ロードレース (自転車競技)
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自転車競技におけるロードレース (road race) とは、主に舗装された道路をロードバイクで走り、ゴールの順番や所要時間を争う競技。走る距離は最低でも数十km、プロが参加するレースでは1日で200km以上走る場合も多い。どのレースでも個々の成績を争うため、基本的には個人競技であるが、実業団やプロレベルのチームが参加するレースでは、複数人のメンバーが役割を分担して、チームが定めた目標達成のために走るため、実際にはほとんどの場合、団体競技の様相を呈するのが特徴である。
日本では馴染みが薄いが、ヨーロッパではサッカーに次ぐ人気競技であり、世界的に見ても絶大な人気を誇るスポーツである。
目次 |
[編集] 概要
ロードレースの最も単純な形態はワンデイレース(1日で終了するレース)で、「個人」が、「ゴールの順番を競う」というものであり、これはアマチュアレースや小規模なレースでよく見られる形態である。
しかし、プロのレースや、アマチュアのレースの中で有名なものでは、「チーム」が「メンバーの誰かを勝たせるために走る」ことが多い。
さらにステージレース(複数日行われるレース)では「時に個人、時にチーム」で、「その日のゴールの着順」「最終的な所要時間など各種の総合成績」などいくつかの目的のために走ることになる。
例えば最も有名なステージレースである「ツール・ド・フランス」では、勝利を争う主体は「個人」及び「集団(チーム)」であり、争われるのは「ステージごとの着順」と「最終的な所用時間」及び「最終的な獲得ポイント」であり、
- 個人総合優勝(レース全体を通しての走破タイムで争われる)
- ステージ優勝(ステージごとの着順で争われる)
- チーム総合優勝(レース全体を通してのチームの走破タイムで争われる)
- ポイント賞(レース全体を通してのスプリントポイント獲得数で争われる)
- 山岳賞(レース全体を通しての山岳ポイントの獲得数で争われる)
- 新人賞(開催年に25歳以下の誕生日を迎える選手限定でレース全体を通しての走破タイムで争われる)
という六つの賞をめぐる争いが展開される。
さらに、たとえ勝利につながらなくても、序盤から積極的に先頭を走るなど印象深い走りを見せた選手には「敢闘賞」が与えられるうえ、メディアへの露出が多い大レースで見せ場を作ることは、チームにとっても格好のスポンサー宣伝になるため、たとえ上記六つのタイトルに絡まない選手やチームであっても、時に有力な選手やチーム以上に本気の走りを見せる日がある。
このように大きなレースでは全ての選手が優勝目指して走るのではなく、個人やチーム単位でいくつかの戦略目標(例えばAは山岳賞を獲りにいく。そのためにチームメイトのBとCが中心となってサポートする。またDは普段はAのサポートを務めるが、別チームのエースでAのライバルと見られているEが抜け出した場合は、それについて行き、余計なポイントを与えないようにする、など)を設定し、それに向かって各自が最善を尽くすことになる。
[編集] レースの種類
[編集] ワンデイレース
- 1日で勝負を決するレース。そのなかでも特に伝統のあるものは“クラシック”と呼ばれ、狭義では5つの記念碑的なレースを総称したモニュメント(対象レース下記参照)のことを指す。モニュメント以外のワンデイレースの中で概ね古い歴史を有するレースについてはセミクラシックと呼ばれるが、広義ではセミクラシックもクラシックに含まれる。なお、世界選手権は、チャンピオンシップ(選手権大会)という位置づけであり、クラシック等の言い方はしない。チャンピオンシップレースの中には、各国で開催される国内選手権及び、4年に1回開催される夏季オリンピックも含まれる。
[編集] 主なレース
- 選手権大会(チャンピオンシップ)
- 世界選手権
- 夏季オリンピック、アジア競技大会、コモンウェルスゲームズなどの総合競技大会
- 各大陸選手権
- 各国国内選手権
- ミラノ〜サンレモ (
イタリア) - ロンド・ファン・フラーンデレン (
ベルギー) - パリ〜ルーベ (
フランス) - リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ (
ベルギー) - ジロ・ディ・ロンバルディア (
イタリア)
- UCIプロツアー対象レース
- ロンド・ファン・フラーンデレン (
ベルギー) - アムステルゴールドレース (
オランダ) - クラシカ・サン・セバスティアン,
スペイン - チームタイムトライアル・アイントホーフェン (
オランダ) - ヘント〜ウェヴェルヘム (
ベルギー) - GP西フランス・プルエー (
フランス) - ヴァッテンフォール・サイクラシックス (
ドイツ) - ラ・フィナーレ (未定)
- UCIコンチネンタルサーキット カテゴリー(1.HC)対象レース
- フレッシュ・ワロンヌ (
ベルギー) - コッパ・プラッキ (
イタリア) - E3プライス・フラーンデレン (
ベルギー) - ジロ・デル・ラツィオ (
イタリア) - ジロ・デル・ピエモンテ (
イタリア) - ジロ・デル・ヴェネト (
イタリア) - ジロ・デッレミリア (
イタリア) - GPデュ・フォルミエ (
フランス) - GPカントン・アールゴー (
スイス) - GPミゲル・インドゥライン (
スペイン) - シェルデプライス (
ベルギー) - ミラノ〜トリノ (
イタリア) - オムロープ・ヘット・フォルク (
ベルギー) - パリ〜ブリュッセル (
フランス・
ベルギー) - フィラデルフィア・インターナショナル・チャンピオンシップ (
アメリカ合衆国) - ルント・ウム・デン・へニンガー=トゥルム (
ドイツ) - ルント・ウム・ケルン (
ドイツ) - トレ・ヴァッリ・ヴァレシーネ (
イタリア) - フェーネンダール〜フェーネンダール (
オランダ)
- UCIコンチネンタルサーキット カテゴリー(1.1もしくは1.2)対象レース
- ジャパンカップ (
日本、1.1) - ツール・ド・おきなわ (
日本、1.2)
その他多数。
- その他のレース
[編集] ステージレース
- 複数日にわたってレースを行い、各日ごとにゴールまでの順番を争うほか、最終的な所要時間、山岳賞、ポイント賞など複数の分野で総合成績を競う。ステージレースの最高峰として位置づけられるレースは3つあり、総称してグランツール(対象レースは下記参照)と呼ばれる。グランツールは概ね3週間程度の期間に亘って開催される。この他、ステージレースとしては主流をなす、1週間程度開催が行われるものや、数日間程度開催のミニレースも含まれ、要は1日では勝負が決しないレースを総称して呼ばれる。中には複数の国で開催されるレースもある。
[編集] 主なレース
- グランツール
- ジロ・デ・イタリア (
イタリア) - ツール・ド・フランス (
フランス) - ブエルタ・ア・エスパーニャ (
スペイン)
- UCIプロツアー対象レース
- ドーフィネ・リベレ (
フランス) - ドイツ・ツアー (
ドイツ) - エネコ・ツアー (
ベルギー・
オランダ) - ツール・ド・ポローニュ (
ポーランド) - ツール・ド・ロマンディ (
スイス) - ツール・ド・スイス (
スイス) - カタルーニャ一周 (
スペイン) - バスク一周 (
スペイン) - ツアー・ダウンアンダー (
オーストラリア)
- UCIコンチネンタルサーキット カテゴリー(2.HC)対象レース
- ティレーノ〜アドリアティコ (
イタリア) - バイエルン一周,
ドイツ - クルス・デ・ラ・ぺ (
ポーランド・
チェコ・
ドイツ) - クリテリウム・アンテルナシオナル (
フランス) - デンマーク・ルント (
デンマーク) - エウスカル・ビシクレタ (
スペイン) - エスターライヒ一周 (
オーストリア) - ダンケルク4日間レース (
フランス) - デ・パンネ3日間 (
ベルギー) - ツール・デ・ラ・レジオン・ワロンヌ (
ベルギー) - ツール・ド・ジョージア (
アメリカ合衆国) - ツール・ド・ランカウイ (
マレーシア) - ツール・ド・ルクセンブルク (
ルクセンブルク) - ツアー・オブ・カリフォルニア (
アメリカ合衆国) - ツアー・オブ・チンハイレイク (
中華人民共和国) - ポルトガル一周 (
ポルトガル) - ブエルタ・ア・ブルゴス (
スペイン)
- UCIコンチネンタルサーキット カテゴリー(2.1または2.2)対象レース
- ツアー・オブ・ジャパン (
日本、2.2) - ツール・ド・北海道 (
日本、2.2)
その他多数。
- その他のレース
[編集] 競技方法
ロードレースの競技規則は国際自転車競技連合 (UCI) によって決められているが、ステージレースにおけるステージの構成やポイントの配分、レースの距離などは、レースの主催者が決定している。
[編集] マスドスタート(マスドレース)
全選手が一斉にスタートし、ゴールの順番や所要時間を競う。通常行われるレース形式であり、「ロードレース」と言うとこの競技方法を指している場合もある。
[編集] チームタイムトライアル(チームTT)
一定時間毎にチームの全員が出走し、チームごとのゴールタイムを競う。通常は4人目のゴール到達時のタイムが記録になる。
[編集] 個人タイムトライアル(個人TT)
一定時間毎に選手が個別に出走し、ゴールタイムを競う。
[編集] 機材
- ロードバイク
- フレーム、 ホイール、変速機などのコンポーネントなどで構成された競技用の自転車を使用する。フレームの素材は、かつては鉄(クロモリ)が一般的だったが、現在はカーボンおよびアルミニウムが主流となっているほか、少数ではあるがマグネシウムなどを使用したものもある。なおプロレースで使用されるものについては、機材の軽量化における過度の競争を防ぐために、UCIによって、合計重量が6.8kgを下回ってはならないと規定されている。
詳細はロードバイクを参照。
- サイクルウェア
- 外気からの保護、汗の吸収、事故時の衝撃緩和などを目的として専用のウェアやソックスを着用する。上半身に着用するウェアは自転車乗車時の前傾姿勢でも背中が露出しないよう、背中側の裾が長めになっている。下半身には走行時に地面から伝わる振動を緩和するために股間部分にパッドが縫いこまれたレーシングパンツを着用する。またタイムトライアルでは空気抵抗を減らすために、全身を覆う一体型のスキンスーツを着用する。
- このほか体重がかかり擦れやすい手のひらを保護するためにグローブをつけるほか、気温や天候の変化に応じてサイクルキャップ、アームウォーマー、レッグウォーマー、ネックウォーマー、シューズカバーなどを身に付けて体温を保持する。
- なお、プロチームの場合、こうしたウェア類にはいずれもスポンサーやメーカーの名前やロゴがプリント&デザインされており、選手はこれを身に付けることによって所属を明らかにすると共に、動く広告塔としての役割も果たしている。
- ヘルメット
- 頭部には事故時の衝撃緩和のために発泡スチロールにプラスチックや樹脂などの素材をかぶせたヘルメットを着用する。通常のヘルメットは通気性を確保するために、強度を失わない範囲で通風孔が開けてある。タイムトライアルで使うヘルメットは空気抵抗を減らすため、穴は開いておらず流線型をしている。
- シューズ
- 脚力を余すところなくペダルに伝えるためスキー競技同様に「ビンディング」と呼ばれる機構を用いてシューズをペダルに固定する。競技用に特化しているため歩行は前提にしていない。そのためソールは硬いプラスチックかカーボン製で、裏には「クリート」と呼ばれる樹脂製あるいは金属製の止め具を固定するためのネジ穴が開いている。
- またシューズの中で足裏がずれたりしないように、ベルクロなどを用いて足先から足首までしっかり固定できるようになっている。蒸れを防ぐためにつま先部分などをメッシュにするなどして通気性を確保してあるのも特徴。
- そのほか
- 視界の確保などを目的として競技用にデザインされたゴーグルやサングラスを着用したり、効率的・効果的な走行のため心拍計を装着するほか、プロチームでは監督と選手が戦略等の連絡を取る為に無線機を使用する (本体は背中に置き、イヤホンマイクを頬に貼り付ける) 。また最近はロードバイクの軽量化が著しく、多少のオプション機器をつけても、重量面で不利になることがなくなっているため、プロレースでは、今どのくらいのパワーで走っているのかを算出する出力測定機も普及している。
[編集] 競技の特徴
[編集] エースとアシスト
- エース
- エースはレースごとに設定され、最終的にレースでのステージ勝利や総合優勝などを獲得することが役割である。通常はチームで最も強い選手が務めるが、場合によっては、同等の力を持つ選手をもう一人エースに据えて状況に応じてどちらかが勝利を狙う「ダブルエース」体制になることもある。
- なお、各チームは本拠地や所属選手によって重視するレースを決めており、(自国や地元のレースは当然重視するほか、所属選手の脚質によっても狙うレースは異なってくる)、参加する全てのレースで勝利を目指すわけではない。そのため小さなレースやあまり重視しないレースでは、普段アシスト役の選手がエースを務めることがある。
- アシスト
- アシストはエースを勝たせるために風よけ、補給食や飲み物の運搬、他チームの牽制などを行う。エースがレース中に機材故障や落車などで集団から遅れた場合には、アシストが大挙して集団から下がり、エースを集団まで引き戻すこともある。アシストの存在はエースにとって不可欠であり、エースは基本的にアシストを伴って走っている。レースの展開の綾でエースが丸裸になってしまった場合、そのチームは非常に不利な状況に置かれることになるので、レースの最終局面を除きエースがアシスト抜きで走ることは少ない。
- エースが獲得した賞金はアシストも含めて均等に分配されることが多いとされる(今中大介の2005年の発言)。
- またレース中にエースにアクシデントがあった際には、アシストの中の最有力選手がエース役を引き継ぐ場合もある。このような選手の中には、エースに近い、あるいは同等の力を持っている者もおり、アシストの仕事を最小限に免除されていることもある。このような選手は「セカンド・エース」と呼ばれる。
[編集] 先頭交代
- ロードレースでは走行中の空気抵抗による体力の消耗が非常に大きいため、単独で走りきって勝利するのは困難である。そのため、必然的に集団を形成し、他の選手を風よけにして体力の消耗を減らすなど、選手間で協力することも多い。その際は、数人から十数人の選手が順番に先頭を交代しながら走り、他の選手の体力回復(心拍数や乳酸値の低下)を助けるという戦術が採られる。
- 先頭交代は必ずしも同じチーム内で行われるとは限らない。例えば、大集団から抜け出した異なるチームの選手たちは逃げ切ってステージ優勝するため、あるいは各種ポイント賞争いを有利に運ぶために、ゴール直前までは交代で先頭を走るのが普通である。しかしこうした逃げ集団の中に個人総合優勝や新人賞に絡みそうな有力選手やその選手と同じチームの選手が入っている場合、彼らは余計なタイム差がつかないように牽制するのが目的なので、先頭交代には参加せず体力を温存する。
- また、逃げている集団を追いかけるために後続集団に残ってしまったチーム同士が協力して先頭交代をし、速度を上げて追い上げることもある。
- ステージ優勝争いから総合成績争いまで、様々な思惑や戦略が絡むのが先頭交代である。
[編集] 選手同士の駆け引き
- 先頭交代で述べたように、ライバル同士であっても、当面の目的が一致した場合は「呉越同舟」状態で協力し合うのが、ロードレースの最大の特徴である。しかし、競技の序~中盤にかけては、一致団結して走っていた選手たちも、終盤にさしかかるにつれ、各チームないし選手ごとの思惑の違いからさまざまな駆け引きが発生してくる(例えば、逃げ切り優勝を狙っている先頭集団なら、どこでアタックをかけて相手を出し抜くかで腹の探りあいが始まり、追撃する集団ではゴール前で競り合いになったときに有利な場所を確保するための位置取り合戦が起こるなど)。
- このように、状況の変化に応じて生まれる選手同士の多様な駆け引きが、レースに強い緊張感を生み出し、それが魅力の一つとなっている。
[編集] 補給
- 競技時間が3~7時間と非常に長時間にわたるため、水分や栄養を補給しないままだと脱水症状やエネルギー切れの状態になって競技が続行できなくなる危険が非常に高い。そのため選手たちはロードバイクのフレームにボトルホルダーを取り付けて水や各種飲料を入れたボトルを携帯したり、レーシングウェアの背中に付けられたポケットにおにぎりやパン、菓子、機能性食品などを入れておいて、走りながら適宜補給するが、競技中に固形物を摂取するというのは、トライアスロンのアイアンマンなどごく一部を除くほかの競技には見られない特徴である。
- プロレースでは、こうした補給用の飲料や食料は選手自身が携帯するほかに、レースで併走するサポートカーやあるいは補給エリアにスタンバイしたチームスタッフから随時供給され、レース中にはアシストの選手が大量のボトルを背中などに入れてチームメイトに配って回る姿がしばしば見られる。食品関係については「サコッシュ」と呼ばれる袋(肩掛け型が多い)に数種類を入れてサポートカーのルーフキャリアにぶら下げておき、そこから好きなものを選択するのが一般的である。
詳細は補給食を参照。
- なお、空になったボトルやサコッシュは道端に捨てられることが多いが、これは沿道で応援するファンへのプレゼントにもなっており、チーム側もこれを見越して、チームロゴやマークを入れた物を使用している(袋の作りそのものは頑丈ではなく非常にいい加減である)。
[編集] レースの展開
ロードレースには何種類かの典型的な展開がある。本節ではステージレースで最も頻繁に見られる展開の各段階を解説する。[1]
- スタート直後のアタック
- マスドスタートのレースではスタート直後から何度もアタックがかかる。アタックは一人の選手が集団から飛び出して独走し、それに数名の選手が食い下がるという形が多い。アタックをかけるのは多くの場合、エース格の選手ではなく、アシスト役の選手である。しかし大半は集団に捕捉されて失敗し、再び別の選手がアタックする展開がしばらく繰り返される。
- 逃げ集団とメイン集団の形成
- スタート直後~序盤にアタックが成功すると、数名~十数名の逃げ集団が形成される。対するメイン集団は体力温存のためにペースを落とすため、この時点で逃げ集団とメイン集団の差はみるみる広がっていき、逃げ集団が独走しているように見える状態が中盤~後半手前まで続く。しかし実際には、メイン集団は残り距離などから確実に追いつけるだけのタイム差を計算し、決してそれを超えることが無いようにスピードをコントロールしており、現在のレースではほとんどの場合、逃げ集団はレースの終わり頃に追撃集団に吸収されてしまう。
- そのため逃げる側もそれを前提として、逃げ切り優勝を狙うよりもメディアへの露出やスプリントポイント、山岳ポイント獲得が主な目標にしていることの方が多い。
- ただし長丁場のステージレースで逃げ集団に参加している選手たちの総合順位などが低い場合(逃げ切り勝ちとなっても総合優勝や山岳賞など各賞争いに無関係な場合)、体力温存のために、そのまま逃げを許してしまうこともある。
- また、山岳部では集団による空力のアドバンテージが薄れるため(ある程度の上りでは一流クライマーでも時速30km以下でしか走れないし、下りでは速度を上げすぎても危険なため、小集団と大集団の速度差が小さい)、厳しい山岳が続くステージでは総合優勝や山岳賞狙いの有力選手たちが乾坤一擲の大逃げに出ることもある。この場合は実力差による逃げ切り勝ちが発生する可能性も少なくない。
- なお、ステージレースで総合優勝争い・その日のステージ優勝争いの両方とも無縁の選手(山岳ステージにおけるスプリンターや、逃げに失敗したアシスト選手等)は、翌日以降のレースに向けた体力温存のためにグルペットと呼ばれる集団を形成して後方に下がり、制限時間を越えない程度のスローペースでゴールに向かうことが多い。
- メイン集団による逃げ集団の捕捉
- レースも後半に入ったゴール前数十km地点でメイン集団はペースを一気に上げて、逃げ集団を捕まえにかかる。しかし中途半端に短い距離で逃げ集団を捕捉すると、その直後のペースが落ちた隙をついて、メイン集団から第二、第三のアタックをしかけて優勝を狙おうとする選手やチームもいるため、どの地点で逃げ集団を捕捉するのかも駆け引きの対象となる。
- ゴール前の位置取り合戦
- 平坦ステージ、あるいはゴール手前が平坦・下り基調のステージの場合、エースにスプリンターを据えているチームはゴール直前での展開を有利にするために、ゴール前数十km地点から集団の先頭付近で車列(トレイン)を形成して位置取り合戦をしつつ、追撃する。先頭集団が逃げ切ってしまうことが確実になった場合、あるいは山頂ゴールが設定されたステージでは位置取り合戦は発生しない。
- ゴールスプリント
- 平坦ステージ、あるいはゴール手前が平坦・下り基調のステージの場合、ゴール前数km地点から集団は全力での巡航に入る。この状態で集団の速度は、トップレベルのカテゴリーのレースでは平地でさえ時速60km前後にも達する。ゴールまで1kmを切る辺りから発射台役のアシスト選手数名による全力走行(通常数百メートルしか保たない無酸素運動)が始まる。この状態は、数名の選手が縦に並んで走ることから俗にトレイン又は”列車”などと呼ばれる。
- エースを務める選手はその最後尾について、アシストたちを風よけとしつつ、ゴール数百m手前で飛び出してお互いに体をぶつけ合いながらゴールを目指す。この時の速度は時速70kmから80kmに達するため、レースの中でも最も危険な瞬間でもあり、ゴール直後の選手たちは通常の精神状態ではないと言われる(チームのスタッフが突き飛ばされたりすることもある)。
- 逃げ切り
- 逃げが決まった場合はゴール前数km地点から逃げていた集団内で駆け引きが始まり、多くの場合はある選手が飛び出した瞬間に他の選手が牽制しあってお見合い状態になって勝負が付く。そうでない場合は逃げていた集団の選手たちによるゴールスプリントになって決着する。山頂ゴールの場合は、次々に先頭集団から選手が脱落していって、最後に残った選手がそのまま(結果的に逃げ切りの形で)ゴールに入る。
[編集] 暗黙の了解
ロードレースには正々堂々と闘うための紳士協定として、選手間に暗黙の了解事項が多数存在している。
- 先頭交代への参加
- 集団の先頭から十数番手までは集団落車に巻き込まれるリスクが少なく、またアタックをかけたりアタックに反応したりということも可能である。こうした集団内の好位置に居る選手は先頭交代に加わるのがマナーである。自分だけ先頭交代に加わらないで体力を温存するという作戦(「ツキイチ」「着き位置」と呼ばれる)は、ルール上禁止されてはいないものの、仮にそれで好結果を出したとしても実力とは認められない。
- また、ロードレースの最高レベルであるUCIプロツアーに参加するようなチームに所属する選手は、エースや有力アシスト選手でないかぎり、現役中に一度も表彰台に上れない方が普通であり、大半の選手は勝ち負けには直接絡まない、アシストとしての役割を期待されて雇われている。そのためわざわざ自分の評価を落とすような勝ち方をするのは、選手にとってもメリットがないのである。
- 逃げ集団内でポイントの強引な独り占めをしない
- 逃げが決まった場合、必然的に中間のスプリントポイントや山岳ポイントを先頭で通過する選手が発生するが、殆どの場合は集団内で「誰がポイントを取るか」の合意が成立している。こうした合意を拒否してポイントを奪う姿勢は歓迎されず、逃げ集団の崩壊を引き起こす例もある。[2]
- ステージレースで総合優勝や新人賞狙いの選手はステージ優勝を譲る
- ステージレースにおいては、総合優勝及び新人賞争いに絡んでいる選手はゴールスプリント(ゴール直前での全力走行勝負)が発生した場合、これに加わらない。これは、同じ集団でゴールすれば同じタイムと見なされるため、ポイントではなく、タイムを競う総合成績と新人賞狙いの選手はトップの選手と同じ集団でゴールすればよく、最も落車の危険が大きいゴールスプリントを回避したほうが安全だからである。
- また、総合優勝及び新人賞争いをしている選手が少人数の逃げに乗り、そのままゴールまで行けてしまったような状況でも、同じ逃げ集団にライバルが居ない限り、トップとタイム差無しでステージを終えられれば、賞争いで前進することが出来るため、ステージ優勝は逃げ集団の他の選手に譲ることが普通である。
- これは、逃げ集団の他の選手としても、賞争いに手を貸す代わりにステージ優勝争いからは降りて貰うことを前提として走っていることが多いこと、総合優勝や新人賞を狙うような有力選手が、幸運にもステージ優勝を狙うチャンスに恵まれた選手たちを押しのけてまで勝とうとするのはマナーに反するという選手間の共通認識も関わっている。
- もちろん山頂ゴールなどで総合優勝及び新人賞争いの選手が他の選手を全て千切ってしまった場合や、先頭集団に総合優勝及び新人賞を争う選手たちしか残っていない場合には、この限りではない。また直近に優勝を譲ったことがある選手同士の場合は優勝を譲らないなど、ある種の貸し借り関係のようなものも影響する。[3]
- ただ、総合優勝争いを演じている選手同士の場合など、ごく稀にこのような形でステージ優勝を譲られることによりプライドを傷つけられ、その後選手間の不仲に発展するケースもある。[4]
- チーム戦略によって「着き位置」をした選手はステージ優勝争いから降りる
- その逃げが成功することで自チームの選手の優勝&各賞争いで不利になるなど、チームにとって好ましくない影響を及ぼすような逃げを失敗させようとする場合、その選手は逃げ集団に入っても、先頭交代に加わらないまま、「着き位置」でペースが上がらないように圧力をかけ続けることで逃げを潰そうとするが、それが失敗して追撃集団に追いつかれないことが確定した場合は、逃げ集団の先頭交代に加わらなかった代償として、ステージ優勝争いからは降りるのがマナーである。
- リーダージャージを抱えるチームが集団の先頭を積極的に引く
- ステージレースではリーダージャージ(総合優勝争いで首位にいることを示すジャージ)を着た選手を抱えるチームが集団の先頭を引くことが暗黙の了解となっている。このため、勝負どころの中盤~後半のステージにたどり着く前にアシスト選手たちが消耗してしまうことを嫌い、敢えて序盤は総合優勝争いで首位に立たずにレースを進めることもある。
- アクシデントにつけ込まない
- ゴール直前の数kmを除き、メイン集団内にいる有力な選手がパンクで一旦停止したり、落車に巻き込まれた場合、その隙をついてアタックをかけたりして、一気にペースを上げることはマナー違反とされている。
- ただし、逃げ集団は必ずしもこの限りでないため、こうしたトラブルが起きた場合は、メイン集団のスピードが落ちるため、逃げ切れるチャンスが生まれることになる。
- グランツールの最終ステージは周回コースに入るまでのんびり走る
- グランツールの最終ステージはジロ・デ・イタリアならミラノ、ツール・ド・フランスならパリと決まっており、選手たちはパリやミラノ近郊の街から数十kmを走り、最後に都心部の周回コースに突入することになる。そして各賞の優勝争いが僅差になっていない限りは、この周回コースに入るまでゆったりと走行する。これは、グランツール最終ステージが世界最高峰のステージレースを最後まで走り抜いた選手たちの凱旋走行と位置づけられているためである。そのためツール・ド・フランスでは、沿道の観客からシャンパンを振る舞われつつ、のんびりと走ってゆく選手たちの姿が見られる。
[編集] ジャージ
ロードレース選手で特定の成績を上げた選手は、それに応じたジャージを着なければならない。ロードレースにおいては以下のようなジャージが存在している。
- リーダージャージ
- ステージレースにおける総合首位(全ステージの走破タイムの合計が最も少ない)選手がそのステージレース開催期間中に着る。ツール・ド・フランスの「マイヨ・ジョーヌ(黄色いジャージ)」、ジロ・デ・イタリアの「マリア・ローザ(薔薇色のジャージ)」が有名。
- ポイントリーダージャージ
- ステージレースにおけるスプリントポイント最多獲得選手がそのステージレース開催期間中に着る。また、総合首位の場合はリーダージャージを優先して着用する。ツール・ド・フランスの「マイヨ・ヴェール(緑色のジャージ)」が有名。
- 山岳リーダージャージ
- ステージレースにおける山岳ポイント最多獲得選手がそのステージレース開催期間中に着る。ツール・ド・フランスの「マイヨ・ブラン・ア・ポワ・ルージュ(白地に赤い水玉模様)」が有名。また、総合首位の場合はリーダージャージを優先して着用する。
- 世界選手権ジャージ
- 世界選手権ロードレース部門の優勝者が、次回世界選手権開催前日まで世界中のロードレースで着用することを許可される。白地に5色の線(Arc an ciel—虹色)が入ったジャージは通称「マイヨ・アルカンシエル」と呼ばれ、このジャージを着ることは自転車競技者として最高の栄誉の一つとされる。また、一度アルカンシェルを獲得した選手は、翌年度以降も自身のジャージや車体の一部にアルカンシエルを模した柄を入れることが許される。
- なお、世界選手権ロードレース部門は、「ロードレース(マスドレース)」と「タイムトライアル」の2競技があり、ロードレース競技での優勝者がタイムトライアル競技やタイムトライアルステージでアルカンシエルを着ることはできず、逆もまた然りである。また、ステージレースにおいて各賞で首位に立っている場合は、各リーダージャージを優先して着用しなければならない(一部例外もあり)。
- ナショナルチャンピオンジャージ
- ロードレース競技とタイムトライアル競技の国内選手権優勝者は、それぞれ次回大会の開催までこのジャージを世界中のロードレースで着用することが出来る。ナショナルチャンピオンジャージはそれぞれの国の国旗やイメージカラーをあしらった非常に目立つもので、これを着用して世界の檜舞台に立つことはロードレース選手にとって大変な名誉とされる。また各国のファンも、自国のナショナルチャンピオンには格別の声援を送る。
- 世界選優勝ジャージと同様でロードレース競技のチャンピオンジャージはタイムトライアル競技やタイムトライアルステージでは着用不可、逆の場合も同様。また、ステージレースにおいて各賞で首位に立っている場合は、各リーダージャージを優先するほか、世界選手権に優勝した場合は世界選優勝ジャージを優先して、着用しなければならない(一部例外もあり)。
- 諸事情により国内選手権が開催されなかった年があった場合は、前年の優勝者が引き続き着用することになる。(例:2006年のスペイン選手権はオペラシオン・プエルトの影響により、選手のボイコットが発生して中止された)
[編集] 日本のレース
日本で開催されるステージレースとしてはツアー・オブ・ジャパンとツール・ド・北海道が代表的であり、ワンデイレースとしては日本最高峰のジャパンカップとツール・ド・おきなわが有名である。
また国民体育大会においてもワンデイの個人ロードレースが行われる。
[編集] 競技者の特徴
- クライマー(グランパー)
- スプリンター
- ルーラー(スピードマン)
- タイムトライアルスペシャリスト(TTスペシャリスト、クロノマン)
- オールラウンダー
[編集] 有名な選手
自転車ロードレース選手一覧も参照のこと
[編集] 男子
- ファウスト・コッピ(イタリア)
- ジャック・アンクティル(フランス)
- エディ・メルクス(ベルギー)
- ベルナール・イノー(フランス)
- グレッグ・レモン(アメリカ)
- ミゲル・インデュライン(スペイン)
- ランス・アームストロング(アメリカ)
- ローラン・フィニョン(フランス)
- マルコ・パンターニ(イタリア)
- ペドロ・デルガド(スペイン)
- ワン・カンポ(香港)
- マリオ・チポリーニ(イタリア)
- イヴァン・バッソ(イタリア)
- ヤン・ウルリッヒ(ドイツ)
- エリック・ツァベル(ドイツ)
- トム・ボーネン (ベルギー)
- ロビー・マキュアン(オーストラリア)
- ジルベルト・シモーニ(イタリア)
- 市川雅敏(日本)
- 今中大介(日本)
- 別府史之(日本)
- 新城幸也(日本)
[編集] 女子
- 沖美穂(日本)
[編集] 脚注
- ^ 1日で勝負が決まるワンデーレース、特に路面状況と道幅の面で特徴を持つパリ~ルーベやツール・デ・フランドルでは、ステージレースとは全く異なるレース展開となることが多い。
- ^ 2008年のジロ・デ・イタリア第2ステージでは、2人の逃げ集団の片方の選手が強引にポイントを独り占めしてしまった為、もう片方の選手が先頭交替を拒否し、逃げは早い段階で崩壊した。
- ^ 過去には、2004年のツール・ド・フランスにおいて、第12ステージでランス・アームストロングがイヴァン・バッソに優勝を譲ったものの、翌日の第13ステージではアームストロングがバッソにスプリント勝負を仕掛けて自らステージ優勝した例などがある。
- ^ 2000年のツール・ド・フランス第12ステージで、ランス・アームストロングに優勝を譲られたマルコ・パンターニが激怒した例などが有名。

