矢野康治

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日本の旗 日本の官僚
矢野 康治
やの こうじ
生年月日 (1962-12-10) 1962年12月10日(58歳)
出生地 山口県の旗 山口県
出身校 一橋大学経済学部
称号 経済学士(一橋大学・1985年
配偶者 あり[1]

在任期間 2021年7月8日 -

在任期間 2020年7月20日 - 2021年7月8日

在任期間 2019年7月5日 - 2020年7月20日

在任期間 2017年7月5日 - 2019年7月5日
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矢野 康治(やの こうじ、1962年12月10日 - )は、日本の財務官僚内閣官房長官秘書官福田康夫内閣麻生内閣第2次安倍内閣)、財務省大臣官房審議官主税局担当)、財務省大臣官房長、財務省主税局長、財務省主計局長等を経て、財務事務次官[2]

人物[編集]

山口県下関市出身。1978年 山口県立下関西高等学校に入学。高校時代の得意科目は数学だったが、白衣を着るイメージしか持てず、文系となる[3]。1981年 一橋大学経済学部に入学。先輩である故滝本徹九州経済産業局長の勧めで荒憲治郎の経済原論のゼミを受講する。大学では庭球同好会に所属[3]。1985年3月 一橋大学経済学部卒業。卒論は「非自発的失業の解明」[3]。同年 旧大蔵省(現財務省)入省、大臣官房文書課配属。三隅隆司一橋大教授は高校・大学の同期[4][5][6]

小樽税務署長を経て、国税庁長官官房課長補佐[7]として定員配分見直しや行政手続法適用除外のための働きかけなどを行った。ハーバード大学客員研究員を経て、1994年から証券局課長補佐を務め、毎日泊まり込みで働き続ける生活を送り、証券版金融ビッグバンをほぼ一人で策定したことで知られている[7][8][9][6]

一般会計の歳出・歳入の推移のグラフにおいて、歳出総額の増加と税収の減少の折れ線グラフをワニの口と喩えたことで知られている[10]

人事担当官房企画官、主計局主計企画官、主計局厚生労働係[7][8][6]、主税企画官、主計局調査課長を経て、2007年より内閣官房長官秘書官として町村信孝に仕え知遇を得た[1][6][11]。続く麻生内閣でも河村建夫の下で内閣官房長官秘書官。民主党政権時代には与謝野馨経済財政担当大臣社会保障と税の一体改革担当大臣の「不安のない社会保障制度を確立するために」と掲げた目標に共鳴し、消費税率を8%、10%へと上げる3党合意の成立に貢献した[12]。その後菅義偉各内閣官房長官秘書官、主税局担当審議官を歴任[6]。この間、村尾信尚監修関西学院大学エグゼクティブコース講師も務めた[6][13][14][15]

2017年7月、財務省大臣官房長に就任した[16]。2018年4月に入り、福田淳一財務事務次官によるテレ朝女性記者に対するセクハラ疑惑がスキャンダルとして報道が過熱するなか、4月18日に福田が辞任。次官辞職に伴い矢野が事務次官事務代理を務めた[17][18][19][20]。財務省官房長としてセクハラ疑惑の事実に口をつぐみ認定も否認もしなかったが、同年4月27日になると一転して、官房長の矢野と伊藤豊官房秘書課長らが会見で、十分な反論反証がなされていないとして前次官によるセクハラ行為を認定して調査を打ち切った[21]

2019年7月より財務省主税局長(一橋大学出身の局長は1984年に矢澤富太郎関税局長に就任して以来35年ぶり。出向者も含めると関税局長とバーターになった厚木進以来7年ぶり。)[22]、さらに翌2020年7月20日より主計局長に横滑りした[23]。この人事は消費増税計画を控えて配置された田中一穂以来で戦後2人目[24]太田充財務次官の次の次官最有力になったが、入省同期では藤井健志(国税庁長官から内閣官房副長官補)と、可部哲生(理財局長から国税庁長官)の2人が早くからの次官候補と見做されていた。もとより財務省には旧大蔵省以来旧制一高の気風を引き摺るバンカラで"ワルの文化"が根を張っており、福田元次官、佐川宣寿元国税庁長官ら82年組入省のツートップを張る2人の騒動もそうした中で生起したものと指摘されている。官房長時代に上述のセクハラ騒動に対処するため、パワハラ防止のための"360度評価"を導入した。この過程で藤井と、次官就任が本命視されていた可部が外れ、ダークホースの矢野が次期次官最有力に浮かび上がった[25]

2021年7月8日、一橋大学出身者初の財務事務次官[26]

田中一穂の直系の弟子であり[27]、財務省内でも厳格な財政再建論者として知られ、「原理主義者」と評されることもある[28]。また、「自分が正しいと思ったら、上司でも政治家にでも直言する人物」だともされている[29]

週刊誌にポリ袋ハンターと写真付きで紹介された人物でもある[30]

経歴[編集]

事柄
1962 12 山口県下関市出身[4][7]
1985 3 一橋大学経済学部卒業[7]
4 大蔵省入省、大臣官房文書課[7]
1987 大臣官房調査企画課[7]
1988 7 理財局資金第一課原資係長心得[31][7]
1990 小樽税務署長[7]
1991 6 国税庁長官官房総務課課長補佐(調査一・二[32][7]
1993 ハーバード大学国際問題研究所客員研究員[7]
1994 7 証券局証券市場課課長補佐(株式市場[32][7]
1996 主税局調査課課長補佐[7]
1997 主税局税制第二課課長補佐(消費税[32][7]
1998 主税局税制第一課課長補佐(所得税[32][7]
1999 6 主税局税制第一課課長補佐兼主税局税制第一課審査室長[7]
2000 大臣官房秘書課課長補佐(総括[32][7]
2001 7 大臣官房企画官(人事担当)兼秘書課[7][6]
2002 主計局主計企画官(財政分析・政策評価・予算執行調査係担当)[7]
2003 主計局主計企画官(財政分析・政策評価・予算執行調査係担当)兼主計局司計課[7]
2004 大臣官房企画官兼主計局厚生労働第一〜七係[32][7]
2005 主税局総務課主税企画官兼主税局調査課兼主税局税制第二課兼主税局税制第三課[7]
2006 主計局調査課長[7]
2007 9 町村信孝内閣官房長官秘書官(福田康夫内閣[6]
2008 河村建夫内閣官房長官秘書官(麻生内閣[6]
2009 10 内閣官房国家戦略室参事官(鳩山由紀夫内閣[6]
2010 11 内閣官房社会保障改革担当室参事官(菅直人内閣野田内閣[6]
2012 8 財務省主税局総務課長[6]
12 菅義偉内閣官房長官秘書官(第2次安倍内閣[6]
2015 7 財務省大臣官房審議官(主税局担当)[6]
2017 大臣官房長[16]
2018 4 財務事務次官事務代理[33][34]
7 免・財務事務次官事務代理[35]
2019 財務省主税局長[22]
2020 財務省主計局長[23]
2021 財務事務次官

「バラマキ合戦」発言[編集]

経緯[編集]

2021年10月8日発売の月刊誌『文藝春秋』に矢野が寄稿した記事において、新型コロナウイルス感染症の経済対策にまつわる政策論争を「バラマキ合戦」と表現[36]。このままでは国家財政が破綻する可能性があると主張した[36]

一般職の公務員である事務次官が在職中に政治的な意見表明を行うことは異例であり、閣僚や国会議員が発言に対する意見を述べるなど波紋を広げた[37]

反応[編集]

官房長官松野博一は、11日の記者会見で「財政健全化に向けた一般的な政策論について、私的な意見として述べたものと承知している」としたうえで、「政策の実行にあたっては、政府与党一体となって取り組むことが重要で、いろいろな議論をしたうえで、方向性が決まれば、関係者にはしっかりと協力してもらうことが重要だ」と述べた[38]

一部の経済評論家から、積極財政を「バラマキ」と呼び替える事や積極財政を行うことで国家財政が破綻しない事実を指摘され多くの批判を受けた。

1985年同期入省者[編集]

『ロクマル』と呼ばれ、優秀な人間がそろっていると評判の期だった[39]

著書[編集]

  • 『決断!待ったなしの日本財政危機―平成の子どもたちの未来のために』東信堂 2005年

関連項目[編集]

脚注[編集]

[脚注の使い方]
  1. ^ a b 岩崎大輔「財務省非常勤職員が見た、福田前事務次官ら「エリート官僚」の素顔」 講談社現代ビジネス2018年5月10日
  2. ^ “財務次官に矢野主計局長 官房長官時代の菅氏秘書官”. 時事ドットコム (時事通信社). (2021年6月23日). https://www.jiji.com/jc/article?k=2021062301137&g=pol 2021年7月8日閲覧。 
  3. ^ a b c 臆せず主張し、不足あらば素直に反省。 謙虚な姿勢で財務次官としての職責を担う 一橋大学 HQ 2021年11月1日
  4. ^ a b 「毎日フォーラム・霞が関ふるさと記 山口県(下)」 毎日新聞2016年2月10日
  5. ^ 「三隅 隆司」researchma
  6. ^ a b c d e f g h i j k l m n 「Page 1エグゼクティブコース」 関西学院大学
  7. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w 「日本専門医認定制機構の社会的責務」
  8. ^ a b 「著者略歴」『決断!待ったなしの日本財政危機―平成の子どもたちの未来のために』
  9. ^ 「毎日フォーラム・課長補佐時代:財務省官房長 矢野康治(55)」毎日新聞2018年1月10日
  10. ^ 27頁『決断!待ったなしの日本財政危機―平成の子どもたちの未来のために』
  11. ^ 日本の国家像 -町村が変わる、町村が変える」 町村信孝オフィシャルホームページ
  12. ^ 異色の次官に込めた財務省の狙い 金融資産への課税を強化する道へ【政官財スキャニング】 日刊ゲンダイ 2021/7/21(水)
  13. ^ 「イベント・講座」北陸財務局長
  14. ^ 「官僚たちの夏、次官・局長級人事まるっと早わかり」 日刊工業新聞2017年07月08日
  15. ^ 「人事、財務省 」 日本経済新聞2015/7/7付
  16. ^ a b 「財務次官に福田氏 」日本経済新聞2017/7/4
  17. ^ 福田財務次官から辞職の申し出あり、認めた=麻生財務相
  18. ^ 財務省、狂うシナリオ 人事見通せず、発言力も低下 産経ニュース
  19. ^ 「外遊を終え帰国 19日(木)・20日(金) 」 日本経済新聞2018/04/20
  20. ^ 「セクハラ告発で辞任した福田前次官の退職金 後任の「#MeToo」は? 」 朝日新聞AERA.dot 2018/4/24
  21. ^ 【財務次官セクハラ疑惑】会見詳報(1)矢野官房長「福田氏から十分な反証反論はない」事実を認定 調査は打ち切り 産経新聞 2018年4月27日
  22. ^ a b 岡本次官・太田主計局長は留任、財務官に武内氏=財務省人事 朝日新聞デジタル2019年7月2日13時12分
  23. ^ a b 令和2年7月20日発令 (PDF)”. 財務省 (2020年7月20日). 2020年7月26日閲覧。
  24. ^ 最大のサプライズ人事 財務省主計局長に矢野氏 日本経済新聞 2020年7月14日 12:30(有料)
  25. ^ 岸宣仁 (2021年1月19日). “セクハラ次官「福田淳一」、公文書改ざん「佐川宣寿」… 財務省スキャンダルの背景にある「ワル」の文化”. デイリー新潮週刊新潮 2021年1月14日号) (gooニュース). https://news.goo.ne.jp/article/dailyshincho/nation/dailyshincho-698163.html?from=amp_web-article-link 2021年2月21日閲覧。 
  26. ^ Staff, Reuters「財務次官に矢野主計局長が昇格、金融庁長官は中島総政局長=幹部人事」『Reuters』、2021年7月7日。2021年7月8日閲覧。
  27. ^ 山村明義『財務省人事が日本を決める』徳間書店、2019年2月28日発行、255頁
  28. ^ 財務省のサプライズ人事 「原理主義者」起用の狙いとは 朝日新聞 2020年7月15日
  29. ^ セクハラ次官代行「矢野康治」官房長 次の次が見えて“ヒラメ化”? デイリー新潮 2018年5月3・10日号掲載
  30. ^ 【動画】財務省の事務次官がスーパーで「ポリ袋ハンター」になっていた” (日本語). NEWSポストセブン. 2021年10月13日閲覧。
  31. ^ 『大蔵要覧 昭和64年版』大蔵要覧出版社、1988年12月発行、71頁
  32. ^ a b c d e f 『財務省名鑑 2020年版』時評社、2019年11月発行
  33. ^ [1]財務省
  34. ^ 「財務省幹部名簿(平成30年4月24日現在)(PDF:172KB)」財務省
  35. ^ 平成30年7月27日発令(PDF:134KB)財務省
  36. ^ a b “財務事務次官「バラマキ合戦のような政策論」と月刊誌で批判”. NHKニュース. (2021年10月8日). https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211008/k10013298621000.html 2021年10月18日閲覧。 
  37. ^ “財務次官の「バラマキ批判」寄稿が波紋、与党内には不快感示す声も…首相は静観”. 読売新聞オンライン. (2021年10月12日). https://www.yomiuri.co.jp/politics/20211011-OYT1T50266/ 2021年10月18日閲覧。 
  38. ^ “財務次官の寄稿“バラマキ合戦”は「私的意見」官房長官”. NHKニュース. (2021年10月11日). https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211011/k10013301861000.html 2021年10月18日閲覧。 
  39. ^ 初の一橋大出身! 矢野康治・財務省新事務次官の「愛妻家伝説」 FRIDAY DIGITAL 2021/7/21
官職
先代:
太田充
財務省主計局長
2020年 - 2021年
次代:
茶谷栄治
先代:
星野次彦
財務省主税局長
2019年 - 2020年
次代:
住澤整
先代:
岡本薫明
財務省大臣官房長
2017年 - 2019年
次代:
茶谷栄治