ecco unlimited, ░▒▓新しいデラックスライフ▓▒░、monument XIII, memorex dawn, SunCoast Web Series 等がある。
  • Luxury Elite - ヴェイパーウェイヴ専門レーベル「Fortune 500」の運営者でもある。
  • Lindsheaven Virtual Plaza
  • (QuadratoX)
  • Nmesh
  • SAINT PEPSI英語版
  • SPACE MAGIC スペースマジック
  • telepath テレパシー能力者
  • Vektroid - Macintosh Plus, 情報デスクVIRTUAL, Laserdisc Visions, esc 不在、fuji grid tv, Sacred Tapestry 等の別名あり。
  • Venture X
  • VAPERROR
  • XWaves
  • 骨架的 - ヴェイパーウェイヴという言葉が生まれる以前から類似の作品を発表している。
  • 猫 シ Corp.

脚註[編集]

  1. ^ a b Harper, Adam (2013年12月5日). “Pattern Recognition Vol. 8.5: The Year in Vaporwave”. Electronic Beats. 2014年2月8日閲覧。
  2. ^ a b Lhooq, Michelle (2013年12月27日). “Is Vaporwave The Next Seapunk?”. Vice. 2014年4月26日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2014年4月10日閲覧。
  3. ^ Szatan, Gabriel (2013年7月22日). “Interview: CFCF on New Age, Japanese Music and the Almighty Panpipe”. Red Bull Music Academy. 2014年4月10日閲覧。
  4. ^ a b c Galil, Leor (2013年2月19日). “Vaporwave and the observer effect”. Chicago Reader. 2014年2月8日閲覧。
  5. ^ Parker, James. “Datavis + Forgotten Light Prism Projector”. Tiny Mix Tapes. 2014年2月8日閲覧。
  6. ^ 荻原 (2014)p.134
  7. ^ Lhooq, Michelle (2013年12月27日). “Is Vaporwave The Next Seapunk?”. Vice. 2014年4月26日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2014年2月8日閲覧。
  8. ^ Could Vaporwave Be the future of music?”. AUX. Aux Music Network. 2015年9月23日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2015年11月18日閲覧。
  9. ^ 荻原 (2014)p.135, 137.
  10. ^ Ward, Christian (2014年1月29日). “Vaporwave: Soundtrack to Austerity”. Stylus.com. 2014年2月8日閲覧。
  11. ^ Blanning, Lisa (2013年4月5日). “James Ferraro - Cold”. Pitchfork. 2014年2月8日閲覧。
  12. ^ Bowe, Miles (2013年10月13日). “Q&A: James Ferraro On NYC’s Hidden Darkness, Musical Sincerity, And Being Called "The God Of Vaporwave"”. Stereogum. 2014年2月8日閲覧。
  13. ^ bandcampがVaporwaveのオリジネーターVektroidことRamona Andra Xavierにインタビューを敢行
  14. ^ Vectors of Vektroid and Vaporwave
  15. ^ 荻原 (2014)p.135
  16. ^ 荻原 (2014)p.138
  17. ^ 斎藤辰也 (2013年2月19日). “[ホロノミックディスプレイが作動した - ――『#SPF420FEST 2.0』から見るヴェイパーウェイヴ @ tinychat.com”. ele-king. 2015年12月6日閲覧。
  18. ^ 荻原 (2014)p.139
  19. ^ https://chilodisc.bandcamp.com/album/gunma-high-noon
  20. ^ [Vaporwave] - INTERNET CLUB - VANISHING VISION | ヴェイパーウェイヴ | ele-king(2012年9月26日)、情報デスクVIRTUAL - 札幌コンテンポラリー | ele-king野田努、2012年10月24日)、Columns 新ジャンル用語解説 - New Genres in Underground Pop Music | ele-king(野田努、2012年9月6日)、 Sacred Tapestry - Shader | ele-king(竹内正太郎、2012年10月23日)
  21. ^ focus: New notion ‘VAPORWAVE’ is already dead? or not? - Hi-Hi-Whoopee(2012年9月28日)
  22. ^ 【FEATURE】NU AGEは新時代のニューエイジ?Vaporwaveで溺れた話 : キープ・クール・フール(2012年9月29日)
  23. ^ 荻原 (2014)p.137
  24. ^ a b Harper, Adam (2012年12月7日). “Comment: Vaporwave and the pop-art of the virtual plaza”. Dummy. 2014年2月8日閲覧。
  25. ^ 情報デスクVIRTUAL - 札幌コンテンポラリー”. Tiny Mix Tapes. 2014年2月8日閲覧。
  26. ^ 2814”. Rolling Stone (2015年11月25日). 2016年6月27日閲覧。 “The next-level gambit paid off with second album 新しい日の誕生, an unparalleled success within a small, passionate pocket of the internet.”

参考文献[編集]

関連項目[編集]