アメリカ合衆国のスポーツ
ここでは、主にアメリカ合衆国内のスポーツ事情について記述する。競技そのものに関する詳細な記述に関しては個別の項目を参照の事。
事情
アメリカ合衆国におけるスポーツは、各競技団体によって運営されているプロスポーツや大学などのカレッジスポーツを中心に行われている。特に、アメリカンフットボール・野球・バスケットボール・アイスホッケーはいずれもアメリカ国内では人気が高い競技である。これら4つの競技の頂点に立つプロスポーツリーグの、NFL(アメリカンフットボール)・MLB(野球)・NBA(バスケットボール)・NHL(アイスホッケー)は、俗に「北米4大プロスポーツ(リーグ)」と称されている。
70年代までは、国内の音楽文化と同様に、これらのスポーツも「人種」や「世代」、「階級」ごとに区切って、各々の階層に好まれているスポーツを分別化する事ができたが、アフリカ系アメリカ人への差別が希薄になった事やメキシコなどから来たヒスパニック系などといった新しい人種の移民が急激に増加した今日では、国内の音楽文化と同様にあまり意味をなさなくなっている。
アメリカ合衆国における学生スポーツの大きな特徴として、ほとんどの選手が高校時代までは2つから3つの競技を掛け持ちすることが挙げられ、1つの競技に専念するのはプロ入り後、もしくは大学進学後からである。これはアメリカの部活動の形態が日本の形態とは少々異なっているためで、早くから1つの競技に専念するのが当たり前の日本とは対照的である。なお、高校で優秀な成績を収めた選手はドラフトでプロスポーツチームなどに指名されて「プロスポーツ選手」としての道を歩むか、または国内の充実した奨学金制度を利用しながら、「スポーツ奨学生」として大学へ進学する。複数の競技で優秀な成績を残して、それぞれの競技のドラフトで重複指名される選手も珍しくない。
人気スポーツの世論調査
2008年12月、アメリカ大手世論調査会社の「ギャラップ」が公表した世論調査によると、一番人気スポーツは圧倒的にアメリカンフットボール(41%)で2位が野球(10%)であった[1]。2012年1月、大手世論調査会社の「ハリス・インタラクティブ」は最新の人気スポーツの世論調査結果を公表した[2]。上位の順位は以下の通りである。
ハリス・インタラクティブ (2012年1月)
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順位 | スポーツ | 最も好きなスポーツ | |
---|---|---|---|
1 | プロアメリカンフットボール | ||
2 | 野球 | ||
2 | 大学アメリカンフットボール | ||
4 | モータースポーツ | ||
5 | 男子プロバスケットボール | ||
5 | 男子大学バスケットボール | ||
5 | アイスホッケー |
ギャラップ (2008年12月)
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順位 | スポーツ | 最も観戦するのが好きなスポーツ | |
---|---|---|---|
1 | アメリカンフットボール | ||
2 | 野球 | ||
3 | バスケットボール | ||
4 | アイスホッケー | ||
5 | サッカー | ||
5 | モータースポーツ |
特徴
オリンピック
アメリカにとって、オリンピックはさまざまな意味で昔から重要なスポーツ大会である。第二次世界大戦終結後からソ連崩壊前までに繰り広げられていた旧共産国圏(ソビエト連邦など)との五輪でのメダル争奪戦は互いにドーピングに手を染めるほどに熾烈さを極めた。しかし、ソビエト連邦が崩壊し、旧共産国圏の民主化が進んだ現在でも、メダル獲得数は日本などの他国と比べると中華人民共和国と共に群を抜いている。ちなみに、アメリカがオリンピックで毎回数多くメダルを獲得しているのが水泳の競泳や陸上競技のトラック競技などである。
また、アメリカはテレビ放映権でも他国よりも群を抜いた額の放映権料を支払っている。2008年の北京オリンピックでは、アメリカ3大ネットワークの一つであるNBCは国際オリンピック委員会(IOC)に約8億9400万ドル(約1050億円)を支払ったといわれている[3]。その影響で、水泳や陸上競技の決勝が行われる時間帯が開催国である中華人民共和国の現地時間ではなく、アメリカ本土のプライムタイム(日本時間では午前10時頃)に合わせられるという事態も起きた。
運営
チーム平均の経済規模 (単位:100万ドル)
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リーグ | 資産価値 | 収入 | 営業利益 | |
NFL | 1,022 | 250 | 33.4 | |
MLB | 522 | 204 | 16.4 | |
NBA | 368 | 126 | 6.0 | |
NHL | 228 | 97 | 5.3 | |
出典: フォーブス(2011年3月現在)[4][5][6][7] |
球団の主な収入として、試合の入場料収入・テレビやラジオなどの放映権料収入・ロゴ入りユニフォームやグッズなどのロイヤリティー収入・球場の看板のスポンサー料や駐車場、イベント収入などの雑収入の4つに分けられ、この中で想像以上に大きなものが、テレビやラジオなどの放映権料収入である。
たとえば、MLBにおける試合中継の場合、アメリカ3大ネットワークやスポーツ専門チャンネルといった全国放送の試合中継とケーブルテレビといったローカル放送の試合中継の2つに大きく分けられる。このうち、全国放送の試合中継はMLB機構全体の収入になり、傘下の全球団へ均等に分配されるが、ローカル放送局の収入はその球団独自の収入になるので、ニューヨーク・ヤンキースやボストン・レッドソックスの様なMLB屈指の人気球団とその他の球団の間には大きな収入格差が生まれている。また、2000年代に入ってからは「ヤンキース・エンターティメント・スポーツ」 (YES) などといった球団独自のケーブルテレビ局が財政に余裕のある球団間で次々と設立されて球団間の収入格差はますます拡大しているが、この事はMLB以外のメジャープロスポーツリーグでも当てはまる。そこで、球団間の格差を出来る限りなくすための処置として、各メジャープロスポーツリーグの機構はドラフト制度やサラリーキャップなどに代表される徹底したリーグの戦力均衡策を行っている。
ところで、アメリカのプロスポーツ界ではエクスパッションによる新規参入や球団売買、球団の本拠地移転、同じ競技の球団同士による合併などといった事が日本よりも盛んである。これは、各球団の財政的な事情の他に、プロスポーツリーグ自体の誕生や消滅が珍しくない事と、アメリカ国内では企業家が国内外のプロスポーツチーム、特に4大メジャープロスポーツのリーグに在籍する球団を一球団でも所有する事が企業家として一種の成功した証となるが、それらのリーグに一からチームを作り上げて新規参入する事はエクスパッションや膨大な球団設立経費などといった様々な参入障壁があるので、少しでも参入障壁を減らすために企業家の間ではすでにリーグに在籍している球団自体を双方で売買する手法が最も多く使われていることが影響している。オーナーの中には、一人で異なる4大メジャープロスポーツリーグの球団を一球団ずつ所有する企業家も少なからずいる。ただし、幾らお金を持っていてもそのリーグのオーナー会議で承認されなければその球団のオーナーにはなれない。また、エクスパッションに関しては、制限を課す事で新規参入ができる枠や球団自体に高額な付加価値が付き、リーグを運営する機構などの売却する側は莫大な金銭の収入を手にする事ができる。
その一方で、アメリカ国内の都市間でもプロスポーツチームを所有する事が都市としての一種のステータスであり、地元自治体が公金でチームへの援助をする事やスタジアムの建設を肩代わりする事、税制面で優遇する事は普通である。ただ、その一方で税制の新たな創設や税金の値上げなどといった新たな住民負担が発生するために地元住民の反対運動が巻き起こる事もあり、地元自治体と球団間の交渉が不調に終わってしまう事も多いので、結果的に本拠地移転などを余儀なくされる事も少なくない。
海外展開
1990年代後半以降、アメリカ国内にある各種スポーツ団体、特に北米4大プロスポーツやその傘下にある球団を中心に様々な形でのアジアやヨーロッパへの進出が活発に行われている。
なお、日本ではNHKや各民間放送局、有料放送のスカパー!やWOWOWを中心に試合中継や関連番組が放送されているが、その中で最も成功したアメリカ国内のスポーツ団体はMLBである。
待遇
アメリカ国内の芸能界や実業界と同様に、プロスポーツ界でもいわゆる「アメリカンドリーム」という言葉が当てはまる。これは、メジャープロスポーツの有名選手にまでなると、球団から支払われる年俸の他に個人単位で数社の企業とスポンサー契約を結ぶ事が多いために1年間の収入が数十億円にまで達するからである。また、選手と球団間のオプション契約や年俸額の交渉を行う代理人の存在も大きい。ただ、球団運営の大きな支障を球団に対しては選手の高額な年俸や待遇を要求する事が当然であり、代理人の存在は決して良いことばかりではない。
アメリカのプロスポーツ界は引退後の年金制度が日本と比較してもかなり充実しているので、選手は現役時代にあまり良い成績を残していなくても、基本的に引退後の生活にはあまり困る事はなく[8]、選手によっては一般社会に戻って大学へ進学することもある。また、選手は現役時代から慈善活動を行う事が当然なので、一般の人々からは現役引退をした後でも尊敬されている。
労働争議
アメリカ国内の一般社会と同様に、スポーツ界でも選手達は競技団体ごとに所属球団を超えて選手会(労働団体)を組織している。主に選手の待遇改善や制度の是非を主張するが、経営者側などとの交渉が決裂した場合は一般社会と同様にストライキを決行する事がある。しかし、経営者側などもそれらへの対抗処置として試合会場をロックアウトする事があるが[9]、こういった争議にはスポンサーやファンが離れるといった弊害も少なからず存在する。
ドーピング問題
現在、アメリカのスポーツ界で最も深刻なのがプロやアマ選手のドーピング問題である。たとえば、2007年12月14日にメジャーリーグベースボール機構のバド・セリグコミッショナーから選手のドーピングに関する調査責任者の就任任命を受け調査を進めていた、ジョージ・J・ミッチェル元上院議員による調査報告書が発表され、その中でロジャー・クレメンス、バリー・ボンズ、ゲイリー・シェフィールド、ミゲル・テハダ、エリック・ガニエといった有名選手の疑惑が取り上げられた。ただ、ドーピング問題に関してはファンも含めてアメリカ国内では寛容的な考え方のため、なかなか表沙汰にならない事が多い。ステロイド剤などの禁止薬物は主に隣国のメキシコから「栄養補助食品」という名目でアメリカ国内に輸入する方法が一般的である[10]。
競技
アメリカンフットボール
ラグビーから派生したアメリカンフットボールは、アメリカ国内や周辺諸国では単にフットボールと呼称し、地域によって多少の違いはあるものの、現在アメリカ国内で最も人気のあるスポーツである[11]。フットボール選手はアメリカ社会の象徴的存在とされる(詳細は「ジョック」の項目を参照)。
現在、アメリカン・フットボール・カンファレンス (AFC) とナショナル・フットボール・カンファレンス (NFC) の2つのカンファレンスからなるNFL(ナショナル・フットボール・リーグ)は、アメリカ国内にあるMLBやNBAなどといった他のプロスポーツリーグを遥かにしのぐ熱狂的な盛り上がりを見せる。NFLはその高い人気の割りに試合数が少ない(1チームにつき1シーズン16試合)ことからテレビ放映権には非常に高額な値段がついており、収益は4大プロリーグ中トップである。サラリーキャップ制や完全ウェーバー制によるドラフトをいち早く実現させ、戦力均衡を可能な限り追求していることが、人気拡大の最大の要因となった[12]。
NFLはAFC、NFCともに16チームずつが参加し、9月のシーズン開幕から、翌年2月のスーパーボウル、プロボウルまで行われる。スーパーボウルはアメリカ最大のスポーツイベントであり、近年は毎年40%以上の驚異的な高視聴率を記録している。アメリカの歴代テレビ番組の視聴者数トップ10をすべてスーパーボウルが独占しており、CM料金もアメリカのテレビ番組で最も高いことで知られている。
またアマチュアレベルでも非常に盛んであり、男子の高校生と大学生の競技人口が最も多いスポーツである[13][14]。特にカレッジフットボールは、NBAやNHLといった他競技のプロリーグをも凌ぐ人気があるとされる[11]。カレッジフットボールでは各大学が奨学金を用意して全国の高校から有名選手をスカウトする。また、各大学はプロ顔負けの収容人数を有するスタジアムを保有しており[15]、プロさながらの雰囲気の中行われる。1月のBCSナショナル・チャンピオンシップ・ゲームは全米一決定戦として行われており、全米視聴率はワールドシリーズやNBAファイナルをも超えている。別に屋内で行われるアリーナフットボールも盛んである。
野球
野球は日本、韓国、台湾といった東アジア諸国やキューバ、ドミニカ共和国といったカリブ海諸国などでもなじみ深い球技である。1970年代に一番人気スポーツの座をアメリカンフットボールに譲った形になったものの[16]、今日でもバスケットボールと共に高い人気を得ている競技である。また、野球は歴史的にアメリカ合衆国の“国民的娯楽” (National Pastime/American Pastime) と称されてきた[17]。
現在、アメリカ国内の野球リーグには、主にナショナル・リーグとアメリカン・リーグからなるメジャーリーグベースボール (MLB) とそれらの傘下にあるマイナーリーグ、更には約8つに分かれている独立リーグの2種類の野球リーグが存在する。MLBは4月のシーズン開幕からアメリカン・リーグ14球団とナショナル・リーグ16球団の両リーグ合計30球団でレギュラーシーズンが争われ、10月に行われるポストシーズンのワールドシリーズは各リーグの優勝球団同士が激突し、7回戦制で先に4勝先取で優勝が決められる。
なお、アメリカンフットボールやバスケットボールと違って、カレッジスポーツとしては大衆的な人気を得ていないが、アメリカ国内に200球団以上は存在すると言われているマイナーリーグの球団が各地域の野球ファンの受け皿となっている。ちなみに、MLBは年間で7,500万人以上の観客を動員する。試合数の違いなどはあるものの、これは世界中のありとあらゆるプロスポーツの中でも最大の観客動員数である。ちなみに、2007年度のMLB(162試合)における年間観客動員数は史上最多となる7,950万3,175人[18]で、マイナーリーグと合計した試合の観客動員数は約1億人を超える[19]。 近年ではアメリカ野球界の急激な国際化によって、ヒスパニック系の移民をルーツに持つ選手やカリブ海諸国出身の選手が多くなりつつある。また、日本人選手についても1964年に村上雅則がサンフランシスコ・ジャイアンツに所属して日本人初となるメジャーリーガーとなったが、後に続く者はなかなか出なかった。しかし、1995年に野茂英雄が31年ぶりに渡米してある一定の成功を収めると、その後もイチローや松井秀喜、松坂大輔などといったNPB球団所属の人気プロ野球選手を中心に現在でも日本人選手のメジャーリーグ挑戦が続いている。MLB機構もこういった現状を踏まえた上で独自の「グローバル戦略」を策定し、2006年3月にはMLB機構主催で野球の国別代表チームによる国際大会であるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の第1回大会をアメリカ合衆国で開催した。
バスケットボール
バスケットボールはアメリカ国内で、カナダ人のジェームズ・ネイスミスによって考案された。
アメリカ国内では、1946年に男子プロバスケットボールリーグBAAが創設されて、3年後にNBLと合併し、現在のイースタン・カンファレンスとウェスタン・カンファレンスからなるNBA(ナショナル・バスケットボール・アソシエーション)が誕生した。その後、1967年にはNBAに対抗する形でABAが設立され地位を脅かしたが、1976年にABAは消滅し、NBAは現在も世界最高峰のリーグとして君臨し続けている。
なお、アメリカ国内ではNBA、NCAAバスケットボールは人気で、NBAは4月下旬からプレーオフに入り、優勝決定戦であるNBAファイナルは6月に行われる。NCAAは全米一を決めるトーナメント戦もあり、「3月の狂乱」とも呼ばれている。また、1992年にはNBA選手が参加したドリームチームがバルセロナオリンピックを席巻し、1997年には女子リーグWNBAが設立された。
元々はアフリカ系アメリカ人や富裕層が好むとされていた。マイケル・ジョーダン(シカゴ・ブルズ)の全盛期はNBAブームで、MLBを凌ぐ人気を得た時期もあった。しかし、ジョーダン引退後は人気が伸び悩み、一時はNBAファイナルの視聴率もジョーダン全盛期の1/3程度にまで落ち込んだ。人気低迷の主な原因としては、全米規模のスター選手の不在が挙げられていた。しかし、近年ではレブロン・ジェームズに代表される若手のスター選手が続々と現れており、NBA人気も回復傾向にある。2010年のNBAファイナル第7戦は、ジョーダン引退以降では最高の視聴率を記録した。ちなみに、国内外の若年層の間では1990年代に世界的な形で広まったヒップホップ文化の影響で、NBA各球団のレプリカユニフォームやチームロゴなどをあしらった帽子やTシャツはストリートファッションの一部として広く認知されている。
アイスホッケー
イースタン・カンファレンスとウェスタン・カンファレンスからなるNHL(ナショナル・ホッケー・リーグ)は、先行して存在したカナダ・ナショナル・ホッケー協会 (NHA) における幾度とない論争の末、1917年にカナダで設立され、その後は幾度となく繰り返された引き抜き合戦やエクスパッション(球団拡張)を経て、現在の形に至る。
アメリカへの進出後は、アメリカ国内でも一時期はアイスホッケー人気が高まったが、1992年から2005年までの間に労使間対立によるストライキが数回ほど発生した事(2004 - 2005シーズンに至っては、初めて全試合が中止)による人気低下もあり、NHLをNFLやMLB、NBAと一緒に人気競技団体のひとつとして数える事に対してはアメリカ国内で賛否がある。 また、NHLの選手に占めるアメリカ人の割合は2割程度と低く、NHLのチームの大多数はカナダ人と欧州出身選手で占められている。ミネソタ州やミシガン州、マサチューセッツ州などの中西部や東部では人気スポーツである一方、南部や西部ではそれほど盛んではない。
サッカー
アメリカ国内では、ヨーロッパでサッカーを意味する「フットボール」という本来の呼称は「アメリカンフットボール」を指すため、日本と同様に「サッカー」の呼称が用いられている。
元々、アメリカ国内にサッカーが伝わってきたのは、アメリカの東海岸(ニューイングランド地方)にサッカーの原型だったものが伝わったのが最初である。その後、1863年にイギリスのロンドンで統一ルールが作られて今の「サッカー」ができあがると、いち早くアメリカ国内にも伝わり、大学生を中心に広まった。ところが、1874年にボストンのハーバード大学がカナダのモントリオールにあるマギル大学との2試合を1年目に行なっただけで2年目からはラグビーへと競技が変わり、そのラグビーに次々と独自の手を加えていきながら競技を行なった。それがきっかけとなって、アメリカ国内にある他の大学でもその独自に手を加えたラグビーが次第に広まり、大学生の間では徐々にサッカーの試合が行われなくなった。
アメリカ国内における最初のサッカーブームは1920年代であった。1890年代には国内で最初のプロ化への試みが行われ、1922年に始まったASLはヨーロッパからの移民急増と共に隆盛を極めた。ただ、その後はアメリカ国内の愛国心の高まりで次第に「アメリカ的なもの」が好まれるようになり、外来文化のサッカーは1940年代以降には衰退の一途をたどる事となる。
ところが、1966年にFIFAワールドカップで史上初めての衛星中継が行われ、それがアメリカ国内で話題となり、それまで衰退の一途をたどっていたサッカーに再びアメリカ国民の注目が集まる事となる。そして、翌年の1967年に北米サッカーリーグ(NASL)が発足され、1970年代に人気のピ-クを迎えたが、そもそもサッカー文化の基盤がほとんどなかったため1984年限りで消滅した。その後は、長らくセミプロ時代が続く事となる[20]。
1994年、自国での1994 FIFAワールドカップ開催以降はメキシコなどからのヒスパニック系移民を中心に少しずつ人気が高まり、1996年には久々のプロリーグとなるメジャーリーグサッカー(MLS)が発足した。しかし、現在でも国内のサッカー人気は依然として男子サッカーよりも女子サッカーに支えられているところが大きいが、男女のサッカーアメリカ合衆国代表は常にFIFAランキング内では上位につけており、サッカーの隠れた強豪国と恐れられている。ただ、他の国内競技と比べると競技内の奨学金の制度もあまり整備されておらず、サッカー競技そのものに対する偏見も根強い。そのため、アメリカ国内におけるサッカー人気は世界的に見ても低めで、世界からは長らく「サッカー不毛の地」と揶揄されてきた。なお、近年では2007年にデビッド・ベッカムがレアル・マドリードからMLSのロサンゼルス・ギャラクシーへ移籍した事が日本でも話題になった。
近年はFIFAワールドカップで高視聴率を獲得するようになってきている。2010年7月に行われたワールドカップ南アフリカ大会決勝戦の国内視聴者数は2430万人であり[21]、同年のNCAA男子バスケットボールトーナメント決勝(2390万人)[22]、MLBワールドシリーズ第5戦(1490万人)[23]、NHLスタンレーカップ第6戦(828万人)[24]よりも多くの視聴者数を獲得している。一方で、同年11月に行われたMLSカップの視聴者数は74万人であり、国内リーグの人気は依然発展途上である[25]。
バレーボール
バレーボールはアメリカ合衆国で、ウィリアム・G・モーガンによって考案された。なお、バレーボールのアメリカ代表は男女共に強豪チームのひとつである。
格闘技
昔から、アメリカでは興行としてボクシングやプロレスを中心に多岐にわたる格闘技イベントが盛んに行われてきた。また、有名なプロレス団体のWWEに至っては1999年からナスダック(現在はニューヨーク証券取引所)に株式を上場している。なお、アメリカでは総合格闘技もUFCなどを中心に盛んである。 高校での男子アマチュアレスリングが盛んである。女子の競技者も増えている。
モータースポーツ
アメリカでは、モータースポーツというと主にインディ500やNASCARの事を指す。
オープンホイール(フォーミュラカー)によるシリーズは、現在はインディ500を含むインディカー・シリーズ(IRL)を頂点とし、下部カテゴリーとしてインディ・ライツなどが存在する。なおIRLは一時日本にも進出し、インディジャパン300としてツインリンクもてぎで開催されていたが、2011年を最後に撤退した。
NASCARはスプリントカップシリーズを頂点とし、ネイションワイド・シリーズ、キャンピング・ワールド・トラック・シリーズを含めた通称「3大カップ戦」、さらにその下位に当たる地域ごとのカテゴリーなど非常に多くのレースを抱えており、それ単体で若手ドライバー育成からトップカテゴリーまでのピラミッド構造を持っている。
それ以外にもドラッグレースや、パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムに代表されるヒルクライムレース、二輪ではAMAスーパークロスなどのモトクロス競技など、アメリカ独自の人気カテゴリーが多数存在しており、ヨーロッパ・日本とはまた別の独特の世界観を構築している。
ただヨーロッパとの交流がないわけではなく、F1アメリカグランプリや、MotoGPなどの開催が行われているほか(F1は2007年を最後に開催が途絶えているが、2012年より復活予定)、ル・マン24時間レースとの交流を主軸としたアメリカン・ル・マン・シリーズなどのシリーズ戦も存在する。また最近は日本からドリフト走行人気が主に西海岸を中心に波及しており、D1グランプリのシリーズ戦が開催されたり、独自のシリーズとしてフォーミュラ・ドリフトが開催されたりしている。
ゴルフ
アメリカ国内では、富裕層を中心に盛んに行われているスポーツである。また、アメリカ国内を舞台にマスターズ・トーナメントや全米女子プロゴルフ選手権などといった世界的にメジャーな大会が数多く行われている。なお、世界的にも有名なゴルフ選手であるアフリカ系アメリカ人のタイガー・ウッズは、メジャータイトルで12勝を挙げており、彼の年収はツアー大会で獲得する賞金総額とスポーツメーカーなどのライセンス契約による収入なども含めると、全米のプロスポーツ選手の中でも桁違いの金額である。
チアリーダー
アメリカ国内では、4大メジャースポーツリーグのハーフタイムや大学の部活動を中心にして盛んに行われている。
自転車競技
アメリカ合衆国では、後述する6日間レースのルーツとなる、賞金つきの個人タイムトライアルレース・1000マイルレースがイギリスから伝わったことがきっかけとなり、19世紀末期にトラックレースが人気を博し、その影響もあって、1893年に第1回世界選手権自転車競技大会がシカゴで開催された他、1899年には、ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンにおいて、2人がペアを組んで覇を競う、6日間レースを誕生させた。なお、2人がペアを組んで覇を競うレースはマディソン(フランスではアメリカンチームレースと呼ばれている)として後に独立した形式でも行われるようになり、2000年のシドニーオリンピックからオリンピック種目としても正式採用された。しかし、6日間レースは1929年の世界恐慌が端緒となって、1930年代あたりから急速に人気が低落し、6日間レース発祥国でありながら、アメリカ国内における同レースの開催は、1960年代初頭には全て姿を消してしまった。これが影響して長らく、当国では自転車競技に対する関心は高まらなかった。
当国で自転車競技熱が再燃しだしたのは、1970年代前半にBMX、同後半にマウンテンバイク(MTB)が当国発祥で誕生したことに深く起因している。双方とも、『遊び心』がきっかけとなって後に競技化されたものであるが、その人気はまたたく間に全米、そして全世界へと広がり、1992年にはMTBが、2008年にはBMXがそれぞれオリンピック種目となるに至った。
一方、長らく盛んには行なわれてこなかったロードレースだが、1980年代前半にフランス人のシリル・ギマールとベルナール・イノーによって才能を見出され、欧州国籍以外の選手として初めて1986年のツール・ド・フランスを制覇したグレッグ・レモンや、1980年のレークプラシッドオリンピックのスピードスケートで五種目全冠制覇を達成したエリック・ハイデンの転身などもあって脚光を浴びるようになった。そして1999年から2005年まで、ツール・ド・フランス総合7連覇を達成したランス・アームストロングは、癌を克服したスポーツ選手としても脚光を浴び、アメリカ自転車競技史上最も著名な選手である。
サーフィン
アメリカ国内では、ハワイ州などの沿岸部を中心に行われている。
アームレスリング
アームレスリングは、専用の競技台で、世界共通の厳格なルールのもと行われる腕相撲に似た競技のことで、「卓上の格闘技」とも呼ばれる。また、アームレスリングの選手は「アームレスラー」と呼ばれる。アメリカ、ロシアを中心に大規模な大会が開かれ、入賞者に賞金や豪華な賞品がスポンサーより与えられる大会もある。また毎年各国で世界大会も開催され、世界中の『腕自慢』が集まり、迫力のある熱戦を繰り広げている。
上述にもある通り、アメリカ国内では各地で盛んに行われている。
競馬
アメリカ国内で競馬は非常に盛んで、中でもサラブレッドの生産頭数は世界一である。また、ケンタッキーダービーなどは世界でも有名なダービーのひとつである。
その他
関連項目
- エクスパンション
- エクスパンション・ドラフト
- 選手分配ドラフト
- サラリーキャップ
- NBAサラリーキャップ
- ドラフト会議
- ドラフト外入団
- NFLドラフト
- ドラフト会議 (MLB)
- NBAドラフト
- NHLドラフト
- ドラフト会議 (MLS)
- フリーエージェント
- 南アメリカのスポーツ
- ヨーロッパのスポーツ
- アジアのスポーツ
- オセアニアのスポーツ
脚注
- ^ ギャラップ社の世論調査 好きなスポーツ 1位アメリカンフットボール(41%) 2位野球(10%) 3位バスケットボール(9%) 4位アイスホッケー(4%)
- ^ ハリス・インタラクティブによるアメリカでの人気スポーツの世論調査(2012年1月公表)
- ^ 「北京五輪:水泳競技とスポンサーをめぐって」 サーチナ
- ^ Forbes: The Business of Football (2010年8月)
- ^ Forbes: The Business of Baseball (2011年3月)
- ^ Forbes: The Business of Basketball (2011年1月)
- ^ Forbes: The Business of Hockey (2010年12月)
- ^ 「アメリカのスポーツ選手ってなんであんなに高給取りなの?」 R25
- ^ 「NHLがロックアウトへ 新労使協定交渉が難航」 2004年9月16日 47NEWS
- ^ Dr.高橋正人のドーピング相談室「サプリメントの考え方」
- ^ a b Harris_Poll_2009_01_27.pdf
- ^ 格差の徹底排除で成長するNFL(上) 日経ビジネス オンライン
- ^ Participation in High School Athletic Programs by Sex
- ^ Participation in NCAA Sports by Sex: 2007 to 200
- ^ 最大のスタジアムであるミシガン・スタジアムは107,501人収容
- ^ 過去の世論調査によるアメリカでの人気スポーツ
- ^ 米大リーグが4年連続で史上最多記録を更新「国民的娯楽が人気を保ち続けるのを喜ばしく思う」東京新聞
- ^ 「観客動員史上2位 ナ・リーグは記録更新」スポニチ Sonichi Anex 2008年10月02日
- ^ ちなみに、同年のNBA(82試合)は約2,159万人、NHL(82試合)は約2,085万人、NFL(16試合)は約1,730万人である
- ^ 大住良之「33. アメリカ・サッカー研究」 NIKKEI NET(日経ネット)
- ^ World Cup Final Nets Top U.S. Soccer Audience Ever: 24.3 Million
- ^ David Barron(2010-04-06), Duke, Butler draws highest NCAA TV rating since 1997, Houston Chronicle(英語), 2010年12月3日閲覧
- ^ 2010 MLB Postseason Numbers Game
- ^ Game 6 gets best ratings since '74, Associated Press(英語), 2010年12月3日閲覧
- ^ 松尾理也(2010-12-03), 【W杯招致】有力候補の米国に「ノー」, MSN産経ニュース, 2010年12月3日閲覧