蜜蜂と遠雷

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蜜蜂と遠雷
著者 恩田陸
発行日 2016年9月23日
発行元 幻冬舎
ジャンル 青春小説、音楽小説
日本の旗 日本
言語 日本語
形態 上製本
ページ数 687
公式サイト 幻冬舎特設ページ
コード ISBN 978-4-344030039
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蜜蜂と遠雷』(みつばちとえんらい)は、恩田陸の日本の小説である。2017年(平成29年)、第156回直木三十五賞、第14回本屋大賞を受賞する。直木賞と本屋大賞のダブル受賞及び同作家2度目の本屋大賞受賞は、史上初である。また第5回ブクログ大賞で小説部門大賞も受賞している[1]

概要[編集]

音楽コンクールをそのまま、最初から本選までのすべてを小説として書くという着想を得たが、かなり難しく2009年に書き始めるまでに5年かかったと言う[2]。ピアノコンクールを舞台としてそれぞれの関わりと過去と進行を描く青春群像小説。3年に1回、開催される浜松国際ピアノコンクールへ2006年第6回から2015年第9回まで、途中からは執筆に並行して[2]、4度も取材。毎日、会場の座席で午前9時から夕方までピアノ演奏を聴き続け、この小説に結実した[3]

テーマ[編集]

音楽を閉じ込めているのは、ホールや建物ではなく人々の意識だ。音は自然の世界に満ちている。耳を澄ませばそこにいつも音楽がある。人々は自然の中の音楽を聞き取り書きとめ、音楽としていたのに、今は誰も自然の中に音楽を聞かなくなって、自分たちの耳の中に閉じ込めて、それを音楽だと思い込んでいる。自然の中の音楽が聴けるように、「音を外へ連れ出す」ことのできる音楽を、演奏できないだろうか。

あらすじ[編集]

3年ごとの芳ヶ江国際ピアノコンクールは今年で6回目だが、優勝者が後に著名コンクールで優勝することが続き近年評価が高い。特に前回に、紙面だけでは分からないと初回から設けられた書類選考落選者オーディションで、参加した出場者がダークホース的に受賞し、翌年には世界最高峰のS国際ピアノコンクールで優勝したため、今回は大変な注目を集めていた。だが、オーディションの5カ国のうちパリ会場では、「不良」の悪名の審査員3人は凡庸な演奏を聴き続け、飽きて来ていた。だがそこへ、これまでにない今年逝去の伝説的な音楽家ホフマンの推薦状で、「劇薬で、音楽人を試すギフトか災厄だ」と、現れた少年、風間塵は、破壊的な演奏で衝撃と反発を与える。議論の末、オーディションに合格する。

そして日本の芳ヶ江市での2週間に亘るコンクールへ。塵は師匠の故ホフマン先生と「音を外へ連れ出す」と約束をしていて、自分では、その意味がわからず、栄伝亜夜に協力を頼む。亜矢は塵の演奏を聴いていると、普通は音楽は自然から音を取り入れるのに、彼は逆に奏でる音を自然に還していると思った。マサルは子供のころピアノに出会わせてくれたアーちゃん(亜夜)を出場演奏者に見つけ再会する。3人の天才と年長の高島明石のピアニストたちが、音楽の孤独と、競争、友愛に、さまざまに絡み、悩みつつ、コンクールの1次2次から3次予選そして本選へ、優勝へと挑戦し、成長して、新たな音楽と人生の地平を開く。

登場人物[編集]

出場者[編集]

風間塵(かざま じん)
16歳、音楽大学出身でなく、演奏歴やコンテストも経験がなく、自宅にピアノすらない少年。フランスで、父親が養蜂業で採蜜の移動の旅をしつつ暮らす。ピアノの大家のホフマンに見いだされ師事し、彼が亡くなる前の計らいで、現在、パリ国立高等音楽院特別聴講生となっている。野性的な演奏で、出場後「蜜蜂王子」と呼ばれるようになる。
栄伝亜夜(えいでん あや)
20歳、天才少女として5歳で数年間コンサートを開きCDデビューもしたのに、13歳のときマネジャーもしてくれた母の突然の死でショックでピアノが弾けなくなり、次のコンサートを直前に中止し、そのまま音楽界から離れ、すでに過去の人と見られていた。だが、音楽大学の浜崎学長に再度見出され、推薦で同大に入学し在学中。少女時代、近所のマー君(マサル)に、彼が引っ越すまでピアノの手ほどきをしたことがある。復活した天才少女が、コンクールの中で大変な勢いで進化し続けて行く。
マサル・カルロス・レヴィ・アナトール
19歳、多くが才能を認める天才で、日系三世のペルー人の母とフランス人の貴族の血筋の父を持つ。期待の優勝候補。フランスから渡米しジュリアード音楽院に在学中で、高身長の貴公子然として「ジュリアードの王子様」と呼ばれる。少年時代に日本に一時在住し、まだ容姿が目立たないころに、アーちゃん(亜夜)が通う綿貫先生のピアノ教室に、一緒に連れられピアノに初めて出会い何回も行き、2人で「茶色の小瓶」で初練習した。しばらくしてフランスへの帰国時に、これからもピアノを練習すると約束し、現在がある。
高島明石(たかしま あかし)
28歳、音楽大学出身でかつては国内有数のコンクールで5位の実績。卒業後は音楽界には進まず、現在は楽器店勤務のサラリーマンで妻娘がいる。だが、家には防音の練習室を備え、ピアノは、やめることはなかった。音楽界の専業者だけではない生活者の音楽があるとの強い思いがある。最後との気持ちで、コンクールに応募した。
ジェニファ・チャン
ジュリアード音楽院に在学し、自信家で、マサルに恋情を持つ。落選時に猛抗議した。
アレクセイ・ザカーエフ
初回の第1次予選でくじで演奏順が1番になるが、その重圧に耐える。
キム・スジョン
(韓国)本選で氏名がわかる。
フレデリック・ドゥミ
(フランス)本選で氏名がわかる。
チョ・ハンサン
(韓国)本選で氏名がわかる。

音楽関係者[編集]

ユウジ・フォン=ホフマン
この2月に亡くなったピアノ演奏の大家。ほとんど弟子を取らなかったが、風間塵を見出し養蜂の旅に付いてまで指導する。亡くなる前に周囲に挑発的に、音楽界に対して「爆弾を仕掛けた」と言い、風間の推薦状を出していた。
ナサニエル・シルヴァーバーグ
審査員、ジュリアード音楽院で教授を務め、マサルの師匠。数少ないホフマンの弟子だが推薦状など書いてもらえなかったので、塵の出現で気持ちが揺らぐ。同じ審査員の嵯峨三枝子とは元夫婦である。

以下の審査員3人とも、音楽界では、素行はやや良くない「不良」で通っており、毒舌で知られる。

嵯峨三枝子(さが みえこ)
審査員、有名なピアニストでもある。帰国子女として中3から高3まで日本に在住していたが、同質化させようとする日本に合わなかった。それなのに、当初、塵の定型外の演奏に反発し不合格だと主張し、後に反省する。
セルゲイ・スミノフ
審査員、巨体だが、「きちんと把握しておく」タイプ。
アラン・シモン
審査員、喫煙家で下手な演奏にいらいらして我慢できない、「ざっと見る」タイプ。
田久保(たくぼ)
練達のステージマネージャーで、指揮者、ピアニスト、楽員の出入りを促し、ステージ配置も決める役割。だが、今回のコンクールで、塵は楽員の位置や椅子まで異例に細かく要望したが、応えて楽団員と話し合い調整した。

他の登場人物[編集]

綿貫先生(わたぬきせんせい)
亜夜が通っていた、ピアノ教室の先生。マサルを連れて行ったが、広い心で受け入れ練習させてくれた。マサルの帰国後2年で亡くなる。亜夜は母の死後に、もし綿貫先生が存命ならピアノを続けていただろうと、マサルとの再開後に振り返る。
浜崎奏(はまさき かなで)
亜夜が通う音楽大学の学長の娘で、同大学でヴァイリオンを学ぶ2年先輩でもある。面倒見の良い性格。コンクールで亜夜の付き添いとなる。
仁科雅美(にしな まさみ)
明石の元同級生のカメラマンで、コンクールのドキュメンタリー番組の撮影で明石を担当する。

演奏曲[編集]

※以下は演奏順

第1次予選[編集]

指定曲から3曲、20分以内。

ジェニファ・チャン
ベートーヴェン、「ピアノ・ソナタ 第21番 ワルトシュタイン ハ長調」第1楽章
ショパン、「ポロネーズ第6番 英雄 変イ長調」
高島明石
J.S.バッハ、「平均律クラヴィーア曲集 第1巻 第2番 前奏曲、フーガ ハ短調」
ベートーヴェン、「ピアノ・ソナタ 第3番 ハ長調」
ショパン、「バラード 第2番 ヘ長調」
マサル・カルロス・レヴィ・アナトール
J.S.バッハ、「平均律クラヴィーア曲集 第1巻 第6番前奏曲、フーガ ニ短調」
モーツァルト、「ピアノ・ソナタ 第13番 変ロ長調」K.333 第1楽章
リスト、「メフィスト・ワルツ 第1番 村の居酒屋での踊り」
風間塵
J.S.バッハ、「平均律クラヴィーア曲集 第1巻 第1番 前奏曲、フーガ ハ長調」
モーツァルト、「ピアノ・ソナタ 第12番 ヘ長調」K.332 第1楽章
バラキレフ、「東洋風幻想曲イスラメイ(第1稿)」
栄伝亜夜
J.S.バッハ、「平均律クラヴィーア曲集 第1巻 第5番 前奏曲、フーガ ニ長調」
ベートーヴェン、「ピアノ・ソナタ 第26番 告別 変ホ長調」第1楽章
リスト、「メフィスト・ワルツ 第1番 村の居酒屋での踊り」

第2次予選[編集]

指定曲から3曲以上と、コンクール用作曲架空課題曲「春と修羅」(自作するカデンツァ部分もある)、40分以内。

高島明石
ショパン、「練習曲 第5番 黒鍵 変ト長調」
リスト、「パガニーニによる大練習曲集 第6番 主題と変奏 イ短調」
シューマン、「アラベスク ハ長調」
ストラヴィンスキー、「ペトルーシュカからの3楽章
マサル・カルロス・レヴィ・アナトール
ラフマニノフ、「エチュード 音の絵 第6番」Op.39-6
ドビュッシー、「12の練習曲 第5番 オクターヴのために」
ブラームス、「パガニーニの主題による変奏曲」Op.35
風間塵
ドビュッシー、「12の練習曲 第1番 5本の指のために(チェルニー氏による)」
バルトーク、「ミクロコスモス」Sz. 107 第6巻より「ブルガリアのリズムによる6つの舞曲」
リスト、「2つの伝説」より第1曲「小鳥に説教するアッシジの聖フランチェスコ」
ショパン、「スケルツォ 第3番 嬰ハ短調」
栄伝亜夜
ラフマニノフ、「エチュード 音の絵 第5番」Op.39-5
リスト、「超絶技巧練習曲 第5番 鬼火 変ロ長調」
ラヴェル、「ソナチネ 嬰ヘ短調」
メンデルスゾーン、「厳格な変奏曲」Op.54

第3次予選[編集]

1次・2次予選で演奏した曲以外の任意の曲で自由に構成、60分以内。

アレクセイ・ザカーエフ
ムソルグスキー組曲 展覧会の絵
韓国人出場者
ラヴェル、「ラ・ヴァルス(ピアノソロ)ニ長調」
マサル・カルロス・レヴィ・アナトール
バルトーク 、「ピアノ・ソナタ」Sz.80
シベリウス、「5つのロマンティックな小品」op.101
リスト、「ピアノ・ソナタ ロ短調」
ショパン、「ワルツ 第14番 ホ短調」
風間塵
サティ、「あなたが欲しい(ジュ・トゥ・ヴー)
メンデルスゾーン、「無言歌集」第5巻 より「春の歌 イ長調」
ブラームス、「8つのピアノ小品」より 第2番「奇想曲 ロ短調」
ドビュッシー、「版画」より 「塔」、「グラナダの夕べ」、「雨の庭」
ラヴェル、「」より 「蛾」、「悲しい鳥たち」、「海原の小舟」、「道化師の朝の歌」、「鐘の谷」
ショパン、「即興曲 第3番 変ト長調」
サン・サーンス風間塵編曲「アフリカ幻想曲」Op89
栄伝亜夜
ショパン、「バラード 第1番 ト短調」
シューマン、「ノヴェレッテ 第2番」
ブラームス、「ピアノ・ソナタ 第3番 ヘ短調」
ドビュッシー、「喜びの島 イ長調」

本選[編集]

指定のピアノ協奏曲からオーケストラと演奏。

キム・スジョン(韓国)
ラフマニノフ、「ピアノ協奏曲 第3番 ニ短調」
フレデリック・ドゥミ(フランス)
ショパン、「ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調」
マサル・カルロス・レヴィ・アナトール
プロコフィエフ、「ピアノ協奏曲 第3番 ハ長調」
チョ・ハンサン(韓国)
ラフマニノフ、「ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調」
風間塵
バルトーク、「ピアノ協奏曲第3番 ホ長調」
栄伝亜夜
プロコフィエフ、「ピアノ協奏曲 第2番 ト短調」

脚注[編集]

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関連項目[編集]

外部リンク[編集]