終夜運転
終夜運転(しゅうやうんてん)とは、公共交通機関で深夜時間帯(22:00~翌5:00)も含めて24時間運行を行い、駅や停留所などで停車し、旅客扱いを行うことを指す。
但し、夜行列車・夜行バス・長距離の国際線航空便も深夜帯の運転をするがこの範疇には入れない場合が多い。
目次 |
[編集] 概要
[編集] 鉄道
ニューヨーク市地下鉄やマンチェスター空港への空港連絡鉄道など、アメリカ合衆国やヨーロッパの比較的規模の大きい都市の地下鉄などで行われているのが著名である。手法としては経営路線の多くが緩行線と急行線に分かれた複々線であるため、複線ずつを隔日で整備する事によって夜間の運行を確保している。
日本においては東京・名古屋・京阪神・福岡などの大都市圏(一部路線除く)で、12月31日より1月1日にかけて、主に初詣の為に神社仏閣への参詣を目的としたものが知られている。
鉄道の場合、最終列車運行後から始発列車運行までの時間は保線などを行う時間であることや、その時間は大部分の住民は睡眠時間であることから、騒音源として特に注意を計る必要が生じる。
22:00~翌朝5:00の間に勤務する労働者(深夜勤務。ここでは乗務員や駅員)の賃金は労働基準法で、通常時間勤務(5:00~22:00)の25%増(いわゆる深夜手当て)となるため、事業者から見て収入の割に支出が多くなることから、この時間帯はごくわずかな運行本数、または全く運転しない場合もある。また、大都市周辺の通勤路線では、最終列車が午前0時から1時頃、始発列車が4時30分頃から5時30分頃に運行されることが多い。
通常深夜・早朝時間帯に動く需要は魚・野菜等の生鮮食料品の市場に勤める流通業者など特殊な条件での労働者や、登山客、解禁当日の太公望・遊漁者などであり、需要も限られる。そういった者に対する供給については通例小規模なもので対応が出来るため、例えば最終列車の延長や始発列車と別に深夜・早朝時間帯に専用列車(あるいは臨時列車)を仕立てるという方策を採るケースが多い。
しかし、深夜帯でも不特定多数の需要があり、且つ習慣から社会的に認められていた年末年始の初詣については、例外的に運行が行われる場合が多い。
但し、1990年代後半以降、一部の鉄道事業者(大手私鉄では東京急行電鉄や西武鉄道)では「需要が認めにくい」等の理由により最終列車の延長や繰下げ(午前2時頃まで)や始発列車の繰り上げ(午前4時頃から)などで対応し、必ずしも終夜運行とはならない場合もまま見受けられる。また東京都交通局(都営地下鉄)では労働争議により一時期終夜運転を中止した例もある[1]。
また新幹線の場合、保線中の鉄道事故防止や、高速運転がもたらす騒音による睡眠妨害などの影響を防ぐため、悪天候や災害などでのダイヤの乱れなど特殊な事情の場合を除くと、24時(午前0時)~6時の営業運転はしないことになっているが、監督官庁や沿線自治体に許可を得た上で1967年から日本万国博覧会(大阪万博)が開催された1970年頃とサッカーワールドカップが行われた2002年6月に一部区間で終夜運転に代わる終列車繰り下げ、ないし始発の繰上げ運行を行った実績がある(ただし2002年は騒音を抑えるため在来線並みの速度で運転した)[2]。
2011年3月11日に東北地方太平洋沖地震が発生し、渋谷駅や新宿駅などで多数の帰宅困難者が出た。各地で滞留している帰宅困難者を救済するため、東京メトロなど一部の私鉄では終夜運転が行われた[3][4]。
なお、日本でも1980年代後半より1990年代前半のバブル景気期にはJR・大手私鉄に対し「社会的な要請」としてこのような要請がなされ、テレビニュースのNEWS23でも1990年代初頭に「終夜電車を走らせよう!」とのタイトルで特集を組んでいたこともあった。また、地下鉄でも前述したニューヨークの例に倣って終夜運転をすべきという意見が出されたこともあったが、整備保守の時間を確保する問題から難しいとされている。
[編集] 路線バス
短・中距離の路線バス(高速バス・急行バス等を含む)においては、深夜帯には深夜バスを運行している事業者があるものの、鉄道と同じく需要が認めにくいことや、深夜勤務となる乗務員等へ25%増賃金(深夜手当て)を支出することを抑える理由で、終夜運転を実施していない事業者が多い。例えば明石海峡大橋経由の阪神~淡路島・徳島の場合、日中は運行本数が非常に多いものの、終夜運行を実施している事業者はいない。また、路線によってはバスターミナルやパークアンドライド用駐車場が24時間営業ではない理由もある。
ただし、空港との行き来に用いられるリムジンバスの場合は、深夜・早朝の航空機との連絡目的で午前2~3時台に始発・終着となる便が設定されている場合もあり、運行時間の区分けが曖昧になっている。この場合、停留所には駐車場を備え、自家用車でのアクセスを想定しているのが普通である。
一般の路線バスでは、神奈川中央交通や京阪バスなどが毎年12月31日から翌年1月1日までにかけて終夜運転を行う事がある。これは、神奈中バスでは丹沢山系大山が沿線にあり、初日の出目的の登山客や大山阿夫利神社への初詣客が非常に多いため、伊勢原駅および大山小学校(校庭臨時駐車場)より大山ケーブル駅までピストン運転を行う。京阪バスでも同様に成田山大阪別院明王院(成田山不動尊)が沿線に存在しているため、京阪香里園~成田山不動尊前間でピストン運転を行っている。これらは前述の鉄道における初詣参拝客輸送と同じ理由である。また、沿線に多数の初詣スポットを抱える京都市営バスでも、鉄道と接続するターミナルと特に参拝客の多い社寺を結ぶ3路線で例年終夜運行を実施している。
台湾では、台北~高雄間など幹線を中心に、高速バスを24時間運行している会社が多い。深夜帯は概ね1時間間隔で運行されている。また統聯客運、阿羅哈客運では、台中インターチェンジ付近にある自社の高速バスターミナルと、台中市中心部を結ぶ路線バスを24時間運行している。いずれも日本と違い、昼間と同一料金となっている。
[編集] 船舶
船舶においては、短区間のフェリーを中心に終夜運転(終夜運航)が行われている事例がある。これは、航路が橋の代替(いわゆる海上国道区間)となっている場合に多く見られ、乗客よりも大型トラックとそのドライバーが主な顧客となる。
日本では瀬戸内海を隔てた本州と四国を結ぶ航路や、津軽海峡を挟んだ本州と北海道を結ぶ青函航路で多く見られる。特に前者(宇高国道フェリーや四国フェリーなど)は、本州四国連絡橋の開通後も料金の安さと乗船中の仮眠が出来るメリットもあって人気が高い。公営では桜島と鹿児島港を結ぶ桜島フェリーが行っている。
[編集] その他
タクシーの場合は、利用者の便を計るために終日運行されている事が多い。ただし、タクシーは定時ダイヤに則って運転されるものではないこともあり、終夜運転と称さない事例が多い。また、一定の条件で運転される乗合タクシーは終夜運転を行うことはない。
また飛行機でも過去に日本航空が東京国際空港(羽田空港)~福岡空港(板付空港)間を大阪国際空港(伊丹空港)経由で結ぶ「ムーンライト便」という夜行便があったが、これも終夜運転とは言わない。日本の航空路線の場合、騒音問題からの空港の使用時間の制約や、鉄道や路線バスといった空港アクセス交通機関の運行時間の関係から、終夜運行どころか深夜や早朝時間帯の旅客便の運行は非常に少ない(ただし早朝の便数は事前購入割引などの普及により増加傾向にある)。スターフライヤーで北九州5:30発→羽田6:55着の早朝第1便、羽田23:30発→北九州1:15着の最終便が設定されている程度である。
羽田や新千歳、中部、関空など24時間利用可能な空港を結ぶ路線では、午前2時台や3時台に発着する便もあるが、いずれも貨物便である。しかし、騒音規制の緩い国の一部空港では、午前2時台や3時台に発着する便もある。