ブリキの太鼓

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ブリキの太鼓』(ブリキのたいこ、Die Blechtrommel)は、ドイツの作家ギュンター・グラス1959年に発表した長篇小説である。『猫と鼠』(1961年)、『犬の年』(1963年)と続く、いわゆる「ダンツィヒ三部作」の最初を飾る作品であり、第二次世界大戦後のドイツ文学における最も重要な作品の一つに数えられる。1979年フォルカー・シュレンドルフによって映画化された。

あらすじ[編集]

1954年、精神病院の住人であるオスカル・マツェラートが自らの半生を語る。1899年のジャガイモ畑における祖母の妊娠に始まり、1924年の誕生、3歳の誕生日における成長の停止、ナチ党政権前後におけるダンツィヒ自由市の小市民的心性、戦前・戦中・戦後の遍歴などを局外者の視点から描く。

書誌情報[編集]

  • 原典:Die Blechtrommel, Neuwied: Luchterhand, 1959.
  • 英語訳:The Tin Drum, translated by Ralph Manheim, London: Secker & Warburg, 1962.
  • 日本語訳:『ブリキの太鼓』高本研一訳、シリーズ「現代の世界文学」、集英社、1972年 のち文庫
    • 池内紀訳 「世界文学全集」、河出書房新社、2010年

映画[編集]

ブリキの太鼓
Die Blechtrommel
監督 フォルカー・シュレンドルフ
脚本 ジャン=クロード・カリエール
フォルカー・シュレンドルフ
フランツ・ザイツ
ギュンター・グラス
原作 ギュンター・グラス
製作 フランツ・ザイツ
アナトール・ドーマン[1]
フォルカー・シュレンドルフ[1]
製作総指揮 エベルハルト・ユンケルスドルフ
出演者 ダーフィト・ベンネント
音楽 モーリス・ジャール
撮影 イゴール・ルター
編集 スザンネ・バロン
製作会社 フランツ・ザイツ・フィルム
ビオスコープ・フィルム
アルテミス・フィルム
アルゴス・フィルム 他
配給 西ドイツの旗 ユナイテッド・アーティスツ
フランスの旗 アルゴス・フィルム
日本の旗 フランス映画社
公開 西ドイツの旗 1979年5月3日
フランスの旗 1979年9月19日
日本の旗 1981年4月11日
上映時間 142分
162分ディレクターズ・カット
製作国 西ドイツの旗 西ドイツ
ポーランドの旗 ポーランド
フランスの旗 フランス
ユーゴスラビア社会主義連邦共和国の旗 ユーゴスラビア
言語 ドイツ語
ポーランド語
ロシア語
ヘブライ語
イタリア語
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1979年度カンヌ国際映画祭パルム・ドール賞、アカデミー外国語映画賞を受賞している。

キャスト[編集]

オスカル・マツェラート - ダーフィト・ベンネント
3歳で成長を止めた少年。叫び声でガラスを割ることができる。
アルフレート・マツェラート - マリオ・アドルフ
オスカルの父親。ドイツ人でナチス党員。食料雑貨店を経営。元料理人
アグネス・マツェラート - アンゲラ・ヴィンクラー
オスカルの母親。2人目の子を妊娠すると精神のバランスを崩して自ら命を絶つ。
マリア・マツェラート - カタリーナ・タールバッハ
アルフレートの店に住み込みで働くようになった少女。
オスカルと同い年で初恋の相手。後にアルフレートとの情事の際オスカルに膣外射精を邪魔され、その結果息子クルトを宿し、世間体を繕うために彼の後妻となる。
ヤン・ブロンスキ - ダニエル・オルブリフスキ
アグネスの従兄で恋人(愛人)。オスカルの実父である可能性がある。
ポーランド人専用郵便局に勤める。
アンナ・コリャイチェク - ティーナ・エンゲル(若年期)、ベルタ・ドレーフス
アグネスの母親。カシュバイ人 (en。旧姓ブロンスキ(ブロンスカ)。野外でたき火に当たっているとき警官に追われているヨーゼフをスカートの中にかくまうが、このとき種をしこまれアグネスを生む。
ヨーゼフ・コリャイチェク - ローラント・トイプナー
アグネスの父親。放火の常習犯。
アンナと1年ほど暮らした後に再び警察に追われ、川に飛び込んで行方不明になる。

原作との違い[編集]

オスカルが精神病院にいる1954年の場面がない。

児童ポルノ論争[編集]

問題シーン[編集]

公開後、本作品についてあるシーンが児童ポルノではないかとして問題視された。

例えばベンネットは成長の止まった16歳を演じているが、彼は当時まだ11歳であった。その彼がカタリナ・タールバッハ演じる16歳の少女(このとき実際には24歳であったが)の臍に自らの唾液で発泡させた粉末状のシャーベットの素を垂らし、そしてそれ舐め、その場面の後、彼女にオーラルセックスをし、性交をしたと思われるシーンがあった[2]。オスカルはこの他、食料品店主でボーイスカウトの隊長グレフの妻リナや、ベブラの慰問楽団の歌姫のロスヴィータとも性的関係を結んでいるが、作品中、直接的な描写はない。
同作品には他に濃厚な性的描写が存在する。ヤンがアグネスとラブホテルで密会する場面があるが、そのシーン問題とはならなかった。
これとは対照的に1981年の日本公開の際にはアグネスの裸体の性器部分および二人の結合はボカシを入れる処理がなされたが、オスカルとマリアとの行為についてはまったく問題とはされず修正やカットを受けることなく映倫の審査を経て公開されている。

児童ポルノとしての認定[編集]

『ブリキの太鼓』の映画版は1980年に最初に部分的に検閲カットされ、その後カナダのオンタリオ州の検閲局は児童ポルノとして作品そのものを上映禁止にしている[3]
同様な例としてはに1997年7月25日、米国州地方裁判所のリチャード・フリーマン判事は、本作品の未成年者の性行動の描写に対して州法を適用できるとし、本作品をオクラホマ州で上映禁止とする判決を下した。報道によれば判事はこのとき同作品から問題となったシーンのみを見せられての判断を行ったとのことである。
オクラホマ市における全ての作品複製コピーは同様に押収され、ビデオテープを貸し出した場合は起訴をされると警告を受ける事例も起きている。

汚名の挽回へ[編集]

1997年7月4日、米国自由人権協会のオクラホマ支部のミハエル・カムフィールドはビデオテープが非合法に押収され、自分の権利が侵害されたとして警察に対して訴訟を起こした[4][5]。 この裁判は、物議を巻き起こす映画のシーンと、検閲官としての裁判官の役割りとの一般的な対立構図として、映画がもつ社会的な重要性についての一連の審問を引き起こすことになり、世間の耳目を集めることとなった。
この後、結果として同作品は汚名を灌ぐことが出来、ほとんどのコピーは数カ月以内に持ち主のもとに返却されている[6][7]。 2001年までにすべての訴訟はけりがつき、現在では本作品はオクラホマ郡では合法的に視聴することが出来ることになっている。 この経緯はドキュメンタリー映画『オクラホマにおける上映禁止』として記録された。同ドキュメンタリーは現在、『2004年クリテリオン・コレクション』DVD作品の『ブリキの太鼓』に収録されている[8]

中国での扱い[編集]

本作品は中国では30年に渡り上映が禁じられている。2013年北京で開催されたドイツ映画祭で上映が試みられたが、当局の許可を得られなかった。代わりに北京のドイツ語学校内で内輪での公開となっている[9]

参考文献[編集]

  1. ^ a b クレジットなし。Die Blechtrommel (1979) - Full cast and crew” (英語). IMDb. 2012年5月12日閲覧。
  2. ^ 性器や結合そのものの描写はないが、オスカルがマリアの陰部に顔をうずめるシーンは存在し、マリアがエクスタシーに達しようとしていることをその表情によって観客にしめし、何が行われているか暗示させる演出となっている。
  3. ^ “The Current: Whole Show Blow-by-Blow”. CBC Radio. (2004年4月19日). オリジナル2004年8月7日時点によるアーカイブ。. http://web.archive.org/web/20040807111304/http://www.cbc.ca/thecurrent/2004/200404/20040419.html 
  4. ^ http://www.eclectica.org/v1n11/lease_tindrum.html
  5. ^ http://openjurist.org/248/f3d/1214/michael-camfield-v-city-of-oklahoma-city-britt-high-se-kim-bill-citty-gregory-a-taylor-matt-french-r
  6. ^ PUBLIB:3847 "Tin Drum" seized as obscene in Oklahoma (fwd). lists.webjunction.org, July 21, 1997.
  7. ^ A Fiasco in the Making. BubbaWorld.com.
  8. ^ Trivia for Banned in Oklahoma. Internet Movie Database.
  9. ^ Tagesanzeiger Kultur vom 12. Oktober 2013: Peking verbietet «Die Blechtrommel» (kle/sda), abgerufen am 19. Oktober 2013

関連項目[編集]

外部リンク[編集]