機動警察パトレイバー 2 the Movie

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動
機動警察パトレイバー > 機動警察パトレイバー 2 the Movie
機動警察パトレイバー 2 the Movie
監督 押井守
脚本 伊藤和典
原作 ヘッドギア
出演者 大林隆之介
榊原良子
冨永みーな
古川登志夫
竹中直人
根津甚八
音楽 川井憲次
撮影 高橋明彦
編集 掛須秀一
制作会社 I.Gタツノコ
製作会社 バンダイビジュアル
東北新社
イング
配給 松竹
公開 日本の旗 1993年8月7日
上映時間 113分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
配給収入 1.8億円[1]
前作 機動警察パトレイバー the Movie
次作 WXIII 機動警察パトレイバー
テンプレートを表示

機動警察パトレイバー2 the Movie』(きどうけいさつパトレイバー ツー ザ ムービー)は、1993年に公開された日本アニメーション映画作品。

あらすじ[編集]

1999年東南アジア某国で、PKO部隊として日本から派遣された陸自レイバー小隊が、戦闘車輌を持つゲリラ部隊と接触、本部からの発砲許可を得られないまま一方的に攻撃を受けて壊滅する。しかし一人の生存者がいた。破壊されたレイバーから脱出した彼がそこで見たのは、異教の神像が見下ろす古代遺跡であった。そして、彼は「彼岸の人」となった。

「方舟」の一件から3年後の2002年、かつての特車二課第2小隊の面々は、隊長の後藤と山崎を除いて新しい職場に異動し、それぞれの日々を送っていた。そんなある日、横浜ベイブリッジで爆破事件が起こる。当初は自動車爆弾かと思われたが、自衛隊の戦闘機F-16Jらしき飛行機から放たれた一発のミサイルによるものであることがテレビによって報道される。そして、これがすべての始まりであった。

事件に関する様々な情報が錯綜する中、南雲と後藤の前に、陸幕調査部別室の荒川と名乗る男が現れ、「柘植行人(つげ ゆきひと)」という人物の捜索協力を依頼する。後藤は荒川の真意を測りかねて依頼を断るものの、直後にバッジシステムへのハッキングによって、航空自衛隊三沢基地所属機による幻の東京爆撃が演出されるという事件が発生する。これに対して警察は、事件を利用して警察の権限強化を図る政治的思惑から、青森県警が三沢基地のゲート前で基地司令を拘束するなど、自衛隊に対して過剰な対抗行動に出るが、これにより各地の自衛隊基地や駐屯地が抗議のために外部との通信を絶って篭城する事態にまで発展し、政府は警察への不信感を募らせる。そんな中、ベイブリッジ爆破事件を調べていた松井刑事は、後藤から渡された荒川の資料を元に柘植と彼の組織を調べ始める。

その後も状況は悪化の一途を辿り、在日米軍の圧力もあって事態の早急な収拾を図ろうとした政府は、警察に事態悪化の責任を押し付け、警察の代役として自衛隊に東京への治安出動命令を下し、都内各地に陸上自衛隊の部隊が配置された。

そして雪の朝、東京湾の埋立地から3機の戦闘ヘリが飛び立つ。都内にある官民の通信施設、橋梁、警視庁本部庁舎は戦闘ヘリの銃爆撃を受け、通信ケーブル網は仕掛けられた爆弾で破壊され、特車二課も壊滅してしまう。さらに東京上空を周回する3機の無人飛行船から妨害電波が流され、都内に展開した自衛隊部隊は情報が途絶して孤立していった。東京を舞台にした仮想的な「戦争」が、現実のものとして創り出されていく。

同じ朝、後藤と南雲は海法警視総監列席の下で緊急招集された警備部の幹部会議に召喚されていた。緊迫した情勢下で南雲と警視庁上層部の対立が決定的となる中、特車二課壊滅を悟った後藤は、この期に及んでもなお権力闘争と責任転嫁に汲々とする上層部を見限り、南雲と共に自らの手で事態を収拾する覚悟を固める。そして壊滅した特車二課に代わり、かつての第2小隊メンバーがAV-98「イングラム」と共に呼び集められた。

戦争という状況下に置かれた東京を舞台に、この「状況」を演出したテロリストを逮捕するため、特車二課第2小隊最後の任務が始まる。

声の出演[編集]

※各登場人物の詳細は機動警察パトレイバーの登場人物を参照。

スタッフ[編集]

製作[編集]

CGの使用[編集]

CG技術が未発達の頃に制作された本作では、劇中でコンピュータにより生成され出力される画面をCGを用いて描く試みが行われた。シリコングラフィックスのIRIS等、1992年当時に入手可能な最先端のCGワークステーションが導入され[要出典]、最終的なレンダリングはシェーディング済みの3DCGを投影した2DCGとして行われた。出力されたCGはアナログで制作したアニメパートへのはめこみ合成の素材として用いられた。

例としては、物語冒頭のレイバーのシミュレーション画面、戦闘機のHUD、航空レーダーなどがある。

ロケ地[編集]

作品解説[編集]

監督の押井守は『西武新宿戦線異状なし』や『機動警察パトレイバー』OVA第1期ですでに、自衛隊のクーデターをモチーフとした作品を手がけている。また、レイバーによる戦闘シーンが冒頭とクライマックスに数分間挿入されるのみに留まり、極めて抑えられたものとなっている。

世界観[編集]

本作はOVA第1期・劇場版1作目と同じく押井守監督作品だが、公開当時のテレフォンサービスなどではテレビ版・OVA第2期に連なる世界である事が明言されており[要出典]、特車二課棟の所在地もOVA第1期・劇場版1作目で設定されていた大田区城南島の埋立地には存在しない様子である。

本作中では18号埋立地に通じる海底トンネルの入り口が城南島東端に存在する[注釈 1][注釈 2]。ファンの混乱を避けるため公式ファンブック等ではパトレイバーはテレビ・OVA・映画・漫画・小説全てがパラレルワールドであることが明記されている。

漫画版とは直接的な繋がりはないが、本作の公開に合わせて、ゆうきまさみが漫画版の扉絵に本作のキャラクターやレイバーを登場させたほか、「PATLABOR 2002」と題して本作の野明と遊馬をイメージしたピンナップを描いている。しかし、それらはいずれも週刊少年サンデーに掲載されたのみで単行本未収録となっている。

東京の描写は、劇場版第一作の「過去の東京」に対し、本作では「現在の東京」がモチーフになっている。

演出[編集]

劇中でテレビなどのニュース番組の内容が映されているが、日本語のアナウンスは複数の文化放送の現役アナウンサー(当時)が声優として出演している。また、自衛官や民間人など、主要キャスト以外の声に敢えて素人を起用している。「声優による上手すぎる演技」を払拭する事で、現実感や臨場感を強調する為の措置であるという[要出典]。しかし、後年のサウンドリニューアル版ではプロの声優での収録となっている。

本作ではあくまで後藤をメインに話が展開され、一作目に比べ(旧)第二小隊の面々の登場割合が激減している[注釈 3]。一方で、前作以上に「」が随所で登場している。これは、押井の「空を飛ぶものは、人間からすれば怖いもの」という考えに基づいた演出であるという[要出典][注釈 4]。「ヘルハウンド」に関しても、デザインこそ前作のものではあるが、河森いわく「猛禽類が獲物を狙う様をイメージソースとした」と語る本機を、鳥類のメタファーとして効果的に登場させている[要出典]

柘植が野戦基地を構え、ラストシーンの舞台となる「18号埋立地」は架空の場所[注釈 5]であるが、このシーンのロケハンは、実在の13号埋立地[注釈 6]で行われた。国に正式な手段を踏んで許可を取らなければ取材や立ち入りもできない地域とのことで、角川グループを通し、名目上は『埋立地のゴミ処理問題を調査する記事の取材』と称して『そのコメンテーターとして映画監督の押井守氏に同行していただく』という建前で申請された[要出典]。その取材記事は当時のアニメ誌『月刊ニュータイプ』に掲載されている[要出典]

影響[編集]

本作は富野由悠季による『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』を絶賛する押井からのある種の回答やテーマに関する呼応の意味が込められている事が、同人誌『逆襲のシャア友の会』における庵野秀明との対談で告白されている[要出典]

押井が他人の映画を、ほぼ手放しで褒める事は極めて稀な事であるが、押井との対面時にそれを告げられた富野は、同じく庵野との対談で「お世辞だと思って聞き流した」と語る。これに関してその場で、庵野は「あの人(押井)はそんなに世渡りが上手くないです」と加えている[要出典]

宮﨑駿は当時、押井作品を多く鑑賞しており、その度に不満を口にしてきたが、本作では一転して高評価している。どうやって作ったのか考えたくなくなる程の映像表現に感心し、同じジャンルで競合するのは辞めようと話している。更に「とても見応えがあった、語り口の巧みさも本当に抜きん出ていた」と評価する一方、冒頭では発砲すべき、犯人はつまんなかった、疑問に思ったことが作中の人物の口から語られてしまって、自分は何も言えなくなる、などの意見も述べている[2]

音楽[編集]

イメージソングとしてMANAによる「愛を眠らせないで」というCDシングルが発売されているが、事前のプロモーションやテレビ・ラジオCFなどで流れたのみで、本編中では聴くことはできない。

川井憲次によるサウンドトラックアルバムは三種類が発売されている。まず、劇場公開一週間前の1993年8月1日には本編の予告編的な意味合いを持つイメージアルバム「PATLABOR 2 the Movie/PRE SOUNDTRACK」が発売され、続いて9月21日に正式な劇中サントラ盤となる「ORIGINAL SOUNDTRACK "P2"」が発売された。1998年発売の「PATLABOR 2 the Movie "SOUND RENEWAL"」は本作のDVDソフト化に際しリニューアル(再録音)された音源を収録している[要出典]

劇中歌「おもひでのベイブリッジ」は前売りチケットマガジン付属のシングルCDに美桜かな子が歌ったバージョンが収録されている。また、のちにVAPより単発のシングルCDとしても一般発売された。こちらには美桜バージョンと劇中で使用されたカラオケ・バージョンの他に、「しのぶと喜一」(榊原良子大林隆介)によるデュエット・バージョンも併せて収録されている[注釈 7]

賞歴[編集]

小説[編集]

LD[編集]

DVD[編集]

  • 1998年に最初にDVD化された。LD大のパッケージだった初回特典版にはキャストのインタビュー記事などが同封されていた。また、音声は劇場公開版とDVD化のためにリニューアルした音声の2種類を収録した[要出典]。また、これ以降のDVD/BDの音声は劇場公開版とサウンドリニューアル版を同時収録するマルチオーディオ仕様になった。
  • 初回盤の販売後は通常版として通常のトールケースで販売された。ブックレットは縮小されてはいるが、初回盤の内容が記述されている。
  • 1と共に米国でも発売(豪華版:89ドル99セント。通常版:29ドル99セント)。
  • 2004年1月23日から絵コンテがセットになったLimited Editionが1年間の限定発売。
  • 劇場版シリーズのメイキングが収録されたDVD及び各種雑誌記事などが本として付属した「PATLABOR MOVIE ARCHIVES」が2004年2月25日に発売された。
  • Blu-ray Disc/HD-DVDとDVDがセット(各ディスクそれぞれに本編が収録されている)になった商品が2007年8月24日に国内発売された。

BD[編集]

  • Blu-rayとDVDがセットで2007年8月24日に発売。
  • Blu-rayの単品版が2008年7月25日に発売。

参考文献[編集]

  • THIS IS ANIMATION THE SELECT 機動警察パトレイバー2 the Movie』(小学館、1993年) ISBN 4091015190
  • 『機動警察パトレイバー2 the Movie 設定資料全集』(小学館、1993年) ISBN 409101576X
  • 『機動警察パトレイバー2 the Movie』(小学館、1994年) ISBN 4091218741
    • 本作のフィルムコミック
  • 『Methods 押井守「パトレイバー2」演出ノート』(角川書店、1994年) ISBN 4048524984
  • 『WXIII 機動警察パトレイバー 設定資料全集』(小学館、2002年) ISBN 4091015654
  • 『P‐pack』(こだま出版、2002年) ISBN 4906069347
  • 『押井守・映像機械論 メカフィリア』(大日本絵画、2002年) ISBN 4499227542
  • 『押井守 人間の彼方、映画の彼方へ』(河出書房新社、2004年) ISBN 4309976824

脚注[編集]

[ヘルプ]

注釈[編集]

  1. ^ ただし、これは押井の認めるところであったか[要出典]、演出ミスであったどうかは不明。
  2. ^ テレフォンサービスは横手美智子らの脚本によるものである[要出典]。その一方、『機動警察パトレイバーCD BOX』に収録された、伊藤和典脚本によるドラマCD『第2小隊日誌』では、世界の繋がりに関して異なった解釈がなされている。 「劇場版2作目の前日譚」として発表された本作では、テレビシリーズの内容には触れず、初期OVA6話までの内容を振り返りつつ、篠原重工にテストパイロットとして出向する野明と遊馬の様子や、テスト機として送り出される98式が描かれるなど、劇場版2作目が、テレビシリーズではなくOVA第1期と繋がっていることが明示されている。 また、押井守による劇場版2作目のノベライズである『TOKYO WAR』では、太田が香貫花あての遺書のみを残し、熊耳についての描写は存在しない。ただし、『TOKYO WAR』は押井個人の解釈に基づいた作品であることに注意。
  3. ^ 後に押井自ら手がけた小説版『TOKYO WAR』では、映画では割愛された部分が大幅に追加されている為、映画では描かれなかった彼らの様子も詳細に描写されている。劇場版には登場しなかった香貫花・クランシーについてもわずかに触れられているが、熊耳武緒についての記述は一切ない。この小説版はそんな映画版の補完の役目を担う一方、あらゆる面で『食』に対する押井のこだわりが書き綴られている。なお、これは押井にとっての小説処女作でもある。
  4. ^ なお、鳥の他に魚も押井が好むモチーフだが、これは聖書からの暗喩でもあるという[要出典]。犬については押井本人の好み[要出典]。押井が自ら執筆した本作のノベライズでは、柘植一味のヘルハウンド発進を目撃した男性の飼い犬には“ガブ”という名前が設定されており、これは当時の押井が飼っていたバセットハウンドの愛称(正式な名前はガブリエル)である[要出典]。また、映像作品中(本作)で描かれた姿から、犬種も同じである。
  5. ^ 劇場版第三作目「WXIII 機動警察パトレイバー」に登場する廃棄スタジアムも実は同じ土地に存在している。本作では進士と南雲が敵本部への侵入経路をCGで説明するシーン、「WXIII」では怪物が殲滅されたあとカメラが上空へと引いていくシーンや設定資料などでそれぞれ地形が確認できる。周辺の立地状況に関してはこちらも参照。 スタジアムは元々2002 FIFAワールドカップ開催時の使用を目指し建設が進められていた物であるらしい[要出典]。だが「パトレイバー」の世界ではその誘致に失敗した為、建設を中止して放棄され、バビロンプロジェクト完了後もこの埋立地そのものが宙に浮いていた模様。
  6. ^ 設定上18号埋立地に隣接する中央防波堤外側埋立地を指す。
  7. ^ 当初この「おもひでのベイブリッジ」は冗談の様な軽い気持ちで作曲されたが、美桜かな子バージョンのレコーディングの際には「演歌の鬼」の様な先生が同伴してきて美桜かな子に熱烈指導を始めた為、作曲を担当した川井の顔は徐々に青ざめていったという[要出典]

出典[編集]

  1. ^ 「日本映画フリーブッキング作品配給収入」『キネマ旬報1994年平成6年)2月下旬号、キネマ旬報社、1994年、 155頁。
  2. ^ アニメージュ叢書『すべての映画はアニメになる』(押井守著、pp.244、宮崎との対談)
  3. ^ 毎日映画コンクール:コンクールの歴史 - 毎日新聞”. 2019年6月9日閲覧。

外部リンク[編集]