録音

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録音(ろくおん)または、音声レコーディング (recording) は、音声を記録媒体記録することである。

一般的には、空気の疎密波を信号に変換して、電気的または光学的または物理的な構造物を媒体として記録する。

媒体[編集]

古くはアナログレコードによる物理構造への変換が行われていたが、物理接触を伴う媒体では磨耗が発生し、また記録から音声を再生した際の出力が小さい事から、電気的に増幅するようになり、次いで電気的信号を磁気媒体に記録する方法へ、更には電気信号をデジタル化して磁気的ないし光学的な媒体へ記録するように変化していった。近年では電子的媒体(メモリーカード等)への記録装置も見られる。

記録様式の多様化により、CDMDなどの音楽専用メディアの制作・販売用途以外にも、日常会話や会議・公演などの記録といったものや、映画放送といったマスメディアでの音声収録やインターネット上のコンテンツに至るまで応用分野の幅は広い。

歴史[編集]

落語・詩吟・民話といった音声を伴う情報について、古くは語り部や徒弟関係による口伝声帯模写といった行為により音声は伝えられていた。しかし時代の変化などによる正確な再現という面で難があった。音楽はもっぱら、楽譜を頼りに演奏者が作曲者の意図を解釈したものを聴衆が楽しんでいた。楽曲の権利者を「出版社(者)」と呼ぶのは音楽が楽譜で流通していたことの名残りである。

録音の歴史は、1877年トーマス・エジソンが円柱型アナログレコードを開発した事に始まる。なお1857年にはエドアード・レオン・ スコットによるフォノトグラフと呼ばれる装置もあったが、フォノトグラフは音声を波形図に変換する地震計のような装置で、当時は音声を再生する事は出来なかった。[1]

実際にはフランス人シャルル・クロスが、円盤を使ったほぼ同機構の録音装置に関する論文を、エジソンの録音装置発表の約4ヶ月前に発表していた。しかし実際に利用できる実物を完成させたのはエジソンが先であったため、「録音装置の発明はエジソン」といわれるようになっている。

また、1927年にはそれまで無声映画であった映画に音声を記録するトーキーが発明された。これは映像を記録するフィルムの余白部分に音声信号を光学的に記録したものである。

その後、1世紀近くはアナログレコードの天下が続いた。1938年にはドイツで磁気テープが開発され、1963年にはオランダフィリップス社が磁気テープをカートリッジ化したコンパクトカセットを発表、一般の録音記録需要ではこれが利用されるようになっていった。ただ当時の磁気テープはテープ素材の関係で伸びやすく、繰り返しの録音・再生で劣化しやすかった。このため繰り返しの再生が求められるメディアは、専らレコードが優位とされていた。

この磁気テープとレコードの時代を激変させたのが1979年のフィリップス社とソニーの共同開発によるコンパクトディスク(CD)の発表である。ソニーが早々とアナログレコードの生産を打ち切ったこともあり、傷や埃に極めて弱く、また繰り返し使えば磨耗するレコードは10年と経たずにCDに取って代わった。しかしディスクジョッキーオーディオマニアといったアナログレコードの支持層がいるため、レコード盤、プレーヤー、レコード針の生産は現在でも細々と続いている。

一方の「誰でも使えて気軽に録音・再生できる」という用途に関し、磁気テープ媒体は1992年に発表されたミニディスク(MD)にその座を譲るかに見えたが、MDのランダムアクセス性はその利便性が評価されたものの、音質面での性能の低さが災いし、開発元であるソニーのある日本国内ですら完全に置き換わるに至らず、日本国外では今一つ出回らず現在に至っており、こと携帯機器分野で後述するICレコーダーデジタルオーディオプレーヤーの録音対応機種にその市場を奪われ続けている。同時代にアナログ磁気テープに取って代わろうとしたものはMD以外にデジタルオーディオテープ(DAT・1987年規格制定)もあったが、音質面でプロユース(専門家による利用)に支持されたものの、逆にその性能の高さが音楽著作権団体に問題視され、民生用モデルでは録音機能に制限が加えられたり(SCMS)などの混乱も発生、同規格に似たデジタルコンパクトカセット(DCC)共々今ひとつ普及せずに2000年代に姿を消していった。

日本国外では、1995年Microsoft Windows 95の発表以降、急速に進歩し始めたパーソナルコンピュータMP3といった非可逆圧縮方式による音声録音方式の普及、加えてデジタルオーディオプレーヤーの発売と発展に伴って、1990年代末頃よりコンパクトカセット・プレーヤーからの置き換えが起こり、更にはMP3プレーヤーの一部が録音機能を持つ形で録音装置としての磁気テープを使った録音装置よりの置き換えも見られる。

2000年代に入ってからはICレコーダーやリニアPCMレコーダーへの置き換えも見られる。日本国内ではメディアが入手しやすい事からMD利用者も少なくないが、ICレコーダーの小型大容量化が進んで、またパソコンとの連携性も良い事から、会議や公演の録音といった長時間録音の用途を中心に利用される傾向が見られる。

なおビデオカメラの普及にも伴って、一般家庭では録音のみの記録作成という用途は減っており、音声と映像を同時に記録することが、1990年代以降では当たり前のものとなっている。

実例[編集]

  • 蝋管レコードによる私家録音で、エジソンの肉声が、不鮮明ながら残されている。
  • アボリジニは、話者数が少ない多数の言語を持っている。しかしその部族には迫害や疫病で絶滅したものも多く、各々の部族に固有であった言語文化の解明は困難である。しかし一部部族では当時の民俗学者が現地で録音した記録も残っており、これが言語形態や文化形態の解明に役立っているという。インディアンなどでも古い音声が録音で残っている場合もあり、文字文化をもたなかった民族の、歴史資料的な価値が見出されている。
  • コックピットボイスレコーダーのような装置は、従来は関係者死亡のため原因究明が困難とされた航空事故で、航空機内や通信内容の音声を記録した貴重な証拠として利用されている。これによって事故原因が究明される事例も多く、後の航空機の安全性向上に大きな役割を果たしている。

録音技術[編集]

音楽録音においては、素材となる音をマルチトラックレコーダーに録音することである。CD制作の工程において、一番重要となる作業であり、一番制作費のかかる作業である。録音を技術的側面から見ると、音響工学に加え、それらを記録する機器の機械工学電気工学的な正確な動作が求められる。

近年ではデジタル信号化を行った上での録音が主流でもあるため、加えて電子工学分野での技術もふんだんに取り込まれると共に、記録情報の管理に情報工学技術が活用されるようになっている。

加えてミキシング編集に至っては、いまだ職人芸(一種の才能芸術性が求められる)であるため、専門の技術者を擁する必要性から、必然的に制作費が掛かる傾向にある。

録音の種類[編集]

マスタリングとの違い[編集]

レコーディングは、ヴォーカルやギターなどの素材となる音をひとつずつ録音し、各々に対してエフェクトやEQ(イコライジング)などの加工を行ったあと、すべての音をミキシングするまでの作業である。それに対し、マスタリングは、すでに出来上がった音源に対する最終的な音量調整や音質調整、フェードイン・フェードアウト処理、曲順決定をして、CDカッティング用のマスターテープをつくる作業であり、レコーディングとマスタリングは、同じようだがまるで違うものである。そのため、レコーディングとマスタリングには専用のスタジオが使用され、同じ場所で行われることはまずないと言える。

※ 正確にはこの工程はプリマスタリングであり、本来のマスタリングではない。詳細はマスタリングの項を参照。

録音関連機器[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 余禄ではあるが、2008年に米国の科学者チームがこのフォノトグラフで記録された図形をコンピュータ解析、1860年に記録されたフランス民謡「月の明かりに」の再生に成功したと主張している(フォノトグラフ参照)。

関連項目[編集]