交響曲第43番 (ハイドン)
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交響曲第43番 変ホ長調 Hob. I:43 は、フランツ・ヨーゼフ・ハイドンが作曲した交響曲。『マーキュリー』(あるいは『水星』、独: Merkur)の愛称で知られる[1]。
概要
[編集]第44番『悲しみ』と同様に、1772年のブライトコプフ・ウント・ヘルテル社のカタログに記載されており[2]、1771年前後に作曲されたと考えられている。激しい第44番とは対照的な、明るく爽やかな調子の曲である。
愛称の由来
[編集]『マーキュリー』という愛称はハイドン自身によるものではなく、1839年にアロイス・フックスによって書かれた手書きの目録に初めて現れるが、由来は不明である[3][4]。
ジャン・パン(Jean Pang)[5]は、この愛称が第50番との混同であったのではないかと推測しており、それは第50番の最初の2楽章が、ハイドン自身が作曲した人形劇『フィレモンとバウキス』(Philemon und Baucis, Hob. XXIXa:1)の序曲を引用しており、この劇の登場人物として「メルクール」(マーキュリー)が登場するためである。
編成
[編集]オーボエ2、ホルン2、第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、低音(チェロ、ファゴット、コントラバス)。
曲の構成
[編集]全4楽章、演奏時間は約25分。
- 第1楽章 アレグロ
- 第2楽章 アダージョ
- 第3楽章 メヌエット - トリオ
- 変ホ長調、4分の3拍子。
- メヌエット主部とトリオの双方ともかなり単純な曲である。H.C.ロビンス・ランドンは「流行歌」(Hit tunes)を旋律に持っていると言っている[6]。
- 第4楽章 フィナーレ:アレグロ
- 変ホ長調、2分の2拍子(アラ・ブレーヴェ)、ソナタ形式。
- 再び長めの穏やかな主題で始まる。再現部の後にコーダが付加され、いったん まで音を落とした後、全休止を挟んで華やかに終わる。
脚注
[編集]- ^ 大宮(1981) p.177
- ^ デッカ・レコードのホグウッドによるハイドン交響曲全集第6巻、ウェブスターによる解説、1994年
- ^ Horst Walter: Merkur. In Armin Raab, Christine Siegert, Wolfram Steinbeck (Hrsg.): Das Haydn-Lexikon. Laaber-Verlag, Laaber 2010, ISBN 978-3-89007-557-0, S. 503.
- ^ Walter Lessing: Die Sinfonien von Joseph Haydn, dazu: sämtliche Messen. Eine Sendereihe im Südwestfunk Baden-Baden 1987-89, herausgegeben vom Südwestfunk Baden-Baden in 3 Bänden. Band 2, Baden-Baden 1989, S. 39–40.
- ^ zitiert bei: A. Peter Brown: The Symphonic Repertoire. Volume II. The First Golden Age of the Vienese Symphony: Haydn, Mozart, Beethoven, and Schubert. Indiana University Press, Bloomington & Indianapolis 2002, ISBN 0-253-33487-X, S. 128.
- ^ 音楽之友社ミニスコアの解説
参考文献
[編集]- 大宮真琴『新版 ハイドン』音楽之友社〈大作曲家 人と作品〉、1981年。ISBN 4276220025。
- 『ハイドン 交響曲集IV(41-49番) OGT 1592』音楽之友社、1982年。(ミニスコア、ランドンによる序文の原文は1967年のもの)