白石一郎

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白石 一郎
誕生 (1931-11-09) 1931年11月9日
死没 (2004-09-20) 2004年9月20日(72歳没)
職業 小説家
言語 日本語
国籍 日本の旗 日本
ジャンル 歴史小説
主な受賞歴 直木三十五賞(1987年)
柴田錬三郎賞(1992年)
吉川英治文学賞(1999年)
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白石 一郎(しらいし いちろう、1931年(昭和6年)11月9日 - 2004年(平成16年)9月20日)は、日本作家

略歴・人物[編集]

釜山の生まれで本籍は壱岐市。終戦までは釜山、戦後は佐世保市で育つ[1]長崎県立佐世保北高等学校早稲田大学政治経済学部卒業。

大学在学中より、懸賞小説に応募を始めた。卒業後はタイヤ販売に従事するが、性に合わずに帰郷。父の経理事務所で働くかたわら、創作活動に励んだ。1955年、「臆病武者」が地方新聞の懸賞に一席入選。作家デビューを果たす。以後、一貫して歴史・時代小説を執筆。2002年に食道がんの宣告を受け、2004年9月20日肺炎により死去。

代表作は直木賞を受賞した『海狼伝』で、ほかにも「海」を舞台にした(または「海」を冠した)作品がいくつかあり、海洋時代小説の第一人者として知られる。このような「海」についてのこだわりは、壱岐出身という自身の生い立ちや「苦心して書き上げた書下ろし長篇小説に『海と虹の城』というタイトルをつけてベテランの編集者に手渡したところ、『海はやめましょう。タイトルに海という字がつく本は売れないんです』」と言われ、それ以来、「そんな馬鹿な!という口惜しまぎれの反発心が、根深く心のどこかに」あったことに起因している(カッコ内引用は『水軍の城』より)。

直木賞には、「孤島の騎士」(1970)、「火炎城」(1974)、「一炊の夢」「幻島記」(1975)、「サムライの海」(1980)、「島原大変」(1982)、「海賊たちの城」(1984)と相次いで候補作となったが、いずれも落選。『海狼伝』(1987)での受賞は、実に候補にあがること八回目、最初の候補作「孤島の騎士」から十七年を経てのことであった。余談だが、「孤島の騎士」は当時選考委員であった海音寺潮五郎に激賞されている。

双子の息子、白石一文白石文郎とも作家として活動している。一文とは親子二代での直木賞作家となっている。

受賞歴[編集]

著作[編集]

長編[編集]

  • 『鷹ノ羽の城』講談社、1963 のち文庫
  • 『長崎隠密坂』講談社、1969 「びいどろの城」文庫
  • 『銭の城』光風社書店、1972 のち講談社文庫
  • 『火炎城』講談社、1974 のち文庫(大友宗麟を描く)
  • 『さいころ武士道』光風社書店、1976 のち「銭の城」講談社文庫に入る
  • 『天翔ける女』文藝春秋、1979 のち文庫 (大浦慶を描く)
  • 『サムライの海』文藝春秋、1980 のち文庫
  • 『黒い炎の戦士 大河伝奇スペクタクル』全5冊 徳間ノベルス 1982-86 のち文庫
    • 唯一のSF作品。のちに、息子の白石一文が自分が原案を担当した「共著」であったことを明かした。
  • 『海狼伝』文藝春秋、1987 のち文庫
  • 『鳴門血風記』徳間書店、1988 のち文庫
  • 『海王伝』文藝春秋、1990 のち文庫
  • 『戦鬼たちの海 織田水軍の将・九鬼嘉隆毎日新聞社、1992 のち文春文庫
  • 『海将 若き日の小西行長新潮社 1993 のち文庫、講談社文庫
  • 『風雲児』読売新聞社、1994 のち文春文庫 (山田長政を描く)
  • 『南海放浪記』集英社、1996 のち文庫
  • 『異人館』朝日新聞社、1997 のち文庫、講談社文庫 (トーマス・ブレーク・グラバーを描く)
  • 『怒濤のごとく』毎日新聞社、1998 のち文春文庫 (鄭成功を描く)
  • 『航海者 三浦按針の生涯』幻冬舎、1999 のち文庫、文春文庫
  • 『海の夜明け 日本海軍前史』徳間書店、1999 のち文庫 (長崎海軍伝習所を描く)

短編集[編集]

  • 『幻島記』文藝春秋、1976 のち文庫
  • 『足音が聞えてきた』立風書房、1977 のち新潮文庫、「風来坊」徳間文庫
  • 『オランダの星』文藝春秋、1977 のち文庫
  • 『秘剣』青樹社、1982 のち新潮文庫
  • 『天上の露』青樹社、1983 のち新潮文庫、光文社文庫
  • 『島原大変』文藝春秋、1985 のち文庫
  • 『幽霊船』東京文芸社、1985 のち新潮文庫
  • 『蒙古の槍 孤島物語』文藝春秋、1987 のち文庫
  • 『弓は袋へ』新人物往来社、1988 のち新潮文庫
  • 『夫婦刺客 傑作時代小説』光文社文庫 1989
  • 『海峡の使者』文藝春秋、1989 のち文庫
  • 『戦国を斬る』講談社、1990 のち文庫
  • 『異国の旗』中央公論社、1991 「切腹」文春文庫
  • 『江戸の海』文藝春秋、1992 のち文庫
  • 『孤島物語』新潮社、1995 のち文庫、光文社文庫
  • 『玄界灘』文藝春秋、1997 のち文庫

シリーズ(連作)[編集]

『庖丁ざむらい』青樹社 1982 のち講談社文庫
『観音妖女』青樹社 1985 のち講談社文庫
『刀』青樹社 1988 のち講談社文庫
『犬を飼う武士』講談社 1991 のち文庫
『出世長屋』講談社 1993 のち文庫
『おんな舟』講談社 1997 のち文庫
『東海道をゆく』講談社 2002 のち文庫
  • 『ぎやまん波止場 若杉清吉捕物控』青樹社、1985 「長崎ぎやまん波止場」文春文庫
  • 『投げ銛千吉廻船帖』文藝春秋、1994 のち文庫
  • 『横浜異人街事件帖』文藝春秋、2000 のち文庫
『生きのびる 横浜異人街事件帖』文藝春秋 2004 のち文庫

エッセイ[編集]

  • 『博多歴史散歩 二千年のあゆみ』創元社 1973
  • 『戦国武将伝 リーダー達の戦略と決断』文藝春秋、1988 のち文庫
  • 『水軍の城』白水社、1990 のち文春文庫
  • 『天命を知る 乱世に輝いた男たち』PHP研究所 1992 のち文庫
  • 『江戸人物伝』文藝春秋、1993 のち文庫
  • 『海よ島よ 歴史紀行』講談社、1994 のち文庫
  • 『乱世を切る 歴史エッセイ』講談社文庫、1999
  • 『蒙古襲来 歴史よもやま話』日本放送出版協会、2001 のち講談社文庫
  • 『海のサムライたち』日本放送出版協会、2003 のち文春文庫

脚注[編集]

  1. ^ 白石一郎 小学館 日本大百科全書 コトバンク 2018年8月17日閲覧。