黄瀬和哉

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きせ かずちか
黄瀬 和哉
生年月日 (1965-03-06) 1965年3月6日(57歳)
出生地 日本の旗 日本 大阪府
職業
活動期間 1983年 -
事務所 Production I.G(取締役)
主な作品

作画監督・レイアウト
機動警察パトレイバー』シリーズ
攻殻機動隊』シリーズ


作画監督
新世紀エヴァンゲリオン』シリーズ


キャラクターデザイン
xxxHOLiC』シリーズ
メイドインアビス』シリーズ


総監督・キャラクターデザイン
攻殻機動隊 ARISE』シリーズ
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黄瀬 和哉(きせ かずちか[注 1]1965年3月6日 - )は、日本男性アニメーターキャラクターデザイナーアニメーション監督[1]大阪府出身[1]。株式会社プロダクション・アイジー取締役[1]

経歴[編集]

高校卒業後、アニメ関連の専門学校に入学するも、求めていたアニメについての勉強できないことが分かり、4日で自主退学[2]。ちょうどその頃、谷口守泰村中博美の二人が主宰するアニメ制作会社アニメアールが地元大阪にあることを知り[注 2]、入社する[1][2]。同期には逢坂浩司沖浦啓之小森高博柳沢まさひでがいる[2]。 黄瀬は入社面接を担当した村中博美に師事し、村中の率いていたアニメアール第二スタジオに所属する[1]。第二スタジオが分離してスタジオ・ムーと改名してからもそちらに籍を置いていた。

1989年、映画『機動警察パトレイバー the Movie』に作画監督として参加したのを契機に上京し、Production I.Gへ移籍する[1]

2011年、『たんすわらし。』(平成22年度若手アニメーター育成プロジェクト「PROJECT A」参加作品)で初監督を経験[3]

2013年、Production I.G社長の石川光久の指名により映画『攻殻機動隊 ARISE』で総監督を務める[注 3][3]。黄瀬が担当したのは主に絵コンテのチェックと作画監督や原画の手伝いで、基本的に各話のストーリーや現場作業は各監督に任せ、脚本打ち合わせでも特に意見はせずに聞いていることが多かったという。一方、キャスティングに関しては、担当声優を全て変えるという大きな舵取りをしている[3]

作風[編集]

Production I.G社長の石川光久が「I.Gの秘密兵器」と評し、沖浦啓之西尾鉄也とともにI.G作画三大神と呼ばれる名アニメーター[1][4][5]

アニメーターとして、押井守監督の『攻殻機動隊』シリーズや『機動警察パトレイバー』シリーズ、庵野秀明監督の『新世紀エヴァンゲリオン』のテレビシリーズや旧劇場版などを支えている[1]。押井作品では作画監督として重要な役割を果たし、『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』においては、実際に海外へのロケハンに赴いて実銃を撃って作画に反映したり、女性ボディビルダーを参考にしながら主人公・草薙素子の筋肉を描写したりして、押井の徹底的なリアリティへのこだわりに応えている[6][7]。また押井が導入した「レイアウトシステム」と呼ばれる制作方法の担い手の一人でもあるが、自身はそれについて「アニメーターにとっては単純に面倒くさいだけ」と語っている[6][8]。押井のレイアウト作りの前提にあるのは、カメラのレンズの効果を画に反映することであるが、人が自分の目で見ているものを描きたいのであれば、そのようなレンズの効果は本来必要がないので、黄瀬は「見た目で描いて存在感を出せるのだったら、ちまちまパースをとる必要はありません。絵ならではの嘘をついてしまえばいい」とまで述べている[6][9]

黄瀬の絵はリアルだと言われるが、同じくリアル系のアニメーターと言われる沖浦啓之とは目指している方向性が違い、実写的・写実的なリアルを追及しているわけではない[10]。単に精密に描いているという意味でのリアルではなく、バランスの取り方、しわの描き方、独特な肉感の表現など、より感覚的なリアルである[10]。アニメの表現では、膨大な情報量をどう削ぎ落としてシンプルに落とし込んでいくかにアニメーターとしての技術の差が出るが、黄瀬はその能力が非常に高く、フォルムの取り方や動かし方も、割り切れるところは割り切った描き方をしており、作画枚数も意外と使わない[10]

若い頃から周りの状況や人物などを軽くラフでスケッチするなど、普段の生活の中で膨大なデッサンをして人間の仕草やフォルムをずっと研究していた[10]。あまりにリアルすぎて普通の人だと意識できないかもしれないが、絵を描いている人間だったら驚くようなリアルさをきちんと絵に落とし込んでいる[10]

「キャラクターは画であるけれど生身の存在だと思っている」と語り、それを生々しいまでに表現しようとする[11]。映画『機動警察パトレイバー the Movie』では、自由にやっていいと言われた黄瀬が高田明美によるデザインを完全に無視してキャラクターを描いた結果、それまでのOVAとは大幅に違ってしまい、完成後に波紋を呼んだ[8]。二作目の『機動警察パトレイバー2 the Movie』では、高田の方が1作目の黄瀬の絵に寄せてリアルめのキャラクターを描いてきたところ、それをまた無視して、もっとひどくリアルに描いた[8]

押井からは「元々色んな絵柄をやっていけて、あまりにも巧すぎて『自分の名前の売り所を自分から無くしているんじゃないか』という位何でも書くんです。ただ、黄瀬本人はアニメーター達が無意識に忌避して書きたがらない『中年男性』『日本人の顔』が大好きで、逆に『可愛い女の子』が全然描けないことで業界内では有名」と評されている[12]

リアルへのこだわりは一貫しているが、それはカメラのレンズがつくるリアルではないと自身は考えている[6]。黄瀬は2000年の『BLOOD THE LAST VAMPIRE』が自らの画作りの転換点であったと述べ、原作者の寺田克也の画を「コミック調のリアル」と表現し、そのマンガ的なニュアンスを取り入れている[6]。その後、キャラクターデザインを手がけた『xxxHOLiC』シリーズでは、等身が高く手足の長い、デフォルメされたCLAMPの絵柄に挑戦し、逆に『メイドインアビス』ではつくしあきひとの大幅にデフォルメされた丸っこいキャラクターにもとづいたデザインをするなど、実在の人間の骨格に囚われないマンガ的なキャラクターへの思い入れも強く表現するようになる[6]

人物[編集]

学生の頃からアニメが好きは好きだったが、業界を目指したのは、「画を描いてメシが食えたらいいなと思った」という理由が一番大きい[2]。アニメーションに関わるようになったきっかけは、高校の時に仲間とペーパーアニメのようなものを作って自分が描いたものが動いたのを観た時に「面白い」と思ったから[2]。学生時代はアニメというよりは漫画っぽい画を描いていた[2]

あしたのジョー』シリーズや『エースをねらえ!』のアニメのキャラクターデザインを手がけた杉野昭夫の絵が好きだと語っている[11]

人間ドラマに寄った様なモノが好きであり、影響を受けた作品としてアニメでは『宇宙戦艦ヤマト』、『銀河鉄道999』、『AKIRA』、映画では『ブリキの太鼓』、『17歳のカルテ』を挙げている[13]

エピソード[編集]

  • インタビュー嫌いで知られ、たまにインタビュー記事が掲載されてもぶっきらぼうな受け答えのときがある。
  • 押井守は「日本で一番バセット(バセットハウンド、押井お気に入りの犬種)を描くのが上手い男」と評しているものの、本人は「自分以外描いていない」と述べている。
  • 押井によると『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』製作中に逃げ出したそうで、現場復帰をかけて格闘ゲーム(当時流行していた『バーチャファイター』)で勝負したこともある。

参加作品[編集]

テレビアニメ[編集]

1983年
1984年
1985年
1986年
1987年
1988年
1989年
1990年
1992年
1993年
1994年
  • BLUE SEEDキャラクターデザイン・作画監督)
1995年
1996年
1997年
1998年
2001年
2004年
2005年
2006年
2007年
2008年
2010年
2011年
2012年
2013年
2014年
2015年
2016年
2017年
2018年
2019年
2021年
2022年

劇場アニメ[編集]

1989年
1990年
1991年
1992年
1993年
1994年
1995年
1997年
1998年
2000年
2001年
2003年
2004年
2005年
2006年
2007年
2008年
2009年
2010年
2011年
2012年
2013年
2014年
2015年
2016年
2017年
2020年
2021年
  • 劇場版 Fate/Grand Order -神聖円卓領域キャメロット- 後編 Paladin; Agateram(キャラクターデザイン
2022年

OVA[編集]

Webアニメ[編集]

ゲーム[編集]

CM[編集]

  • MURPHY'S IRISH STOUT(1997年)キャラクターデザイン・作画
  • NEXT A-Class(2012年)作画監督

ミュージック・ビデオ[編集]

出演[編集]

  • WACOM…ペンタブレットのCMに出演。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 「かず」と間違えられることがあるが、「かずちか」が正しい読み。
  2. ^ 住所がわからなかったのでアニメ雑誌アニメージュ編集部に手紙を出したところ、当時の編集長だった尾形英夫がハガキに住所を書いて送ってくれた。
  3. ^ 黄瀬は、前々から「ディレクション込みで仕事をしたい」と公言はしていたものの、まさか自分が起用されるとは思わず、最初は総監督ではなく総作画監督のオファーだと聞き間違えた。また石川の方も、自身による抜擢にもかかわらず、これを自ら「紙一重の起用」と評した。

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g h "それ以前"の世界に『新しい攻殻』を作ること - 黄瀬和哉総監督の考える『攻殻機動隊ARISE』とは?”. マイナビニュース. マイナビ (2013年6月21日). 2022年3月7日閲覧。
  2. ^ a b c d e f 【編集部】「この人に話を聞きたい」単行本(10)黄瀬和哉さんのインタビューをちょっとだけ紹介”. WEBアニメスタイル. 株式会社スタイル (2006年10月19日). 2022年3月7日閲覧。
  3. ^ a b c 「攻殻機動隊」25周年リレーインタビュー 黄瀬和哉 後編 現場の頑張りをみてもらいたい”. WEBアニメスタイル. 株式会社スタイル (2015年11月6日). 2022年3月7日閲覧。
  4. ^ 『ひるね姫』は"設定資料"にも価値あり 小野寺系がBlu-rayスペシャル・エディションを解説”. リアルサウンド. 株式会社blueprint (2017年9月29日). 2022年3月7日閲覧。
  5. ^ 柏木聡 (2013年7月1日). “攻殻機動隊新シリーズ、起動! インタビュー黄瀬和哉(アニメーション監督)(Rooftop2013年7月号)”. Rooftop. 株式会社ロフトプロジェクト. 2022年3月7日閲覧。
  6. ^ a b c d e f 安原まひろ (2019年4月8日). “アニメにおけるリアルとは『黄瀬和哉 アニメーション画集』と『メイドインアビス』”. メディア芸術カレントコンテンツ. 文化庁. 2022年3月7日閲覧。
  7. ^ 黄瀬和哉 アニメーション画集 2018, p. 34.
  8. ^ a b c 「攻殻機動隊」25周年リレーインタビュー 黄瀬和哉 前編 レイアウト・システムの功罪”. WEBアニメスタイル. 株式会社スタイル (2015年10月30日). 2022年3月7日閲覧。
  9. ^ 「攻殻機動隊」25周年リレーインタビュー 黄瀬和哉 前編 レイアウト・システムの功罪 (2)”. WEBアニメスタイル. 株式会社スタイル (2015年10月30日). 2022年3月7日閲覧。
  10. ^ a b c d e 前田久 (2022年2月21日). “野村和也① 業界に入るきっかけとなった『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』”. Febri. 一迅社. 2022年3月7日閲覧。
  11. ^ a b 黄瀬和哉 アニメーション画集 2018, p. 238.
  12. ^ 青土社刊「ユリイカ」1996年8月号「映画とは実はアニメーションだった 押井守 伊藤和典 上野俊哉 徹底討議」p.79より。
  13. ^ 記事中段 http://www.kotaku.jp/2013/06/arise_interview.html
  14. ^ xxxHOLiC :作品情報”. アニメハック. 2020年8月11日閲覧。
  15. ^ BLOOD-C : 作品情報”. アニメハック. 2020年4月25日閲覧。
  16. ^ スタッフ&キャスト”. 劇場版「メイドインアビス」-深き魂の黎明- 公式サイト. 2019年3月23日閲覧。

参考文献[編集]

  • 黄瀬和哉 『黄瀬和哉 アニメーション画集』株式会社スタイル、2018年。ISBN 978-4802131162 

外部リンク[編集]