熱い胸さわぎ

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熱い胸さわぎ
サザンオールスターズスタジオ・アルバム
リリース
録音 1978年4月7日 - 6月16日
VICTOR STUDIO
ジャンル ロック[1]
AOR[1]
レゲエ[1]
ボサノヴァ[2][1]
ポップ[1]
フュージョン[3]
ブギ[4]
ブルース[3]
時間
レーベル Invitation
タイシタレーベル(再発盤)
プロデュース 高垣健
Burning Publishers
チャート最高順位
サザンオールスターズ アルバム 年表
熱い胸さわぎ
(1978年)
10ナンバーズ・からっと
1979年
『熱い胸さわぎ』収録のシングル
  1. 勝手にシンドバッド
    リリース: 1978年6月25日
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熱い胸さわぎ』(あついむなさわぎ)は、サザンオールスターズの1作目のオリジナル・アルバム1978年8月25日レコードで発売。発売元はInvitation

1984年6月21日1998年4月22日2008年12月3日CDで再発売されている。1989年6月25日にはCDとカセットテープで再発売された。また、2014年12月17日からはダウンロード配信、2019年12月20日からはストリーミング配信が開始されている[5][6]

背景・制作[編集]

デビューシングル「勝手にシンドバッド」からちょうど2か月後に発売された自身初のオリジナル・アルバム。本作はレゲエ風の曲調やアメリカ西海岸の人気バンド、リトル・フィートへのオマージュを取り入れ、ポップに変換した作品である[7]

編曲・レコーディングでは、同バンドのメンバーに加え、新田一郎率いるホーンセクション、Horn Spectrumが数曲参加している[8]

リリース[編集]

サザンの初期の楽曲はバーニングが権利を持っており、本作もプロデュースはバーニングプロダクションによるものである。

1998年の再発盤の初回限定盤はオリジナルLP復刻ジャケット(紙ジャケット)仕様で、雑誌「バァフアウト!」編集発行人の山崎二郎によるライナーノーツが封入されている。

再発売[編集]

批評[編集]

桑田佳祐はこのアルバムについて2015年発売のオリジナル・アルバム『葡萄』の初回生産限定盤特典「葡萄白書」のインタビューで、「あの人力と若さを総動員させた勢いは二度と再現できない奇跡のようなものです」「最近になって、あのデビューアルバムにこそ、きっと多くの人が大好きだと言ってくれるサザンが集約されているんじゃないかと思えてきました」と述べている[9]。また、本作とソロアルバム『MUSICMAN』についてはほとんど後悔がない旨も述べている[10]。 また、桑田は「あれ(熱い胸さわぎ)がデビュー作でほんと良かった(笑)」と語っている[11]

収録曲[編集]

全作詞・作曲:桑田佳祐。初回限定盤(再発盤)・通常盤共通収録。既発曲の解説は各収録作品を参照のこと。

Side A
#タイトル作詞作曲・編曲編曲時間
1.勝手にシンドバッド  斉藤ノブ
サザンオールスターズ
Horn Spectrum(管編曲)
2.「別れ話は最後に」  サザンオールスターズ
Horn Spectrum(管編曲)
3.当って砕けろ  サザンオールスターズ
Horn Spectrum(管編曲)
4.「恋はお熱く」  サザンオールスターズ
5.茅ヶ崎に背を向けて  サザンオールスターズ
Horn Spectrum(管編曲)
合計時間:
Side B
#タイトル作詞作曲・編曲編曲時間
1.「瞳の中にレインボウ」  サザンオールスターズ
2.「女呼んでブギ」  サザンオールスターズ
Horn Spectrum(管編曲)
3.「レゲエに首ったけ」  サザンオールスターズ
Horn Spectrum(管編曲)
4.「いとしのフィート」  サザンオールスターズ
Horn Spectrum(管編曲)
5.「今宵あなたに」  サザンオールスターズ
Horn Spectrum(管編曲)
合計時間:
  1. 勝手にシンドバッド
    デビューシングル。
  2. 別れ話は最後に
    ボサノヴァ・タッチのAOR的な曲調の楽曲[1]
    ビクター側がシングル曲の候補として挙げていた楽曲である[1]
  3. 当って砕けろ
    シングル「勝手にシンドバッド」のカップリング曲。
  4. 恋はお熱く
    8分の6拍子・3連符のロッカバラード[12]。桑田はサザンのアルバムを作る際には必ずこういった曲調の楽曲を入れることを計画するという[12][注釈 1]
    イントロの波の音は葉山町の一色海岸で収録したもの[1]
  5. 茅ヶ崎に背を向けて
    桑田と原由子デュエット曲。2枚目シングル「気分しだいで責めないで」のカップリング曲としてシングルカットされている。
  6. 瞳の中にレインボウ
    ブルージーな楽曲[3]
  7. 女呼んでブギ
    メジャーデビューのきっかけとなった、ヤマハ主催の音楽コンテスト「East West '77」へ出場した際に演奏された曲。
    桑田が「女呼んでもんで抱いていい気持ち」のフレーズを初めて叫んだところ、メンバーが笑い転げて練習が中断したエピソードがある[13]
    アマチュア時代からのレパートリーだが、当時は歌詞がアドリブのため明確に定まっていなかったという[4]。正式に発売されたこの現行のバージョンにも明確に歌詞が定まっていない部分が存在しており、一部では「永遠に未完成だから素晴らしい」とも評されている[4]。この未完成を逆手にとって、2023年の茅ヶ崎ライブで演奏された際には該当の部分を地元への感謝を述べる歌詞に改作されている。
  8. レゲエに首ったけ
    タイトル通りレゲエをテーマにした楽曲になっている[1]
  9. いとしのフィート
    リトル・フィートへの敬愛が込められたアレンジになっている[4]
    歌詞はラーメン除夜の鐘お正月という言葉にもあるように日本の大晦日から元旦への情景と独り寂しく酒を飲む主人公の心情が描かれている[4]
  10. 今宵あなたに
    歌詞の内容から「原由子讃歌」とも言われている楽曲[1]

参加ミュージシャン[編集]

勝手にシンドバッド
別れ話は最後に
  • Horn Spectrum - ホーン
  • 中村哲 - テノールサクソフォーン、ソプラノサクソフォーン
  • 兼崎順一 - トランペット、フリューゲルホルン
  • 新田一郎 - トランペット、フリューゲルホルン、トロンボーン

当って砕けろ
  • Horn Spectrum - ホーン
瞳の中にレインボウ
  • ビクター少年合唱団 - コーラス
女呼んでブギ
  • Horn Spectrum - ホーン
  • 中村哲 - テノールサクソフォーン、ソプラノサクソフォーン
  • 兼崎順一 - トランペット、フリューゲルホルン
  • 新田一郎 - トランペット、フリューゲルホルン、トロンボーン

ライブ映像作品[編集]

曲名 作品名 備考
勝手にシンドバッド
別れ話は最後に 桑田佳祐の音楽寅さん 〜MUSIC TIGER〜 あいなめBOX 桑田佳祐ソロ名義の作品。DISC 1「♯01 桑田佳祐 追悼特別番組」及びDISC 2「♯07 アンプラグド・ライブ殺人事件」 に収録。アンコールとしてアコースティックギターでの弾き語りで歌唱された。本放送されていない未公開映像でもある。
当って砕けろ
恋はお熱く 未収録
茅ヶ崎に背を向けて
瞳の中にレインボウ 未収録
女呼んでブギ ホタル・カリフォルニア
シークレットライブ'99 SAS 事件簿 in 歌舞伎町
真夏の大感謝祭 LIVE
茅ヶ崎ライブ2023
レゲエに首ったけ 未収録
いとしのフィート 真夏の大感謝祭 LIVE
今宵あなたに 未収録

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 前述の『葡萄白書』ではこういった曲調の楽曲の代表的な例として本楽曲と「栞のテーマ」「ひき潮 〜Ebb Tide〜」「平和の鐘が鳴る」が桑田によって挙げられている[12]

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j 『サザンオールスターズ 公式データブック 1978-2019』(2019年)リットーミュージック出版 p105
  2. ^ 眩しいほどの若さがきらめく、サザンオールスターズ1stアルバム『熱い胸さわぎ』〈A面〉WHAT's IN? tokyo 2019年9月14日 2020年10月10日閲覧
  3. ^ a b c 1stアルバム『熱い胸さわぎ』のバラエティー豊かなサウンドに新人・サザンオールスターズの比類なき才能を見る 3頁OKMUSIC 2019年3月13日 2020年10月10日閲覧
  4. ^ a b c d e サザンオールスターズ、バンドの未来を示唆する1stアルバム『熱い胸さわぎ』〈B面〉WHAT's IN? Tokyo 2019年9月21日 2020年10月10日閲覧
  5. ^ サザン、全266曲を世界111ヶ国で配信 オリコン 2014年12月17日配信, 2020年6月4日閲覧
  6. ^ サザン関連全972曲 サブスク一斉解禁 メンバーソロ曲も対象に オリコン 2019年12月20日配信, 2019年12月20日閲覧
  7. ^ 『サザンオールスターズ 公式データブック 1978-2019』(2019年)リットーミュージック出版 p20
  8. ^ 『サザンオールスターズ 公式データブック 1978-2019』(2019年)リットーミュージック出版 p104
  9. ^ 『葡萄』初回生産限定盤A・B特典「葡萄白書」p.18より。
  10. ^ SWITCH Vol.33 No.4 Southern All Stars [我が名はサザン] p19より。
  11. ^ 『ブルーノートスケール』P183 ロッキング•オン 1987年
  12. ^ a b c 『葡萄』初回生産限定盤A・B特典「葡萄白書」p.29より。
  13. ^ 関口和之『突然ですがキリギリス』97頁、集英社文庫、1991年

外部リンク[編集]