ドラフト会議 (MLB)

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メジャーリーグベースボール(MLB)におけるドラフト会議には以下の2つがある。

  • 新人選手選択会議英語:The Major League Baseball First-Year Player Draft)
  • ルール・ファイブ・ドラフト(英語:Rule 5 draft)

本稿では両方について説明し、単に「ドラフト」と表記した場合は新人選手選択会議を指すものとする。

新人選手選択会議[編集]

毎年6月上旬に開催され、アメリカ合衆国、合衆国領プエルトリコカナダ高校短大大学および独立リーグに在籍する選手(外国籍含む)を対象にしている。ルール・フォー・ドラフト(MLB規約の第4条に規定されていることに由来)、ファースト・イヤーとも呼ばれる。なお4年制大学の3年生(修了見込み)選手も指名対象となる。

あくまで戦力の均衡が目的であるため完全ウェーバー制を採用しており、指名重複(抽選)や自由獲得枠などは無い。

アメリカでは学生の部活動の掛け持ちが一般的であり、野球以外のスポーツでも高い才能を発揮している学生選手も珍しくない。そのため他競技のドラフトからも重複で指名されたり[1]、大学などからスポーツ奨学金の提供を受ける選手がおり、指名されても入団しないケースが多々ある。また、下位指名選手は契約金や自身の将来性の評価が低いなどの理由から、入団しないことがある。このため予め何人か入団しないことを計算に入れて毎年1500人程度(各チーム50人程度)という大人数の指名となり、全選手の指名終了までに通常3日間を要する。

また、チーム関係者の親類や知人の息子を「記念」として下位で指名するなど、思わぬ選手が突然指名を受けるケースもある。あくまでお遊びとしての指名であり、選手としては基本的に期待されていないので、大抵このような指名を受けた者は入団しないが、マイク・ピアッツァのように入団しチームの主力にまで成長する選手も稀にだが存在する。

歴史[編集]

MLBのドラフト制度は1965年に導入された。豊富な資金力を背景に圧倒的な強さを誇っていたニューヨーク・ヤンキースにそれ以上戦力が偏りすぎるのを防ぐためであった。この結果、ヤンキースは1964年以降10年以上もリーグ優勝から遠ざかることとなり、この制度の成果は如実に現れた。さらに1969年からはプレーオフ(2地区制)が導入され、1972年からのオークランド・アスレチックスワールドシリーズ3連覇まで毎年違うチームがワールドチャンピオンとなっている。

だが、1960年代後半以降、代理人制度が認められるとドラフト指名された有望選手にも代理人がつくようになり、契約金の高騰が起こっている。このため、資金力に劣るチームは指名順位が高くても目玉選手を指名できず、指名順位が低いにもかかわらず資金力のあるチームがその選手を獲得できてしまう問題も発生している。そのため、代理人が選手に有利な契約を結ばせる目的で極端に契約交渉を長引かせることを防ぐために、独占交渉権の期限を設けるなど対策をとっている。

日本人の指名[編集]

米国・カナダ・プエルトリコの学校でプレーする留学生なども指名対象に含まれるため、当該3カ国以外の国籍の選手も指名されることがある。

日本人では2002年に坂本充(当時アリゾナ・ウエスタン短期大学)がコロラド・ロッキーズに初めてドラフト指名を受け入団したが、メジャー(40人ロースター)昇格はならなかった。2008年には鷲谷修也(当時デザート短期大学)がワシントン・ナショナルズに指名されたものの4年制大学編入のため拒否しているが、2009年に再びナショナルズの指名を受け入団した。同年には藤谷周平(当時ノーザン・アイオワ大学)もサンディエゴ・パドレスに指名されている。2013年は加藤豪将(ランチョ・バーナード高校)がニューヨーク・ヤンキースより2巡目(全体66位)指名され、日本人最高位かつ高校生初の指名となった[2]。2013年現在、ドラフト指名による入団を経てメジャー昇格を果たした日本人選手はまだ現れていない。

世界ドラフト構想[編集]

MLBでは現在、前述の指名対象外となる選手(対象3カ国以外の学校・独立リーグ等に在籍する選手)はアマチュアも含めフリーエージェント扱いで自由獲得となっている。[3]

2001年頃から「世界ドラフト(International Draft)構想」が進められている。MLBにおいて中南米や東アジアを中心に外国人選手も増加傾向にあり、一方で他のメジャースポーツでは外国の選手もドラフトを経て入団しているため、MLBも同様に実施していくことを検討している段階である。ただし、指名対象となる範囲は日本プロ野球など一部プロリーグの選手を除外する方向となっている。MLB機構と選手会の間では合意に達しているが、代理人や他国のプロ野球の絡み、契約金などの問題から2012年現在実現に至っていない。

ルール・ファイブ・ドラフト[編集]

ルール・ファイブ・ドラフト(Rule 5 draft)とは、有望選手が十分な活躍の場を与えられずにマイナーリーグで半ば飼い殺し状態になることを防ぐ目的で、他チームの所属選手を指名し獲得できる制度である。名称の由来はMLB規約の第5条に規定されていることから。

毎年12月のウィンター・ミーティング最終日に行われる。メジャーの40人ロースター(選手登録枠)に空きがあるチームのみ参加可能で、その年の優先権のあるリーグでレギュラーシーズン勝率の低いチームから指名権が与えられる。優先リーグは毎年交互に入れ替わる。

MLB以外では2011年11月、韓国プロ野球が新球団・NCダイノスの設立に伴って初めて開催された。

制度の悪用による過剰な引き抜きを防止するため、以下のような規定が設けられている。

規定[編集]

ロースターによる制限 
メジャーの40人ロースターに登録されている選手は指名できない。つまり、マイナー契約の選手のみ指名できる。このため、ルール・ファイブ・ドラフト実施日前になると多くのチームがロースターの再編成(指名されたくない自軍選手とメジャー契約を結んで40人ロースターに登録し、代わりに何人かをDFAなどにする)を行なう傾向がある。
在籍年数による制限 
18歳以下で入団した選手のうち、ルール・ファイブ・ドラフト実施日の時点で在籍年数5年未満の選手は指名できない[4]。19歳以上で入団した選手のうち、ルール・ファイブ・ドラフト実施日の時点で在籍年数4年未満の選手は指名できない[5]
メジャーリーグ・フェイズ 
AAAから指名した場合は、相手チームに50,000ドルを支払わなければならない。また、指名した選手は来シーズン全期間メジャーのアクティブ・ロースターに登録しておかなければならない。つまり、シーズン終了までアクティブ・ロースターから外すことは許されない(ただし、故障者リストなどの一時離脱登録は可)。故障者リストなどに登録せずアクティブ・ロースターから外す場合は、速やかに元のチームへ選手を返還し、選手を返還されたチームは25,000ドルを払い戻さなければならない。ただし、返還先のチームが選手の返還を望まない場合はウェーバー公示され、公示中は第三者のチームも獲得可能となる。ただし、第三者のチームがウェーバーで獲得した場合も上記の規定が適用される。
マイナーリーグ・フェイズ 
AAのチームから指名した場合は相手チームに12,000ドルを、A以下から指名した場合には相手チームに4,000ドルを支払わなければならない。AAからの指名の場合は必ずAAAの、A以下からの場合は必ずAAのロースターにシーズン開幕時には登録しなければならない。ただし、途中でそれぞれのロースターから外れてもかまわない。

ルール・ファイブ・ドラフトによって移籍した主な選手[編集]

脚注[編集]

  1. ^ MLBとNFLを掛け持ちしたボー・ジャクソンのように複数のプロスポーツを経験した選手も少ないながら存在する。
  2. ^ “ヤンキースが日本人の加藤内野手を指名”. 日刊スポーツ. (2013年6月7日). http://www.nikkansports.com/baseball/mlb/news/f-bb-tp2-20130607-1139206.html 
  3. ^ 日本人アマチュア選手ではマック鈴木多田野数人田澤純一が自由獲得で契約後メジャー昇格を果たしている(2012年現在)。
  4. ^ 2006年までは4年未満
  5. ^ 2006年までは3年未満。
  6. ^ クレメンテの移籍当時は現行制度のようなルール5ドラフトは存在しなかったが、飼い殺しを防ぐ目的の『マイナーリーグ・ドラフト』と呼ばれる制度が存在した。

関連項目[編集]