スウィング (音楽)
スウィング (swing) またはシャッフル (shuffle) は、リズムの種類である。ふたつの連続した音符のうち、初めの音符の長さを長めにとり、ふたつめの音符を短くする。ジャズやブルースなど、おもにジャズの影響を受けた音楽で用いる。バウンス (bounce) ともいう。対義語はストレートノート (straight note)、イーブン (even) など。直接的にはリズムの用語ではないが、ジャズにおいて「スウィングする」という語は、うねるような強いグルーヴ感を持った演奏に対する賛辞としても用いられる。
シャッフルでは、連続するふたつの音符のうちの初めの音符の長さは、ふたつめの音符に対して正確に2倍の長さをもつ。スウィングではふたつの音符の長さの比に厳密な決まりはなく、曲のジャンルや演奏のテンポ、または演奏者の好みに左右される。スウィングのふたつの音符の取り方は、速いテンポの曲ほど等分に近くなり、遅いテンポになるとシャッフルのように2対1の比に近付く傾向がある。
ダンスにおいて、スウィングやシャッフルは上述の揺らぎを保った4分の4拍子の楽曲を指す。記譜は、単純拍子で書かれ冒頭にスウィングやシャッフルを指示する標語を記す書法もあれば、複合拍子で書かれリズムを正確に記す書法もある。スウィングでは前者が多く用いられ、8分音符で書かれたリズムは上述の揺らぎをもって演奏されるものという暗黙の了解のうちに演奏される(特に標語による指示はない)。
類型[編集]
根本的なシャッフルのリズムは、最初の音符と真ん中の音符をタイでつなげた3連符からつくられる[1]。このリズムはブルースやロック、カントリーを含む多くのジャンルの音楽において用いられる[1]。
多くのジャズ(特にスウィング・ジャズの時代以降)では、ふたつの連続した8分音符を等間隔に演奏せず、ふたつめよりひとつめをより長く演奏する。ひとつめの音符は、しばしばふたつめの2倍の長さ(つまり4分3連符+8分3連符)と考えてられているが、実際にそのように発音されることは少ない[2]。
- 近似値を取ると、おおむね次のようになる。
- 1:1 = 8分音符+8分音符。シャッフルしない普通の2連符。
- 3:2 = 付点8分5連符+8分5連符。軽いスウィング。
- 2:1 = 4分3連符+8分3連符。ミディアム・スウィング、シャッフル。
- 3:1 = 付点8分音符+16分音符。強いスウィング。
実際は1:1から3:1の間のさまざまな比で演奏されている。
スウィングのリズムはさまざまなジャンルのジャズで使われているが、ラテンジャズには通常用いられない。スウィング・ジャズやブルース、ビバップ、コンテンポラリジャズにおいては、スコアに「シャッフル」と明記されていない限り、スウィングのリズムとしてとらえられる。
シャッフルが用いられる音楽ジャンル[編集]
- 初期のロックンロール(例: ビル・ヘイリー「ロック・アラウンド・ザ・クロック」、エルヴィス・プレスリー「監獄ロック」)、ロカビリー
- カントリー・アンド・ウェスタン
- ブルース、特に1930年頃のスウィング・ジャズに影響されたジャンプ・ブルース
- ブルースロック及び初期のハードロック
- ラグタイム
- スウィング・ジャズ
- 一部のロック、特にパンク・ロック、ポップ・パンク、オルタナティブ・ロック(例: グリーン・デイ「ホリデイ」)
近年では電子音楽、とりわけドラムンベースやブレイクビーツなどでスウィングを持った楽曲も作られている。
脚注[編集]
- ^ a b Schroedl, Scott (2001). Play Drums Today!, p.36. Hal Leonard. ISBN 0-634-02185-0.
- ^ “Jazz Drummers' Swing Ratio in Relation to Tempo”. Acoustical Society of America. 2008年7月22日閲覧。
参照情報[編集]
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- 『schola 坂本龍一 音楽の学校』 NHK 2010年放送.
- グルーヴ感についての資料(論文)等(大阪大学大学院人間科学研究科招聘研究員・河瀬諭)
関連項目[編集]
- イネガル奏法 - 17世紀にフランスの音楽で用いられた同様のリズム様式
- ピョンコ節 - 日本民謡・童謡での同種のリズムの俗称。例として「うさぎとかめ」・「浦島太郎」・「鉄道唱歌」など。
- スウィング・ジャズ
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