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「笹子トンネル天井板落下事故」の版間の差分

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{{Infobox 事件・事故
{{暫定記事名|date=2012年12月}}
| 名称 = 笹子トンネル天井板落下事故
'''笹子トンネル天井板落下事故'''とは、2012年12月2日、山梨県大月市笹子町の[[中央自動車道]]上り線[[笹子トンネル]]で天井板のコンクリート板がおよそ110mにわたって落下し、走行中の車複数台が巻き込まれて死傷者が出た事故。
| 画像 = Sasago Tunnel(Chūō Expwy) collapsed 3D model 2.png
| 脚注 = 天井板が崩落した状態(模式図)
| 場所 = {{Flagicon|JPN}} [[山梨県]][[大月市]]笹子町<br />[[中央自動車道]][[笹子トンネル (中央自動車道)|笹子トンネル]](上り線)
| 緯度度 = 35 | 緯度分 = 36 | 緯度秒 = 56.9 | N(北緯)及びS(南緯) = N
| 経度度 = 138 |経度分 = 47 | 経度秒 = 53.6 | E(東経)及びW(西経) = E
| 地図国コード = JP-19
| 日付 = [[2012年]][[12月2日]]
| 時間 = [[午前]]8時5分頃
| 時間帯 = [[日本標準時|JST]]
| 概要 = トンネルの吊り天井の落下
| 原因 = 調査中
| 死亡 = 9人
| 負傷 = 2人
| 行方不明 =
| 被害者 =
| 損害 = 上り線([[一宮御坂インターチェンジ|一宮御坂IC]] - [[大月ジャンクション|大月JCT]]間)、<br />下り線([[勝沼インターチェンジ|勝沼IC]] - 大月JCT間)<br />で長期通行止め
| 関与 = [[中日本高速道路|NEXCO中日本]]
| 対処 = 笹子トンネルと同型のトンネル4か所で、吊り天井の緊急点検の実施
| 謝罪 =
| 賠償 =
}}
'''笹子トンネル天井板落下事故'''(ささごトンネルてんじょうばんらっかじこ)とは、[[2012年]][[12月2日]]、[[山梨県]][[大月市]]笹子町の[[中央自動車道]]上り線[[笹子トンネル (中央自動車道)|笹子トンネル]]で天井板のコンクリート板がおよそ130m<ref>{{cite news |title=130メートル部分 中央から前後へ連鎖崩落か ボルト変形が裏付ける |author= |newspaper=[[山梨日日新聞]] |date=2012-12-14 |url= |accessdate=2012-12-30}}</ref>にわたって落下し、走行中の車複数台が巻き込まれて死傷者が出た事故。

「笹子トンネル天井板落下事故」の呼称は[[国土交通省]]<ref>[http://www.mlit.go.jp/road/road_tk1_000033.html 中央自動車道笹子トンネル天井板落下事故関連情報] - 国土交通省道路局</ref>やトンネルを管理する[[中日本高速道路]](NEXCO中日本)<ref>[http://www.c-nexco.co.jp/drive/info/announcement.html 中央自動車道 笹子トンネル天井板落下事故に伴う通行止めについて] - NEXCO中日本公式サイト内</ref>が用いている呼び名だが、報道機関などでは、'''笹子トンネル事故'''<ref>{{Cite news|url=http://www.jiji.com/jc/c?g=ind_30&k=2012122000441|title=インフラ再生委を設置=笹子トンネル事故受け-日建連|work=時事ドットコム|publisher=[[時事通信社]]|date=2012年12月20日|accessdate=2012年12月20日}}</ref>、'''笹子トンネル崩落事故'''<ref>{{Cite news|url=http://www.nagano-np.co.jp/modules/news/article.php?storyid=27167|title=経済 : 笹子トンネル崩落事故物流、観光へ影響懸念 諏訪信金12月経済概況|publisher=[[長野日報]]|date=2012-12-25}}</ref>、'''笹子トンネル天井板崩落事故'''<ref>{{Cite news|url=http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG20012_Q2A221C1CC0000/|title=下り線から避難できず現場に戻る 笹子トンネル崩落|work=[[日本経済新聞]]電子版|publihser=日本経済新聞社|date=2012年12月20日|accessdate=2012年12月20日}}</ref>などの名でも報じられている。

日本の高速道路上での事故としては、[[1979年]]に発生した[[日本坂トンネル火災事故]]や、2012年[[4月29日]]に発生した[[関越自動車道高速バス居眠り運転事故]]を死亡者数で上回り、最も死亡者数の多い事故となった。

== 概要 ==
2012年12月2日午前8時5分頃([[日本標準時|JST]])<ref name="yomiuri20121203">{{Cite news|url=http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20121202-OYT1T00248.htm|title=中央道トンネル天井崩落、4人死亡・けが2人|work=YOMIURI ONLINE|publisher=読売新聞社|date=2012年12月3日|accessdate=2012年12月5日}}</ref>、東京方面に向かう[[上り]]線トンネルの大月市側出口から約1700m付近で、トンネルの天井である横5m、奥行1.2m、厚さ約8cmと9cm、重さ約1.2tほどのコンクリート板およそ270枚(中壁を含む)<ref>{{Cite web|date=2012-12-02|url=http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG0202L_S2A201C1CC1000/|title=トンネル崩落110メートル以上 老朽化が原因か|publisher=日本経済新聞|accessdate=2012-12-05}}</ref>が約110mにわたってV字型に折り重なるように崩れ落ち<ref name="yomiuri20121203"/>、事故発生時に走行中であった[[自動車]]3台が下敷きとなり、うち2台から発火し<ref name="yomiuri20121203"/><ref>{{Cite news|url=http://mainichi.jp/select/news/20121202k0000e040117000c.html|title=中央道:女性が自力で脱出、病院搬送…笹子トンネル崩落|work=[[毎日jp]]|publisher=毎日新聞社|date=2012年12月2日|accessdate=2012年12月5日}}</ref>トンネル内で[[火災]]が発生して[[レスキュー隊]]が現場に向かえないほどの黒煙が上がったうえ、火災による[[煙]]をトンネル内の煙除去装置が作動しなかったため排出ができず、トンネル内部に高温の煙が充満した<ref>{{Cite news|url=http://webnews.asahi.co.jp/ann_s_221202008.html|笹子トンネル内で崩落 事故車が火災、けが人も|work=[[朝日放送|ABC]] WEBNEWS|date=2012年12月2日|accessdate=2012年12月5日}}</ref>。

崩落現場で下敷きとなっていた[[レンタカー]]の[[ワゴン車]]([[日産・セレナ]])からは20代の男女5名の焼死体が発見されたほか<ref>{{Cite news|url=http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/121202/dst12120215200009-n1.htm|title=【トンネル内崩落】ワゴン車から遺体発見か|work=[[MSN産経ニュース]]|publisher=産経新聞社|date=2012年12月2日|accessdate=2012年12月5日}}</ref><ref name = mainichijp/>、普通乗用車(車種不明)から70代の男女と60代の女性が焼死体となって発見された<ref name="nikkeiweb">{{Cite news|url=http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG0300T_T01C12A2MM0000/|title=トンネル崩落、復旧のメド立たず 死者9人|work=[[日本経済新聞]]電子版|publihser=日本経済新聞社|date=2012年12月3日|accessdate=2012年12月7日}}</ref>。また、トラック([[日産・バネット]])を運転していて崩落に巻き込まれた食品卸売会社勤務の50代の男性は携帯電話で同僚に助けを求めていたが、救出時には既に死亡していた<ref>{{Cite news|url=http://mainichi.jp/select/news/20121203k0000m040085000c.html|title=中央道トンネル崩落:男性1人を救出も死亡確認|work=[[毎日jp]]|publisher=毎日新聞社|date=2012年12月2日|accessdate=2012年12月7日}}</ref>。

事故発生翌日の12月3日まで救助活動が行われ、計9名の死亡が確認された。また、重軽傷者は2人となった<ref name="nikkeiweb" /><ref name="nikkei201212030208">{{Cite news|url=http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG0401M_U2A201C1MM0000/|title=トンネル崩落、中日本高速を家宅捜索 現場検証も|work|日本経済新聞電子版|publisher=日本経済新聞社|date=2012年12月4日|accessdate=2012年12月5日}}</ref><ref>{{Cite news|url=http://www.asahi.com/national/update/1203/TKY201212030208.html|title=笹子トンネル事故、死者9人に 乗用車から3人の焼死体|work=[[朝日新聞デジタル]]|date=2012年12月3日|accessdate=2012年12月3日}}</ref>。

[[山梨県警察|山梨県警察本部]]は3日未明、[[業務上過失致死傷罪|業務上過失致傷罪]]で捜査を始め、[[大月警察署]]に捜査本部を設置した。大月署は4日午前にNEXCO中日本の本社、[[中日本高速道路八王子支社|八王子支社]]および同支社大月保全・サービスセンター、9月にトンネル内の点検を実施した中日本ハイウェイ・エンジニアリング東京など計6か所を[[家宅捜索]]し、これまでの点検状況など安全管理態勢について捜査した。また、トンネルの構造に詳しい大学教授ら専門家数人にも立ち会いのもと、トンネル内で現場検証を行った。さらに、トンネル内の監視カメラの映像を押収して解析を進めた<ref name="nikkei201212030208"/><ref name="Mainichi 121203-1">{{Cite news|url=http://mainichi.jp/select/news/20121203k0000e040213000c.html|title=トンネル崩落:コンクリ劣化の可能性|work=毎日.jp|publisher=毎日新聞社|date=2012年12月3日|accessdate=2012年12月3日}}</ref><ref>{{Cite news|url=http://www.asahi.com/national/update/1202/TKY201212020423.html|title=トンネル崩落、復旧めどたたず 県警・消防の捜索続く|work=[[朝日新聞デジタル]]|date=2012年12月3日|accessdate=2012年12月3日}}</ref>。

=== トンネル内の状況 ===
[[File:SasagoTNnaibu.JPG|thumb|事故以前の上り線内部の様子。2009年5月5日撮影]]
右側車線を走行中に事故発生に遭遇し、アクセルを踏み続けて脱出した[[NHK甲府放送局]]の男性記者は、「天井がメリメリと何かを剥がすように崩れてくる瞬間が見えた」と語っている<ref>{{Cite episode |title=突然の崩落はなぜ~緊急報告・中央道トンネル事故~|url=http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail02_3282_1.html |series=[[クローズアップ現代]] |serieslink= |network=[[NHK総合テレビジョン|NHK総合]] |station=[[日本放送協会|NHK]]|airdate=2012-12-03|accessdate=2012-12-10}}</ref>。

救助に当たった[[東山梨行政事務組合#常備消防事務|東山梨消防本部]]塩山消防署は3日午前に[[記者会見]]を開き、[[救助活動]]当時のトンネル内の様子を語った。このうち、通報を受けてトンネルの小牧・長野側から事故現場に入った同署のポンプ隊長は、「トンネルの入り口に到着したときは、視界は良好で奥まで見えた。[[消防車]]で中に入ると、両脇の歩道を歩いて避難している人がいたが、車に残っている人もいたので、避難を呼びかけた。途中から車を降りて進むと、煙の濃度が増してきて懐中電灯の光も足元に届かなくなり、奥では爆発音も聞こえたため、退避せざるをえなかった」と事故直後の現場の様子について語った。また、トンネルの東京側から事故現場に入り、保冷車に取り残された男性の救助活動を指揮した同署の小笠原克也署長は、「何トンもある天板がいつ落ちるか分からないことがいちばんの活動のネックで、安全管理を重視しながら救助活動を進めた。持っている機材は通常の交通事故や火災には対応できるが、今回は大きな重機など特殊なものがないと進められず、困難な活動になった」と活動が難航したことを明らかにした<ref>{{Cite news|url=http://www3.nhk.or.jp/news/html/20121203/k10013912701000.html|title=崩落事故 救助の消防隊員会見|work=NHK NEWS WEB|date=2012年12月3日|accessdate=2012年12月3日}}</ref>。

== 事故の原因・対応 ==
=== 事故の原因 ===
[[File:Sasago Tunnel(Chūō Expwy) 3D model 2.png|thumb|笹子トンネルの構造を示した断面図モデル]]
同事故を受けて、NEXCO中日本は2日15時頃と3日9時頃に緊急記者会見を開き、謝罪と説明を行った。3日の会見では、事後原因について「大きな理由としては老朽化を考えている」「老朽化以外にも[[東日本大震災]]の影響など外圧の可能性もある」と説明しており<ref>{{Cite news|url=http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20121203-OYT1T00528.htm|title=中央道トンネル崩落、中日本高速が改めて謝罪|work=YOMIURI ONLINE|publisher=読売新聞社|date=2012年12月3日|accessdate=2012年12月3日}}</ref>、具体的にはトンネル本体上部の天井(覆工コンクリート)と、天井板を支える吊り金具をつなぐ[[ボルト]]([[コンクリートアンカー]]、直径1.6[[cm]]、長さ23cm)が抜けている箇所があったことを明らかにした<ref>{{Cite news|url=http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2012120302000243.html|title=崩落事故死者9人に 天井ボルト脱落 原因は老朽化|work=[[東京新聞]]TOKYO Web|publisher=中日新聞社|date=2012年12月3日|accessdate=2012年12月3日}}</ref>。

この天井板はトンネルにおける「換気ダクト」の役割を果たしている。吊り金具同士の間は隔壁で仕切られており、覆工コンクリートと天井板・隔壁で仕切られた一方はトンネル内の車の排ガスを換気機を使って排出する排気用、もう片方は外部の新鮮な空気を取り入れる送気用の空間として利用されていた<ref>{{Cite news|url=http://mainichi.jp/opinion/news/20121203ddm003040192000c.html|title=クローズアップ2012:中央道トンネル崩落 後手に回った対応|work=[[毎日jp]]|publisher=毎日新聞社|date=2012年12月3日|accessdate=2012年12月3日}}</ref>。これは「[[トンネル#横流換気方式|横流換気方式]]」と呼ばれる構造で、コスト面で不利となるが、交通換気や自然風に影響されない最も安定した換気方式として長大トンネルや海底トンネルで多く採用されている方式である<ref>{{Citation|url=http://www.jste.or.jp/toptoe/hb/cp/p116.pdf|format=PDF|title=道路交通技術必携2007|page=116|editor=社団法人交通工学研究会|year=2007|ISBN=ISBN: 978-4-7676-7600-5}}</ref>。今回の事故では天井板が崩落したことにより換気ダクトの機能が失われ、煙の除去が困難になった。また、崩落した天井板は、1枚の隔壁に幅の長さが同じ天井板が左右2枚ずつ直角に交わる形で固定されていたことがわかっており、一枚が崩落すると同時に隣接する天井版が連鎖的に崩落したものと見られている<ref>{{Cite news|url=http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2012120600049|title=構造的な問題で連鎖か=トンネル天井板崩落-中日本高速|work=時事ドットコム|publisher=[[時事通信社]]|date=2012年12月6日|accessdate=2012年12月7日}}</ref><ref> 連結構造が大事故を誘因か 笹子トンネル天井板崩落 ケンプラッツ2012年12月7日掲載 http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK0703B_X01C12A2000000/</ref>。

なお、横流換気方式は自動車の排ガス抑制技術の向上もあって近年では少数派になりつつあり<ref name = mainichijp>{{Cite news|url=http://mainichi.jp/select/news/20121203k0000m040001000c.html|title=中央道トンネル崩落:現場で焼死体3体を確認|work=[[毎日jp]]|publisher=毎日新聞社|date=2012年12月2日|accessdate=2012年12月4日}}</ref>、[[安芸トンネル]]・[[武田山トンネル]](ともに山陽自動車道)のように不要になったとして天井版を撤去する事例も見られるという<ref>{{Cite news|url=http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn201212030149.html|title=安芸トンネルなど天井板撤去|work=中国新聞地域ニュース|publisher=中国新聞社|date=2012年12月3日|accessdate=2012年12月4日}}</ref>。同様の構造であった笹子トンネル下り線でも、今回の事故に併せて換気方式を横流換気方式から変更し、天井板を除去している(後述)。

笹子トンネルは1年に一度の定期点検、5年に一度の詳細点検を実施しており、事故の直前は2012年9月に詳細点検を実施していたが、このときは異常は特に見当たらなかったという<ref>{{Cite news|url=http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/121202/dst12120221300018-n1.htm|title=【トンネル内崩落】9月点検では「異常なし」 同様構造3本緊急点検へ 中日本高速道路|work=[[MSN産経ニュース]]|date=2012年12月2日|accessdate=2012年12月7日}}</ref>。ただし、笹子トンネルの詳細検査において、天井板を固定する金属ボルトの異常を検知する打音検査については「目視で異常を確認した場合」にのみ実施する運用としており<ref>{{Cite news|url=http://www.asahi.com/national/update/1206/TKY201212050994.html|title=笹子トンネルだけ打音検査せず マニュアルでは義務|work=[[朝日新聞デジタル]]|date=2012年12月6日|accessdate=2012年12月7日}}</ref>、打音検査は2000年以降実施していないなどの実態が警察の調べで明らかになっている<ref>{{Cite news|url=http://www3.nhk.or.jp/news/html/20121207/t10014023311000.html|title=ボルトの打音検査 10年余行わず|work=NHK NEWS WEB|date=2012年12月7日|accessdate=2012年12月7日}}</ref>。

=== 国土交通省の対応 ===
[[国土交通省]]は、日本国内での[[高速道路]]における天井の崩落による死亡事故は過去に例がないとしている<ref>{{Cite web|date=2012-12-03|url=http://www.asahi.com/national/update/1202/TKY201212020423.html|title=天井老朽化が原因か 中央道トンネル崩落事故|publisher=朝日新聞デジタル|accessdate=2012-12-03}}</ref>が、国土交通省[[道路局]]では笹子トンネルと同型のトンネル(吊り金具により支えられた天井板を有するトンネル)が[[関越トンネル]]([[関越自動車道]]・[[東日本高速道路|NEXCO東日本]]管理)、[[関門国道トンネル]]([[国道2号]]・[[西日本高速道路|NEXCO西日本]]管理)、[[山手トンネル]]([[首都高速中央環状線]]・[[首都高速道路]]管理)を始め、日本全国で49箇所(3日調査時点)あることを明らかにし、今回の事故を受けて同型のトンネルの緊急点検を[[地方整備局]]や各高速道路会社などの道路管理者に指示した<ref>{{Cite press release|url=http://www.mlit.go.jp/report/press/road01_hh_000303.html|title=トンネル天井板の緊急点検について|publisher=国土交通省道路局|date=2012年12月3日|accessdate=2012年12月3日}}</ref>。これを受けて、NEXCO中日本でも自社管轄内にある同型のトンネル4か所(中央自動車道[[恵那山トンネル]]、[[新東名高速道路]][[新東名高速道路のトンネルと橋#富士川トンネル|富士川トンネル]]、[[東名高速道路]][[都夫良野トンネル]]、および笹子トンネル下り線)の緊急点検を行っている<ref>{{Cite news|url=http://mainichi.jp/select/news/20121203k0000e040198000c.html|title=トンネル崩落:つり天井式を緊急点検 中日本高速|work=[[毎日jp]]|publisher=毎日新聞社|date=2012年12月3日|accessdate=2012年12月3日}}</ref>。また、NEXCO中日本の公式ウェブサイトのトップに謝罪のコメントを記し、同区間の通行止め情報を提供している<ref>[http://www.c-nexco.co.jp/ NEXCO中日本公式HP](2012年12月6日閲覧)</ref>。

同型トンネルの緊急点検については[[#同型トンネルの緊急点検|後述]]する。

点検に加えて[[国土交通省]]は、トンネルに詳しい専門家からなる事故調査委員会を立ち上げた。同委員会は、4日午後に笹子トンネルの崩落現場を訪れ、落下した天井板をつり下げていたアンカーの腐食状況や天井部分のコンクリートの状態などについて調べた。その後に行われた会議で、事故原因の特定の方法や点検のあり方などについて議論した。今後、崩落現場で実際にアンカーを抜く試験などを検討しており、事故原因の究明には一定の時間が必要だとしている<ref>[http://www.tv-asahi.co.jp/ann/news/web/html/221205000.html 事故調査委員会を立ち上げ 笹子トンネル崩落事故]([[テレビ朝日]]2012年12月5日05:50(2012年12月10日閲覧))</ref>。

=== 崩落原因に関する他説 ===
ボルトが抜け落ちて大量の天井板が崩落した原因については、[[防災システム研究所]]所長の[[山村武彦]]がつり下げ用金具の腐食以外に[[東北地方太平洋沖地震]]およびその翌日に発生した[[長野県北部地震]]や[[富士山]]周辺部の地震活動などの揺れがトンネル自体を歪ませた可能性を指摘している。なお、山村は同時に[[1996年]]に発生した[[豊浜トンネル#豊浜トンネル岩盤崩落事故|豊浜トンネル岩盤崩落事故]]についても[[1993年]]の[[北海道南西沖地震]]の影響が指摘されている、とした<ref>『[[中日新聞]]』2012年12月3日付 36面</ref>。

また、トンネルの上部に鉛直方向に削孔した場所を接着剤で固定しボルトでつり下げるという施工方法そのものが不適切ではなかったかに疑問があるのではないかとの報道もある<ref>{{Cite news|url=http://www3.nhk.or.jp/news/html/20121208/t10014052541000.html|title=ボルト使用方法 専門家“疑問ある”|work=NHK NEWS WEB|date=2012年12月8日|accessdate=2012年12月11日}}</ref>。本件と同様に、2006年7月に[[アメリカ合衆国|アメリカ]]・[[マサチューセッツ州]]の高速道路で天井板が崩落し通行中の車両が巻き込まれた事故では、アメリカの[[国家運輸安全委員会]]がまとめた報告書によれば、引き抜き試験を行った結果、長期間支える力が弱かったことが分かり、接着剤の特性を設計側と施工側、双方が把握していなかったことや、定期点検が行われていなかったことなどが事故の背景にあったと指摘している<ref>{{Cite news|url=http://www3.nhk.or.jp/news/html/20121208/k10014052701000.html|title=天井板落下事故 アメリカでも発生|work=NHK NEWS WEB|publisher=日本放送協会|date=2012年12月8日|accessdate=2012年12月11日}}</ref><ref>{{Cite report|url=http://www.ntsb.gov/doclib/reports/2007/HAR0702.pdf|title=Ceiling Collapse in the Interstate 90 Connector Tunnel Boston, Massachusetts July 10, 2006|format=PDF|language=英語|date=2006年7月10日|accessdate=2012年12月8日}}</ref>。

== 事故の影響 ==
[[File:The electric signboard that Sasago tunnel is closed to traffic.JPG|thumb|笹子トンネル通行止を知らせる[[電光掲示板]]。国道20号線甲府市国母地区2012年12月12日撮影]]
事故の影響で上り線は[[一宮御坂インターチェンジ|一宮御坂IC]] - [[大月ジャンクション|大月JCT]]間、下り線は大月JCT - [[勝沼インターチェンジ|勝沼IC]]間が通行止めとなった<ref name="JARTIC">[http://www.jartic.or.jp/guide/topics1.html 中央自動車道 天井板崩落事故 関連情報] - [[日本道路交通情報センター]]</ref>。なお、大月JCTに隣接している[[大月インターチェンジ|大月IC]]からの流出は可能<ref name="JARTIC" />。12月4日現在、上り線の復旧の見込みは立っておらず、下り線の復旧にも点検作業のため復旧まで1週間ほどかかる見込みであった<ref>[http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20121203-OYT1T01197.htm 笹子トンネル上り線、復旧のメド立たず] - (読売新聞2012年12月4日01時34分配信(2012年12月8日閲覧))</ref>。

[[国土交通省]][[地方整備局|関東地方整備局]]甲府河川国道事務所及び[[日本道路交通情報センター]]は、基本的な[[迂回|迂回路]]として[[国道20号]]経由を案内している<ref name="JARTIC" /><ref name="mlit-kofu">{{Cite web|url=http://www.ktr.mlit.go.jp/koufu/koufu00346.html|title=中央道(大月IC~勝沼IC間)通行止めに伴う迂回路情報|publisher=国土交通省関東地方整備局甲府河川国道事務所|accessdate=2012年12月8日}}</ref>が、国道20号は一部道幅が狭く渋滞が予想されることから、国道20号を避けるルートとして、中央道(富士吉田線)[[河口湖インターチェンジ|河口湖IC]]または[[国道139号]]から[[国道137号]]を通る[[富士吉田市|富士吉田]]経由のルートを推奨している。また、埼玉方面に抜けるルートとして、[[国道140号]]([[雁坂トンネル有料道路|雁坂トンネル]])経由を併せて案内している。甲府河川国道事務所では迂回路情報提供と同時に国道20号の交通状況ライブカメラを公開し、所要時間情報を提供している<ref name="mlit-kofu"/>。

国道20号は笹子トンネルでの平日平均交通量が事故前の9,000台/日から24,000台/日に急増する<ref>{{PDFlink|[http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000070611.pdf 笹子トンネル周辺交通量]}} - 国土交通省関東地方整備局甲府河川国道事務所公開情報(2012年12月8日閲覧)</ref>など混雑が続いており、NEXCO中日本幹部の話として「通常の中央道経由よりも1時間、渋滞時には2-3時間以上余計に時間を要する」状況が伝えられている<ref>{{Cite news|url=http://sankei.jp.msn.com/economy/news/121202/biz12120220030004-n1.htm|title=【トンネル内崩落】渋滞避けられない 東・名・阪の物流に影響も、各社代替ルートの選定急ぐ|work=[[MSN産経ニュース]]|publisher=産経新聞社|date=2012年12月2日|accessdate=2012年12月8日}}</ref>。このため、[[物流]]の面や[[高速バス]]で直接的な影響が生じている。

=== 物流への影響 ===
物流に関しては、[[日本郵便]]が関東地域と山梨県、長野県(松本エリア)の間の[[郵便物]]や[[ゆうパック]]の[[配達]]遅延が生じる場合があることを公表している<ref>{{Cite press release|url=http://www.post.japanpost.jp/notification/productinformation/2012/1203_01.html|title=笹子トンネル天井板崩落事故の影響に伴う送達遅延に関するお知らせ|publisher=[[日本郵便]]|date=2012年12月3日|accessdate=2012年12月6日}}</ref>。一方、その他の宅配事業者([[佐川急便]]、[[日本通運]]、[[ヤマト運輸]]など)は、運送ルートを東名高速道路経由に振り替えるなどして対応し、遅配のおそれについては公表していない<ref name="sankeibiz20121204">{{Cite news|url=http://www.sankeibiz.jp/business/news/121204/bsd1212040501004-n1.htm|title=笹子トンネル事故 お歳暮は?帰省は? 産業界、不通長期化を懸念 迂回ルート模索|work=Sankei Biz|publisher=[[産経デジタル]]|date=2012年12月4日|accessdate=2012年12月8日}}</ref>。

[[小売業]]、[[製造業]]界でも、商品の配送ルートの変更を強いられており、[[イオングループ]]では通常の運送ルートを変更し、通行止め区間を回避する措置をとった。主に山梨県内でスーパーを運営する[[オギノ]]も、県中央部にある配送センターから笹子トンネルを経由して県北東部に向かう出荷ルートについて、より時間がかかる迂回ルートに切り替えた。また、中央道沿線に拠点を置く製造各社の1つである、産業用[[クレーン]]メーカーの[[キトー]]は「製品出荷、部品調達とも1、2日の遅れが出ている」とし、[[山梨県]][[忍野村]]に本社工場を持ち、産業用工作機械の製造を行う[[ファナック]]では、通行止めが長期化すれば搬送ルートの本格的な見直しを進めることを検討。[[長野県]][[飯田市]]にある[[シチズン平和時計]]も同市内にある4工場からの製品出荷に影響が出かねないとして、トラックの出発時間を繰り上げるなどの措置を検討している<ref name="mainichi 121203-2"/>。また、通販大手の[[Amazon.co.jp|アマゾン]]では山梨県への商品配送に「遅れが生じている」と発表し、即日配達については山梨県内からの注文受け付けを一時中止しているという<ref name="sankeibiz20121204"/>。

=== 旅客輸送への影響 ===
高速バスについては、各路線とも遅延が生じており、[[中央高速バス]]を運行する[[京王電鉄バス]]・京王バス東によると、事故発生当日の12月2日は平均1時間、最大1時25分の遅れや一部便での運休が出ており、公式ホームページで遅延状況を知らせているが「当面は迂回ルートで対応するしかない」とし、共同運行する[[山梨交通]]は、国道20号の渋滞を避けるため、運行ルートを国道137号・河口湖IC経由に変更した<ref>{{Cite news|url=http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20121203-OYT1T00389.htm|title=頭抱える運送業界、崩落事故で代替ルートに奔走|work=YOMIURI ONLINE|publisher=読売新聞社|date=2012年12月3日|accessdate=2012年12月6日}}</ref>。また、共同運行する[[アルピコ交通]]では2日の松本-新宿線で最大1時間45分遅延および一部便に運休が生じており、運行担当者の話として「(通行止めが長期化すると)バスのやりくりなどで厳しくなる」「(競合する鉄道([[中央本線]])に)一時的に客を奪われることも覚悟しなくてはならない」との見解を示している<ref name="sankeibiz20121204"/>。実際に、中央本線の[[特別急行列車|特急]]([[あずさ (列車)|あずさ]]・[[かいじ (列車)|かいじ]])の2012年 - 2013年年末年始における指定席予約数の前年比が、[[東日本旅客鉄道|JR東日本]]管内の[[新幹線]]を含めた他の特急が平均110%であるのに対し、あずさ・かいじは160%と突出して増加している<ref>{{Cite press release |title=年末年始期間の指定席予約状況のお知らせ|url=http://www.jreast.co.jp/press/2012/20121212.pdf|publisher=[[東日本旅客鉄道]]|date=2012-12-14}}</ref>。

一方、新宿から長野方面の日帰りバスツアーを運営している[[はとバス]]は「一般道は道路幅が狭いうえ、雪が降る可能性もある」と懸念を表明しており<ref name="mainichi 121203-2">[http://mainichi.jp/select/news/20121204k0000m020037000c.html トンネル崩落:大動脈寸断 迫る年の瀬] 毎日新聞 2012年12月3日閲覧</ref>、一部ツアーの中止も生じている。また、[[ジェイアールバス関東]]や[[西日本ジェイアールバス]]によると、[[ドリーム号 (東京 - 京阪神)|中央ドリーム号]]や[[東海道昼特急号|中央道昼特急号]]にも大幅遅延や運休が生じているという<ref>[http://www.nishinihonjrbus.co.jp/cgi-bin/news_detail.cgi?no=360 中央道笹子トンネル事故に伴う運行の遅れ等について] 西日本ジェイアールバス公式サイト 2012年12月3日配信・5日閲覧</ref><ref>ジェイアールバス関東は[http://www.jrbuskanto.co.jp/ 公式ページ]TOPから「運行情報」を参照の事。</ref>。[[西日本鉄道|西鉄バス]]が東京 - 福岡間を中央道経由で運行する「[[はかた号]]」については2012年12月20日より[[東名高速道路]]を経由するルートへの変更が予定されていたが、事故後から前倒しで東名高速道路経由での運行に切り替えている<ref>[http://jik.nnr.co.jp/traffic/default.htm 一般路線バス・高速バスの運行について] - 西日本鉄道、2012年12月5日閲覧</ref>。

=== 副次的影響 ===
観光産業面でも打撃が懸念されている。年末年始は帰省に伴う[[渋滞|交通渋滞]]が発生しやすく、旅行業界では「ツアーによっては、渋滞を見越して訪問する観光地を減らす可能性もある」との声も上がり、[[山梨県庁|山梨県]]観光部によると県外からの観光客の7割がマイカー利用者とし、同県の担当者は「通行止めが続けば、迂回のため移動時間が長くなるなど、観光に打撃を与えかねない」と不安を募らせている<ref name="mainichi 121203-2"/>。

事故の翌日の時点で、すでに[[株式市場]]への影響も出ており、12月3日の[[東京証券取引所]]においては、[[日本橋梁]]、[[間組|ハザマ]]など、トンネル工事を請け負う[[建設会社]]の株価が上昇した<ref>[http://sankei.jp.msn.com/economy/news/121203/fnc12120312180005-n1.htm トンネル工事企業の株価が急上昇 日本橋梁、ハザマなど 全国の補修需要期待で] - 産経新聞2012年12月03日配信(2012年12月6日閲覧)</ref>。

2012年12月16日が投票日である[[第46回衆議院議員総選挙]]<ref>[http://www.yomiuri.co.jp/election/shugiin/2012/news2/20121208-OYT1T00497.htm 民・維vs自・公…トンネル崩落で公共事業論戦] - 読売新聞</ref>、[[2012年東京都知事選挙]]<ref>[http://sankei.jp.msn.com/politics/news/121206/elc12120623370067-n1.htm トンネル事故でインフラ整備対応も争点に] - 産経新聞 2012年12月6日(2012年12月8日閲覧)</ref>において、[[公共事業]]のあり方、[[首都高速道路]]などの老朽化した[[インフラストラクチャー|インフラ]]の整備について争点の一つとなった。

== 暫定復旧 ==
[[File:29 December 2012, the interim recovery Sasago Tunnel West direction.JPG|thumb|250px|暫定復旧した笹子トンネル下り線内部。2012年12月29日15時56分(JST)撮影。<br/>東京方面から甲府方向へ走行。問題となった天井板はすべて撤去されている。壁面に82.8キロポストの表示。ちょうど、この付近の右側(上り線側)で事故が発生した。]]
[[2012年]][[12月8日]]、NEXCO中日本は下り線トンネルの天井板(約7,500枚)を撤去した上で、下り線を使った[[対面通行]]により2012年内に暫定的に復旧させる見通しであると発表した<ref>{{Cite press release|url=http://www.c-nexco.co.jp/news/2980.html|title=中央自動車道笹子トンネル(下り線)の開通見通しについて|publisher=中日本高速道路|date=2012年12月8日|accessdate=2012年12月31日}}</ref>。その後の工事進捗を受け、12月25日には暫定復旧(開通)日を[[12月29日]]とし、通行止めとしていた一宮御坂IC-勝沼IC間の上り線の通行止めを解除し、大月JCT-勝沼IC間(約19km)のうち笹子トンネルを含む80kmポストから88kmポストの間(約8km)を対面通行として開通させると発表した<ref>{{Cite press release|url=http://www.c-nexco.co.jp/news/3001.html|title=中央自動車道 笹子トンネルの開通見通しについて|publisher=中日本高速道路|date=2012年12月25日|accessdate=2012年12月31日}}</ref>。

対面通行にあたって、[[センターライン]]を認識できるように車線を黄色の実線にし、赤いポストコーンを配置するなど安全対策を講じている<ref name="s1228">{{Cite news|url=http://response.jp/article/2012/12/25/187710.html|title=【笹子トンネル事故】29日開通へ…下り線の対面通行で|work=[[Response.]]|date=2012年12月25日|accessdate=2012年12月28日}}</ref>。規制速度は[[山梨県警察|山梨県警]]と協議し、笹子トンネル内が時速40km、その他の区間は同50kmと定めた<ref name="s1228" />。

しかし、その影響でUターンラッシュによる大規模な渋滞が予測されており、[[2013年]][[1月2日]]には上り線で45km(渋滞通過まで約4時間半)の渋滞が予想されている<ref name="a1228">{{Cite news|url=http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2012122800308|title=笹子トンネル29日夕に仮復旧=45キロ渋滞予測、迂回路無料化-中日本高速|work=時事ドットコム|publisher=[[時事通信社]]|date=2012年12月28日|accessdate=2012年12月28日}}</ref>。NEXCO中日本は、迂回路の利用者のために[[2013年]][[1月1日]]午前0時から中央道富士吉田線(大月IC - 河口湖IC)を無料にし、渋滞緩和を図ることとしている<ref name="a1228" />。これにより、[[国道20号]]の利用と中央道富士吉田線と[[国道137号]]の利用での金額が同額(例として中央道高井戸IC - 東名名古屋IC間の普通車料金:上り7000円、下り7350円)となる<ref>{{Cite news|url=http://response.jp/article/2012/12/28/187953.html|title=【笹子トンネル事故】29日夕方、通行止め解除 中央道一部で無料措置|work=[[Response.]]|date=2012年12月28日|accessdate=2012年12月28日}}</ref>。

脇見運転の心配がなされていたが<ref>{{cite news |title=「上を見ながら運転」 天井板崩落の笹子トンネル、帰省渋滞も |author= |newspaper=[[MSN産経ニュース]] |date=2012-12-29 |url=http://sankei.jp.msn.com/life/news/121229/trd12122919040011-n1.htm |accessdate=2012-12-30}}</ref>、開通の翌日の30日午後には車5台が絡む玉突き事故が発生<ref>{{cite news |title=笹子トンネル:5台が事故…前日に仮復旧、一時閉鎖 山梨 |author= |newspaper=[[毎日新聞]] |date=2012-12-30 |url=http://mainichi.jp/select/news/20121230k0000e040114000c.html |accessdate=2012-12-31}}</ref><ref>{{cite news |title=笹子トンネルで車5台絡む事故、3時間通行止め |author= |newspaper=[[読売新聞]] |date=2012-12-30 |url=http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20121230-OYT1T00416.htm?from=ylist |accessdate=2012-12-31}}</ref>、さらに翌31日午前にも車4台が絡む追突事故が発生した<ref>{{cite news |title=また笹子トンネルで事故 病院に7人搬送 |author= |newspaper=[[産経新聞]] |date=2012-12-3 |url=http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/121231/dst12123112530000-n1.htm |accessdate=2012-12-31}}</ref>。

<gallery widths="200px" heights="150px">
File:Sasago tunnel interim recovery, Otsuki side.JPG|暫定復旧した大月市側入口。制限速度40キロの仮設表示板。<br/>2012年12月29日撮影。
File:Sasago tunnel interim recovery, Koshu side.JPG|暫定復旧した甲州市側入口。対面通行を注意喚起する電光掲示板。<br/>2012年12月29日撮影。
File:Sasago tunnel ceiling panel is removed, the ventilation system were built.JPG|天井板は撤去され、新たに換気ファンが設置された。<br/>2012年12月31日撮影。
</gallery>

== 同型トンネルの緊急点検 ==
国土交通省の緊急点検指示を受けて、各道路管理者(高速道路会社、地方整備局、地方自治体など)は該当する全トンネルの緊急点検を行い、以下のトンネルで不具合があったことが明らかになっている。
* [[首都高速1号羽田線]] [[羽田トンネル]](東京都・[[首都高速道路]]管理)
*: 上下線1か所ずつ、計2か所で吊り上げ金具の破断を確認したと発表。発見直後の[[12月5日]]夜から6日早朝にかけて損傷箇所を金属製[[ワイヤー]]で補強する応急処置を実施した上で<ref>{{Cite news|url=http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG0604B_W2A201C1CC1000/?dg=1|title=首都高羽田トンネル、天井板つり金具破断見つかる 2カ所で補修工事|work=日本経済新聞電子版|publisher=日本経済新聞社|date=2012年12月6日|accessdate=2012年12月6日}}</ref>、12月22日午後10時から25日午前5時まで前後の区間を通行止めにして天井板の撤去工事を行った<ref>{{Cite news|url=http://www.jiji.com/jc/zc?k=201212/2012121400849|title=1号羽田線、22~25日通行止め=トンネル天井板撤去で-首都高|work=時事通信|publisher=時事通信社|date=2012年12月14日|accessdate=2012年12月18日}}</ref>。これらの天井板は元々、年度内に撤去する予定だったが、今回の事故を受け、前倒しして行われることとなった。なお、2011年8月の点検では異常が見つからなかったとしているが、2006年6月の点検では、下り線で吊り上げ金具1本が破断しているのが見つかっており、このときは残りの金具だけでも安全性は保たれるとして緊急の補修工事は見送っていたとしている。
* [[阪神高速31号神戸山手線]] [[神戸長田トンネル]](兵庫県・[[阪神高速道路]]管理)
*: 吊り上げ天井のつり上げ金具全6600か所のうち北行き線の6か所と南行き線の1箇所でボルト4本が抜け落ち、4本に緩みが見つかったと発表。同日に緊急補修工事を実施した。金具の構造は6本のボルトで一つのつり金具を支える構造で、阪神高速道路が抜け落ちや緩みの原因を調べている。すでに4か所の補修を終え、残り3箇所4本も早急に補修する方針である<ref>{{Cite press release|url=http://www.hanshin-exp.co.jp/company/topics/2012-1208.html|title=トンネル天井板の緊急点検結果(速報)について|publihser=阪神高速道路|date=2012年12月8日|accessdate=2012年12月11日}}</ref>。阪神高速では、通行に支障のある状態ではないという発表をしている。

[[File:Torii Tunnel north 1.jpg|thumb|鳥居トンネル。2011年6月撮影]]
* [[国道19号]] [[鳥居峠 (長野県)|鳥居トンネル]](長野県・国土交通省[[中部地方整備局]]管理)
*:トンネル上部に固定するボルトが2個ともない吊り金具が1本見つかったと発表。4日に作業員が発見し、5日に補修した。つり金具は、1.8m間隔で横2列に計約2000本あり、天井板を支えている。左右2本のつり金具に天井板9枚分、重さにして約630kgの荷重がかかる構造である。ボルトのないつり金具が1本あったが、金具の下部が格子状のレールで他の金具と連結されており、天井板は崩落を免れたという。トンネルの点検は2年に一度実施しているが、従来の点検ではボルト欠損は見つからなかった。また、発表が7日になった点について飯田国道事務所の唐沢良治副所長は「内部の手続きが遅れた」と釈明した<ref>{{Cite news|url=http://mainichi.jp/area/nagano/news/20121208ddlk20040154000c.html|title=中央道トンネル崩落:緊急点検 ボルト欠損つり金具1本、鳥居トンネルで発見/長野|work=毎日jp|publisher=毎日新聞社|2012年12月08日|accessdate=2012年12月9日閲覧}}</ref>。その後、複数のメディアが中部地方整備局への取材結果として、この吊り金具に対応する天井のボルト穴がそもそも存在していなかったということを報じている<ref>{{Cite news|url=http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2012121400445|title=ボルトの穴、天井になし=鳥居トンネル、開通時から?-長野|work=時事ドットコム|publisher=時事通信社|date=2012年12月14日|accessdate=2012年12月15日}}</ref><ref>{{Cite news|url=http://mainichi.jp/select/news/20121214k0000m040120000c.html|title=トンネル点検:長野の国道「鳥居トンネル」 ボルト穴なし|work=毎日jp|publisher=毎日新聞社|date=2012年12月14日|accessdate=2012年12月15日}}</ref>。鳥居トンネルは1978年開通で、1995年に大規模改修を行っているが、いつの時点からボルト穴がないのかは判っていないという。
* [[国道197号]] 夜昼トンネル([[愛媛県]]・愛媛県管理)
*: 4日に点検を実施し、固定ボルトの緩み39箇所、吊り金具の腐食2箇所、金具周辺のコンクリートの異音19箇所が確認された。いずれも軽度であり、天井板落下等のおそれは低いとされた。固定ボルトの緩みは週内に、腐食・異音箇所は2012年内に補修を行うとした<ref>{{Cite news|url=http://www.ehime-np.co.jp/news/local/20121205/news20121205882.html|title=軽度異常60カ所 県が夜昼トンネル緊急点検|date=2012-12-05|accessdate=2012-12-17|newspaper=愛媛新聞}}</ref>。

国土交通省が2012年12月17日現在でとりまとめたところによると、事故の発生した笹子トンネル上り線を除く対象の全60トンネルのうち上記を含む16本のトンネルで何らかの不具合が発見された。国土交通省によれば、いずれも安全上大きな問題はなく、緊急補修を実施または行う予定としているという<ref>{{Cite press release|url=http://www.mlit.go.jp/report/press/road01_hh_000311.html|title=トンネル天井板の緊急点検結果について|publisher=国土交通省道路局|date=2012年12月13日|accessdate=2012年12月17日}}<br />{{Cite press release|url=http://www.mlit.go.jp/report/press/road01_hh_000314.html|title=トンネル天井板の緊急点検結果について(追加)|publisher=国土交通省道路局|date=2012年12月17日|accessdate=2012年12月17日}}</ref>。上述の他に不具合のあったトンネルは以下の通り。
; 高速道路会社管理(計8トンネル)
:* [[中央自動車道]] [[恵那山トンネル]](下り線)
:* [[東名高速道路]] [[都夫良野トンネル]](下り線左ルート)
:* [[京滋バイパス]] [[宇治トンネル]](上り線)
:* [[九州自動車道]] [[加久藤トンネル]](上り線)
; 国土交通省管理(計3トンネル)
:* [[国道46号]] [[仙岩トンネル]]
:* [[国道32号]] 大豊トンネル
; 地方公共団体管理(計3トンネル)
:* [[国道137号]] [[新御坂トンネル]]
:* [[山梨県道6号甲府韮崎線]] [[愛宕トンネル (甲府市)|愛宕トンネル]]
; 地方道路公社管理(計2トンネル)
:* [[名古屋高速2号東山線]] 東山トンネル(上り線)、同(下り線)


== 脚注 ==
== 脚注 ==
{{Reflist}}
<references/>


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
* [[中央自動車道]]
* [[中央自動車道]]
* [[笹子トンネル]]
* [[笹子トンネル (中央自動車道)]]
* [[アンカーボルト]]
* [[アンカーボルト]]
* [[トンネル#横流換気方式]]
* [[トンネル#横流換気方式]]


== 外部リンク ==
== 外部リンク ==
* [http://www.ktr.mlit.go.jp/saigai/koufu_dis00028.html 中央自動車道笹子トンネル天井板落下事故関連情報 甲府河川国道事務所 応援対策支部] (国土交通省 関東地方整備局 災害情報)
* [http://www.ktr.mlit.go.jp/saigai/koufu_dis00028.html 中央自動車道笹子トンネル天井板落下事故関連情報 甲府河川国道事務所 応援対策支部]国土交通省 関東地方整備局 災害情報
* [http://www.c-nexco.co.jp/ 中央自動車道 笹子トンネル天井板落下事故について] - 中日本高速道路(NEXCO中日本)
* [http://www.c-nexco.co.jp/ 中央自動車道 笹子トンネル天井板落下事故について] - 中日本高速道路(NEXCO中日本)
* [http://www.pref.yamanashi.jp/koucho/sasagotunnel_accident.html 中央自動車道笹子トンネル天井板落下事故について] - 山梨県
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{{日本の高速道路}}

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[[Category:日本の交通事故]]
[[Category:日本の交通事故]]
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[[Category:山梨県の歴史]]
[[en:]]
[[Category:2012年の日本]]
[[Category:2012年の災害]]
[[Category:平成時代の災害]]

2012年12月31日 (月) 10:35時点における版

笹子トンネル天井板落下事故
天井板が崩落した状態(模式図)
場所 日本の旗 山梨県大月市笹子町
中央自動車道笹子トンネル(上り線)
座標
北緯35度36分56.9秒 東経138度47分53.6秒 / 北緯35.615806度 東経138.798222度 / 35.615806; 138.798222座標: 北緯35度36分56.9秒 東経138度47分53.6秒 / 北緯35.615806度 東経138.798222度 / 35.615806; 138.798222
日付 2012年12月2日
午前8時5分頃 (JST)
概要 トンネルの吊り天井の落下
原因 調査中
死亡者 9人
負傷者 2人
損害 上り線(一宮御坂IC - 大月JCT間)、
下り線(勝沼IC - 大月JCT間)
で長期通行止め
関与者 NEXCO中日本
対処 笹子トンネルと同型のトンネル4か所で、吊り天井の緊急点検の実施
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笹子トンネル天井板落下事故(ささごトンネルてんじょうばんらっかじこ)とは、2012年12月2日山梨県大月市笹子町の中央自動車道上り線笹子トンネルで天井板のコンクリート板がおよそ130m[1]にわたって落下し、走行中の車複数台が巻き込まれて死傷者が出た事故。

「笹子トンネル天井板落下事故」の呼称は国土交通省[2]やトンネルを管理する中日本高速道路(NEXCO中日本)[3]が用いている呼び名だが、報道機関などでは、笹子トンネル事故[4]笹子トンネル崩落事故[5]笹子トンネル天井板崩落事故[6]などの名でも報じられている。

日本の高速道路上での事故としては、1979年に発生した日本坂トンネル火災事故や、2012年4月29日に発生した関越自動車道高速バス居眠り運転事故を死亡者数で上回り、最も死亡者数の多い事故となった。

概要

2012年12月2日午前8時5分頃(JST)[7]、東京方面に向かう上り線トンネルの大月市側出口から約1700m付近で、トンネルの天井である横5m、奥行1.2m、厚さ約8cmと9cm、重さ約1.2tほどのコンクリート板およそ270枚(中壁を含む)[8]が約110mにわたってV字型に折り重なるように崩れ落ち[7]、事故発生時に走行中であった自動車3台が下敷きとなり、うち2台から発火し[7][9]トンネル内で火災が発生してレスキュー隊が現場に向かえないほどの黒煙が上がったうえ、火災によるをトンネル内の煙除去装置が作動しなかったため排出ができず、トンネル内部に高温の煙が充満した[10]

崩落現場で下敷きとなっていたレンタカーワゴン車日産・セレナ)からは20代の男女5名の焼死体が発見されたほか[11][12]、普通乗用車(車種不明)から70代の男女と60代の女性が焼死体となって発見された[13]。また、トラック(日産・バネット)を運転していて崩落に巻き込まれた食品卸売会社勤務の50代の男性は携帯電話で同僚に助けを求めていたが、救出時には既に死亡していた[14]

事故発生翌日の12月3日まで救助活動が行われ、計9名の死亡が確認された。また、重軽傷者は2人となった[13][15][16]

山梨県警察本部は3日未明、業務上過失致傷罪で捜査を始め、大月警察署に捜査本部を設置した。大月署は4日午前にNEXCO中日本の本社、八王子支社および同支社大月保全・サービスセンター、9月にトンネル内の点検を実施した中日本ハイウェイ・エンジニアリング東京など計6か所を家宅捜索し、これまでの点検状況など安全管理態勢について捜査した。また、トンネルの構造に詳しい大学教授ら専門家数人にも立ち会いのもと、トンネル内で現場検証を行った。さらに、トンネル内の監視カメラの映像を押収して解析を進めた[15][17][18]

トンネル内の状況

事故以前の上り線内部の様子。2009年5月5日撮影

右側車線を走行中に事故発生に遭遇し、アクセルを踏み続けて脱出したNHK甲府放送局の男性記者は、「天井がメリメリと何かを剥がすように崩れてくる瞬間が見えた」と語っている[19]

救助に当たった東山梨消防本部塩山消防署は3日午前に記者会見を開き、救助活動当時のトンネル内の様子を語った。このうち、通報を受けてトンネルの小牧・長野側から事故現場に入った同署のポンプ隊長は、「トンネルの入り口に到着したときは、視界は良好で奥まで見えた。消防車で中に入ると、両脇の歩道を歩いて避難している人がいたが、車に残っている人もいたので、避難を呼びかけた。途中から車を降りて進むと、煙の濃度が増してきて懐中電灯の光も足元に届かなくなり、奥では爆発音も聞こえたため、退避せざるをえなかった」と事故直後の現場の様子について語った。また、トンネルの東京側から事故現場に入り、保冷車に取り残された男性の救助活動を指揮した同署の小笠原克也署長は、「何トンもある天板がいつ落ちるか分からないことがいちばんの活動のネックで、安全管理を重視しながら救助活動を進めた。持っている機材は通常の交通事故や火災には対応できるが、今回は大きな重機など特殊なものがないと進められず、困難な活動になった」と活動が難航したことを明らかにした[20]

事故の原因・対応

事故の原因

笹子トンネルの構造を示した断面図モデル

同事故を受けて、NEXCO中日本は2日15時頃と3日9時頃に緊急記者会見を開き、謝罪と説明を行った。3日の会見では、事後原因について「大きな理由としては老朽化を考えている」「老朽化以外にも東日本大震災の影響など外圧の可能性もある」と説明しており[21]、具体的にはトンネル本体上部の天井(覆工コンクリート)と、天井板を支える吊り金具をつなぐボルトコンクリートアンカー、直径1.6cm、長さ23cm)が抜けている箇所があったことを明らかにした[22]

この天井板はトンネルにおける「換気ダクト」の役割を果たしている。吊り金具同士の間は隔壁で仕切られており、覆工コンクリートと天井板・隔壁で仕切られた一方はトンネル内の車の排ガスを換気機を使って排出する排気用、もう片方は外部の新鮮な空気を取り入れる送気用の空間として利用されていた[23]。これは「横流換気方式」と呼ばれる構造で、コスト面で不利となるが、交通換気や自然風に影響されない最も安定した換気方式として長大トンネルや海底トンネルで多く採用されている方式である[24]。今回の事故では天井板が崩落したことにより換気ダクトの機能が失われ、煙の除去が困難になった。また、崩落した天井板は、1枚の隔壁に幅の長さが同じ天井板が左右2枚ずつ直角に交わる形で固定されていたことがわかっており、一枚が崩落すると同時に隣接する天井版が連鎖的に崩落したものと見られている[25][26]

なお、横流換気方式は自動車の排ガス抑制技術の向上もあって近年では少数派になりつつあり[12]安芸トンネル武田山トンネル(ともに山陽自動車道)のように不要になったとして天井版を撤去する事例も見られるという[27]。同様の構造であった笹子トンネル下り線でも、今回の事故に併せて換気方式を横流換気方式から変更し、天井板を除去している(後述)。

笹子トンネルは1年に一度の定期点検、5年に一度の詳細点検を実施しており、事故の直前は2012年9月に詳細点検を実施していたが、このときは異常は特に見当たらなかったという[28]。ただし、笹子トンネルの詳細検査において、天井板を固定する金属ボルトの異常を検知する打音検査については「目視で異常を確認した場合」にのみ実施する運用としており[29]、打音検査は2000年以降実施していないなどの実態が警察の調べで明らかになっている[30]

国土交通省の対応

国土交通省は、日本国内での高速道路における天井の崩落による死亡事故は過去に例がないとしている[31]が、国土交通省道路局では笹子トンネルと同型のトンネル(吊り金具により支えられた天井板を有するトンネル)が関越トンネル関越自動車道NEXCO東日本管理)、関門国道トンネル国道2号NEXCO西日本管理)、山手トンネル首都高速中央環状線首都高速道路管理)を始め、日本全国で49箇所(3日調査時点)あることを明らかにし、今回の事故を受けて同型のトンネルの緊急点検を地方整備局や各高速道路会社などの道路管理者に指示した[32]。これを受けて、NEXCO中日本でも自社管轄内にある同型のトンネル4か所(中央自動車道恵那山トンネル新東名高速道路富士川トンネル東名高速道路都夫良野トンネル、および笹子トンネル下り線)の緊急点検を行っている[33]。また、NEXCO中日本の公式ウェブサイトのトップに謝罪のコメントを記し、同区間の通行止め情報を提供している[34]

同型トンネルの緊急点検については後述する。

点検に加えて国土交通省は、トンネルに詳しい専門家からなる事故調査委員会を立ち上げた。同委員会は、4日午後に笹子トンネルの崩落現場を訪れ、落下した天井板をつり下げていたアンカーの腐食状況や天井部分のコンクリートの状態などについて調べた。その後に行われた会議で、事故原因の特定の方法や点検のあり方などについて議論した。今後、崩落現場で実際にアンカーを抜く試験などを検討しており、事故原因の究明には一定の時間が必要だとしている[35]

崩落原因に関する他説

ボルトが抜け落ちて大量の天井板が崩落した原因については、防災システム研究所所長の山村武彦がつり下げ用金具の腐食以外に東北地方太平洋沖地震およびその翌日に発生した長野県北部地震富士山周辺部の地震活動などの揺れがトンネル自体を歪ませた可能性を指摘している。なお、山村は同時に1996年に発生した豊浜トンネル岩盤崩落事故についても1993年北海道南西沖地震の影響が指摘されている、とした[36]

また、トンネルの上部に鉛直方向に削孔した場所を接着剤で固定しボルトでつり下げるという施工方法そのものが不適切ではなかったかに疑問があるのではないかとの報道もある[37]。本件と同様に、2006年7月にアメリカマサチューセッツ州の高速道路で天井板が崩落し通行中の車両が巻き込まれた事故では、アメリカの国家運輸安全委員会がまとめた報告書によれば、引き抜き試験を行った結果、長期間支える力が弱かったことが分かり、接着剤の特性を設計側と施工側、双方が把握していなかったことや、定期点検が行われていなかったことなどが事故の背景にあったと指摘している[38][39]

事故の影響

笹子トンネル通行止を知らせる電光掲示板。国道20号線甲府市国母地区2012年12月12日撮影

事故の影響で上り線は一宮御坂IC - 大月JCT間、下り線は大月JCT - 勝沼IC間が通行止めとなった[40]。なお、大月JCTに隣接している大月ICからの流出は可能[40]。12月4日現在、上り線の復旧の見込みは立っておらず、下り線の復旧にも点検作業のため復旧まで1週間ほどかかる見込みであった[41]

国土交通省関東地方整備局甲府河川国道事務所及び日本道路交通情報センターは、基本的な迂回路として国道20号経由を案内している[40][42]が、国道20号は一部道幅が狭く渋滞が予想されることから、国道20号を避けるルートとして、中央道(富士吉田線)河口湖ICまたは国道139号から国道137号を通る富士吉田経由のルートを推奨している。また、埼玉方面に抜けるルートとして、国道140号雁坂トンネル)経由を併せて案内している。甲府河川国道事務所では迂回路情報提供と同時に国道20号の交通状況ライブカメラを公開し、所要時間情報を提供している[42]

国道20号は笹子トンネルでの平日平均交通量が事故前の9,000台/日から24,000台/日に急増する[43]など混雑が続いており、NEXCO中日本幹部の話として「通常の中央道経由よりも1時間、渋滞時には2-3時間以上余計に時間を要する」状況が伝えられている[44]。このため、物流の面や高速バスで直接的な影響が生じている。

物流への影響

物流に関しては、日本郵便が関東地域と山梨県、長野県(松本エリア)の間の郵便物ゆうパック配達遅延が生じる場合があることを公表している[45]。一方、その他の宅配事業者(佐川急便日本通運ヤマト運輸など)は、運送ルートを東名高速道路経由に振り替えるなどして対応し、遅配のおそれについては公表していない[46]

小売業製造業界でも、商品の配送ルートの変更を強いられており、イオングループでは通常の運送ルートを変更し、通行止め区間を回避する措置をとった。主に山梨県内でスーパーを運営するオギノも、県中央部にある配送センターから笹子トンネルを経由して県北東部に向かう出荷ルートについて、より時間がかかる迂回ルートに切り替えた。また、中央道沿線に拠点を置く製造各社の1つである、産業用クレーンメーカーのキトーは「製品出荷、部品調達とも1、2日の遅れが出ている」とし、山梨県忍野村に本社工場を持ち、産業用工作機械の製造を行うファナックでは、通行止めが長期化すれば搬送ルートの本格的な見直しを進めることを検討。長野県飯田市にあるシチズン平和時計も同市内にある4工場からの製品出荷に影響が出かねないとして、トラックの出発時間を繰り上げるなどの措置を検討している[47]。また、通販大手のアマゾンでは山梨県への商品配送に「遅れが生じている」と発表し、即日配達については山梨県内からの注文受け付けを一時中止しているという[46]

旅客輸送への影響

高速バスについては、各路線とも遅延が生じており、中央高速バスを運行する京王電鉄バス・京王バス東によると、事故発生当日の12月2日は平均1時間、最大1時25分の遅れや一部便での運休が出ており、公式ホームページで遅延状況を知らせているが「当面は迂回ルートで対応するしかない」とし、共同運行する山梨交通は、国道20号の渋滞を避けるため、運行ルートを国道137号・河口湖IC経由に変更した[48]。また、共同運行するアルピコ交通では2日の松本-新宿線で最大1時間45分遅延および一部便に運休が生じており、運行担当者の話として「(通行止めが長期化すると)バスのやりくりなどで厳しくなる」「(競合する鉄道(中央本線)に)一時的に客を奪われることも覚悟しなくてはならない」との見解を示している[46]。実際に、中央本線の特急あずさかいじ)の2012年 - 2013年年末年始における指定席予約数の前年比が、JR東日本管内の新幹線を含めた他の特急が平均110%であるのに対し、あずさ・かいじは160%と突出して増加している[49]

一方、新宿から長野方面の日帰りバスツアーを運営しているはとバスは「一般道は道路幅が狭いうえ、雪が降る可能性もある」と懸念を表明しており[47]、一部ツアーの中止も生じている。また、ジェイアールバス関東西日本ジェイアールバスによると、中央ドリーム号中央道昼特急号にも大幅遅延や運休が生じているという[50][51]西鉄バスが東京 - 福岡間を中央道経由で運行する「はかた号」については2012年12月20日より東名高速道路を経由するルートへの変更が予定されていたが、事故後から前倒しで東名高速道路経由での運行に切り替えている[52]

副次的影響

観光産業面でも打撃が懸念されている。年末年始は帰省に伴う交通渋滞が発生しやすく、旅行業界では「ツアーによっては、渋滞を見越して訪問する観光地を減らす可能性もある」との声も上がり、山梨県観光部によると県外からの観光客の7割がマイカー利用者とし、同県の担当者は「通行止めが続けば、迂回のため移動時間が長くなるなど、観光に打撃を与えかねない」と不安を募らせている[47]

事故の翌日の時点で、すでに株式市場への影響も出ており、12月3日の東京証券取引所においては、日本橋梁ハザマなど、トンネル工事を請け負う建設会社の株価が上昇した[53]

2012年12月16日が投票日である第46回衆議院議員総選挙[54]2012年東京都知事選挙[55]において、公共事業のあり方、首都高速道路などの老朽化したインフラの整備について争点の一つとなった。

暫定復旧

暫定復旧した笹子トンネル下り線内部。2012年12月29日15時56分(JST)撮影。
東京方面から甲府方向へ走行。問題となった天井板はすべて撤去されている。壁面に82.8キロポストの表示。ちょうど、この付近の右側(上り線側)で事故が発生した。

2012年12月8日、NEXCO中日本は下り線トンネルの天井板(約7,500枚)を撤去した上で、下り線を使った対面通行により2012年内に暫定的に復旧させる見通しであると発表した[56]。その後の工事進捗を受け、12月25日には暫定復旧(開通)日を12月29日とし、通行止めとしていた一宮御坂IC-勝沼IC間の上り線の通行止めを解除し、大月JCT-勝沼IC間(約19km)のうち笹子トンネルを含む80kmポストから88kmポストの間(約8km)を対面通行として開通させると発表した[57]

対面通行にあたって、センターラインを認識できるように車線を黄色の実線にし、赤いポストコーンを配置するなど安全対策を講じている[58]。規制速度は山梨県警と協議し、笹子トンネル内が時速40km、その他の区間は同50kmと定めた[58]

しかし、その影響でUターンラッシュによる大規模な渋滞が予測されており、2013年1月2日には上り線で45km(渋滞通過まで約4時間半)の渋滞が予想されている[59]。NEXCO中日本は、迂回路の利用者のために2013年1月1日午前0時から中央道富士吉田線(大月IC - 河口湖IC)を無料にし、渋滞緩和を図ることとしている[59]。これにより、国道20号の利用と中央道富士吉田線と国道137号の利用での金額が同額(例として中央道高井戸IC - 東名名古屋IC間の普通車料金:上り7000円、下り7350円)となる[60]

脇見運転の心配がなされていたが[61]、開通の翌日の30日午後には車5台が絡む玉突き事故が発生[62][63]、さらに翌31日午前にも車4台が絡む追突事故が発生した[64]

同型トンネルの緊急点検

国土交通省の緊急点検指示を受けて、各道路管理者(高速道路会社、地方整備局、地方自治体など)は該当する全トンネルの緊急点検を行い、以下のトンネルで不具合があったことが明らかになっている。

  • 首都高速1号羽田線 羽田トンネル(東京都・首都高速道路管理)
    上下線1か所ずつ、計2か所で吊り上げ金具の破断を確認したと発表。発見直後の12月5日夜から6日早朝にかけて損傷箇所を金属製ワイヤーで補強する応急処置を実施した上で[65]、12月22日午後10時から25日午前5時まで前後の区間を通行止めにして天井板の撤去工事を行った[66]。これらの天井板は元々、年度内に撤去する予定だったが、今回の事故を受け、前倒しして行われることとなった。なお、2011年8月の点検では異常が見つからなかったとしているが、2006年6月の点検では、下り線で吊り上げ金具1本が破断しているのが見つかっており、このときは残りの金具だけでも安全性は保たれるとして緊急の補修工事は見送っていたとしている。
  • 阪神高速31号神戸山手線 神戸長田トンネル(兵庫県・阪神高速道路管理)
    吊り上げ天井のつり上げ金具全6600か所のうち北行き線の6か所と南行き線の1箇所でボルト4本が抜け落ち、4本に緩みが見つかったと発表。同日に緊急補修工事を実施した。金具の構造は6本のボルトで一つのつり金具を支える構造で、阪神高速道路が抜け落ちや緩みの原因を調べている。すでに4か所の補修を終え、残り3箇所4本も早急に補修する方針である[67]。阪神高速では、通行に支障のある状態ではないという発表をしている。
鳥居トンネル。2011年6月撮影
  • 国道19号 鳥居トンネル(長野県・国土交通省中部地方整備局管理)
    トンネル上部に固定するボルトが2個ともない吊り金具が1本見つかったと発表。4日に作業員が発見し、5日に補修した。つり金具は、1.8m間隔で横2列に計約2000本あり、天井板を支えている。左右2本のつり金具に天井板9枚分、重さにして約630kgの荷重がかかる構造である。ボルトのないつり金具が1本あったが、金具の下部が格子状のレールで他の金具と連結されており、天井板は崩落を免れたという。トンネルの点検は2年に一度実施しているが、従来の点検ではボルト欠損は見つからなかった。また、発表が7日になった点について飯田国道事務所の唐沢良治副所長は「内部の手続きが遅れた」と釈明した[68]。その後、複数のメディアが中部地方整備局への取材結果として、この吊り金具に対応する天井のボルト穴がそもそも存在していなかったということを報じている[69][70]。鳥居トンネルは1978年開通で、1995年に大規模改修を行っているが、いつの時点からボルト穴がないのかは判っていないという。
  • 国道197号 夜昼トンネル(愛媛県・愛媛県管理)
    4日に点検を実施し、固定ボルトの緩み39箇所、吊り金具の腐食2箇所、金具周辺のコンクリートの異音19箇所が確認された。いずれも軽度であり、天井板落下等のおそれは低いとされた。固定ボルトの緩みは週内に、腐食・異音箇所は2012年内に補修を行うとした[71]

国土交通省が2012年12月17日現在でとりまとめたところによると、事故の発生した笹子トンネル上り線を除く対象の全60トンネルのうち上記を含む16本のトンネルで何らかの不具合が発見された。国土交通省によれば、いずれも安全上大きな問題はなく、緊急補修を実施または行う予定としているという[72]。上述の他に不具合のあったトンネルは以下の通り。

高速道路会社管理(計8トンネル)
国土交通省管理(計3トンネル)
地方公共団体管理(計3トンネル)
地方道路公社管理(計2トンネル)

脚注

  1. ^ “130メートル部分 中央から前後へ連鎖崩落か ボルト変形が裏付ける”. 山梨日日新聞. (2012年12月14日) 
  2. ^ 中央自動車道笹子トンネル天井板落下事故関連情報 - 国土交通省道路局
  3. ^ 中央自動車道 笹子トンネル天井板落下事故に伴う通行止めについて - NEXCO中日本公式サイト内
  4. ^ “インフラ再生委を設置=笹子トンネル事故受け-日建連”. 時事ドットコム (時事通信社). (2012年12月20日). http://www.jiji.com/jc/c?g=ind_30&k=2012122000441 2012年12月20日閲覧。 
  5. ^ “経済 : 笹子トンネル崩落事故物流、観光へ影響懸念 諏訪信金12月経済概況”. 長野日報. (2012年12月25日). http://www.nagano-np.co.jp/modules/news/article.php?storyid=27167 
  6. ^ “下り線から避難できず現場に戻る 笹子トンネル崩落”. 日本経済新聞電子版. (2012年12月20日). http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG20012_Q2A221C1CC0000/ 2012年12月20日閲覧。 
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  14. ^ “中央道トンネル崩落:男性1人を救出も死亡確認”. 毎日jp (毎日新聞社). (2012年12月2日). http://mainichi.jp/select/news/20121203k0000m040085000c.html 2012年12月7日閲覧。 
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関連項目

外部リンク