ヒトラー 〜最期の12日間〜

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索
ヒトラー 〜最期の12日間〜
Der Untergang
監督 オリヴァー・ヒルシュビーゲル
脚本 ベルント・アイヒンガー
製作 ベルント・アイヒンガー
出演者 ブルーノ・ガンツ
アレクサンドラ・マリア・ララ
音楽 ステファン・ツァハリアス
撮影 ライナー・クラウスマン
編集 ハンス・ファンク
配給 ギャガ
公開 ドイツの旗 2004年9月16日
日本の旗 2005年7月9日
上映時間 156分
製作国 ドイツの旗 ドイツ
イタリアの旗 イタリア
オーストリアの旗 オーストリア
言語 ドイツ語
ロシア語
製作費 €13,500,000
テンプレートを表示

ヒトラー 〜最期の12日間〜』(ヒトラー さいごのじゅうににちかん、原題:Der Untergang、英題:Downfall )は、2004年公開のドイツオーストリアイタリア共同制作による戦争映画。原題はドイツ語で「失脚」「没落」の意。

概要[編集]

1945年4月ベルリン市街戦を背景に、ドイツ国総統アドルフ・ヒトラー総統地下壕における最期の日々を描く。混乱の中で国防軍の軍人や親衛隊の隊員が迎える終末や、ナチス宣伝相ヨーゼフ・ゲッベルス一家の悲劇、老若男女を問わず戦火に巻き込まれるベルリン市民の姿にも焦点が置かれている。ヨアヒム・フェストによる同名の研究書、およびヒトラーの個人秘書を務めたトラウドゥル・ユンゲの証言が本作の土台となった。撮影はベルリンミュンヘンおよび当時のベルリンに近い雰囲気を持つロシアサンクトペテルブルクで行われた。

ストーリー[編集]

1942年12月、トラウドゥル・ユンゲは総統大本営ヴォルフスシャンツェを訪れ、ドイツ総統ヒトラーの秘書採用試験を受ける。ヒトラーはトラウドゥルがナチス結成の地ミュンヘン出身だと知り彼女に興味を持ち、秘書として採用する。

1945年4月20日、トラウドゥルはゲルダたち総統地下壕の同僚と共にヒトラーの誕生日の準備を進めていた。ソ連軍は既にベルリン近郊に迫っており、ドイツの敗北は時間の問題となっていた。各地からナチスの高官たちが集まり誕生日が開催されたが、ゲーリングやヒムラーたちは口々にベルリン脱出をヒトラーに進言するが、ヒトラーは頑なにベルリン脱出を拒否した。ヒトラーは高官たちに各地の防衛指揮を任せ、誕生日は終了した。ソ連軍に対処するための作戦会議が開かれ、ヒトラーは周辺に駐屯する部隊に攻撃を命令するが、ヨードルやブルクドルフら将軍たちから「部隊の消耗が激しく、攻撃は不可能」と指摘され激怒し、自殺を口にし会議を終了させる。ヒトラーはトラウドゥルたちに地下壕から退避するように指示するが、彼女たちは退避を拒み地下壕に残った。

4月23日、ボルマンから「ゲーリングが権限の委譲を要求してきた」と報告を受け、ヒトラーはゲーリングの全権限を剥奪し逮捕を命令した。高官から裏切者が出たと地下壕に動揺が広がる中、シュペーアが地下壕を訪れヒトラーと退去の挨拶を交わす。シュペーアはヒトラーから受けていたインフラ破壊命令を無視していたことを告げヒトラーと別れ、地下壕を後にする。4月26日、ソ連軍の包囲網を突破したグライム将軍とライチュが地下壕に到着し、感激したヒトラーはグライムをゲーリングの後任の空軍総司令官に任命する。グライムやゲッベルス、エヴァ、トラウドゥルたちと食事ととるヒトラーの元に、ヒムラーが連合軍と和平交渉を行っているという報告が入る。「忠臣ハインリヒ」と呼び信頼していたヒムラーの裏切りにヒトラーは激怒し、ヒムラーの逮捕と地下壕にいるヒムラーの代理人フェーゲラインの逮捕を命令する。ヒトラーはグライムに前線指揮を命令し、エヴァとマクダはそれぞれ妹と息子に宛てた手紙をライチュに託す。グライムとライチュが地下壕を退去した後、トラウドゥルはヒトラーに呼ばれ遺書のタイプを依頼される。トラウドゥルは自室でタイプをするが、そこにゲッベルスが現れ「総統と共に死ぬ」と告げ遺書のタイプを依頼する。同じ頃、愛人宅にいたフェーゲラインは逮捕され、義姉のエヴァが助命を嘆願するが、ヒトラーはフェーゲラインを処刑する。

4月30日、ヒトラーはエヴァと結婚式を挙げ、ささやかな祝宴会を開く。トラウドゥルたちから祝福を受けたヒトラーは、市街地で負傷者の治療に当たっていたシェンクとハーゼを呼び出し、自殺方法について相談する。ヒトラーは地下壕に残った人々と別れの挨拶を交わし、エヴァと共に居室に入る。トラウドゥルは気を紛らわせるため、ゲッベルスの子供たちと食事をしていたが、その最中に銃声が響き渡り、ヒトラーの死を知る。ヒトラー夫妻の遺体はゲッベルスたちによって地上に運び出され焼却される。

5月1日、クレープスはソ連軍のチュイコフと停戦交渉を行うが、「無条件降伏以外は認めない」と返答され、交渉は失敗に終わる。地下壕の人々はベルリン脱出の準備を進め、ゲッベルス夫妻は子供たちを毒殺した後、自殺する。トラウドゥルはモーンケの率いる第一陣と共に地下壕を脱出し、脱出する人々を見送ったクレープスはブルクドルフと共に自殺する。モーンケたちは敗残部隊と合流するがソ連軍に包囲され降伏するが、トラウドゥルはシェンクやゲルダに勧められ包囲を脱出し無事に逃げ延びる。5月8日、ドイツは無条件降伏を受け入れ、ヒトラーの帝国は崩壊する。

キャスト[編集]

※括弧内は日本語吹き替え

親衛隊
国防軍
党幹部・側近
総統官邸スタッフ
ソ連軍

原作[編集]

評価[編集]

戦後60年を迎えてなお、芸術作品におけるナチス政権下のドイツの描き方には制約が伴うなかで、本作はアドルフ・ヒトラーを主題に据え、その役者にドイツの国民的俳優、ブルーノ・ガンツを起用した[1](ガンツ自身はスイス出身)。ドイツ国内ではヒトラーの人間的側面に踏み込んだ描写が議論を呼んだものの、世論調査では7割近くが本作を肯定的に評価する結果となった[2]。監督のオリバー・ヒルシュビーゲルはインタビューにおいて、ヒトラーを「誰でも知っているのだが、誰もその実像を知らない」人物だとし、本作を契機に若者が過去の歴史的事実について考えてくれればと述べている[3]

本作は第77回アカデミー賞アカデミー外国語映画賞にノミネートされた。また、2005年BBC Four国際映画賞を獲得し[4]2010年にはイギリスの映画誌である「エンパイア」誌による「国際映画100選」で48位に選ばれた[5]

批判[編集]

本作はおおむね史実に依拠しているが、一部事実と異なる部分がある他、いくつかの重要な事実についてあえて触れていない点を問題視する意見がある[6]

  • トラウデル・ユンゲの父は積極的なナチス協力者であり、また、彼女の夫ハンス・ヘルマン・ユンゲは親衛隊将校であったが、これらの事実については作中で語られていない。冒頭の秘書採用試験で、ヒトラーが旧姓ユンゲではなく結婚後の姓で呼び、その後旧姓ユンゲに戻す(夫ハンスは1944年6月ノルマンディー上陸作戦で戦死している)ことでわずかに言及されただけである。これらの点は彼女の証言の中立性に疑問を生じさせるものである。
  • エルンスト=ギュンター・シェンク親衛隊大佐は作中で人道的な人物として描かれているが、マウトハウゼン強制収容所において武装親衛隊のための栄養食の開発にあたって人体実験を行い、多数の犠牲者を出したとされる[7]
  • ヴィルヘルム・モーンケ親衛隊少将は作中で民間人の犠牲者を回避するよう繰り返し訴えているが、史実においては少なくとも2度に渡り彼の指揮下の部隊が捕虜を虐殺した疑いが持たれている。
  • ヴェルナー・ハーゼ親衛隊中佐の最期について「1945年に死去」としているが、実際に亡くなったのは1950年である。

パロディ[編集]

作中においてヒトラーが側近との会議中に激昂するシーンは動画投稿サイトにおいてパロディの題材として広く用いられている。YouTubeではドイツ語を英語字幕で面白おかしく置き換えたものが投稿され話題となった[8]。一時は著作権法違反のクレームにより禁止の動きがあったが[9]、2010年10月にYouTubeは方針を転換しこれらの動画をブロックすることをやめた[10]

なお、監督のオリバー・ヒルシュビーゲルは一連のパロディに対して好意的な姿勢を示している[11]

日本においても、このシーンのパロディは多く存在する。主にニコニコ動画において「総統閣下シリーズ」と題されたこの作品群はネット上で話題になっている事柄などを対象としたもので、あるフレーズが日本語に聞こえるいわゆる「空耳」が特徴となっている[12]

さらに2012年頃から中国の動画サイトでも大ブームとなり、日本とは異なった独自の中国語空耳や激怒する動画も少なくない。

映画『アイアン・スカイ』にも、この映画のパロディと思わせるシーンがいくつか登場する。

販売形態[編集]

DVD[編集]

  • ヒトラー 〜最期の12日間〜 スタンダード・エディション (2006年11月10日発売)
  • ヒトラー 〜最期の12日間〜 スペシャル・エディション (2006年1月14日発売)
    • メイキング、インタビューなどの映像特典あり。二枚組。
  • ヒトラー 〜最期の12日間〜 エクステンデッド・エディション<終極BOX> (2006年11月10日発売)
    • 本編に20分の未公開シーンを追加。日本語吹き替えなし。特典映像に加え、ユンゲ秘書のドキュメンタリーも収録。三枚組。

脚注[編集]

外部リンク[編集]