レコードプレーヤー

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レコードプレーヤー英語: Record player,Turntable)は、アナログレコードを再生する音響機器である。フォノグラフ(アメリカ英語: Phonograph)、グラモフォン(イギリス英語: Gramophone)とも。古くは蓄音機と称した。用語としては、SP盤(もしくは初期の蝋管レコード)専用のものを「蓄音機」(駆動と音声信号の再生に電気を利用するものは「電気蓄音機」、略して「電蓄」)、LPレコードがかけられるもの(初期アメリカでは45回転専用プレーヤーもあった)を「レコードプレーヤー」と呼んでいる。最近ではDJ(ディスクジョッキー)用語から「ターンテーブル」と呼ぶ事が多い。

基本構造としては、レコードを載せて回転させるターンテーブル、レコード表面の音溝の振幅を拾うピックアップ(電気信号に変換する機能も含む)、ピックアップ部が取り付けられたトーンアームが一体化されている。

概要[編集]

レコードプレーヤーから出力される信号は微弱であるため、オーディオアンププリアンプパワーアンプ、初期には専用端子付きのラジオ)で増幅して、最終的に人間に聞こえる音圧レベルの音声信号としてスピーカーヘッドフォンなどに出力する。

レコードプレーヤーとは前述のように、コンポの一機器として、アンプに微弱な信号だけを出力するが、イコライザアンプ(後述)を含むプリアンプを備え、カセットデッキなどの出力信号と同等の強さの信号を出力するものもある。

また、かつてコンポなどがなかった頃は、プレーヤーといえば、パワーアンプとスピーカを備え、単独でレコード再生できる一体型機器を指した。その中で小型で移動可能なものをポータブル(プレーヤー)と呼んでいた。また、SP盤時代を引きずった1960年代初頭あたりまでは、LPレコード用であっても電蓄(電気蓄音機の略)と呼ばれることも多かった。

2007年現在、レーザー光で音溝を読み取る非接触型のレコードプレーヤーも商品化されている。但し、プレーヤー自体が高価であるため、日本国外の公共機関が使用している他は、一部のオーディオマニアに愛用されている程度で、一般に普及はしていない。

現在、日本を含む主要先進国では一般向けに新盤レコードが(復刻盤やオーディオマニア向けの高音質盤、企画ものの新譜、12インチシングルなどの一部を除き)あまり発売されないため、プレーヤーも主に古いレコードの再生を目的とし、一部のオーディオマニア向けの高価格帯の製品か、通信販売などで見られるような極安価な製品、もしくはDJ用の製品(主に大手楽器店で販売)が市販されているのがほとんどである。

構成[編集]

(1) ターンテーブル、(2) トーンアーム、(3) ピックアップ

レコードプレーヤーは次のような主要部分からなる。

  1. ターンテーブル
  2. トーンアーム
  3. ピックアップ
  4. 筐体

ピックアップは、交換可能なモジュールになっているカートリッジ式であることが多い。ピックアップ・カートリッジ、もしくは単にカートリッジと呼ばれる。トーンアームと一体になっていて交換できないものもピックアップまたはカートリッジと呼ばれることがある。

ターンテーブル[編集]

レコード盤を水平に載せて(例外的な一部プレーヤーは角度を選ばない)、一定速度で回転する回転台。台の部分をプラッターもしくはターンテーブル、駆動部をフォノモータと呼ぶ。一般に使われる回転数は、33 1/3(LP盤)・45(EP盤)・78(SP盤rpmである。但し近年の製品に78回転のSP盤対応機は少ない。またSP盤の再生には専用カートリッジ(もしくは専用交換針)が必要である。

初期の蓄音機はぜんまいばねを手回しで巻く事によりターンテーブルを駆動し、ガバナーと呼ばれる仕組みで一定速度の回転を得ていた。電気を使うものはモータ(電動機)で駆動するが、レコード盤を自動的に一定速度で回転させるためにはモータの回転数を規整しなければならない。初期には電力会社の供給する交流電源の商用電源周波数 (50/60Hz) を基準として、同期モータで一定回転を得ていた。この場合は電源周波数の異なる東日本/西日本を移動する場合に、回転数に対応した調整改造を受ける必要があった。以後、モータサーボ回路PLLなどの電子技術によって独自にモータの回転数を制御できるようになり、回転数の安定とレコード盤に応じた回転数切り替えなどもモータ側で行えるようになった。また、現在でも安価なもの、および一部のプレーヤー(特にDJ用)には手動式で回転数を調整出来るものがある。

回転をプラッターに伝えるための方法として次のような方式がある。

アイドラー駆動方式(アイドラードライブ)
モーター軸とプラッター内周の間にアイドラー(外周にゴムを焼き付けた円盤)を押し当て、減速しつつ回転を伝える方式。
多くの場合、モータ軸には径が段階的に異なるスリーブが付けてあり、アイドラーの接する位置を機械的に動かすことで減速比を変え、回転数を切り替える。電源周波数に同期して回転するモーターを使用するものは周波数に対応した2種類のスリーブがあり、地域の電源周波数によって交換する必要がある。多段の回転数の切り替えが比較的容易にできるが、アイドラーは柔らかくできないためモーターの振動をプラッターに伝えやすい。また、アイドラーを接触させたまま止めておくと変形して回転むらを発生するようになる。安価なプレーヤーに多用されたが高級品もあり、ヴィンテージ品は高価で取引されている。海外メーカーのガラードEMT などが有名である。
ベルト駆動方式(ベルトドライブ)
モーター軸(プーリー)とプラッターの間にゴムベルトをかけ、減速しつつ回転を伝える方式。
ベルトはプラッター外周に外から見えるように掛けるタイプと、段付きもしくは二重プラッターを用いて外から見えないように掛けるタイプがある。アイドラー駆動方式と同様に段付きプーリーを用いて回転数を切り替えるものもあるが、機構的にやや無理があるのでモーター側で回転数を切り替えるものが多い。ベルトがモーターの振動を吸収し、また伸縮により回転むらも吸収できる利点があるが、特定の周波数で共振し逆に回転むらを発生させる可能性もある。ゴムベルトが伸びたり切れたり硬化するなどの経年劣化がある。中級品から高級品まで多く用いられた。
糸駆動方式(糸ドライブ)
モーター軸とプラッター外周の間に糸をかけ、減速しつつ回転を伝える方式。
ベルト駆動方式に似ているが、糸は非常に細いため大きな駆動力を与えることができないが、逆にプラッターの慣性による定速回転を乱さないという方式。非常に重いプラッターを使うものが多く、起動に時間がかかるなど一般向けではなくマニア向け。かつては自作するマニアが結構いた。
直結駆動方式(ダイレクトドライブ
モーター軸がプラッターに直結する方式(プラッターがモーターの一部となった構造のものもある)。
モーター自体が 33 1/3 RPM などの超低速で回転する、減速機構がない方式である。高速回転に起因する振動や減速機構に起因する回転むらや経年劣化がない。しかしモーターが超低速で大トルクを発生し滑らかに回転しなくてはならないため、サーボ回路を用いた回転制御や極数の多い特殊なモーターが必要となる[注 1]ソニー TTS-4000 や松下電器テクニクス SP-10 が発売された 1970 年[注 2]当時は高級機のみだったが、日本では急速に低価格化が進み、 1970 年代中頃から 1980 年代にかけてレコードプレーヤー市場を席巻した。当初は DC モーターを採用するものと AC モーターを採用するものがあり[注 3]、前者は駆動回路が簡単で済み、高効率で振動や発熱が少なく大トルクを発生させやすい、後者はトルクむらが少なく滑らかなことが利点であるが、後に DC モーターが主流となった。コアレス DC モーターというコギング(トルクむらの一種)のない[注 4] DC モーターも使用されるようになったが、効率が低いため使いたがらないメーカーもあった。直結駆動方式の欠点として、突然の大きな音(ピアノの立ち上がりなど)でレコード盤と針の間の摩擦が増えて回転速度が落ち、サーボ回路が回転速度を上げようとするためにピッチが不自然に揺らぐといわれるが、制御設計が適切であれば杞憂である。

トーンアーム[編集]

カートリッジをレコード盤に対して適切な位置関係で保持しつつ再生する溝に追従してレコードの外周から内周に動かす機構で、針を溝に対して適切な力(針圧)で接触させる機構も有する。カートリッジ取り付け部と反対側の一端に設けた回転軸を中心にスイングする方式が主流で、アームを支えるベース部分とカートリッジを移動するためのアーム、カートリッジを取り付けるヘッドシェルと呼ばれる部分から構成される。アームとヘッドシェルの間をコネクタとしカートリッジ交換を容易にしたものがあり、オルトフォン社が提唱し後に共通規格となったヘッドシェルコネクタを備えた物をユニバーサル・トーンアームと呼ぶ。また、回転軸の替わりにレールを設け、アームが平行に移動するリニアトラッキング方式と称する方式もある(後述)。

針圧の調整にバネなどの能動的な圧力を使用する物をダイナミックバランス型、錘の調節により重力で針圧を得る物をスタティックバランス型と呼ぶ。

トーンアームで溝をトレースしつつ、針は溝の振動を拾うため、溝の内周への動きに相当する周波数をカートリッジで拾ってしまうとアームが溝をトレースできなくなる。レコード盤の反りに対しても対応が求められる。従って、カートリッジで再生できる周波数には下限があり、カンチレバーを含めた振動系のコンプライアンス(振動系の「追従性:柔らかさ」の指数)とアームのそれを適切に設定する必要がある。オイルによる制動機構、レゾナンスのキャンセル機構などの工夫をした製品も存在する。

スイングアーム方式[編集]

回転軸を中心に水平・垂直方向にスイングするアームにより針の盤面への接触と音溝への追従を行う。回転軸の抵抗を小さくすることは容易であるため、高級機から廉価品まで大多数の製品がこの方式である。

アームの形状は「S字」「J字」「ストレート」に大別される。J字やS字の形状はそのアームの形状により先端カートリッジ中心軸をトーンアーム中心軸に対して若干内側に向けるためである。ストレート型でもヘッドシェル部分が角度を持ってカートリッジを取付けるものが一般的である。この角度をオフセット角という。また、針先の位置はアーム支点からターンテーブル中心よりも遠くにオーバーハングする位置に調整され、オフセット角とともに後述するトラッキングエラーを軽減する働きがある。

トラッキングエラー
スイングするトーンアームによってカートリッジは音溝に対する相対角度がアームのスイングする角度分変化することになる。正しい角度との差をトラッキングエラー角という。
トラッキングエラーにより再生信号に歪みが生じるため前述のオフセット角とオーバーハングにより軽減するものが一般的である。より完全な対策として、カートリッジが常に音溝の接線方向を向くように専用の回転軸を持たせる方法も考案されている。
インサイドフォース
トーンアームにオフセット角が存在することにより、アームの支点と針先を結ぶ方向と針先が溝の摩擦により引っ張られる方向にズレが生じ、アームがターンテーブル内側、即ち中心方向へ引き寄せられる力が働く。この力をインサイドフォースと呼ぶ。トーンアームにはこれを打ち消す機構が備わっているものがあり、これをインサイドフォース・キャンセラーまたはアンチ・スケートと呼ぶ。

リニアトラッキング方式[編集]

回転軸の替わりにレールを設けアームをスライド、針先をレコードの中心に向かって直線的に平行移動させる方式である。タンジェンシャル方式、または日本語で「直線追従方式」ともいう。

スイングアーム方式に比較して、音溝に対する相対角度が変化せずに平行移動するためトラッキングエラーが無く、この対策のオーバーハングもオフセット角によるインサイドフォースの発生も無いという利点がある。

スライド移動部分をレコード盤面上に設置することにより、本来の意味のトーンアーム部分を比較的短くもしくは殆ど無くすことが出来る。これはスライド質量を減らし動きやすくする効果もある。

アームの移動方法はモーターにより能動的に駆動するものと、音溝によって受動的に移動するものに分けられる。

受動型
スライド移動に対する摩擦抵抗を十分に低く抑えることで針先が音溝に導かれる力でアームも共に移動する。摩擦抵抗を減らすために、特に高精度のベアリングや空気浮上式のエアベアリングなどが使用される。
能動型
センサーにより位置検出を行いアームを能動的に駆動するサーボ機構により音溝に追従する。アームが傾くことによる機械的スイッチによるものからレーザーセンサーによるものまでその精度は様々である。高精度になるほど理想的なトラッキング位置を保つことが出来るが、レコード盤の偏心に過敏に反応しないような調整も必要になる。

ピックアップ(カートリッジ)[編集]

カートリッジ:写真の物はカートリッジ本体 (1) がシェル (3) に取り付けられているがシェルと一体型の製品もある。(2) がカンチレバーとレコード針(スタイラスチップ)の部分。(4)がトーンアームとのコネクタ部分。(5)は指掛けである。

レコード表面の音溝の振幅を、電気信号に変換する機構「ピックアップ」を交換可能な形状に収めた装置である。フォノカートリッジともいう。音溝をトレースする「針先(スタイラスチップ)」と、これを支える「カンチレバー」、カンチレバー後端に置かれる発電コイル、信号出力用の接点(ピン)で構成される。なお、ステレオの場合は、出力ピンが4本 (L+/L-/R+/R-)、モノラルの場合は2本 (+/-) になる。ただし、普及型レコードプレーヤーなどで、カートリッジ部分がトーンアームと一体となっていて交換できないものもある。

一般的なカートリッジはEIA及びJISの規格に準拠した12.7mm(1/2インチ)間隔の取り付け穴を持ち、針圧等の調整可能な範囲内の組み合わせであればユーザーが自由にシェル、トーンアームに組み合わせて使用可能である。これに対し、1979年に当時の松下電器が提唱し同社のフルオートプレーヤーテクニクス SL-10に搭載したT4P規格は自重6g、針圧1.25gと規定されており異種のカートリッジに交換しても無調整で使用可能である。

スタイラスチップ(針先)は、ダイアモンドルビーサファイアなどの硬度の高い物質で作られており、断面の形状は、円形、楕円形、ラインコンタクト等がある。特にラインコンタクト1954年フランスのレコード・メーカーパテ・マルコーニ(Pathé-Marconi:現在のフランスEMI)で考案された「深さ方向に大きい曲率と、小さな実効針先曲率で音溝に接触させて諸特性を改善する」といった提案思想が、柴田憲男の4チャンネル針(別名「シバタ針」)で初めて実現化され、チャンネル・セパレーションや周波数特性で大幅な性能向上、およびスタイラスの長寿命化を実現した[1](4チャンネル方式(後述)では、30kHzをキャリアとするFM方式の差分信号を多重しているため、通常のレコードでは全く必要が無いような高周波まで伸びた特性が必要であるため)。

スタイラスチップの大きさはレコード盤の種類に合わせて適切なものを用いる。大きさによる種類では、SPレコード用(約3mil程度)、モノラルレコード用(約1mil程度)、ステレオレコード用(約0.7mil程度)の3種類がある[2][3]

スタイラスチップの寿命については、判定の基準として「曲率の変化、変化比を基準とする。再生歪みを基準とする。磨耗面の幅を基準とする。」方法が考えられるが、針先の形状や使用状況によって磨耗の状況が異なってくることから一概に「寿命は何時間程度」と定義するのは難しい[1]。レコード盤面に接触するため機械的な摩耗や摩擦熱などにより消耗・摩滅する。消耗が進んだ針の使用はレコード盤を傷める原因となるため、一定時間おきでの交換が推奨される。

カンチレバーは、先端にスタイラスチップを装着した細長い棒で、スタイラスチップと反対側に発電機構を備える。スタイラスチップをレコード音溝に押し付ける機能と、音溝の振幅に正確に追従し電気信号に変換する2つの機能を持つ重要な部品である。カンチレバーの形状には、無垢棒、アングル、パイプ、テーパー形状などがある[1]。カンチレバーのおもな材料は安価で加工が容易なアルミニュウムジュラルミンなどの軽合金が用いられるが、高級品には高度な加工技術を必要とするが音響特性に優れたボロンベリリウムが用いられる。

発電方式によって、MM (Moving Magnet) 型とMC (Moving Coil) 型に大きく分けられる。

MM型
カートリッジ内部に差し込まれたカンチレバー後端部分に永久磁石を取り付け、この永久磁石の振動によりコアの磁束が変化し、そこに巻かれたコイルに発生する起電力を再生出力とする方式。古くはマグネチック型と称した。
MC型
カートリッジ内部に差し込まれたカンチレバー後端部分にコイルを取り付け、その周囲に永久磁石を置く。磁界中のコイルの振動によりコイルに発生する起電力を再生出力とする方式。

MC型のほうが繊細で高音質とされる(製品によって傾向は異なる)。実際の製品では、MC型は出力電圧がMM型の1/10程度(0.2 - 0.5mV程度)のため、特に高出力を謳った製品でない限りはイコライザアンプ(後述)の前段に低雑音の前段増幅器(ヘッドアンプ)または昇圧トランスを必要とする。また、スタイラスチップが磨耗した場合に、構造上MM型がスタイラスチップとカンチレバーを含めた「レコード針」のみの交換であるものが多い(一部高級品に全体交換のものもあり)のに対し、MC型はカートリッジ全体の交換となるため、交換時の費用はMC型のほうが大きくなる。このように、コスト的にはMMに分があるため、一般用の製品は殆どMM型である。

かつてはMC型でも、発電機構そのものを交換針と一体化する形で針交換が出来る機種[注 5]があったが、電気接点が1ヶ所増加する欠点があり、その種類は少なかった。また、MM型でも放送局での使用を目的として、MC型との互換使用(MC用ヘッドアンプや昇圧トランスを接続したまま使用)を可能とした低出力型があった[注 6]

そのほか、安価なプレーヤー用には、圧電素子を用いるセラミックカートリッジやクリスタルカートリッジがある。これらは出力が大きく、変位比例型の特性をもつことからイコライザアンプを省略することができ、コストを下げられるという利点がある(但し、高音域の特性が劣ること、温度や湿度の影響が大きい、歪みが多いなどの問題点もあり、最近では一部の廉価な機器以外は全く用いられなくなった)。また、(ウェザーズやスタックス、東芝より商品化されていた)スタイラスの振動に伴う静電容量の変化を用いたコンデンサ型や、マグネットを固定し鉄片が振動するIM (Induced Magnet) 型、MI (Moving Iron) 型、VR (Variable Reluctance) 型も作られた。

1960年代末頃に、光電素子を用いた発電方式のカートリッジがトリオ・東芝・シャープから発売されていたが、短命に終わり久しく途絶えていた。2014年にDS Audioにより、1960~70年代当時には難しかった課題を現代の技術で克服した光電式カートリッジが復活した。

レコード針生産の縮小[編集]

2000年代からレコード針を生産するメーカーが激減し[注 7]、カートリッジや消耗品である交換針の入手は「ナガオカトレーディング[注 8]で生産・販売する互換針と自社ブランドのカートリッジや、放送局で使われるDENON製MC型カートリッジ「DL-103」[注 9]、など一部数機種[注 10]を除き困難になっていた。海外メーカーのDJ向け機種(といっても基本的に普通のものと変わらない)が楽器店などで販売される他は、マニア向け高級品の流通在庫が細々と一部のオーディオ専門店やインターネットオークションで販売されている状況となり、一時期、普及型のプレーヤーの交換針は入手が絶望的な状況とさえ言われた。現在、レコード専門店のアーピス・ジャパン[注 11]が、互換針・針一体カートリッジの製造・販売を行っている。なお、1970年代の一時期に生産されていた4チャンネル針(考案者の柴田憲男の名からシバタ針とよばれる[1])旧製品の単体交換針としては非常に入手困難である[注 12]。なお1982年並木精密宝石によってマイクロリッジ針という4チャンネル針が開発されたが、カートリッジメーカにおいては一部の高級品にしか採用されていない。

これらのことやレコードの操作には慣れが必要、保管に場所を取る、反してデジタルデータの呼び出しの手軽さなどから、かつてレコードを大量に保有していた放送局などでは、レコードを含むCD化されていない過去のアナログ音源をデジタル化する作業が進められている。また個人の場合でもデジタル化して保存するといった方策もあるが、音質の変化は避けられず、高価なアナログ機器にこだわるレコード愛好家も存在する。

その一方で、オーディオテクニカ・オルトフォンなど一部の主要メーカーや、一部の高級品専門メーカーでは2000年代以降もカートリッジの新機種を発売を継続している。

4チャンネル方式[編集]

1970年代前半の一時期に流行した4チャンネルステレオの方式の中に、差分信号を30kHzをキャリアとしてFM方式でレコードに多重記録する方式があり、通常のレコードにはほとんど記録されていない高周波・高振幅の音溝を低歪で再生することが要求される。これらのレコードを再生するには対応したカートリッジおよびレコード針が必要になる。

レーザーピックアップ[編集]

レーザー光により非接触で音溝を読み取る方式。1990年代に入るとレーザー光を利用してアナログレコードの再生を行うプレーヤーが登場した。基礎開発は米国シリコンバレーのベンチャー企業だったが、エルプがパテントを買い取り実用化した。各世界の放送局や図書館、又は愛好家が利用している。針を盤面に接触させないので磨耗がなく、多少痛んだ盤面や、保存状態が悪く、レコード針ではハムノイズや音とびしてしまうような大幅に反った盤でも再生が可能であり、回転数も任意に調整可能でLP・SP・ドーナツ盤の別なく再生可能であるメリットはあるが、レーザー光を透過してしまう青盤赤盤等を含むクリア盤は掛けられない。

筐体[編集]

ターンテーブルとトーンアームを保持する箱。外部からの振動による針飛びや、スピーカーからの音声が回帰することによるハウリングを防止するために、メカニズムをばね等で浮かす方式や、逆に重量のある頑丈な筐体にしっかり固定して振動を押さえ込む方式などがあり、また筐体底面の足には防振ゴムやばね機構などを複合したインシュレータを設置するなど様々な工夫がされる。

付属機構[編集]

  • トーンアームの上げ下げには、レコードの溝を傷つけたりカンチレバーにストレスを与えないように操作するのにコツが要るが、その扱いを少しでも容易にするためにアームリフターという機構が付属している事は通例である。また、モーター制御で針先を自動的にレコード盤の外周部や任意の場所(一部機種では任意の曲の頭)に降ろしたり、再生終了あるいは任意の時点でアームを上げて元の位置に戻す機構(オートリターン)を備えたプレーヤー(オートプレーヤー)も多い。アームに触れずに全ての操作が可能な機種を「フルオートプレーヤー」、オートリターンのみの機種を「セミオートプレーヤー」と呼ぶ。反してオート機能の付いていないプレーヤーを特に「マニュアルプレーヤー」と呼ぶ事もある。オーディオマニア用には、余計な機構は好まれないため、アームの上下だけを行うアームリフターのみを装備するのが普通である。
  • ほとんどのプレーヤーがターンテーブルの回転数を切り替える仕組みを持つが、回転数が電源周波数に影響される機種では、使用する地域によってモーター回転数を補正するための機構を持っていた。さらに、回転数の微調整(ピッチコントロール)が可能な機種もある。モーターに加える電圧や発振周波数を変化させることによるものが一般的だが、一部の機種には機械的に微調整を行うものもあった。
  • 1960年代後半まで(一部のメーカーでは1980年代まで)は複数のレコードを連続演奏することが可能な機種も存在した(オートチェンジャー、ジュークボックス)。一般家庭向けのオートチェンジャーでは特殊な長いスピンドルを装着してレコード(主にLPレコード、初期に45回転専用プレーヤーでは太いスピンドルを使用)を宙に浮かせるように重ね合わせ、1面の演奏が終了するごとに1枚ずつターンテーブル上に落下させる機構が用いられた。店舗内演奏用のジュークボックス(オートチェンジャー機能は必須)においてはアーム(トーンアームではない)によりシングルレコード(古くはSP盤)を交換する機構が用いられた。
  • 欧米ではかつて車載用レコードプレーヤーが売り出された。(モハメド・アリが所持していた。)

関連機器[編集]

フォノイコライザ[編集]

RIAA イコライザカーブ
青点線:録音時
赤線:再生時
SP 盤時代における各社の録音イコライザ特性
RIAA 規格統一前における各社の録音イコライザ特性

音溝のダイナミックレンジには限りがあるので、有効に活用するため周波数に対してエンファシスが施される。したがって再生時にはイコライザが必要となり、再生時にピックアップに接続されるイコライズ特性をもったアンプはフォノイコライザと呼ばれる。

現実のカッターヘッドは速度比例形だが、そのままの特性でカッティングすると周波数が低くなるほど振幅が大きくなり、カッターヘッドの振幅限界を超えやすい上に、隣接する音溝と接しないよう送りピッチを大きくする必要が生じて録音時間が短くなる。一方、周波数が高くなるほど振幅が小さくなり、高域の S/N が悪化する。そのためカッティング時に 6 dB/oct. で高域をブーストし、周波数に対してほぼ定振幅となるようにする。ただし完全に定振幅にすると高域で速度が大きくなりすぎ、物理的に音溝が切れなくなったり再生不可能な音溝ができたりするので、完全に定振幅ではなくやや高域を抑えた特性とするのがよい。各レコードレーベルともおおむねこのような特性でカッティングしていた。ところが、モノラル時代にはその特性が統一されておらず、再生する際にはレーベルに合わせてイコライザ特性の切り替えが必要だった。

しかし RCA が 1952 年から使い始めた "New Orthophonic" のイコライザ特性と同じものが翌 1953 年に RIAA イコライザ特性として推奨され、ステレオレコードは RIAA イコライザ特性に統一された。現在市販されているフォノイコライザも基本的にこの RIAA イコライザ特性である[注 13]

上述のように音溝は周波数に対してほぼ定振幅で切られているので、振幅形のピックアップを使えばイコライザの補正量は少なくて済む。 圧電型カートリッジは負荷インピーダンスを調整するだけでほぼイコライズできてしまう上に出力電圧が大きかったので、フォノイコライザが非常に簡単に済み、安価なポータブル電蓄などに賞用された。しかし高級品には用いられなかった。 コンデンサ型カートリッジや半導体型カートリッジなども振幅形で、やはりイコライザの補正量は少なくて済んだが、電源が必要だったり取り扱いがやや面倒だった。

これら振幅形のピックアップに標準となりうる素質がなかったかどうかは議論のあるところだが、史実としてコンポーネントステレオでは MI 型、 MM 型、 MC 型など、速度形の電磁型カートリッジが標準となり、アナログレコード時代のアンプはこれらに適したフォノイコライザを内蔵し、レコードプレーヤー専用の Phono 入力端子を備えるのが普通になった(Phono 入力端子とは内蔵フォノイコライザの入力端子そのものである)。

しかし音源がレコードから CD に移行すると、アンプからフォノイコライザが省略されるようになった。単体のフォノイコライザも現れたが、レコードプレーヤーがフォノイコライザを内蔵するようになった[注 14]。また、レコードプレーヤー側でデジタルデータ化まで行う USB 端子を備えたものも現れた。

MM 型系(MI 型なども含む)のカートリッジは負荷により高域特性が変化する。そのためフォノイコライザによっては入力抵抗を切り替えられるようになっているが、実は負荷容量によっても特性は変化し、入力容量を切り替えられるフォノイコライザは少ない。負荷抵抗は事実上フォノイコライザの入力抵抗で決まってしまうが、負荷容量はシールド線の容量が加わるためフォノイコライザの入力容量だけでは決まらない。負荷抵抗は MM 型では 47 kΩ, MC 型では 100 Ωが標準である。

MC 型カートリッジの出力は MM 型カートリッジの更に 1/10 以下であるため、 MM 型カートリッジ用のフォノイコライザでは入力端子の前に昇圧トランスもしくはヘッドアンプを接続する必要がある。 MM/MC 切替のあるフォノイコライザでは不要である。 なお、よく誤解されているが、昇圧トランスに書かれている一次側インピーダンス(10 Ωなど)は適合する MC 型カートリッジのインピーダンスであり、昇圧トランスの入力インピーダンスではない。昇圧トランスの入力インピーダンスはもっとずっと高い。

フォノイコライザは一般のオーディオ入力より高感度なので[注 15]、レコードプレーヤー以外の機器やフォノイコライザ内蔵プレーヤーをフォノイコライザに接続すると歪んだ大音量が出てスピーカーを破損する恐れがある。 フォノイコライザ内蔵プレーヤーであっても内蔵フォノイコライザをスルーできるものはフォノイコライザに接続できるが、間違えないよう注意しなければならない。

フォノイコライザを内蔵しないレコードプレーヤーからはほとんどの場合アース線が出ているが、これは保安のためのアースでなく雑音防止のためのものである。通常はフォノイコライザのアース端子に接続する。

主要メーカー[編集]

現行メーカー[編集]

  • DENON - 国内メーカーで最も豊富なラインナップを持つ。かつては放送局用機器の開発成果を生かした高級機を得意とした。
  • Luxman - 2011年に28年ぶりの新製品PD-171で再参入。2013年にはアームレス仕様のリファインモデルを追加。
  • TEAC - スピーカー搭載の一体型が中心であったが2014年より新製品TN-350,TN-570等を投入。米VPI社製プレーヤーの日本代理店業務も行う。
  • ONKYO - 2015年にPX-55F以来30年ぶりの新製品CP-1050で再参入。
  • Technics - 2016年にSL-1200GAEを限定発売すると発表。6年ぶりの再参入となる。
  • SPEC - 2010年設立の日本メーカー。アームレス仕様の糸ドライブGMP-70のほかダイレクトドライブ機も展開。
  • SONY - PS-LX300USBの1機種のみとなっていたが2016年に上位機PS-HX500を追加。
  • audio-technica - レコード針のブランドであるが、AT-PL300を展開している。
  • inMusic - ION AUDIOブランド、AKAIブランドで数機種を発売している。
  • THORENS - スイスの老舗音響機器メーカー。多彩なラインナップを持つ。
  • Pro-ject - 1991年に設立されたオーストリアのメーカー。
  • NOVAC - 元々はパソコン周辺機器メーカーだが、その一環としてデジタル変換機能つきプレーヤーの販売に参入した。
  • AudioComm - 低価格なスピーカー搭載の一体型システムを展開。
  • Pioneer DJ - 2014年に「PLX-1000」を発売、2016年には廉価モデルの「PLX-500」を投入。
  • JICO 日本精機宝石工業株式会社 -約2,200種類を日本国内で一貫生産しており、廃番になったレコード針の修理サービスを行っている。
  • とうしょう - ポータブルモデルやFM/AMチューナー・カセットデッキ・CDレコーダー併載モデルなど多彩なラインナップを展開。
  • 小泉成器 - レコードプレーヤー・CDプレーヤーUSBメモリーレコーダー・ワイドFM対応FMチューナー一体型ミニコンポ「SAD-9801」を2017年2月に発売。

撤退メーカーないしはブランド[編集]

  • Pioneer - PL-J2500は2015年のオンキヨーグループ(→オンキヨー&パイオニア)への事業譲渡に伴う引継ぎは行われずそのまま撤退。
  • Vestax - 2014年12月破産。ポータブル、リスニング用も展開していた。
  • KENWOOD - P-110が2013年に生産終了。前身のトリオ時代からCD全盛の1980年代末期まで精力的な開発を続けた。
  • marantz - TT-15S1が2013年に日本国内向け生産終了。海外では複数の機種が販売されている。
  • TDK Life on Record - 2011年にSP-XA2002で参入したものの2年余で生産終了。
  • EXEMODE - 2011年にエグゼモード単体による製品開発と販売事業を中止した。
  • Victor - AL-E350を最後に撤退したとみられる。1995年にHMVシリーズQL-V1を発売した。
  • YAMAHA - 1991年にGT-2000を限定復刻生産したのが最後とみられるが、ベスタクスの限定モデルにアームを供給したことがある。
  • MICRO - かつての名門ブランドであったが1990年代に入るとメーカーとしての活動は停滞。
  • MELCO - オーディオ機器メーカーとして創業、1978年に糸ドライブの3533を発売。後にPC周辺機器中心に。
  • Aurex - かつて東芝が主にピュアオーディオ機器に使用していたブランド。末期はケンウッドとの共同開発となっていた。その後、2016年春より同社の子会社の東芝エルイートレーディングから販売されるプレミアムゼネラルオーディオのブランドとして復活を果たした。
  • DIATONE - 三菱電機のオーディオブランド。縦型プレーヤーなどで存在感を放った。
  • Lo-D - 日立製作所のオーディオブランド。モーター、IC、物性工学など日立の総合力を活かした製品を展開。
  • OTTO - 三洋電機のオーディオブランド。1970年代には生活家電メーカーも音響機器に参入し独自のアイデアを競っていた。

脚注[編集]

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注釈
  1. ^ 直結駆動はオープンリールテープレコーダーなどでも採用されていたが、レコードプレーヤーは回転速度が桁違いに低いため難しい。
  2. ^ 前年の 1969 年に松下電器が SP-10 の発表を行ったが、 1970 年の製品の発売はソニー TTS-4000 の方が先。また同年にはデンオンも業務用の直結駆動方式「ステレオ円盤再生機」 DN-302F を発売している。なお、はるか以前の 1929 年にトーレンスが直結駆動のレコードプレーヤーの特許を取得しているが、当時はトランジスタの発明以前であり、ようやく五極管が登場した年では精密な回転速度制御など不可能で、トーレンスがベルト駆動に戻ってしまったのは当然といえる。
  3. ^ 松下電器テクニクス SP-10 は DC モーター、ソニー TTS-4000 、デンオン DN-302F は AC モーターであった。
  4. ^ コアレス DC モーターにはコギングトルクはないが、トルクむらがないわけではない。
  5. ^ オーディオテクニカ「AT-30E」、パイオニア「PN-33MC」など。
  6. ^ DENON「DL-107B」など。
  7. ^ 中堅以上ではかつての主要メーカーで、倒産した「ナガオカ」のOB社員によって1990年に再設立された「ナガオカトレーディング」、オーディオテクニカデノンデノン コンシューマー マーケティング)などが存在する程度。海外メーカー製輸入品や中小の高級品メーカーの製品を含めればこの限りではない。
  8. ^ 製造は関連会社のナガオカ(本社・山形県東根市)で請け負っている。
  9. ^ NHK放送技術研究所とDENONの共同開発品。
  10. ^ audio-technica社製のMC型、MM(VM=PATのオリジナル発電方式)型など。
  11. ^ アーピス・ジャパン
  12. ^ 2000年代以降の新製品では、中級以上の機種で2チャンネル用として使用される例が若干ある。
  13. ^ IEC 60098 によれば、 RIAA イコライザ特性の時定数 3180 μs, 318 μs, 75 μs (50 Hz, 500 Hz, 2122 Hz) に加えて、サブソニックを抑える目的で 7950 μs (20 Hz) の HPF が推奨されている。これは再生側のみ。
  14. ^ 微弱なピックアップ出力を外部に引き出さずに済むので、業務用レコードプレーヤーではアナログレコード時代から普通の形態である。
  15. ^ ピックアップの標準である MM 型カートリッジの出力電圧が低いためである。アナログ信号によるオーディオの一般相互接続の基準動作レベルは 200 mVRMS 程度なのに対して、 MM 型カートリッジ用フォノイコライザの基準動作入力レベルは 1 kHz において 2 mVRMS 程度であり、感度は約 100 倍 (+40 dB) である。
出典
  1. ^ a b c d 藤本正熙、柴田憲男・村岡輝雄・武藤幸一・佐田無修 『レコードとレコード・プレーヤー』 井上敏也、ラジオ技術社、1979年
  2. ^ JIS S8601『ディスクレコード』、JIS S8516『スタイラス』、IEC PUB 98
  3. ^ 海老沢徹 『フォノ・カートリッジ大全』 アイエー出版、東京、29頁。

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]