アマチュアレスリング

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アマチュアレスリング
グレコローマンスタイルレスリング
グレコローマンスタイルレスリング
別名 アマレス、オリンピックスタイル・レスリング
源流 パンクラチオンキャッチ・アズ・キャッチ・キャン
主要技術 投げ技テイクダウンフォール技
オリンピック競技 有り
  

アマチュアレスリングは、オリンピックの公式競技にもなっている格闘技スポーツの一種である。単にレスリングまたはアマレスと省略表記されることもある。

全身を使うスポーツであり、瞬発力、持久力パワースピードバランス敏捷性技術作戦頭脳)などが必要なため、子ども体力増強、育成効果が高い。

名称について[編集]

プロレスと区別するために"アマチュア"レスリングと呼ばれることが多い。だが世界レスリング連合(UWW:旧国際レスリング連盟、FILA)をはじめとする競技団体は、プロレスラーやプロ格闘家の参入を制限しておらず(後述)、プロフェッショナルアマチュアの区別がない。そのため、単にレスリングと呼んでいる。また、ドイツ・ブンデスリーガ (en) や、2002年から2007年にかけて活動したアメリカ合衆国のリアルプロレスリングなど、「プロ選手同士のアマチュアレスリング」を行う興行も存在する。世界最大のプロレス興行団体であるWWEにおいても、2006年のジャック・スワガートミー・ドリーマーなど、アマチュアレスリングに準じたルールでの試合が行われたことがある。

狭義のレスリングはUWWが管轄するルールのうち、オリンピックで競技が行われているグレコローマンスタイルとフリースタイルを指し、これらの総称としてオリンピックスタイルレスリング (Olympic-style wrestling) と表現する場合もある。UWWが管轄するレスリングのルールは他にグラップリングサンボビーチレスリングパンクラチオンフォークスタイルレスリング英語版ベルトレスリング英語版が存在する。

歴史[編集]

本文では「Japanese system of wrestling」と書かれているが、グレコローマンスタイルの組み手で描かれた最後の事件の格闘シーン

原型となるレスリングの正確な起源は不明だが、紀元前3000年には既に競技として成立しており[1]、文武両道を旨とする古代ギリシャの名門家では体育としても奨励され、紀元前427年生まれの哲学者プラトンも若い頃は大会での優勝経験がある[1][2]など、この頃には既に確立されたメジャーなスポーツであった。

古代オリンピックでは人気競技であり、他の競技よりも優位性があった[1]。またパンクラチオン古代ギリシアのボクシングなど、死傷者が当前のように出る他の格闘競技と比べると安全であったため、五種競技の一つとしても導入された。古代オリンピックの終了と共に一度は下火になる[1]が、第1回近代オリンピックで採用されると、基本的なルールを変更することなく採用され続けている。

現在では競技開始に必要な費用の少なさ、シンプルで確立されたルール、長い歴史により充実したトレーニング方法と指導者により、世界各地に広まっている。また格闘競技の中では比較的安全性が高いメリットもあって、子供の競技としても盛んに行われている。

西洋では絵画や本の挿絵において、格闘シーンをレスリング風に描くことが多い。

日本での歴史[編集]

八田一朗の項を参照

ルール[編集]

共通のルール[編集]

マット上にある直径9mの円形(サークルまたはリング)内で、2人の競技者が、お互いに素手で組み合い、相手の両肩を1秒以上マットにつけることで勝敗を決する(フォール)。

  • 1908年のロンドンオリンピックでは一瞬でも両肩が付いたらフォールとなる瞬間フォール(タッチフォールとも)を採用していたが、1960年のローマオリンピックから改正された。現在のフォールはピンフォールと呼ばれる。
  • フォール以外に、柔道と同じようにポイントによる判定決着もある。決めた技によって最大5ポイントが付けられ、フォールにならずタイムアップになれば判定となる。また、6ポイント以上の差が付いた場合や、5ポイントの技を1回または3ポイントの技を2回決めた場合は、その時点でテクニカルフォールによる決着となる。
    • ピリオドが終了した時点で同点だった場合は、以下の順でピリオドを獲得する選手を決定する。
    1. コーションの少ない選手
    2. ポイントの大きい技を決めた選手
    3. 最後にポイントを獲得した選手
  • 打撃技、関節技、絞め技は禁止されている。

以上のように時代によって細かな変更はあるが、「両肩を地面につける」「打撃、関節技や絞め技の禁止」という基本ルールは紀元前の頃から変わっていない。

国際ルールでは、総試合時間6分。

  • 2分間ずつの3ピリオドで試合を行い、ピンフォールを取るか先に2ピリオドを制した選手が勝ち上がる方式である。
2008年北京オリンピックへ向けてルールが一部改正された。なお、これまでは(総試合時間6分は変わらないが)前・後半各3分ずつ行い、同ポイントの場合は更に3分間の延長戦を行う方式であった。)

判定に不服がある場合にチャレンジによってビデオ判定を要求することが可能である。チャレンジで判定が覆らなかった場合は、相手に1ポイントが与えられるとともにチャレンジする権利を失う。

2通りのルール[編集]

大きくグレコローマンスタイル(Greco-Roman style)とフリースタイル(Freestyle)の2通りのルールがある。どちらのスタイルにおいても、ポイント、勝敗の判定に違いはないが、以下のようにルールが異なる。

グレコローマンスタイルにおいては、競技者は腰から下を攻防に用いることが出来ない。そのためスープレックスなどの投げ技中心の試合展開となることが比較的多い。このルールは古代ギリシアや古代ローマでのパンクラチオンのルールに由来する。「グレコローマン」は「ギリシアとローマの」と言う意味である。

また、2分間のピリオドのうち最初の1分30秒はスタンドレスリング、残りの30秒はパーテールポジションでのレスリングと定められている。パーテールポジションでのレスリングはクリンチ状態から開始され、クリンチの優先権はポイントが優勢な選手に与えられる。0-0の場合は第1ピリオドは赤、第2ピリオドは青、第3ピリオドは1.コーションの数、2.ビッグポイント、3.抽選の順で決められる。このパーテールポジションでのレスリングでは、0-0であった場合は優先権のある選手が得点できなかった場合、優先権のない選手に1点が与えられる。そのため、0-0でピリオドが終了することはない。

一方、フリースタイルにおいては、全身を攻防に用いることが出来る。そのため、レッグダイブタックル)を中心とした試合展開になることが比較的多い。これは、18世紀イギリスで隆盛していたキャッチ・アズ・キャッチ・キャンのルールに由来する。

ピリオドが0-0で終了する可能性もあり、そうなった場合は30秒間の延長戦となる。延長戦はクリンチポジションから開始となり、優先権は抽選で決定される。延長戦はどちらかにポイントが入ればその時点で終了となり、入らなかった場合は優先権のない選手に1点が与えられる。

女子レスリングは1970年代に欧州で始まり、1985年にフランス・クレルモンフェランで初となるFILA認定の女子国際大会「ロジャークーロン大会」が開催。1987年から世界選手権も開催され、2004年よりオリンピックに追加された。現在、女子の公式競技はフリースタイルのみ行われている。

階級[編集]

年齢、体重別に階級を定めて争われる。

  • 世界選手権全日本選手権の階級
    • 男子 - 55kg級、60kg級、66kg級、74kg級、84kg級、96kg級、120kg級
    • 女子 - 48kg級、51kg級、55kg級、59kg級、63kg級、67kg級、72kg級
  • オリンピックでの階級(2004年アテネ大会以降)
    • 男子 - 世界選手権等他大会と同じ
    • 女子 - 48kg級、55kg級、63kg級、72kg級

オリンピック・世界選手権・地域総合競技大会・大陸選手権・国内選手権では規定通りの階級で行われるが、それ以外の大会ではワールドカップなど2kgオーバーまで認める大会も一部存在する。

トーナメント[編集]

UWWが定めるトーナメントは敗者復活戦を併用したノックアウト方式を採用。

ファイナリストに負けた選手が敗者復活戦に回る。準決勝で負けた選手から順にシードされ、ステップラダー方式で3位を決定する。なお、3・5位は(違反行為により順位を剥奪されなければ)それぞれ2名存在し、4・6位はない。3位決定戦が2戦実施され、勝者は3位、敗者は5位となる。ただし、7位以下は勝ち点の合計で決める。チーム対抗の成績も勝ち点で決められる。勝ち点は以下の通り。

  1. 5点:フォール勝ち、警告勝ち、棄権勝ちなど
  2. 4点:第1・2ピリオドともテクニカルフォールで勝利
  3. 3点:2-1、2-0などの判定勝ち
  4. 1点:ポイントを奪取しての判定負け
  5. 0点:ノーポイントの判定負け

一部の大会では一般的なノックアウトトーナメントなど異なる方式を採用する場合もある。

服装と用具[編集]

古代オリンピックでは裸体であることが義務であったが、現在の選手はシングレット(Singlet、俗称として「吊りパン」と呼ばれる)と呼ばれるワンピース型のユニフォームレスリングシューズを着用して試合を行う。止血用の白ハンカチ携行も義務付けられている。義務化されてはいないがマウスピースも装着する。ジュニア世代の大会を中心にイヤーガードニーパッドを装着する場合もある。

公式戦で使用するシングレットは青と赤に分かれ、コーナーの色によって決まる。なお、少年少女レスリングでは2001年に赤青の色分けは廃止された。

男子のシングレットはローカット型と規定されていたが、シドニーオリンピックの頃よりハイカットも可能となった。

女子[編集]

女子の黎明期は特に規定されておらず、統一されていなかった。Tシャツにローカット型シングレットを重ねる選手も存在したものの、ショートパンツまたはブルマーが主流で、後にレオタードが増え、中には水着を着用する選手もいた。そして世界選手権が始まると男子同様のシングレットに統一された。ただし国内選手権はしばらくレオタード(ユニタード)が中心だった。

自由な参加規程[編集]

柔道相撲ボクシングの(アマチュア)競技者が、プロ興行へ出場する際の規制は厳しく、現実的にはその競技を引退して出場することになる一方、アマチュアレスリング大会はプロレスラーや他の格闘技競技者の参戦も許容されている。なお、オリンピックでのプロ解禁は柔道と同じ1992年バルセロナオリンピックからである。また、2009年には日本レスリング協会が中心となりプロアマ問わず多くの格闘技団体を巻き込み、「日本格闘競技連盟」を創設した。

アマチュアレスリング大会に出場したプロ選手[編集]

本節ではプロレスラーやプロ総合格闘家がアマチュアレスリングに参戦した例を挙げる。

夏季オリンピックでの競技存続問題[編集]

「中核競技」から突然の除外決定[編集]

レスリングは近代の夏季オリンピックで、前述の変遷をたどりながら、第1回からリオ・デ・ジャネイロオリンピック2016年)まで競技種目に組み込まれている。しかし、国際オリンピック委員会(IOC)では、ロンドンオリンピック (2012年) の終了直後に会議を開催。東京都が開催地の招致に名乗りを上げていた2020年夏季オリンピックで、レスリングをオリンピック種目から除外する可能性を協議した。そのうえで、2012年9月12日スイスで開いた理事会において、「中核競技」(オリンピックで確実に実施される競技)に当たる25競技からレスリングを除外することを決めた。

この理事会では、「中核競技から除外すべき競技」を指定する無記名の投票を4回繰り返しながら、1回の投票で得票数が最も少なかった競技を順々に「中核競技」へ残留。レスリングは、近代五種ホッケーと争った決選投票において、最多の8票(他の2競技はそれぞれ3票)を獲得した。ちなみに、ロンドンオリンピックで実施された(近代五種・ホッケーを含む)26競技のうち、この理事会で「中核競技」から外されることが決まったのはレスリングのみ。IOCが2013年2月12日付で公表した投票結果では、4回の投票ともレスリングの得票数が最も多かったことが判明している[3]

オリンピックでの存続に向けて大幅な改革へ[編集]

これに対してFILAでは、2013年2月プーケットタイ)で開いた理事会で、ラファエル・マルティニティー会長(スイス)への信任投票を実施。上記の除外決定を背景に、不信任票が信任票を1票差で上回ったため、マルティニティーを会長職から事実上解任することを決定した[4]。さらに、同年5月の会長選挙までの暫定措置として、ネナド・ラロビッチ理事(ロシア)を会長代行に選出[5]。2020年夏季オリンピックの開催都市および、「中核競技外」の競技から同オリンピックでの追加競技(1競技)を決める2013年9月8日のIOC総会(後述)を目標に、レスリングのオリンピック競技存続に向けた活動を開始した。

ラロビッチは、2020年夏季オリンピックでレスリング競技を存続させるための条件として、性別・スタイルごとに異なっていた体重区分の階級数を6階級へ統一することをIOCに提案した[6]。また、FILAでは、2013年5月モスクワで臨時総会を開催。ラロビッチの会長就任とともに、以下の内容を含む憲章改正・ルール改正案を正式に決定した。さらに、改正の対象になった競技ルールについては、総会開催日の5月19日から新ルールを即時採用[7]。攻撃権の抽選制度については、「抽選で攻撃権を得た選手が有利になることが多く、競技としての公正さを欠く」との指摘を踏まえたうえで、2014年から廃止されることになった。

  • 「他の競技団体に比べて女性の役員が少ない」というIOCからの指摘を基に、従来2名だったFILAの女性理事を3名に増員。2014年9月の総会で予定されている役員改選では、初めて女性の副会長を選出する。
  • 試合方式を「1ピリオド3分×2ピリオド」に改めるとともに、2ピリオドでの合計ポイントで勝敗を決定する。
  • テクニカルフォールを実施する点差を、フリースタイルで10点差、グレコローマンで7点差に改める。

2020年・2024年大会での存続が決定[編集]

IOCは2013年5月29日に、サンクトペテルブルク(ロシア)で開いた理事会で、「中核競技外」の競技から2020年夏季オリンピックへの追加競技の最終候補としてレスリング、野球ソフトボールスカッシュを選出[8]。9月8日にブエノスアイレスアルゼンチン)で開いた総会では、以上3競技の代表によるプレゼンテーション・質疑応答を経て、追加競技を1競技に絞り込むための決選投票を実施した。1回目の投票の結果、投票総数95票のうち、レスリングが過半数の49票を獲得。前日の総会で正式に開催が決まった2020年東京オリンピックにおけるレスリング競技の存続が決まるとともに、IOCの規定で2024年の夏季オリンピックでも競技が実施されることになった[9]

階級数の男女統一・階級区分の大幅な変更へ[編集]

FIFAでは、2013年8月9日にモスクワで理事会を開催。体重区分を今後協議することを条件に、ラロビッチによる前述の階級数統一案を、リオ・デ・ジャネイロオリンピックから正式に導入することを決めた[10]。2020年夏季オリンピックに関する実施競技報告書では、同オリンピックからの導入を前提に、体重区分を以下のように変更することをFILAに提案していた[11]

  • 女子(従来から2階級増加):48kg級、52kg級、56kg級、61kg級、66kg級、72kg級
  • 男子フリースタイル(従来から1階級削減):55kg級、65kg級、75kg級、85kg級、95kg級、125kg級
  • 男子グレコローマンスタイル(従来から1階級削減):57kg級、67kg級、77kg級、87kg級、97kg級、130kg級

なお、FILAは12月17日に、リオ・デ・ジャネイロオリンピックで実施する階級区分を以下のように発表。吉田沙保里がオリンピック・世界選手権を通じて14連覇を達成してきた女子55kg級が消滅したほか、上記の区分案から階級区分の一部が変更された。なお、吉田はこの発表を受けて、新設の53kg級でリオ・デ・ジャネイロオリンピックに挑むことを表明[12]。今後も、選手や競技団体によっては、吉田のように階級への対応を変える可能性がある[13]

  • 男子フリースタイル:57kg級、65kg級、74kg級、86kg級、97kg級、125kg級
  • 男子グレコローマンスタイル:59kg級、66kg級、75kg級、85kg級、98kg級、130kg級
  • 女子:48kg級、53kg級、58kg級、63kg級、69kg級、75kg級 [14]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d 世界のレスリングの歴史 - 日本レスリング協会
  2. ^ 古代オリンピックでは成績を上げられず、学問の道に進んだ
  3. ^ レスリング、「除外」に終始最多票 IOC公表(「日本経済新聞」2013年2月13日付記事)
  4. ^ FILAラファエル・マルティニティー会長(スイス)が退任へ(日本レスリング協会公式サイト・2013年2月16日付ニュース)
  5. ^ FILA会長代行にネナド・ラロビッチ理事(セルビア)、アレクサンダー・カレリン(ロシア)氏が理事会入り(日本レスリング協会公式サイト・2013年2月16日付ニュース)
  6. ^ 2016年オリンピックの実施階級は先送り(日本レスリング協会公式サイト・2013年5月19日付ニュース)
  7. ^ ラロビッチ会長が就任、新ルールは即座に導入…FILA総会(日本レスリング協会公式サイト・2013年5月19日付ニュース)
  8. ^ レスリングは最終候補に残る! 他に野球&ソフトボール、スカッシュ…IOC理事会(日本レスリング協会公式サイト・2013年5月30日付ニュース)
  9. ^ レスリングがオリンピック競技存続へ、2020・24年大会で実施…IOC総会(日本レスリング協会公式サイト・2013年9月9日付ニュース)
  10. ^ 2016年リオデジャネイロ大会は3スタイルとも6階級で実施…女子は2階級増(日本レスリング協会公式サイト・2013年8月10日付ニュース)
  11. ^ 男子グレコローマンの最軽量は57kg級か?…3スタイルの新階級案が明らかに(日本レスリング協会公式サイト・2013年9月9日付ニュース)
  12. ^ 吉田沙保里の55キロ級がリオ五輪で消滅(『日刊スポーツ』2013年12月18日付記事)
  13. ^ 吉田、伊調の金階級消滅も「問題なし」(『日刊スポーツ』2013年9月9日付記事)
  14. ^ 新階級が決定、Tフォールは10点差(フリー・女子)と8点差(グレコ)…2014年1月から実施(日本レスリング協会公式サイト・2013年12月18日付ニュース)

関連項目[編集]

外部リンク[編集]