JR西日本521系電車

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JR西日本521系電車
IRいしかわ鉄道521系電車
あいの風とやま鉄道521系電車
521系クハ520形(2007年10月5日 坂田駅
基本情報
製造所 川崎重工業車両カンパニー
近畿車輛
主要諸元
編成 2両編成 (1M1T)
軌間 1,067 mm(狭軌
電気方式 直流 1,500 V・交流 20,000 V (60Hz)
架空電車線方式
最高運転速度 120 km/h
起動加速度 2.5 km/h/s(下記以外)[** 1]
1.2 km/h/s(小浜線)
減速度(常用) 3.5 km/h/s
減速度(非常) 4.2 km/h/s
車両定員 座席56(補助座席8を含む)・立席129(クモハ521形)
座席52(補助座席12を含む)・立席123(クハ520形)
車両重量 43.2 t (クモハ521形)
44.3 t (クハ520形)
編成重量 87.5 t
最大寸法
(長・幅・高)
20,100 × 2,950 × 3,690 (mm)
車体 ステンレス
台車 軸梁式ボルスタレス台車ヨーダンパ付)
WDT59B(制御電動車)
WTR243C(制御車)
主電動機 かご形三相誘導電動機
WMT102C 形 230 kW[** 1]
駆動方式 WNドライブ
歯車比 98:15 (6.53)
編成出力 920 kW
制御装置 PWMコンバータ+PWMIGBT-VVVFインバータ(WPC11-G2)
1C1M制御(静止形インバータ一体型)
制動装置 電気指令式ブレーキ直通回生抑速耐雪ブレーキ機能付き)
保安装置 ATS-SWATS-P(一部編成のみ)、列車防護無線装置
EBTE装置
車両異常挙動検知システム(3次車のみ)
  1. ^ a b New Product 521系交直流近郊電車 (PDF) - 近畿車輌技報 vol. 14
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521系の屋根の様子。右側の223系とはパンタグラフ搭載位置や屋根肩の丸みが異なる。(2007年7月4日 米原駅)

521系電車(521けいでんしゃ)は、西日本旅客鉄道(JR西日本)の交直流近郊形電車[1]である。

また、金沢駅 - 市振駅間の北陸本線を移管されたIRいしかわ鉄道あいの風とやま鉄道でもJR西日本からの譲受車を保有している。そのため、本項では一括して記載する。

概要

2006年10月21日北陸本線長浜駅 - 敦賀駅間・湖西線永原駅 - 近江塩津駅間の直流化と老朽化した車両の更新を目的に投入された。1987年4月の国鉄民営化以降、JR西日本が新製投入した交直流近郊形電車は本系列が初めてとなる。乗り入れ先となるアーバンネットワークで使用されている223系2000番台と同一のサービスを提供できることを前提として設計された。1編成2両の製造費用は約4億円。

2009年度以降は、金沢地区の体質改善用(老朽化の激しい419系475系・457系の更新用)として導入が進められ運用を拡大。これは2015年3月14日北陸新幹線長野駅 - 金沢駅間延伸開業に伴い並行在来線として経営分離された北陸本線を転換した第三セクター鉄道への経営支援策も兼ねており、あいの風とやま鉄道に16編成、IRいしかわ鉄道に5編成が譲渡されている[2]北陸新幹線開業に伴う譲渡の節を参照)。

構造

車体

車体はステンレス鋼を採用し、レーザー溶接の適用範囲を側構体の腰部・吹き寄せ部に加え幕板部に拡大し、外観平滑性の高い構造となっている[3]223系5500番台の前頭部形状と窓・座席配置、同時期に近畿車輛で製造されていた321系の構体設計が流用されている。屋根肩の雨樋カバーも321系同様にやや丸みが付けられたものとなっている。前面下部の排障器(スカート)も223系の強化型(製造途中に設計変更)よりさらに強固なものとなった。なお、営業開始後しばらくして、スカートに編成番号が記入された。

バリアフリーに対応するため、本系列の床面高さはレール面から 1,120 mm[3]貫通幌の薄型化により貫通路の平滑化が図られ、乗降口にステップがない。そのため北陸本線敦賀駅 - 福井駅間の一部の駅では2両編成分のホーム嵩上げが実施された。ただしこの嵩上げは、ホーム高さがレール面から 920 mm に達していない駅に対して 920 mm への嵩上げを行うものであった。なお、敦賀駅 - 長浜駅間の各駅(敦賀駅は4番のりばのみ)では 1,100 mm へのかさ上げが完了したため、ホームと床面との段差は 20 mm となった。

外装帯色は戸袋部に223系2000番台同様の茶色を、その下に上から順に青・白・青の3本の帯(北陸地区で運用されている近郊形電車と同イメージ)が入る。なお、戸袋部の貼り付け範囲は223系2000番台5次車以降および5000番台側面に準じている。

221系から引き続き、電動車(クモハ521形)の車体側面には、主電動機冷却風取り込みのための通風孔が設けられている[4]。異常時には戸袋部から冷却風を取り込むことができるようになっている[5]

剛性値については下記のようになっており、2005年4月25日に発生したJR福知山線脱線事故後に製造されたが、JR西日本として保有車両の車体強度強化方針を発表したのは3年後の2008年5月で[6]、車体強化について特段の説明はされていない。

車体諸特性[7]
項目 特性
心皿間距離 13,800 mm
片側出入口個数 3扉
相当曲げ剛性 0.79×103 MN・m2
相当ねじり剛性 236 MN・m2/rad
曲げ固有振動 13.3 Hz
ねじり固有振動数 4.4 Hz

主要機器

223系に代表されるJR西日本の直流電車の電装品などを極力共用しつつ、交流区間でも使用できるよう、制御電動車は直流電車相当の機器のみを搭載し、制御付随車集電装置変圧器整流器といった交直流対応装備が搭載されるというM-Tp(pはパンタグラフのp)ユニット構成となっている。これにより、電動車は直流電車と機器の共通化が容易となり、保守上も特高圧機器と高低圧機器の混在によるトラブル防止のメリットがある。

このため、電動車だけでなく、制御付随車にも変圧器をはじめ床下に多数の機器が配置され、高圧碍子で厳重に絶縁されたパンタグラフも同車に搭載されている。このシステムは1958年(昭和33年)、交直流電車の試作車両として在来車を改造して、仙山線にてテストされた、国鉄クモヤ(クモハ)491形クヤ(クハ)490形 (ただし50Hz専用)で試作後、システムを交流専用として1978年(昭和53年)、日本国有鉄道(国鉄)時代の781系にも採用された方式であり、JR西日本においては特急形681系683系で確立されたが、JR西日本の近郊形電車としては本系列で初めて採用された。また、耐寒耐雪装備として各車の床下機器・台車には防雪カバーが取り付けられている。

電源・制御機器

Mc車には車両制御装置[* 1]空気圧縮機を、Tpc'車には主変圧器、主整流器、集電装置を搭載する。

主変圧器 (WTM27) は走行風利用自冷式を採用し、1,200 kVA の容量を備える。

主整流器は、IGBT素子を使用した自冷式PWMコンバータ WPC12-G2 である[8]。冗長性の観点からコンバータは2台並列接続とされ、故障発生時には片群を解放することで出力制限により運転を続行できる[8]

車両制御装置は、IGBT素子を使用した3レベル電圧形PWMインバータ WPC11-G2 である。1基の装置中にインバータを5基(主回路部4基+補助電源部1基)搭載し、インバータ1基で1台の主電動機(かご形三相誘導電動機)を制御する1C1M制御方式を採用している。補助電源部が故障した際には主回路用インバータをCVCF制御することで補助電源のバックアップとしている。なお、落成時点では三菱電機製のものを搭載していたが、2007年にE04編成のみ東芝製のものに換装されている。

空気圧縮機は、除湿装置と一体化した低騒音型スクリュー式 WMH3098-WRC1600 を搭載する。スクリュー式空気圧縮機は223系2000番台以降などでの採用実績がある。

集電装置は、着雪防止を考慮しシングルアーム式パンタグラフ WPS28D を採用する[9]。機器配置は683系に極力合わせているが、パンタグラフ上下用空気碍管をパンタグラフ支持碍管と一体化することで部品点数削減と省スペース化を図っている[9]

主電動機は、WMT102C (1時間定格出力230kW)を電動車両1両あたり4基搭載する[9]。長寿命化の観点から絶縁種別をH種からClass200に向上させ、従来の WMT102B に比べて出力は向上しているが、構造的互換性は有している[10]

空調機器は、集約分散式の WAU708-G2 を1両あたり2基搭載する[8]。1基当たりの冷凍能力は 20,000 kcal/h である。WAU708(321系)をベースに、トンネルでの車内圧力変動防止の観点から外気取り入れ口にダンパーが追加されている[8]

警笛は、207系以降の新製電車と同様にミュージックホーンが採用された。それに加え、空気式のタイフォン・ホイッスルの合計3種類の笛を装備している。タイフォンは排障器(スカート)内に、ホイッスルは屋根にカバーを取り付けて設置された。

台車

台車は223系で実績のある軸梁式ボルスタレス台車であるが、床面高さ低減のために空気ばね高さを925mm(223系比 15 mm 減)としたWDT59B(電動台車)・WTR243C(付随台車)を採用する[8]。基礎ブレーキ装置は、WDT59Bがユニット式踏面ブレーキ、WTR243Cが1軸2枚のディスクブレーキ+ユニット式踏面ブレーキであるが、WTR243Cには駐車ブレーキ準備工事が施されている[8]。また将来の高速化に備え、軸ばねダンパーとアンチローリング装置の準備工事も施されている[11]

耐寒耐雪対応として軸ばね、空気ばね、ブレーキダイヤフラムなどに防雪カバーを取り付け、雪かきを強化型にしている[8]。また、速度発電機は非接触タイプに変更された[8]

保安装置

保安装置はATS-SWを搭載しており、運転台寄り台車床下付近に車上子を搭載する。ATS-Pについては車上子搭載スペース(連結面寄り台車付近)および制御装置搭載スペース(乗務員室内)の準備工事がなされている[9]。その後、1次車については2008年2月から6月にかけてATS-Pが本設置された。

性能

主電動機と歯車比は223系と同じであることから加速性能は223系と同等であるが[8]、最高速度は120km/hとされており、通常最高速度 120 km/h の485系などの旧型車両が特例で 130 km/h 運転が認められている北陸トンネルや湖西線内でも、本系列の最高速度は 120 km/h である。なお、223系との併結営業運転は不可能である。

車内

寒冷地域を走行するため、車内の乗降扉横には半自動ドア操作スイッチが設けられている。2011年4月1日以降より、冬季以外も正式に年間を通じて客用扉の開閉は押しボタンによる半自動ドア扱いとなった[12]。デザインは321系と同様の、操作可能時にボタン周囲が発光するタイプが採用された。また、ワンマン運転時に「入口」・「出口」を表示(ワンマン運転時、乗客は先頭車両の最後部の扉から乗車し、最前部の扉から降車)するLED式表示器も設置され、妻面(連結面)部は車内視認性向上のため、窓(トイレ設置の関係で片側のみ)が設けられ、貫通扉部分の窓も223系より拡大されている。このあたりはJR西日本管内の播但線加古川線103系ワンマン対応車の妻面設計と共通性が見られる。

座席は基本的に223系5000番台を踏襲した横2列+2列の4アブレスト、扉間5列の転換クロスシートが配置されているが、妻面窓からの車内確認をしやすくする目的で、クモハ521形の車端部には321系に類似した構造のロングシートが設置された。223系にはドアに隣接する固定座席には背面に補助席を装備する構造となっているが、本系列では整理券発行機設置の関係で、その部分には補助席が装備されていない。一方、クハ520形については223系と同じく、車端部が車椅子対応の洋式トイレ(処理方式は網干総合車両所配置の223系で採用されたカセット式に対し臭気対策に優れる真空式を採用)と車椅子スペースに充てられているため、同車にロングシート部分はない。

運転台の直後に運賃箱運賃表示器が、各車両最後部の客用ドア横には整理券発行機が設置されている。運賃箱は乗務員室内に収納可能な構造になっており、車掌乗務時は運転台後部が邪魔にならないよう配慮されている。また、複数の編成を連結した場合は223系5000番台のように乗務員室を通路として開放することになり、いたずら防止のため車掌スイッチ類にカバーが設けられている。また、運賃箱は運転台と通路との仕切りとなるような配置になっている。

車内の客用扉上部には、223系などと同様の号車番号表示器とLED式のスクロール案内表示器が、片側の客用扉に1つおきの千鳥配置で1両あたり計3か所設置されている。表示内容も変化ないが、号車表示は223系の7セグメントディスプレイに代わりLED式となったため、数字表記の視認性向上が図られた。

形式・編成

クモハ521形(2007年3月9日 武生駅
クモハ521形 (Mc)
金沢向きの制御電動車。前位に運転台を備える。
クハ520形 (Tpc')
米原向きの制御付随車。後位に運転台、2位寄りにトイレが設置されている。
  • 編成表
← 金沢
米原 →
クモハ521
(Mc)
クハ520
(Tpc')

製造時別区分

521系は製造された54編成がすべて連番となっており番台別の区分はないが、本項では製造時期ごとの使用の差異を示す上で、便宜上「1次車」「2次車」「3次車」と称することとする。なお、カッコ内は各車両の車番(すべて同番のクモハ521とクハ520で2両編成を組んでいる)を示す。

1次車

北陸本線敦賀駅以南の直流化にともなって滋賀県福井県が製造費用を負担して投入されたグループで、2006年9月から10月にかけて10両 (1-4) が川崎重工業・ (5) が近畿車輛で製造された。E編成と称し、全車両が福井地域鉄道部敦賀運転派出に配置され、組織変更により敦賀地域鉄道部敦賀運転センター車両管理室の所属となる。

2002年から製造されている125系と同様に費用を負担した両県内で優先的に運用されているが、2009年3月14日のダイヤ改正で小浜線にも運用範囲を拡大したため、京都府内にも入線するようになった。

2次車

先頭車間転落防止幌が取り付けられている。
(2013年6月25日、高岡駅

金沢地区の体質改善用にJR西日本が自社負担で新規投入したグループで、2009年10月から2010年3月にかけて20両 (6-15) が近畿車輛で、2010年12月から2011年3月にかけて40両(16-35)が川崎重工業で製造された。30両(6-20)が金沢総合車両所に配置されG編成と称されていた。30両(21-35)は敦賀地域鉄道部敦賀運転センター車両管理室に配置されM編成と称されたが、2014年2月14日付けで金沢に転属され、これによって全編成がG編成となった[13]。このうち16本があいの風とやま鉄道に、3本がIRいしかわ鉄道に譲渡された[14]

1次車からの変更点として、2008年8月に鉄道総合技術研究所(鉄道総研)でシミュレータを用いて行われた手すりや吊り手に関するアンケートを元に改良され、吊り手は、とっさの時に強い力でしっかりとつかめるように形状と色を変更、手すりについては端の部分の角張った部分を曲線化、ロングシート袖の仕切りの大型化などが実施されている[15]。また、クハ520形にあるトイレ部スペースが拡大されトイレ出入口が半円状となり、扉上のLED式スクロール表示器における英語表示も駅名ローマ字だけが全角表示となるなど、細かい部分で仕様が変更されている。また、川重製造分は乗務員扉のノブの周りのくぼみがなくなっている。

1次車と2次車の吊り手の比較
  1次車 2次車
80個 108個
オレンジ
グリップの内径 85 mm 100 mm
グリップの断面径 15 mm 20 mm

3次車

敦賀駅にて撮影。
(2014年09月06日)
225系に準じたカラースキーム

2次車同様、金沢地区の体質改善用に投入されたグループで、2013年11月から近畿車輛・川崎重工業で製造された。42両 (36-56) がJ編成として敦賀地域鉄道部敦賀運転センター車両管理室に配置されたが、北陸新幹線開業直前に製造された55・56は直後にIRいしかわ鉄道に譲渡された[14]

安全性能の向上を主眼に仕様が大きく変更されている[16]が、車両システムや性能に1・2次車と違いがないことから車両番号は2次車の続番とされている[17]。最大の変化は前頭部のデザインで、225系と同様の衝撃吸収構造(クラッシャブルゾーン)を採用した運転台形状に[18]前照灯フォグランプも225系同様のHID式に変更された。ただし前照灯・フォグランプがほぼ水平に並び、その上に尾灯を配置した225系0番台・5000番台等と異なり、前照灯・フォグランプを内側(貫通路側)に寄せて斜めに配置し、その外側に尾灯を配置したデザインが採用されている。このデザインは以後登場した227系や225系100番台・5100番台にも採用されている。また、2010年12月にJR神戸線山陽本線舞子駅で乗客が先頭車同士の連結面から転落・死亡した事故を受け、先頭車間転落防止幌が設置されている。当初近畿車輛出場時は台座のみが装備されていた状態だった[19]が、着脱の手間を省くことと、運転席からの視野確保や車体洗浄機への対応、騒音や着氷雪などの課題がクリアできたことから、常時設置された状態で運行されている[20][21]。その他の安全機構としては異常事態を加速度と共に検知し緊急停止や周囲の列車に緊急停止を伝えるTE装置を自動的に作動させる機能である「列車異常挙動検知システム」[16][20]、そしてキハ120系で使用しているドア誤扱い防止システムを搭載し、ホームがない箇所でのドア開扱いを防止する[17]

また、この3次車より幌枠のパッキン損傷を防ぐためピン・ピン受けを改良し、幌受けを追加する処置がなされた[22]。先頭車間転落防止幌、ドア誤扱い防止システム、改良幌受けについては、1次車や2次車にも順次取り付け工事が行われている。

客室設備に大きな変化はないが、座席モケットは225系0番台に合わせた暖色系に、照明はLED式に変更されている[23]

北陸新幹線開業に伴う譲渡

2015年3月14日北陸新幹線開業によって北陸本線金沢駅 - 直江津駅間が経営分離されたのに伴い、あいの風とやま鉄道IRいしかわ鉄道へ本系列の譲渡が行われている。

両社とも形式名称などはJR時代と同様で、譲渡日(JR西日本としての廃車日)はすべて開業日と同日付。

あいの風とやま鉄道

富山県内区間を転換したあいの風とやま鉄道には6 - 9・11 - 13・15 - 18・21・23・24・31・32の16本32両が譲渡された。

をモチーフとした2色のラインが施され、車体の山側が富山湾の神秘さを表現した水色日本海側を富山県の豊かな自然を表現した緑色[* 2]のものとなっている[24]

IRいしかわ鉄道

石川県内区間を転換したIRいしかわ鉄道に10(草/緑色)・14(古代紫/ピンク)・30(藍/青)・55(黄土/金)・56(臙脂/赤)の5本10両が譲渡された[14]。車体前面部と側面に空色と青のカラーリングが施され、側面と転落防止幌には石川の伝統工芸を彩る5つの色(加賀五彩)が各編成1色ずつアクセントカラーとして配されている[25][26]

このうち事実上の新造車として導入された55・56は開業1か月前にあたる2月6日の落成でいったんJR西日本の車両(J20・J21)として製造された[27]が、JRの車籍を持っていたのはわずか35日だった上に譲渡まで営業運転は行わなかった[28][29]

車両配置と運用線区

JR西日本所属車

北陸本線(現:IRいしかわ鉄道線倶利伽羅駅付近を走行する、G04編成と他の編成による4両編成。

2015年4月1日現在、敦賀地域鉄道部敦賀運転センターに2両編成24本(E・J編成)、金沢総合車両所に2両編成11本(G編成)が配置されている[30]。2015年3月14日現在の運用線区は以下の通り。

導入された2006年から2009年度増備車が落成するまで、北陸本線米原駅 - 福井駅間および湖西線近江今津駅 - 近江塩津駅間の普通列車に運用された。これにより、米原駅・近江今津駅 - 敦賀駅間で運用されていた419系などは、本系列や125系・223系に置き換えられた。

2009年3月14日からは小浜線でも運転を開始し、同線ではワンマン運転も開始された。これによりキハ48形が撤退して以来、17年半ぶりに3線共通運用車両が復活した。なお、小浜線での運用は2010年3月13日のダイヤ改正で消滅したため、1年間限りの運用となったものの、2015年現在でも本来125系2両編成ワンマン運転の一部運用を車掌乗務で代走する事例は存在する。

2009年度の増備に伴い北陸本線福井駅 - 金沢駅間でも営業運転を開始している。さらに2011年3月12日のダイヤ改正により、敦賀駅 - 金沢駅間の普通列車は、運転系統上福井駅まで乗り入れる越美北線を除外すると、原則として本系列のみで運用されるようになった。ただし、朝の下り1本(小松富山行き)や七尾線から金沢駅より南西側(松任・美川・小松方面)へ乗り入れる列車など、例外はある。また朝の下り1本(福井発)のみ金沢駅より北東の津幡駅まで本系列にて運用されている。同年4月2日から4月7日まで東北地方太平洋沖地震東日本大震災)の影響による車両部品(直流モーター用カーボンブラシ)の不足のために一時的な本数の削減や行先変更が実施された際は、本系列が臨時列車として平日のみ4両編成で金沢駅 - 津幡駅間を往復した実績がある。

2012年3月17日のダイヤ改正では津幡駅 - 富山駅間でも営業運転を開始した[31]

毎年5月に開催される(2009年のみ秋に開催された)ウォーキングイベント「若狭・三方五湖ツーデーマーチ」の開催当日は、敦賀駅 - 小浜駅間で臨時列車が運転される。通常小浜線で運用される125系のみでは車両が不足することから、2011年5月21日・22日には敦賀地域鉄道部敦賀運転センター車両管理室の車両が4両編成で「若狭・三方五湖ツーデーマーチ」2・3号に充当された[32]

2014年10月18日のダイヤ修正で富山駅 - 泊駅間で、同年12月より泊駅 - 糸魚川駅間でも営業運転を開始し[33]、金沢以東の三セク転換まで運用された。

IRいしかわ鉄道所属車

あいの風とやま鉄道所属車

運用の開始まで

2006年9月27日、JR西日本への納入を前にして川崎重工業兵庫工場にて第1編成が報道用に公開され、翌9月28日から鷹取駅芦原温泉駅京都総合運転所間で試運転を開始した。また、10月21日には敦賀駅にて川崎重工製の第4編成が一般公開された。同年11月30日から、第3編成が営業運転に入り、12月5日からは第4編成が追加投入された。11月下旬以降に残る第1・第2編成と近畿車輛製の第5編成が営業運転を開始し、投入初年度は合計2両編成5本の計10両の陣容となった。これらの全車両が金沢支社敦賀地域鉄道部敦賀運転センター車両管理室に在籍している。

2009年度は第6編成から第15編成までの10本20両を増備し、2010年3月13日ダイヤ改正より北陸本線福井駅 - 金沢駅間でも営業運転が開始されている[34]。これに先立ち、2009年10月27日に近畿車輛から第6・第7編成が、同年12月22日に第8編成から第10編成が出場したが、当該編成は金沢総合車両所を意味する「金サワ」の所属表記となっている[35][36]

2011年3月12日ダイヤ改正に合わせてさらに40両を追加投入することが金沢支社から公式発表された[37]。 2010年12月17日には第16編成から第18編成が[38]、2011年1月11日には第19編成から第21編成が[39]、1月25日には第22編成から第24編成[40]、2月3日には第25編成から第27編成が川崎重工業で落成し、試運転が行われた。

2013年度は、11月6日に第36編成から第38編成が近畿車輛から出場した[41]

その後2014年に入り、J4編成からJ19編成までが近畿車輛・川崎重工で順次落成し出場している[42][43]。2015年2月にはIRいしかわ鉄道譲渡分となるJ20・J21編成が新造された[27]

脚注

注釈

  1. ^ 主回路用インバータ(VVVF制御装置)と補助電源用インバータ (SIV) を一体化したもの
  2. ^ これは車外から側面と沿線風景を見たとき、山側から見ると海と水色・海側から見ると山と緑色という組み合わせになる。

出典

  1. ^ データで見るJR西日本(西日本旅客鉄道、p.120)
  2. ^ 石川3セクに2編成 JR西日本、普通列車の最新車両 - 北國新聞・富山新聞、2013年12月6日付け《現在はインターネットアーカイブに於いて残存》
  3. ^ a b 『近畿車輌技報』通巻14号、p.44
  4. ^ 『鉄道ファン』通巻549号、p.54
  5. ^ 『近畿車輌技報』通巻14号、p.45
  6. ^ JR西日本、車体強度向上へ 尼崎脱線事故を教訓に - 47NEWS 2008年5月21日
  7. ^ 「JR西日本 521系近郊形交直流電車」『車両技術』2007年3月 p.33
  8. ^ a b c d e f g h i 『鉄道ファン』通巻549号、p.59
  9. ^ a b c d 『鉄道ファン』通巻549号、p.58
  10. ^ 『鉄道ファン』2008年11月号、交友社、2008年、p.63。
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  12. ^ 『鉄道ピクトリアル』2011年7月号、電気車研究会、2011年、p.102
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参考文献

  • 松岡成康・今村洋一・木村光男(JR西日本鉄道本部車両部設計課)「521系近郊形交直流電車」『鉄道ファン』第549巻、交友社、2007年1月、54 - 59頁。 
  • 菅野直哉・加藤英一・松葉堅一・池田一哉(近畿車輛車両事業本部車両設計室)「New Product 521系交直流近郊電車」(pdf)『近畿車輌技報』第14号、近畿車輌、2007年10月、44 - 46頁。 
  • 大森正樹・鍋谷武司・藤家宏一(JR西日本鉄道本部車両部)「521系3次車近郊形交直流電車の新製」『Rolling stock & Machinery』第22巻第3号、日本鉄道車両機械技術協会、2014年3月、18 - 21頁。 

関連項目

外部リンク